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ペットの防災②”備えの考え方”~アナイス代表・平井潤子さんインタビュー

2019-06-24

猫ねこさん

ペットの防災②”備えの考え方”~アナイス代表・平井潤子さんインタビュー

猫ねこさん
ペットを守るためにこれさえ用意しておけば!っていうのがあれば知りたいですよねぇ。でも飼い主さんによって備えるものはさまざま。。。マニュアルってないんですよぉ。自分のおうちでは何をどう備えればいいのか考えることが大切なんですねぇ。

ペット防災のプロ・アナイス代表の平井潤子さんに訊く「ペットの防災」企画、第二弾は”備え”についてです。

大切な猫を守るためにいったい何を用意すればいいのか?
「これだけ揃えておけば安心!」というものがあればぜひ知りたいですよね。
でも残念ながら、どんな人にも当てはまるマニュアルというのはありません。。。
それぞれのおうちにあわせた備えが必要になってくるんですね。

今回は、そんな災害時の備えについての考え方についてご紹介したいと思います。

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猫は犬よりハードルが高い

アナイス

「犬よりも猫の方が防災のハードルが高い」と平井さんは言う。

「犬の場合はね、事前にしつけしましょうとか呼び寄せトレーニングしましょうとか提案できますけど、猫ってなかなかね…。キャリーバッグ見せたとたんに、病院かと思ってどこかに隠れちゃうみたいな(笑)そんな猫を捕まえてキャリーバッグに入れて避難するのはとにかく大変。キャリーバッグにいれた状態で仮に避難所に行けたとしても、じゃあその中でずっと暮らせるの?っていう問題が出てくるし。犬のように係留したりも難しいし、猫のトイレ用の砂…あんな重いものを持って避難するの?とか…。」

犬の場合は近所にお散歩仲間も作りやすい。災害が起きたとき留守にしていても、お散歩仲間が家を見に行ってくれて、鳴き声聞こえてるから大丈夫なんて声をかけてくれることも。けれど、猫の場合はそういう”共助”が難しい。。。

「ネット上のコミュニティはあっても、近くですぐに助け合えるっていうのがね…。そのへんは自分でもう頑張るしかないのかなと。」

ペット飼育可のマンションでコミュニティがあれば本当にラッキーだけれど、個人の場合はそこがなかなか…。
「助け合える人がいない」特に一人暮らしで日中留守にしている飼い主さんからの相談はとても多いんだそう。

犬に比べて猫は課題が多いからこそ、猫の飼い主さんにはシミュレーションをしっかりしてほしいと平井さんは言う。

アナイス本▲(左)アナイス監修の防災BOOK。HowToがとても分かりやすくまとまっている。(中)アナイス発行の冊子。被災地で収集した情報や事例が多く掲載されている。(右)平井さん監修LEONIMALBO-SAI制作の防災本。かわいいイラストで楽しく防災を学べる。

共助が難しいのであれば、とにかく生き延びてくれる可能性を上げることを考えるのが大切。部屋の中に逃げこめるシェルターみたいなものを用意しておくのもひとつの対策だとか。

「今猫ブームっていうのもありますけど、お一人暮らしの女性から大家族の方までいろんな方がいらっしゃいますよね。そうすると、それぞれのライフスタイルで用意しておくことって違ってくると思うんです。例えば、高齢者の足の不自由な方がいらっしゃるとか、飼い主さん自身が妊娠しててもう臨月みたいな状態だとか、いろんな状況で猫とどう避難するかを考えなきゃいけない。」

「オーダーメイドのプランが必要」平井さんはこう強調する。

「自分のどういう条件がハンデで、どういう条件がメリットなのかっていうのをまず考えていかないと対策って難しいのかなって思いますね。」

  • あらゆる状況をシミュレーションしておく
  • 必要な備えは家によって異なる
  • いざというときに頼りになるペット仲間がいると安心

最優先で備えるべきは命や健康に関わるもの

東日本大震災の時、宮城県沿岸部のある街には、ペット用の物資が一度も届かなかったという。

「それまでは、災害が起きてから救援までの最初の3日間をなんとか自力で生き残れるようにとしていたんですけど、その定説が崩れちゃったんですね…。道路も通れないし、特に福島の原発事故の地域には運輸会社にお願いしても届けてはくれないんですよ。社員の安全のために入れませんと。それだけ被災範囲が広かったんですね。」

