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【動物の虐待罰則強化へ】6月1日に改正動物愛護法が施行

2020-06-01

猫ねこさん

【動物の虐待罰則強化へ】6月1日に改正動物愛護法が施行

2020年6月1日、動物のみだりな殺傷、遺棄、虐待に関する厳罰化を盛り込んだ改正動物愛護法が施行されました。

殺傷に関する罰則は【2年以内の懲役または200万円以下の罰金】から【5年以下の懲役または500万円以下の罰金】に。また、社会問題としても大きく取りざたされている「多頭飼育崩壊」の増加を食い止めるため、著しく適正を欠いた密度での飼育も虐待と定義されるように。

改正法は昨年6月に成立。「生後56日以下の犬猫の販売禁止」は2021年6月までに、「マイクロチップの装着義務化」は2022年6月までに施行となります。

この記事では、改正動物愛護管理法の主な改正ポイントについてまとめています。

①第一種動物取扱業に関して

【公布より2年以内】環境省令で定める遵守基準を具体的に明示

2019年の改正により、環境省令で定める遵守基準として下記7項目が新たに定められました。

遵守すべき事項として7項目を規定(第21条第2項:新規)

①飼養施設の管理、飼養施設に備える設備の構造及び規模並びに当該設備の管理に関する事項
②動物の飼養又は保管に従事する従業者の員数に関する事項
③動物の飼養又は保管をする環境の管理に関する事項
④動物の疾病等に係る措置に関する事項
⑤動物の展示又は輸送の方法に関する事項
⑥動物を繁殖の用に供することができる回数、繁殖の用に供することができる動物の選定その他の動物の繁殖方法に関する事項
⑦その他動物の愛護及び適正な飼養に関し必要な事項

第21条第3項により、さらにこれらの基準は「できる限り具体的なものでなければならない」と定められ、今後の検討会で検討される予定となっています。

登録拒否事由の追加

第一種動物取扱業の登録に関して、改正前までは登録の取り消し後2年を経過すれば登録可能でしたが、今回の改正により登録拒否期間が【2年→5年】に延長されました。

また、改正前は各関係法令(種の保存法、鳥獣保護法、外来生物法)だけが登録拒否の対象でしたが、今回の改正により【何の罪かを問わず】禁固以上の刑に処せられた人は5年間登録ができなくなりました。

【改正前】

○第3号
・登録の取消処分があった日から2年を経過しない者
○第4号
・登録を取り消された法人の役員であった者で、取消後から2年を経過しない者
○第6号
・各関係法令で罰金以上の刑に処され、その執行後2年を経過しない者

【改正後】

(改正後)第12条第1項
○第3号
・登録の取消処分があった日から5年を経過しない者
○第4号
・登録を取り消された法人の役員であった者で、取消後から5年を経過しない者
○第6号
・各関係法令(対象行為を拡大*)で罰金以上の刑に処され、その執行後5年を経過しない者
*外国為替及び外国貿易法による罰金以上の刑等
○第8号
・法人であって、その役員又は環境省令で定める使用人のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの

【新規拒否事由】

○第12条 第1号
心身の故障によりその業務を適正に行うことができない者として環境省令で定める者
○同条第2号
破産手続開始の決定を受け手復権を得ない者
○同条5の2号
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
○同条 7号
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
○同条 7号の2
第1種動物取扱業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として環境省令で定める者
○同条 9号
・個人であって、その環境省令で定める使用人のうちに第1号から第7号の2までのいずれかに該当する者があるもの

犬猫の販売場所を事業所に限定

販売事業所以外での対面説明を禁じ、【事業所】で、動物の状態を見せながら説明を行い販売を行うよう定められました。

○犬・猫の販売場所を事業所に限定
・第1種動物取扱業者は、動物を購入しようとする者に対し、その事業所において、販売に係る状態を直接見せ、説明を行う。(第21条の4)

勧告及び命令の制度拡大

勧告を受け期限内に従わなかった場合、【公表】することが定められました。また、登録取り消しをした事業者でも【取り消し後2年間】立ち入り検査を行うことが可能となりました。

