- 今回ご紹介するのは、認知症を発症した柴犬「しの」ちゃんと、懸命に支え続けた「くぅ」ちゃん。いつも一緒だったふたり、そして別れ。そばでいつも見守ってきた飼い主の晴(はる)さんにお話を伺いましたよぉ。
犬と猫が仲良く寄り添っている姿は、見ているだけでほっこりしますよね。
なかでもワンコニャンコ好きさんから、絶大な人気を誇るのが「くぅ」と「しの」。
認知症を患ったしのちゃんに、いつもぴったり寄り添って支え続けたくぅちゃん。
しのちゃんが亡くなって2年たった今でも、ふたりは多くの人々の心を温かく照らし続けています。
今回は、ボロボロの状態だったふたりを救い、そばで見守ってきた飼い主の晴さんにお話を伺いました。
「ただ寄り添うだけで幸せ」そんなふたりの愛に溢れた日々をご紹介します。
認知症の犬しのを支えた介護猫くぅ
なんとも微笑ましい1枚の写真がここにある。「とっても仲良しなワンコとニャンコ♡」と思うかもしれないが、実はそれだけじゃない。
猫ちゃんが自分の頭でワンちゃんの顎を支えてあげているのが分かるだろうか?
そう、実はこの猫ちゃん、認知症を発症したワンちゃんを手取り足取り介助する「介護猫」なのだ。
わんちゃんの名前は「しの」。認知症を発症し、2年前17歳で虹の橋を渡った。そして猫ちゃんの名前は「くぅ」。いつの頃からか、ふたりはいつもぴったり寄り添うように。
ふたりの間にはいつも穏やかな時間が流れていた。大好きが溢れていた。
穏やかな時間 pic.twitter.com/nX0qiBBxwP
— くぅとしの (@hinatabocco_3) November 6, 2019
今回はそんなしのちゃんとくぅちゃんのお話。
しのちゃん・くうちゃんとの出会い、そして認知症発症から介護生活、ふたりとの暮らしを経て感じたことなどを飼い主の晴さんに伺いました。
対向車線の先頭を走るのは~しのちゃんとの出会い
幼い頃から動物が大好きだったものの、大人になるまで犬や猫を飼ったことはなかったという晴さん。そんな晴さんとしのちゃんとの出会いは、2011年6月のこと。車で通勤中、ふと歩道に目をやると、そこには小走りで駆けてゆく柴犬の姿が。
見た瞬間「かわいい!」と胸躍った晴さん。ただ、首輪をしているのに周りに飼い主さんが見当たらない・・・。少し心配しつつも、通勤中だったこともあり、そのまま職場へ向かったそう。
その日の帰り道、家近くで対向車線が大渋滞。驚くことに渋滞の先頭にはなんと犬が!「あれ?あそこにいるのは朝の犬じゃ?」・・・そう。今朝見かけた柴犬が車道を走り渋滞を巻き起こしていたのだ。
「このままじゃ車に轢かれて危ない!」そう思った晴さんは、すぐさま脇道に車を止め、急いで犬を捕まえに。とはいえ、相手は犬。簡単には追いつけなかった・・・。でも、途中で男子高校生が手を貸してくれ、なんとか捕獲に成功。
首をきつくしめていた首輪は腐っていて、そこからとてつもない異臭が漂っていた。首輪を外して体をよく見ると、首周りから胸、お腹にかけて皮膚は赤黒くただれ、それはそれはひどい状態だったとか。獣医さんいわく「腐った首輪から全身に皮膚病が広がったのだろう」とのこと。
こちらが保護した当日のしのちゃん。晴さんが急いで買ったというハーネスをつけて。
「母は犬嫌いだったんですが、しのの体の状態を見てかわいそうに思ったのか、受け入れてくれました。」と晴さん。
こうして獣医さん指導のもと、週1回の薬用シャンプーと塗り薬、療法食の治療をスタート。首輪ができるようになるまではハーネスで散歩をし、普段は玄関でお世話することに。シャンプータイムは毎回格闘だったそうですが、晴さんの献身的なケアが実を結び、数ヶ月後胸の毛はすっかりモフモフに。
そして、冬になる頃には首周りの毛も綺麗に生え揃いサラツヤになったという。小刻みに震えていた後ろ足も治り、朝昼夕3回の散歩に行けるほど元気いっぱいになったのだとか。
▲いくつかの候補のなかからご家族が気に入った「しの」という名前に。
保護当時、迷い犬かもしれないと思い動物愛護センターに問い合わせたものの、飼い主さんからの届出はなかったという。里親を探すことも考えたけれど、その当時すでに推定10歳だったこともあり、晴さんは家族として迎えることにしたのだとか。
「守らなきゃ!」~くぅちゃんとの出会い
しのちゃんがやってきて約1年半後の2012年11月7日。それがくぅちゃんと出会った日だった。
休憩時間に職場を出た晴さんの目の前をサッと横切ったのは、どうやら子猫・・・。晴さんと目が合うと、その子猫は晴さんの顔を見つめて「くぅ~」と鳴きながらその場にへたり込んだのだとか。
