- 横浜・関内にある猫カフェミーシスには里親募集中の保護猫たちがたくさん。今年で10周年を迎えるミーシスについて店長さんにお話を聞いてきましたよぉ。
今回ご紹介するのは、横浜・関内にある猫カフェミーシス。
店内には30匹近くの個性豊かな保護猫たちがワラワラ^^
今年で10周年を迎えた猫カフェミーシスの魅力に迫ります!!
10周年
横浜・関内駅から歩いて5分ほど。繁華街のビル2階にある猫カフェミーシスには、さまざまな事情で家族と離れてしまった猫たちが暮らしている。
▲大きな窓から明るい光が差し込む広々とした店内。
2009年にオープンし今年で10周年。
「10周年になって正直びっくりしたんですよ。あっという間でした、本当に。ほぼ記憶がないので…(笑)」そう話してくれたのは、店長の能勢さん。
平日の午後。オープン直後からひっきりなしにお客さんが訪れる。カウンターに立っていたのは能勢さんの息子さん。時折訪れる外人のお客さんには流暢な英語で対応することも。
ここで暮らす猫のうち、首輪のついていない子は里親募集中の猫たち。この10年間でたくさんの猫たちがこのミーシスを卒業していった。
猫との出会い
▲こちらは”ひな”ちゃん。ミーシスの開店当初から看板を背負ってきた愛嬌たっぷりのアイドル。
猫との最初の出会いは、能勢さんが中学生の頃。
ある日、野良猫を拾って家に連れ帰ってきた能勢さん。でも、それを見たお母様からは「明日捨てに行くからね」などと言われ、あまりいい顔をされなかったとか。
でも、翌朝起きると。。。お母様はすっかり猫の虜に^^
「完全に落城してました(笑)『みみちゃん』とかすでに呼んでて^^名前は私がつけようと思ってたのに!」と能勢さんは笑う。
けれど、そのみみちゃんは2歳くらいで突然亡くなってしまったそう…。「おそらく今でいうFIPとかだったと思うんですけど…。みみちゃんを泣きながら庭に埋めました。泣きすぎて、ドラえもんののび太の3みたいな目( з з)になっちゃったから(笑)、こんなんじゃ学校行けないって次の日学校休みました。」
その約2か月後、みみちゃんとの出会いですっかり猫好きになった能勢さんのお母様は、ご友人の家から新たな猫を引き取ったそう。名前は「ココちゃん」。
「母親がココシャネルのココにしたからって…。オスなんですけどねw」
能勢さんとお母様のやり取りがいちいち面白い^^その後ココちゃんは、能勢さんが結婚して家を出たあとも17年もの間、能勢家の実家で暮らしたそう。
苦労した物件探し
▲ミーシスの女子とりまとめ的存在”ココロ”ちゃん。
そんな猫との暮らしを経験してきた能勢さん。営業の仕事をしつつも「いつか猫カフェを」というふんわりとした気持ちを持ち続けていたのだとか。ある時、里親募集サイトを通じてTNR活動をしている方に出会い、その思いがだんだんと強まっていったという。
「10年前、物件探しをした頃は、もう箸にも棒にも(かからない)状態だったんですよ。どこを探しても無理無理と言われて。。。」と能勢さん。
店づくりは本当に何もかも手探り、やっと見つけたのが今の物件だったのだとか。「スケルトンだったんですけど、設計士さんに細かくお願いするようなお金もなかったですし、ざっくりとした感じを内装屋さんに相談して一から作っていった感じですね。」
お店には大きな窓があり、夜になると向かいの駐車場の車のテールランプを猫たちが興味深げに眺めているそう。
▲ブワァッサーーーー^^至福のごろり時間。
猫を助けたいという思いがあるから
▲子猫チームのひとり”せい”。見つめる先には相棒の”なる”ちゃん。必ずなるちゃんの後を追うタイプらしい^^
立ち上げた当初いたのは、知り合いの近隣ボランティアさんから引き取った保護猫たちや、都内の多頭飼育崩壊で引き取った老猫たちなど17匹。
能勢さんは、こうした地域のボランティアさんや保護団体さんだけでなく、一般の方からの保護の問い合わせにも耳を傾けているそうで…。
「今から7.8年くらい前かな。お店のチャイムが鳴って出たら、猫を抱き枕みたいに抱えておばあちゃんと一緒にやってきた子がムスっと立ってて(笑)。自分で買ったマンチカンの猫を引っ越すのでと持ち込んできたんです(怒)捨てるとか飼えなくなったっていう話だとめっちゃ怒りますね。。。」と能勢さん。