これと似たような状況が起こると懸念されているのが、南海トラフや首都直下型地震なのだとか。

「まずモノがただちに手に入ると思わないでほしいし、救援だって動かないと思います。人が用意してあげないとどうにもならないのが猫対策…。自分の飼っている猫のフード類、特に療法食や持病の薬なんかは飼い主さん自身で十二分にストックしておかなければいけませんね。」

フードの備えとして実践している方が多いのが「ローリングストック法」。普段からフードを少し多めに用意しておき、日常のなかで消費しながら買い足していくこの方法なら、フードを無駄にしてしまう心配もない。

  • ペット用の救援物資は届かないことも想定し自分で備える

関連記事:猫のための非常袋を備えよう

写真は猫が迷子になったときに必須

命や健康に関わるキャットフードや薬・療法食は最優先の備え。その次に備えておきたいのがいざというときに役立つものだ。例えば猫の写真。

猫が迷子になったときは時間との戦い。一刻も早く探したくても、猫の写真なしではやはり難しいそう。

「キジネコがいなくなったとか文字で書いてあっても分からないんですね。白い猫なんかもそう。しっぽがかぎになっているとか、黒い毛がちょっと混じってるとか、その特徴がわかる写真がないとって思いますね。」

スマホになら写真があるという方は多いかもしれないが、災害時にプリントができるかと言えばそんな状況ではなく…。例えば、年に1回家の中でワークショップをやって、猫の写真でポスターを作り避難グッズの中に入れておく。そんな備えも必要だとか。

災害時に地震にびっくりして逃げ、さらに余震にびっくりして逃げ、逃げた先に給餌場があればそこに猫がいつくこともあるそう。飼い主さんが思っているよりもずっと遠くまで逃げているケースも。「普段外に出している猫でも、災害時に「すぐ帰ってくるでしょー」っていうのは通用しないと思っておいた方がいいと思いますね。」と平井さんは話す。

  • 迷子の時のため、猫の写真は普段から用意しておく

工夫次第で代用できるものも

猫用グッズなどは工夫次第で代用できるものもある。

「新潟中越の時に、爽健美茶のダンボールを拾ってきてその中に砂を入れて、猫のトイレにして使っていらっしゃる方もいましたね。」と平井さん。

段ボールハウストイレ▲ダンボールで作った猫用トイレ|画像提供アナイス

その他、ペットボトルや牛乳パック、新聞紙などを使えば食器や水皿にもなるのだそう。

  • 代用可能なものは優先的に持ち出す必要はない

取り出しやすい場所に収納

備えたものをどう持ち出すかということも考えておかないといけない。

「例えば熊本地震の時は、家の中がシェイクされてる状態で。あそこの棚にフードが入ってるっていってもそこまでたどり着けない。だったら玄関を開けたすぐそばの棚にストックしとくとか、車庫や車のラゲッジルームに入れておくとか、いろんな工夫ができるんですね。」

「どこに何を収納するかは、家の状態や猫の頭数によっても違うので、やっぱり災害時に起こりうるあらゆる状況を考えておくことが大事」と平井さんは話す。

  • 取り出しやすい場所に収納しておく
  • 猫とモノの運び方を考えておく

地域のことをよく知る

地域によって避難方法が違うことを知っておくのも重要。

例えば東京の港区や中央区などはなるべく在宅避難を勧めているのだそう。「勤務している人たちもいるので、そうするとあっという間に避難所のキャパシティを超えちゃうんです。」