「こんな小さな体で・・・守らなきゃ!」くぅ~の鳴き声が「助けて!」のSOSに感じた晴さんは、すぐさま子猫を抱き上げ、一旦家へ連れて帰りお母様へ預けることに。(その当時家にはすでにしのちゃん以外に5匹の猫がいたため、お母様はさすがにお怒りモードだったようですが(;´∀`))そして、そのまままた職場へと戻ったという。
仕事が終わってすぐさま帰宅。そこで子猫の体を改めてよく見ると、顔はノミ・ダニだらけ、目・鼻はぐじゅぐじゅ、全身真っ黄色でひどい汚れだったとか。
こちらが保護当時のくぅちゃん、推定1歳。
▲「くぅ~、くぅ~」とよく鳴くことから「くぅ」と名付けられた。
家にやってきたときから食べては吐くを繰り返していたくぅちゃん。獣医さんに診てもらうと、どうやら腸に炎症があるため消化吸収がうまくできず吐いてしまうとのこと。そこで獣医さん指導のもと、療法食をふやかし1食分を2.3回に分けて食べさせることに。それでも、家中で吐いてしまっていたので、しばらくは嘔吐の処理に追われる日々だったという。
そんなくぅちゃんは、過酷な外の世界から離れて安心したのか、お家へやってきてしばらくはおとなしくいい子だったという。でも、「今まで保護した猫の中でダントツ手がかかった」と晴さんが言うほど、その後色々と大変だったようで。
基本おしっこは畳や絨毯(うんちだけはトイレで)、他の猫のうんちをパクパク、猫同士のルールが分からないKYボーイ、結果先住猫が激オコなどなど^^
他の猫のうんちを食べる癖は、野良猫時代餌にありつけず、他の猫のうんちを食べて栄養をとっていたからだそうで、しばらくするとしなくなったとか。でも、数回に分けての食事や粗相、嘔吐は3年以上も続いたそう。栄養を上手く吸収できなかったため、体はなかなか大きくならず子猫サイズのまま・・・。
▲まこお兄ちゃんと。
食事のサポート、粗相や嘔吐の処理、先住猫へのフォローなど、晴さんの日々は目がまわるほどの忙しさだったとか。でも、1年後に三毛のちまちゃんを迎えてからは、猫同士のルールも覚え空気が読めるように。そして次第に仲間たちの輪にも入っていけるようになったという。
その頃から粗相や嘔吐の回数も減り、カリカリを食べられるように。そして体も大きく成長していったのだとか。
くぅちゃんの一目惚れ
散歩に行けるまでに回復してからは、庭の犬小屋で暮らしていたというしのちゃん。くぅちゃんは室内で暮らしていたため、しのちゃんはしばらくその存在に気づいていなかったという。
そんなふたりの出会いは2013年夏。暑い日だったので、風通しのため脱走防止用柵をして玄関を開けっ放しにしていたある日のこと。たまたま廊下で遊んでいたくぅちゃんが、玄関前を横切ったしのちゃんを発見!
「え?誰誰??ねぇ、今の誰なの?」キラキラの瞳で、晴さんに訴えてきたくぅちゃん。気になって気になってしかたなかったくぅちゃんは、なかなか玄関から離れようとしなかったとか。そこで、晴さんはくぅちゃんを抱っこして庭の見える窓のそばへ。すると、くぅちゃんは窓越しでしのちゃんの様子をずっと見つめていたという。その様子はまさに「恋する乙女」のようだったとか。
それからというもの、くぅちゃんの頭のなかは「しの王子」でいっぱいに♡ただ、野良猫時代、過酷な環境のなか過ごしてきたトラウマからか、自ら外を見ることはできなかったという。
普段は庭の犬小屋で過ごしていたけれど、夏や冬の寒暖差の大きい夜は玄関で寝ていたしのちゃん。くぅちゃんは、しのちゃんが玄関にいると、ことあるごとに様子を伺いにいったという。
▲しのちゃん仕様の玄関。
でも、猫が苦手だったしのちゃんは、そんなくぅちゃんの乙女心を知ってか知らずか至ってクールな振る舞い^^それでもくぅちゃんは果敢にアタックし続けたという。
が、ふたりの距離はそう簡単には縮まらず・・・。そんなふたりの距離を一気に縮めるきっかけとなったのが、晴さんの結婚だった。しのちゃんとくぅちゃんは、新居の室内で一緒に暮らすようになったのだ。
「やっとしの王子といつも一緒にいられる♡」乙女心に火がついたくぅちゃんは、来る日も来る日も健気にしのちゃんへアプローチ。しのちゃんの行くところ行くところ、いつもくぅちゃんはついていき、ちょっとずつその距離を縮め・・・
そんなくぅちゃんにしのちゃんもついに根負け。
気づけばいつもどんなときも寄り添う存在に。
くぅちゃんのたゆまぬ努力が実り、めでたくその恋は成就したのだ♡