そんなときにもまずは話を聞く。預かって隔離して、病院に連れて行き…、検査で問題なし、ケージにも空きがあれば受け入れる。
「1日100件とか問い合わせがあるわけじゃないし、自分がさばけるくらいだったら(と思っちゃう)。きちゃうと首つっこんじゃうんですよ。えー!って思うんですけどね、でも猫はみんな一緒だから。」
「いろいろ考え方はあると思うんですけど、私は保護猫を引き取ってお店をやっている以上、そういう相談があって当たり前だと思っているので。やりたいことはひとつ、猫を助けたいという気持ちですよね。そういう相談に応じられないというのは覚悟がないなと自分自身思っていて。今すぐに受け入れられないときにも、今あなたができるのはこういうことですよって説得したりしていますね。」
猫を通して教えてもらったこと
▲おふぅさまの盆踊り2019
「自分ちの猫のことしか知らなかったので、猫カフェを開くにあたって、いろんなことを勉強をしましたね。」と能勢さん。
そのなかでも大変だったエピソードを語ってくれた。
「猫のことで大変だったということはあまり思い出せないんですけど、接客業なので人の方が…。」
10年前、神奈川にはまだ保護猫カフェが1軒もなかったのだとか。ミーシスは保護された猫たちがいる猫カフェだが、大々的に「保護猫カフェ」とは謳っていない。それには、カテゴリ分けされたくないという思いがあったそうで…。
「だって猫を好きな人は、どんな猫でも好きでしょ?」と能勢さん。
けれど蓋を開けてみれば、オープン当初訪れたお客さんからはこんな声が。
「普通の猫しかいないじゃん…。」
(12.3歳くらいの老猫たちを見て)「猫たちがみんな落ち着いていますねー。」など…。
「子猫じゃなきゃかわいくないの?」と能勢さんのショックは大きかったそう。
▲ココロ様、ランウェイをモデルウォーキング^^
能勢さんが毎日のように更新しているお店のブログに厳しいコメントを書かれたこともあったとか。
「拒食症気味でガリガリに痩せてしまっていた子を引き取って、なんとか食べさせようと試行錯誤してたんですね。で、やっとお刺身のホタテを食べられるようになった時、ブログに”やっとあの子が食べれるようになったんですよ”って書いたら、”かわいそうな猫をお金を払ってまで見たくありません”って書かれまして(苦笑)」
能勢さんは、お店の入り口でのアナウンス不足でお客さんに不快な思いをさせてしまったと感じて、そのお客さんには謝罪の返信をしたそう。
「でも、その後お店のことを愛するお客さんがコメントで擁護してくださって。いわゆる炎上ってやつですね…。そんな意味でも人は難しいなと。子育てでいろいろと他人から言われることってありますよね、それと一緒だなと思います。」
そんな苦い経験もしてきた能勢さんだが、
「これも猫がいたことによって教えてもらったこと。猫を通して勉強になることってたくさんあるんです!」
猫がいたからこそ、という思いが詰まった能勢さんの声は明るい。
猫からの贈り物
サラリーマン時代にはなかった、猫がいることで「もらう気持ち」があるのだとか。
「今年のGW10連休だったじゃないですか、私ちょっと疲れちゃいまして(笑)GW明けに調子を崩して臨時休業にしちゃったんですね。普段あまり表には出さないようにしてるんですけど、うっかり息子が店長急病のためとかTwitterで投稿して。そしたらどうしたの?どうしたの?っていろんな方がとても心配してくださって。」と能勢さん。
そんな”猫を通じてもらう気持ち”がたくさんあるから、その気持ちを猫にちゃんと返していかなきゃと思っているそう。
▲店内には猫本がずらり。
「決して自分が奢ってはいけない。猫はみんなそれぞれなので、一律ではなくその子にあった幸せを考えていきたいし、その子の良さを伝えていかなきゃいけないと思います。」
猫を通じてもらった気持ちは猫に。猫の幸せはその子だけで成り立つものではない。
気があう者同士自然に寄り添う。30匹ほどの猫がいれば当然相性のいい悪いもあるそうで。
