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谷中の老舗店ねんねこ家~26年目の新たな挑戦

2019-11-01

猫ねこさん

寂しがり屋の孤独好きの宿「ねんねこ宿」

休養宣言から4ヶ月。ねんねこ家は今年の4月から新規体制を迎えた。

平日は予約制のゲストハウス「ねんねこ宿」の営業をスタート。土日祝日だけカフェを再開することに。

外観

宿泊できるお部屋は1階和室一部屋と2階洋室一部屋の2室。現在、Airbnbの公式サイトより予約できる。→Airbnb公式サイト

予約サイトの紹介文にはこう書いてある。

ねんねこ宿を満喫していただけるのは以下の様な方です。

  • 犬派より猫派
  • ハワイよりバリが好き
  • ヤモリや家のお守りだと思える。
  • アートが好き。写真が好き。

☆当家には24才になるタクヤというハンデキャップキャット(痴呆症)がいます。
朝鳴きは小鳥の声、夜鳴きは虫の音と思える方。

引用:Airbnb公式サイト

ゲストハウスメインになっても老猫ファーストは変わらない。”本当にあう人に来てもらいたい”そんな久芳さんの想いが伝わってくる。そしてさらにこう続く。

お部屋の鍵を開けておくと、猫が貴方のお部屋をおとずれ、貴方のお膝に乗るかもしれません。
“お気に為さらず~^_^”
猫も貴方と同じ寂しがりやの孤独好きです。
当宿では、程良い”猫的距離感”のあるおもてなしを心がけて居ます。
また、リピーターのゲストには、
第二の日本の母として、
「いらっしゃいませ。」ではなく
「おかえりなさい!」とお迎えしています。
5匹の猫達と貴方のお越しを心よりお待ちしています。

引用:Airbnb公式サイト

「猫好きな人って寂しがり屋の孤独好きな人が多いんですよ。自分の時間をとても大事になさる方が多いので、私は猫的距離を侵してまでベタベタしないしいろんなことは聞かない。」と久芳さんは言う。

こうした紹介文を載せていることもあってか、海外各地から理解のある愛猫家の方が多く訪れリピーターも増えているのだとか。

ちょび

猫グッズ、カフェときて、なぜ次に民泊をやろうと思ったのか。

ねんねこ家は何度もお伝えしているように、猫のいるお家に上がらせてもらうカフェであって、猫に必ず出会えるカフェではない。でも、時として間違った情報が伝わることもあるのが今の世の中。
とりあえずネットでググるのが当たり前な今、誰かが”猫に出会えるカフェ”なんて書けば、みんなその見知らぬ人の情報を信じて訪れる。そして一匹も会えなかったと嘆く。「猫ちゃんに会わせてくださいって来られる方もいましたね。。。」と久芳さん。

こうして訪れるお客さんへの対応は久芳さんにとってとても悩ましいものだったという。

作品

こうした状況のなか、ロンリープラネットというガイドブックに谷中のヒマラヤ杉が掲載されたのを機に、谷中を訪れる海外からの観光客が爆発的に増えた。ねんねこ家を訪れる客層もずいぶん変わってきたという。

「本当にいろんなお客さんがいらっしゃいますが、海外から来られる方はとても常識があって良いお客さんが多いなと思って。」

入口ではちゃんと靴を脱いで中へ入る、猫が鼻血を出したら拭いてくれる。「え?当たり前じゃ?」って思うかもしれないけれど、その当たり前なことを自然にやってくれるのが意外にも海外からのお客さんだったのだとか。

「私自身、若い頃世界中を旅するバックパッカーでした。中国、インド、ネパール、バリ島、フィリピン、台湾、タイ、イギリス、NY、ロシア、イタリア、、、私がこれまでに旅した場所です。その体験から感じたのは”旅は一人が一番!!”ということ。一人旅であるがゆえ、たくさんの方と出会えました。一期一会の旅、それは今も私の人生の宝物です。世界にもたくさん愛猫家の方はいます。そんな方に私が今まで外国で体験してきたことを逆体験させてあげられたらと思ってゲストハウスを始めたんです。」

鍼灸師として旅の疲れを癒すこともできれば、得意の料理でもてなすこともできる。もちろん谷根千地域の案内も。和敬清寂に包まれた、谷中の深くカオスな時間をゆるりと堪能できる、というのがねんねこ宿の自慢だ。

こちらは常連さんという作家のアンちゃん。

アン参考:ねんねこ家ブログ

「彼女は1ヶ月間くらい泊まっていたんですけど、初日たくやがいきなりお部屋に入っていってモミモミして荷物におしっこしちゃったんですよ。。。下着から服から全部濡れてしまって。当然クレームを覚悟していたんですが、彼女こう言ったんです。『私が猫のいるお家に来たので猫ちゃんがびっくりしちゃったんですよ。私の洋服は洗えば大丈夫なので!』と。」

