- 飼い猫との幸せエピソードをお届けする”なないろ猫物語”。今回ご紹介するのは3歳の男の子「ムゥ」。生後10日の頃から大切に育ててきた飼い主さんにお話を伺いましたよぉ。
手の届かない狭い場所でずっと鳴き続けていた
潤んだまあるい瞳がとっても愛らしい彼の名前はムゥ。
3歳の男の子だ。
「上にふたり兄弟がいるんですが、名前はテオとジン。モンスターハンターというゲームのモンスターから名付けました。ムゥという名前もそのゲームから。でも、ムゥがお家にやってきたときはまだ生後10日前後でとても小さく可愛い存在だったので、モンスターではなく、村にいるひつじのムーファーから名付けました。」
そう話すのは飼い主の姫と三獣士(@dear_yoko_)さん。
「おとなしくて、寂しがり屋。本当は甘えん坊なのに甘え下手。遠慮しいで不器用な子です。」
そんなムゥと姫と三獣士さんとの出会いは??
「ある日の夕方、子猫の鳴き声が聞こえてきて。。。最初は母猫が狩りに出かけていて、お腹が空いた子猫が呼んでいるだけ、そう思っていました。でも、夜になっても、夜中になってもずっと鳴いていて。。。朝になっても子猫は鳴き続けていたんです。」
その日の夕方、まだ必死に鳴き続けている子猫の声に気づいた姫と三獣士さん。
「さすがに24時間鳴いているのはおかしいと思って。。。必死で探しました。そしたら斜め向かいの家の隙間にいるのを発見して。」
でも、そこは人が入れないような、手も届かないような狭い場所。どうしよう…と困っていた姫と三獣士さんを助けてくれたのがその家の方だった。
「竹竿の先端に針金で輪っかを作って、子猫を引っ掛け救い出してくれました。」
すぐさま病院へ連れて行き、幸い検査結果に問題はなかった。こうしてムゥとの暮らしが始まったのだ。
危険から守るための母猫の最後の愛情
ムゥがやってきたのはまだ生後10日前後の頃。本来なら母猫の温かい愛情とおっぱいが必要な時期。
姫と三獣士さんは、そんな母猫に代わり、寝る間も惜しんで懸命にムゥを育てた。
「3時間おきのミルクからのスタートだったんですが、3日間くらい下痢が続いたことがあったんです。病院に行ったら、腸内に悪さをする菌がいたらしく消化不良を起こしていたことが分かりました。」
そのとき、姫と三獣士さんは初めて気づいた。
「母猫が人も入れないような場所に子猫を置いたのは、きっと我が子を危険から守るための最後の愛情だったんじゃないかと。」そんな母猫の想いに気づき、涙が止まらなかったという。
「野良の世界は小さな子猫が生き抜いていくにはとても過酷な厳しい環境です。母猫は、本能でこの子はきっと長くは生きられないと悟ったんでしょうね…。」
でも、ムゥは必死で鳴いた。鳴き続けた。
「あのとき、ずっと鳴き続けてくれたからこそ見つけることができました。たくさんミルクを飲んでくれたおかげで、今こうして元気に大きく育ってくれました。」
甘え下手なこの子をいつまでも膝まくらし続けたい
甘えん坊なムゥは、朝起きると必ずベッドへやってきて挨拶してくれるのだとか。
「カリカリを器に出してあげるんですが、器から食べずに『食べさせて~』と鳴いて私を見ます。カリカリがなくなると器と私を交互に見てくるので、ついついおかわりをあげちゃいます(笑)」
甘えん坊なくせに甘え下手。そんなムゥを無理やり抱えて膝まくらするのも姫と三獣士さんの日課。
「無理やりでも逃げたりはしません。むしろ居心地がいいのか、40分くらい膝まくらで寝てくれるんです^^」
そんな姫と三獣士さんが思う「お互いの幸せ」とは??
「病気や怪我をすることなく、お互い元気でいつまでも一緒にいられることです。ムゥはちょっと気を遣いすぎるのか?下に妹ができたときに、過剰グルーミングで2度円形脱毛になったことがあったんです。今のところ、大きな病気はしてませんが、本当に健康が一番だな~と思います。」
もしあの時、母猫があの場所にムゥを置いていなかったら。。。ムゥが鳴き続けていなかったら。。。失われていたかもしれない命。
でも、姫と三獣士さんはその懸命に生きようとする小さな声を聞き逃さなかった。
そして、母猫の最後の愛情を受け取って、しっかりとその命を繋いだのだ。
「これからも甘え下手なこの子を無理やり膝まくらし続けたい。」
今、ムゥには誰よりも深い「お母さん」からの愛情が注がれている。
今日も明日もずっとずっと、ふたり一緒に。その穏やかなしあわせが続いていきますように。
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。