保健所に連れていかれるところを保護され…今この瞬間を懸命に生きるみーこ
ストーブのそばでまったり気持ち良さそうに寛いでいるのは、サビ三毛のみーこちゃん。
もともとはペット不可の団地で高齢者の女性に飼われていたという。ただ、みーこちゃんの生活は基本お外…。彼女はあくまで「自分がかわいがりたい時だけ」みーこちゃんを可愛がっていた。それでも彼女にとっての生きがいになっていたのだそう。
しかし、いざ施設入所が決まったとき、彼女はこう言ったという。「もういい。」と。自分の生きがいと言っていた猫を、いとも簡単に保健所へ連れていこうとしたのだ。
そんな状況を見かね、なんとかみーこちゃんを救いたい!と思った訪問ヘルパーさんは、山梨北麓地域で犬猫の保護活動を行うボランティア団体「ねこねっと山中湖」へ相談。そして、みーこちゃんは救われた。
みーこちゃんはAIDSキャリアで、保護された時は生きているのが不思議なほどの酷い貧血状態だったのだとか。
しばらく入院となり、退院後は終生保護の猫を預かってお世話をしているボランティアスタッフの家へ。そのスタッフの家には、みーこちゃんのようにAIDSキャリアの猫や在宅ケアの必要な猫がたくさんいる。
投薬、点滴、定期的な血液検査のための通院。少しでもAIDS発症を遅らせるため、ストレスのない生活を心がけ。。。そして何よりも大切なのが体力を落とさないための食事。療養食で下痢になってしまう場合もあるため、食事にもいろいろな工夫が必要となるのだとか。
こうした在宅ケアを続けていくうち、獣医の先生も驚くほど、みーこちゃんの状態は落ち着いたのだそう。
もちろん口内炎がひどく痛みで食べられない時も。。。
でも今、こうやってストーブのそばでまあるくなって暖をとるみーこちゃんは、”今この一瞬を懸命に生きている”のだ。
▲体力の回復とともに、もともとの”女番長”な性格が次第に出てきたとか^^ 画像提供:ねこねっと山中湖
道の駅で捨てられたにゃんこ、死の淵から生還~命を繋いだ適切なケア
こちらは、約2年前のある冬の寒い日、山梨県道志村の道の駅に捨てられていたというにゃんこちゃん。たまたま配送にきていたトラックの運転手の方が、ダンボールの上にいたにゃんこちゃんを発見。ねこねっと山中湖ボランティアスタッフのもとへ連絡がきたそう。
翌日は雪予報が出ていたこともあり、すぐさま現場へ急行。でも猫が見当たらず、道の駅の方へ聞いたところ、事務所の裏へと案内されたのだとか。そこには、発泡スチロールや毛布の敷かれたダンボールハウスが。
どうやら半月くらい前から姿を見せるようになっていたらしく、道の駅の方がごはんをあげてくれていたようだが、保護時は風邪でボロボロの状態だったそう…。
遺棄が疑われる捨て猫を発見したら、まずは110番が原則だ。なぜなら、愛護動物の遺棄は犯罪と法律で決められているから。とはいえ、こうした届出義務はあまり知られていないのが現状でもある。
拾われて3ヶ月間は、法律的に拾得物扱いとなる猫。器物損壊になってしまうため、避妊去勢手術を施すこともできない。ただ、命の危険のある猫を3ヶ月間放っておくことはできない。ねこねっと山中湖では、こうした猫を必要な医療にかけ保護している。
3ヶ月たってもにゃんこちゃんの飼い主さんは現れなかった。ここで初めてねこねっと山中湖へ所有権が移譲されたのだ。
にゃんこちゃんは、70歳を過ぎ猫を飼うことを諦めていたという預かりボランティアスタッフAさんの元へ。Aさんはにゃんこちゃんとの生活で、再び日々の生活の安らぎを感じるようになったとか。
そんなAさんから、ねこねっと山中湖へ「にゃんこが吐いてる。食べない。」と相談があったのは2ヶ月前のことだったという。検査をしたところ、腎不全末期のデータが…。
1週間の入院では静脈点滴と抗生剤の集中治療を。獣医の先生曰く、かなり危険な状態だったという。
退院後は、ねこねっと山中湖の副代表が、1ヶ月間毎日、皮下点滴をしにAさんのお宅へと訪問。データを見ながら隔日、週2回と訪問する間隔を徐々に広げ…今では週1回の点滴に。
でも、決して点滴を止めることはできない。一度壊れてしまった腎臓は完全に元に戻ることはないのだ。
こうした猫たちが生きていくためには、適切なケアが必要になる。それには時間とお金の問題が…。
でも、ねこねっと山中湖の副代表・保科さんはこう言う。
「身勝手な人間のせいで、一度は殺処分の危機に晒されたり、捨てられてしまったりした子を、最後までお世話してあげたいと思うのです。」
猫は決してモノじゃない。ぬいぐるみでもない。人間と同じ命ある生き物。
「私がいなくてもきっとどこかで幸せに暮らせるはず。。。」安易に猫を手放してしまう人はこう思っているのかもしれない。でも、手放したその瞬間から、猫は命の危険に晒されるのだ。
自分の楽しみのため、癒やしのため、それだけのために安易に猫を飼い、面倒を見れなくなったらもういらない。。。そんな人間たちの”信じがたい都合”に振り回される猫たちがあまりにもかわいそうでならない。
その小さな命、尊い命をもっと大切にして欲しいと心から願う。
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。