2020年5月13日、米臨床医学誌の「The New England Journal of Medicine(NEJM)」TO THE EDITOR欄に、Peter J.Halfman氏らによる「3組、6頭の猫間での新型コロナウイルス感染」に関する論文が発表されました。新型コロナウイルスが猫同士でも感染し容易に広がるとの報道に、不安に感じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2013400
この記事では、こうした報道を受けて5月14日に東京都獣医師会より更新された「新型コロナウイルス感染症とペットに関する情報について」の内容をまとめています。詳細や最新情報を知りたい場合は、東京都獣医師会公式ホームページをご確認ください。
※最終更新:2020年5月15日
現時点で動物がヒトに感染させる可能性は低い
東京都獣医師会によると、猫同士での感染があることは既にShi J氏らによって報告されており、2020年4月8日、米国著名雑誌のScienseに論文が掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/07/science.abb7015
論文掲載後、アメリカ米国疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインは更新されていますが、現時点で新型コロナウイルスの感染について動物が重要な役割を果たすという証拠はなく、動物がヒトに感染させるリスクは低いとしています。また、ウイルスについては研究が進められていますが、状況によってはヒトから動物へと広がる可能性があることも示しています。(最終更新2020年4月30日)
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/daily-life-coping/animals.html
東京都獣医師会としては、さまざまな報告に引き続き注意を払い、今後の検証を注意深く見守っていくとの見解を示すとともに、現時点では「猫がヒトの感染に重大な役割を果たしていると認識していない」と発信しています。
情報の背景を冷静に確認することが大切
さまざまな情報が錯そうするなか、東京都獣医師会では、情報の背景を冷静に確認するよう注意を喚起しています。
動物へ感染と聞くと、我が子のように猫を大切に想う飼い主さんなら当然不安になってしまうでしょう。ですが、感染とひとくちにいっても、通常の飼育環境での感染なのか、それとも実験環境下での感染なのかによって状況は異なります。なぜなら、実験環境下では、通常の生活とはかけ離れた密な環境を人工的に作ったり、大量のウイルスを投与する場合もあるからです。
大切なのは「どのような背景で感染が確認されているのか」を冷静に確認すること。飼い主さんが心配すべきことなのか、それとも事実としては知っておき注意を払いつつも、むやみに恐れすぎる必要はないことなのか、を知ることです。
飼い主さんがさまざまな情報に惑わされないよう、東京都獣医師会では、感染症対策セクションをはじめ、さまざまな有識者の意見を参考に「正しい情報の発信」に努めています。
愛するペットを新型コロナウイルスから守るためには、何よりもまず飼い主さんが感染しないようにと引き続き呼びかけています。正しい情報を知り、必要以上に恐れないこと、そして何よりもご自身が感染しないよう十分に気をつけていきましょう。
参考:東京都獣医師会
新型コロナウイルス関連情報
厚生労働省
新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について
経済産業省
農林水産省
文部科学省
新型コロナ感染症による学校休業対策「#学びを止めない未来の教室」
首相官邸
各都道府県の新型コロナウイルスに関するお知らせ・電話相談窓口
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。