彼女にとってはなんでもないことだった。彼女はここがよくて、ねんねこ家がよくてわざわざ選んで来たのだから。

動物にはみんな命がある

冷蔵庫に貼られていた1枚の写真。ラマに嬉しそうに話しかけている少女が久芳さんだ。

ラマ

サマースクールで上野動物園に行ったとき、当時やっていた朝の情報番組”小川宏モーニングショー”で放送された一コマだとか。

小さい頃から猫に限らず動物が大好きだったという久芳さん。

「犬も猫も鶏もみんな一緒に寝てました。父が動物好きだったのでそういう血を引いてるのかなって思うんですけど。。。そういうお家で育ったんで、私爬虫類でも何でも触れるし、首に蛇を巻いて寝られるし。

この前、香港の子がゴキブリを初めて見て大騒ぎになっちゃって。本当に大嫌いって言ってたその2日後くらいにカブトムシを見つけて私にこう言ってきたんです。『ミエさん、あの木にとまってるカブトムシすっごいかっこいい!』って。どこが違うの?って思って。ツノつけたら似てるよねって話したけど。。動物にはみんな命がある。生きているものなんだから、綺麗な形をしているから可愛いんじゃないって思うんですけどね。」

どんな動物にも人間と同じように尊い命がある。ずっと昔からその生命を繋いで懸命に生きている。小さい頃から動物とともに過ごしてきた久芳さんの言葉には、そんな生き物すべてを心から愛する気持ちが溢れていた。

ねんねこ家自体が私の作品

こちらは、久芳さんの作品のごくごく一部。なかには小学2年生の時に作ったという人形なども。

作品

「私、元々は人形師になりたかったんですよね。人形劇団にいたこともありましたし、四谷シモンさんに少し教えていただいていたこともあったりして。玉眼(ぎょくがん)と呼ばれる生きてる目が好きなんです。こっちは大人になってから作った人形で、、、」
作品について話す久芳さんの目はキラキラと輝いていて、本当にものづくりが好きな方なんだなというのが言葉の端々から伝わってくる。

内観

人形好きが高じて、26年間作り続けてきた作品。”ねんねこ家自体が私の作品”と久芳さんは話す。

「誰かのためにやってる店ではなくて自分のため。私の作品が好きな人が来てくれる。好きなことを続けていけるのが一番いいんじゃないかな。」

作品

久芳さんはさらっと話すけれど、好きなことをこんなにも長く貫き続けられるのは、決して簡単なことじゃない。なんて理想的な生き方なんだろうと思う。

誰かのためじゃなく自分のため。その言葉は私の胸に強く突き刺さった。

作品

ねんねこ家政婦として

ねんねこ宿と平行して、今年からもう一つ新たな試みもスタートさせた。その名も「ねんねこ家政婦」。

ねんねこ家政婦

参考:ねんねこ家ブログ

久芳さん自身が一人暮らしの高齢者のお家へ伺って、身の回りのお世話やペットのお世話、アドバイスを行うというサービスだ。家事全般のサポートはもちろん、心のサポートも行う。

現在中高年の引きこもりは全国で推計約61万人いるとも言われており、深刻な社会問題ともなっている。

「大人引きこもりの方で猫を飼っている人はとても多いんですね。今動物愛護協会のCMでも”飼えない数を飼っちゃいけない”とありますけど、一人暮らしで身動きできないくらいの数の猫を飼っていらっしゃる方も実際いらっしゃいます。何がこうした状況を引き起こしているかというと、根底にあるのは孤独感です。」

猫といれば寂しくない。猫さえいればいい。気づけば大きく歪んだ愛情に。。。結果として犠牲になってしまう猫を少しでも減らすために、そして孤独な高齢者の暮らしに少しでも活力を与えるために、ねんねこ家は動き出している。

猫のもつ力

作品

ゲストハウス、家政婦、、、ときてさらに今後考えているのは猫セラピー。

猫には不思議な力があると久芳さんは言う。

「私、今までに2回倒れたことがあって、、、2回ともたくやに助けられてるんですよ。呼吸が苦しくなってもうこれは死んでしまうのかな。。。なんて思ってたら、たくやがやってきて胸の上に乗って、まるで悪いものを掻き出すようにガーって何かをずっと食べていたんですよ、必死に。もう死んでもいいから撮らなきゃと思ってその時必死にガラケーで写真を撮ったりしたんですけど、、、猫ってすごいなと思って。」

久芳さんだけじゃない。久芳さんの周りにも同じように猫に助けられた人が何人もいるという。

キャットセラピーという言葉はあるが、まだ一般的なものではない。でも近い将来、こうした猫のもつ不思議な力がクローズアップされる時代が来るのかもしれない。

開いてればラッキーくらいなお店に思っていただければ

外観

時代とともにその姿を少しずつ変化させていくねんねこ家。

でも、久芳さんが猫を大切に想う気持ちはずっと変わらない。

ねんねこ神社

「本当に会いたい人にはなんとしてでも会いにいくし、本当に行きたい店にはなんとしてでも行ける方法を考える。だから、あんまり親切すぎるサービスっていうのもどうなのかなって思うんですよね。。。

今日開いてるかな?開いてればラッキー!みたいな気まぐれで開けるお店が世界に一個くらいあっても猫っぽくていいんじゃないかと思うんです。」

本当にどこまでも媚びない姿勢が潔い。でも、その潔さの中に猫に対する愛情が見え隠れする。それがねんねこ家の魅力であり、長年愛されている理由なんだと思う。

この先どんな進化を遂げていくのか、楽しみでしかたない。

猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。