一方地方では「避難所にすごいゆとりがあるから、家が大丈夫でも心配だったら避難所に来てください」とアナウンスされている場所もあるそうで。

地域によってまったく真逆…。こうした地域差をまず知ること、そして自分の地域のことを調べておくことが大切だという。

「自分の住んでる地域の被害想定を知ったうえで、自分はどの段階で動けばいいのかを考えないといけないですね。それと、例えばその地域の避難所がペット同行を認めてるかどうか。認めていても行ってみたらあまりに人が多くて入れないなんて言われたときには、じゃあ次どうしましょうとか…。そういうのは個々に考えておくべきだろうなとは思いますね。」と平井さんは話す。

  • 地域の避難場所・避難方法を調べておく

最後の切り札になるのがマイクロチップ

災害時、猫が隠れて見つからないケースも多い。実際に、阪神淡路大震災の時、1週間猫が見つからなかったケースもあったのだとか。この時、猫は下駄箱に並べている靴のさらに奥側に隠れていたんだそう。

「猫ってお客さんが来たりするとバーッて狭いところに入っちゃったりするじゃないですか。だから、そういう場所をあらかじめいくつか用意しといて、とにかくまずはそこから探していくっていうのも対策のひとつですね。」

ただ、外に脱走してしまった場合は、最後の切り札としてマイクロチップが有効だという。

マイクロチップは動物病院で首の後ろに挿入してもらえる。専用のリーダーをあてると数字が読み取れて、事前に登録してあるデータと照合することで、飼い主の連絡先が分かるという仕組み。

「インターネットが使えないと照合はできませんが、復旧すればただちに情報検索できます。日本獣医師会の持っているデータベースは、東京と関西で保管しているんですね。命綱としてマイクロチップを入れておくといいのかなと思います。」

  • 普段から逃げ込める場所をいくつか作っておく
  • 脱走してしまったときはマイクロチップが有効

関連記事:マイクロチップのメリット・デメリット

人の防災のうえに猫の防災が成り立つ

2016熊本地震益城町避難所迷い猫▲2016熊本地震益城町避難所迷い猫|画像提供アナイス

猫のための防災も必要だが、その前に人のための防災ができていることが大前提。「家の中の対策をきちんとすれば、人にとっても安全ですけど、猫にとっても安全なわけで。人の対策と猫の対策を切り分けて考える必要はないと思うんですね。」

また、災害の種類によっても避難場所は変わってくる。例えば西日本豪雨のような水害のときに、川沿いや海沿いの避難所は当然危険なわけで…。「どの災害ではどこに避難するか、あらかじめ個々に考えておくことが大切ですね。」

同時に、家族がいるのであれば、別々の場所で被災することを想定して、集合場所もしっかり決めておくことが大切だという。

「もっと具体的にいうと、避難所のここに集まろうねっていうことまで決めておいた方がいいですね。東日本大震災のときの避難所の中はものすごい大混乱で…。家から避難したお母さんと学校から避難した子どもが会えたのが翌日だったケースもあるんですね。なので、ここに集まろうねとか、ここに張り紙することにしとこうね、まで決めとかないと家族だって再会できない。」

「家族が全員無事再会し、そこにかわいい家族の一員である猫も一緒にいるにはどうしたらいいか、っていう考え方でいかないと。」と平井さん。

家族を守るための備えが結果として猫の命を救うのなら、できる限りのことはしておきたい。そう思う飼い主さんがほとんどなんじゃないかと思う。

  • 猫のための防災の前に人のための防災を
  • 災害の種類によって避難先も変わる
  • 家族の集合場所については細かく決めておく

NPO法人アナイス

【活動目的】
1.緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物が共に調和して避難生活を送るためのサポートをしていく特定非営利活動法人
2.災害発生時、緊急時に備えての情報と知識の提供活動

【活動内容】
1.ウェブサイトによる情報提供
2.動物と防災に関するパンフレット、マニュアル(印刷物)の作成
3.地域、団体への協力要請と働きかけ
4.獣医療との連携
5.既設のボランティアグループとの連携
6.緊急医療処置・ボランティアリーダーなど、人材育成の為のセミナーや講習会などの実施
7.災害時ボランティアデータバンク

公式サイト:http://www.animal-navi.com/

猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。