- 今話題の猫塗り屋ってお話、皆さん知っていますかぁ?実は私が今ひそかに行ってみたい場所でして。。。こう見えて、ちょっとだけ生まれ変わりたい願望があるんですよぉ。
猫たちのさまざまな悩みを受け止め、いちばん愛される柄・色に塗る職人と猫たちとの物語を描いた猫漫画「猫塗り屋」(KADOKAWA)。2018年よりTwitterで公開されていた創作漫画ですが、2020年4月17日、ついに単行本に。
作者は、こちらもTwitter発の人気漫画「ブラック企業の社員が猫になっていた会社員・モフ田くん」でおなじみの清水めりぃ(@zatta_shimizu)さん。
猫を想う深い愛情に包まれた今作に込めた想いについて伺いました!
「新しい自分に生まれ変わりたい!」と願う猫を救う『猫塗り屋』
”猫のお悩みは柄の「塗り直し」で解決されちゃう!?”
猫らばーの皆様なら、思わず手に取りたくなるキャッチコピーではないでしょうか。
「猫塗り屋」・・・このワードだけでもぐぐっと惹きこまれてしまいますよね!
猫塗り屋とは、猫の品種を守りつつ健やかな猫生を支える「猫のセラピスト」。
ざっくり言いますと、猫さまのお悩みを解決してくれるカウンセラーさんのような職業。「新しい自分に生まれ変わりたい!」と相談にやってくる猫たちの悩みひとつひとつを受けとめ、その子の「モヤモヤ」を解決すべく柄・色を塗り替えるお仕事なのです。
その子がいちばん「愛される」柄・色に
日本一の猫塗り屋”歌国芳春(ほうしゅん)”のもとで2年ほど修業を積み独立した”歌国白妙(しろたえ)”のもとへ、救いを求めて訪れるさまざまな猫たち。でも、白妙はただ猫たちの希望するがままの柄・色に塗るわけではありません。
それぞれの猫たちの悩みに寄り添い、短期間だけ毛の色を変えられる「一日絵具」や「一か月絵具」「三か月絵具」などを使いながら、その子にあった解決法を示していくのです。
2018年6月に公開され、単行本ではフルカラーで新たに描き直された第1話では、三毛のりんがロシアンブルーになりたいとおねだり。
「いつも三毛柄だと飽きられて捨てられちゃうかも…」そう心配して白妙にお願いするのですが、白妙はりんを今までと同じ三毛柄に塗り直し・・・。
鏡を見て驚き抗議するりんに、白妙は優しくこう諭すのです。「お前は三毛柄が一番かわいいの。飽きたりしないから、一生三毛柄に塗らせてね。」
技術だけではない・・・猫のことを誰よりも深く愛し、敬い、大切に考えられなければそう簡単にはできないお仕事。白妙のりんを想う姿に、思わず我が子のことを重ね涙してしまう方はきっと多いのではないかと思います。
人間の「愛されたい」「愛したい」という渇きは猫も同じ
猫たちの悩みはまさに十猫十色。
愛しの長毛彼女に好かれようと青い瞳のモフモフペルシャになりたいと訪れる短毛猫がいれば、自分だけ柄が違うことを憂い、他の兄弟と同じ黒猫にしてほしいと懇願するサビ柄の子猫がいたり。その激レアさゆえに幾度も人間に追われ、真っ白に塗り替えてほしいと逃げ込んできた三毛のオス猫も。
そのどれもが猫だけに限ったことではなく、人間と結びつくものばかり。
▲猫塗り屋さんとサビ猫一家さん
▲猫塗り屋さんと三毛男さん
「『美人、イケメンになりたい』『誰かと出会いたい』などの根源の部分に『愛されたい』『愛したい』といった渇きがあって、猫ちゃんもそれは同じように思ってるのではないかと考えています。猫塗り屋のメインテーマになっているものは”愛”。そこは変えずに、一冊分通して描かせて頂きました。」と清水さんは言います。
「猫生で一度で良いから誰かに愛されたい」
2018年7月に公開された第4話では、生まれつき般若のような顔で人間から疎まれ長い間辛い思いを抱えて生きてきた猫が登場。
「いっそ消えてしまいたい。」そう願っていたら気づけばその通りの透明な姿になっていたとか。
こうして誰の目にも触れることがなければ、見た目のせいでいじめられることもない・・・そう思っていたものの・・・「猫生で一度で良いから誰かに愛されたい」「『あの時だけは幸せだった』そう思える一瞬が欲しい」と白妙のもとへやってきたのです。
この「告白」に心を大きく動かされた方がとても多かったと清水さんは言います。