「ごはんの時とか『わ、おまえの隣かよ、やだー』みたいな。人間と同じですよね(笑)」
でも、保護した時期も全く違うのにカップルができあがることもあるのだとか。
「みんな避妊手術してるからオスメスの本能とかではなくて、本当に好きで一緒にいる子もいるんですよ。かたっぽがご飯食べに行ったら私もー!とか、かたっぽが寝てたら私も俺もー!とか。それがもうめっちゃかわいいなぁって^^」仲のいい子同士は譲渡の時もセットで引き取ってもらうなど、相性も考慮しているそう。
そうやって猫が猫を呼び、たくさんの幸せが生まれる。猫からの贈り物は人間だけではなく、猫同士も幸せにしてくれる。
ナイーブ族たちが懐く常連さん
ミーシスには、週に1回、10日に1回などコンスタントに訪れる常連の男性客が20人ほどいるのだとか。その男性たちはみんな猫の扱いがとても上手いらしく、自然に猫たちが集まってくるのだそう。
「そのお客さんたちがいると、私なんてスーって無視されちゃいますからね。(笑)」と能勢さん。
「ミーシスの猫にはね、いい意味で誰でもウェルカムですぐにお膝に行ける猫ちゃんと、なかなかうまく寄り添えない猫ちゃんがいるんですけど。そういう上手く寄り添えない子を”ナイーブ族”って呼んでまして(笑)でも、そのナイーブ族たちはその男性のお客さんが来るとスーッと寄って行くんですよ。」
実際、私がお店に行った時も、まさにその猫集めのプロの男性がいらっしゃって…。まさにナイーブ族と思われる猫たちがその男性の周りにわんさか^^猫じゃらしで子猫を遊ばせながらも、片方のカメラでシャッターを切る、まさにその神技を生で拝見して驚いた。
「たまにその人たちがバッティングする日があるんです。そうするとちょっとお客さん同士で譲り合ったりしてて(笑)お客さんにも『さっきどの子に行こうか迷ってましたよね?』とか言うんですけど。忖度しあってたりしてるのが面白かったり^^」
親心
「いつも雑談して猫とゆっくり過ごして帰られる方が、ある日猫をもらいたいんですけどって言ってきてくれて。それが一番うれしいかな。」と能勢さん。
「なんか嬉しいじゃないですか!いろいろ考えてここで猫をもらおうと思ってくれたんだと思うと。お客さんに『私のこと好きでいてくれたんだー?』って言うと、そうじゃないって気持ち悪がられますけどね(笑)」
里親になりたいと言ってきてくれる人は、本当にみんな猫が好きな人ばかり。里親になったあと、あえて「あの子どうしてますか?」などと聞いたりはしないけれど、自然に里親さんの方から近況報告してくれるのだとか。
「里親に出した子について、絶対に知ったような口はきかないよう気をつけています。私が知ってるのはお店でのその子であって、里親さんのおうちでのその子の様子は分からないので。『〇〇ちゃんはここではお膝に乗る子だったんですよー』なんて言われて、家でお膝に乗ってくれなかったら『なんかごめんなさい』って思うじゃないですか。」
なんだかこれもちょっと子育てに似ているような。優しい親心のようなものを能勢さんにはとても感じる。
虹の橋支店
店内の廊下には今までに店内で看取ってきた猫たちの写真が飾られている。ここを能勢さんは”虹の橋支店”と呼んでいるそう。
「突然ファンタジーな話になっちゃうんですけど…。猫の数が多くて大変な時はちょっと楽そうな子を捕獲機に入れるようにしましたとか、ちょっと余裕あるときは手のかかりそうな子でも大丈夫でしょ、など、実は虹の橋支店の猫たちが、次に入ってくる保護猫たちの調整をしているんじゃないかと思うときがあって(笑)アビシニアン3匹、マンチカン、ラグドール、スコティッシュ…血統種ばかりが集中した年があったんですけど、その時は私への挑戦状だったのかなと思いましたw」
今日も虹の橋支店長が店内のケージの空き具合を見計らって、様子をうかがっているんだろうか^^
海の日に保護された1歳のしーちゃん
ミーシスには全盲の猫がいる。名前は「しーちゃん」。