○勧告に従わない事業者の公表
勧告を受けた者が期限内に従わなかったときは、その旨を公表することができる

○第1種動物取扱業の登録取消後の勧告等
取消後2年間、勧告、命令、報告徴収、立入検査が可能

【公布より2年以内】生後56日(8週齢)未満の犬猫の販売禁止

2012年に改正された動物愛護法では、附則で【出生後49日未満の犬猫の販売禁止】となっていましたが、今回の改正により【49日→56日】と定められました。ただし、天然記念物に指定される日本犬の販売については例外(生後49日)とされています。

【現行(2012年改正)】

●本則●
(幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限)
第二十二条の五 犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は
猫であつて出生後56日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。

●附則●(経過措置)
改正法施行後3年間(2013.9.1~2016.8.31) 45日
2016.9.1~「別に法律で定める日」まで 49日

【改正後】→附則を削除→天然記念物指定犬の特例措置

●原始附則●
(指定犬に係る特例)
2 専ら文化財保護法(昭和25年法律第214号)第109条第1項の規定により天然記念物として指定された犬(以下この項において「指定犬」という。)の繁殖を行う第22条の5に規定する犬猫等販売業者(以下この項において「指定犬繁殖販売業者」という。)が、犬猫等販売業者以外の者に指定犬を販売する場合における当該指定犬繁殖販売業者に対する同条の規定の適用については、同条中「56日」とあるのは、「49日」とする。

指定犬:秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、北海道犬、四国犬

【公布より3年以内】マイクロチップの義務化

ブリーダーやペットショップなどの犬猫販売業者については、マイクロチップの装着、情報登録が【義務】づけられました。また、マイクロチップの装着をしている犬猫を譲り受けた場合には、その情報変更登録も義務化に。

ただし、動物愛護団体やすでに飼っているワンちゃん猫ちゃんへの装着は【努力規定】ということになっています。

犬猫等販売業者へのマイクロチップの装着、情報登録の義務化
②MCを装着した犬猫を譲り受けた者については、変更登録の義務化
犬猫販売業者以外については、装着は努力規定
③狂犬病予防法に基づく犬の登録の特例(ワンストップサービス化)
④都道府県等による所有者への指導・助言(努力義務)
⑤環境大臣による指定登録機関の指定
○MC装着に伴う犬の情報登録時には、市町村長に通知
○装着されたMCは、狂犬病予防法上の鑑札とみなす(第39条の7)
○大臣が指定する者に、登録等の業務を行わせることができる
○環境省は、事業計画の認可、立入検査等を行う
○登録機関が複数ある場合には、相互に連携を図る(第39条の10~26)

マイクロチップは、災害時などもしもの時に身元を速やかに証明できますが、装着したから必ず安心…ということではありません。運よく人間に保護され、マイクロチップの情報を読み取れる動物病院や保健所に連れていってもらえれば、飼い主さんの元に再び帰れますが、そうならない可能性も十分あり得ます。

また、マイクロチップだけ装着していても、「情報を登録していない」「情報が変わったのに変更登録していない」と、愛する猫ちゃんと無事に再会することはできないのです。普段から飼い主さんができることとしては、不意に脱走することのないよう「脱走対策」を十分に行うことが大切です。

愛猫を生涯守りぬくためにも、かかりつけの獣医さんに相談しマイクロチップの装着を検討してみてはいかがでしょうか。

【獣医師監修】猫にマイクロチップは必要?メリット、デメリットをご紹介

②動物の適正飼養に関して

動物の不適正飼養に対して勧告や立ち入り検査可能に

【多数飼育に限らず1頭でも】、不適正飼養が行われている場合は、【勧告や立ち入り検査】を行うことが定められました。

②不適正飼養に係る指導等の拡充(第25条第1項)
・不適正飼養により、生活環境が損なわれていると認めるときは、原因者に対し指導、助言を行うことができる。

原因者全般への指導権限を付与
多頭飼育に限定しない
飼養管理を行う者に限定しない

③不適正飼養者への立入権限の付与(第25条第5項)
・不適正飼養に起因して動物が衰弱する等、虐待のおそれがあると認められる場合

報告徴収、立入検査の権限を規定

犬及び猫の繁殖防止の義務化

繁殖防止のための避妊・去勢手術について、【努力義務→義務化】となりました。

○第37条(要約)
犬又は猫の所有者は、動物がみだりに繁殖し、適正な飼養が困難となるおそれがある場合は、繁殖防止のために生殖を不能にする手術等の措置を講じなければならない。