誰かに愛され必要とされてこそ、自分が自分でいられる。幸せを感じられる・・・私たち人間も同じですよね。人はたった一人では生きられない。そして幸せになりたいと願わない人はいないはず。
白妙に塗り直され「はにゃ」ちゃんと名付けられたその猫は、その後白妙の紹介でほぐし屋さんの飼い猫に。「個性的で可愛いもの!」般若のようなお顔を個性として受け止めてくれたほぐし屋さんの言葉に、はにゃちゃんは今まで感じたことのない喜びを感じたことでしょう。このうえない幸せを感じたことでしょう。
「素直でけなげなはにゃちゃんが好き!とおっしゃってくれる方も多くてとても嬉しいです。たくさん愛されているので、きっともう二度とあのような姿になるようなことはないと思います。」と清水さん
はにゃちゃんの幸せそうな顔を見ると、とても幸せな気持ちになります。
どんな色柄でも、生まれも育ちも関係なく猫ちゃは愛されるべき
「猫はその姿、性格、しぐさ全てが可愛い。別に見た目なんて気にしなくていいのにどうしても気にしてしまう猫ちゃんが現れる。けれどそんな悩みは本来持たなくていいものなんだよ、という気持ちで話を描いていました。」と清水さん。
どのストーリーにも清水さんの猫への優しい気持ちが感じられますが、特に印象深かったのは第11話のピーチさんという猫が出てきたお話。モデル猫として活躍していた白猫のピーチさんは、その見た目にこだわりすぎたゆえ、ちょっとした見た目の変化を機に以前とは全く違う風貌に…。
「”どんな色でもどんな柄でも、生まれも育ちも関係なく猫ちゃは愛されて然るべき”もしこの時点でピーチさんにこのセリフを言ってくれる人が身近にいれば、あんなことは起こらなかったかもしれません。」
「どうやって渇きを潤すか」という部分で毎回苦心していたという清水さん。ピーチさんの苦しさを描いていたとき、清水さん自身もとても辛かったといいます。
ピーチさんを責めることなくただただ気持ちに寄り添う白妙・・・そしてピーチさんの心がほどけていくシーンは何度見ても心がキュッと掴まれます。
白妙の温かい言葉に、そして傷ついたピーチさんを全力で助けたいと奮闘する弟子の田宮くんの優しさに、ピーチさんはどれだけ救われたでしょう。
「猫塗り屋」を読み終えた後、誰もが我が子の柄・色をより一層愛おしく感じるのではないでしょうか。「そのままでいいんだよ。そのままが大好きなんだよ。」と言って愛する猫をぎゅっと抱き締めてあげたくなる、そんな素敵なお話でした。
読み進めれば読み進めるほど、猫さまのことが愛おしくなる「猫塗り屋」の世界。自身も猫2匹と一緒に暮らす大の猫好きさんだからこそ、全編を通して温かく猫味(人間味)のある世界観が広がっているのだろうと思います。おうち時間の長い今こそ是非、その不思議ワールドにどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか。猫を愛するすべての人に贈りたい一冊です。
取材協力:清水めりぃさん
デザイナー(兼漫画家)
コメント:デザインの仕事が好きなのはもちろんですが、最初漫画のお仕事を受けるかどうか悩んでいた時に当時の上司たちに背中を押してもらえたこともあり、現在二足の草鞋でいかせて頂いています。
漫画家になろうと思ったというよりは、猫が可愛すぎて猫を描き続けていたら気づけば漫画の世界に足を踏み入れていた、といった感じです。
踏み入れることにとても迷いましたし、本当はこんな中途半端な状態で漫画家と名乗るのはとても恐縮なのですが、モフ田くんの単行本が出た後に恐る恐るプロフィールに()付きで漫画家と記載させてもらいました。
人生は本当に何が起こるか分からないなと思いながら、デザイナー(兼漫画家)という不思議な肩書をもう少し続けていければと思っています。
- 公式Twitter→@zatta_shimizu
- 猫塗り屋→Amazon
- ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話①→Amazon
- ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話②→Amazon
▼清水めりぃさんの飼い猫テレワーク事情についてご紹介した記事
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。