ミーシスを通じて結婚したカップルの旦那さんが去年の海の日に保護した猫なのだとか(だからしーちゃん)。保護したときは分からなかったけれど、病院に行き検査をして全盲だと分かった。保護してすぐに手にじゃれてくるなど人懐っこい子だったので、きっと捨てられたんだな…と能勢さんは思ったのだそう。
▲お知り合いの方に作ってもらったという”纏うもの”。真ん中がしーちゃん。
「最後のうちの子にしようと思って。」と能勢さんは覚悟を決めて引き取ったとか。
漫画家の高津マコトさんがミーシスにいらしたとき、しーちゃんのことを漫画にしてくれたのだそう。「もう、めちゃくちゃかわいいんですよ!」と”自慢の子”を紹介してくれた能勢さん。
しーちゃんは今こんなに愛されて本当に幸せだと思う。
ミーシスさんに行ってしーちゃんに会った話。 pic.twitter.com/JK7jmpGwkF
— 高津マコト??3巻発売中 (@sleepinwasher) 2018年10月10日
想いを馳せてもらえたら
ミーシスという名前は、猫の頭を持つ古代エジプトの女神「バステト」からきているそう。
「バステトってなんかきついかなと思って(笑)諸説はあるようなんですが、そのバステトの息子の名前がギリシャ読みでmiysis(ミーシス)というらしく。ミーってなんかかわいいじゃん!って。でもいざオープンしてみると、なんて読むか分からなかったなんて言われて、やっちゃったーと思いましたけどね^^」
↓店名の由来はこちらのblogにも。ミーシスの画像が頭から離れなくなりますよ^^
http://blog.livedoor.jp/miysis-ver2/archives/51767282.html
▲「よっ」▲「ほっ」
▲でろーーーーん。おふぅ様の開き^^
そんなミーシスのこれからは?
「こうしていきたいというよりは…いい意味でライトな気持ちでいらしていただいて、どんな猫も一緒なのだと気づいていただけたらと。うちの近所にすごく怖い顔の野良ちゃんがいて…と言われたら、『でも、もしかしたら赤ちゃんのときに何か怖い思いをしたのかも』なんて伝えるんです。そうすると『あっ、そっかー』と思いを馳せてもらえるじゃないですか。そんなふうに気づいてほしいなと。」と能勢さんは話す。
「よく大人の子は遊ばないですよね、と言われるけれど、『私も公園に行ってブランコが揺れると楽しいのは知ってるけれど今はやらないw そういうことですよ。』って言いますね。息子が子どもの頃にあんなに集めたプラレール、今やりますかって言ったら見向きもしないですからね(笑)猫もあの時は楽しかったーって思ってたんでしょうけど、大人になりますよね。大人だから遊ばない、とかそういう気持ちじゃなく、猫だって人間と同じように成長する、そこに気づいてもらえるような伝え方を心掛けています。」
「普通の猫だったけど(猫の種類関係なく)可愛かったなぁ!」と思ってほしいし。声高にではなく、そんな想いを馳せてくださる人を増やしたいと思っています。」
この種は懐っこい。この種はおとなしい。この子は耳がたれててかわいい!短足なところがかわいい!…相手が猫だとついついそんなふうに私たちもなにげなく言ってしまいがちだけれど。。。
でも、どんな種類であっても「猫は猫」。
どこで生まれた子でも、どんな柄であっても「猫は猫」。
「あの子もこの子もみんなそれぞれかわいい。」そんなふうに猫のことを心から愛おしく思えるのが、猫カフェミーシスの魅力なんじゃないかと思う。
猫カフェミーシス
電話:042-325-7166
住所:神奈川県横浜市中区長者町6-99ハローイセザキビル2F
営業時間:月12:00~17:00 木金12:00~20:00 土日11:00~20:00
定休日:火曜日・水曜日
最寄り駅:JR関内駅徒歩6分 横浜市営地下鉄伊勢佐木長者町駅徒歩4分 京急電鉄日ノ出町駅徒歩8分
料金:
1ドリンク付き70分1,600円/100分1,800円
2ドリンク付き130分2,100円/200分2,700円
平日限定フリータイム3ドリンク付き3,700円
公式サイト:https://www.cat-miysis.com/
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。