望まない妊娠を防ぐのはもちろんですが、手術を受けさせることで病気の予防や発情期特有のスプレー行為などの行動を改善することができます。猫を生涯大切に育てていくためにも、猫を飼う時には必ず避妊・去勢手術を行いましょう。

【獣医師監修】猫の避妊・去勢手術について

獣医師による通報義務化

虐待が疑われる、もしくはみだりに殺された可能性のある動物は、【通報する努力→遅滞なく通報義務】が定められました。

①獣医師による虐待の通報の義務化(第41条の2)
○みだりに殺された、傷つけられた、虐待されたと思われる動物を発見した際に、遅滞なく都道府県等に通報することを義務化

動物殺傷・虐待・遺棄に関する罰則の強化

動物をみだりに殺したり傷つけたりした場合の罰則が、【2年以下の懲役又は200万円以下の罰金→5年以下の懲役又は500万円の罰金】に厳罰化されました。

また、動物を遺棄もしくは虐待した場合の罰則にも【1年以下の懲役】が加わりました。

【改正前】

愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者:年以下の懲役又は200万円以下の罰金(第44条第1項)
愛護動物をみだりに虐待した者・愛護動物を遺棄した者:100万円以下の罰金(第44条第2項、3項)

【改正後】

愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者:年以下の懲役又は500万円以下の罰金(第44条第1項)
愛護動物をみだりに虐待した者・愛護動物を遺棄した者:100万円以下の罰金又は1年以下の懲役(第44条第2項、3項)

動物遺棄は犯罪です。猫ねこ部で取材を行っている動物保護団体にも日々多くの動物遺棄に関する相談が寄せられるといいます。厳罰化にともない、尊い動物の命が少しでも救われることを願うばかりです。

保護猫のわ通信Vol.6|動物遺棄を減らすために私たちにできること

動物の虐待に関する定義を具体化

虐待とはどういった行為を指すのか例示が追加されました。意図的に暴行を加える【意図的虐待】、飼育密度が著しく適正を欠いた状態で飼養する【多頭飼育】についても虐待と明記されました。

「愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管する
ことその他の虐待」(法第44条第2項)

③都道府県等に関して

所有者不明の犬及び猫の取り扱い

飼い主のいない犬及び猫の引取りを求められた場合、【周辺の生活環境が損なわれない場合】には引取りを拒否することができることが定められました。

【改正前】

犬猫の引取り(第35条)
都道府県等が、犬又は猫の引取りをその所有者から求められた場合は、引取りを行わなければならない。

「犬及び猫の引取り及び負傷動物等の収容に関する措置」
・保管動物の処分は、所有者への返還、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分とする。

■ただし、動物取扱業者から引取りを求められた場合や引取りを繰り返し求められた場合などは、引取りを拒否することができる。
(引取りを拒否された業者が、万が一その犬猫を遺棄した場合は、法第44条による罰則の対象となる。)
■都道府県等は、引き取った犬又は猫の返還及び譲渡に努める義務。

【改正後】

(所有者不明の犬猫の引取り)(第5条第1項、3項)
・都道府県等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りを求められたときは、これを引き取らなければならない。ただし、周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合その他の引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。

動物を殺す場合の方法に関わる国際的動向の配慮

動物を殺さなければならない場合、その方法について【国際的動向を十分配慮】することが定められました。

【改正前】

動物を殺す場合の方法(第40条)
動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。
2 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し必要な事項を定めることができる。

【改正後】追加

3 前項の必要な事項を定めるに当たつては、第1項の方法についての国際的動向に十分配慮するよう努めなければならない。

関係機関との連携強化、動物愛護担当職員の位置づけ明確化

動物愛護管理担当職員について、都道府県では【必置化】、市町村では【配置するよう努力】することが定められました。

②関係機関の連携の強化(第41条の4)
以下に関する自治体への情報提供、技術的助言等を国の努力義務として追加
(1)動物愛護管理担当職員の設置
(2)畜産、公衆衛生又は福祉に関する業務の担当部局、民間団体との連携強化
(3)地域における犬猫等の動物の適切な管理に関する情報提供、技術的助言

動物愛護管理担当職員の位置づけの明確化(第37条の2)
(1)「動物愛護管理担当職員」と規定
(2)動物愛護管理担当職員の必置化
(3)指定都市及び中核市以外の市町村(特別区を含む。)については、必置ではなく努力規定

引用:環境省動物愛護部会資料「改正動物愛護管理法」の概要

猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。