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ペットの防災③”避難生活における考え方”~アナイス代表・平井潤子さんインタビュー

2019-06-24

猫ねこさん

ペットの防災③”避難生活における考え方”~アナイス代表・平井潤子さんインタビュー

猫ねこさん
災害が起きたら猫を連れて安全な場所へ逃げるのが基本。でもあくまで人の命を優先することだけは忘れないでくださいねぇ。避難生活では周りへの思いやりをもって。こういうときこそ、飼い主さん同士が自主的に動くことが大切ですよぉ。

ペット防災のプロ・アナイス代表の平井潤子さんに訊く「ペットの防災」企画、最終回は”避難生活”についてです。

災害が起きたら猫を連れて安全な場所に避難するのが基本です。
でも、一緒に逃げたからといって、避難所で一緒に生活できるとは限らないんですね。
動物が苦手な人がいるなかで、どうやって理解を得ながら生活していくのか。。。猫の防災では、このようなことも考えておかなければなりません。

今回は、同行避難についての考え方や避難所生活での注意点、飼い主力と防災力の高め方についてご紹介したいと思います。

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まずは飼い主さん自身の安全を確保して

アナイス

災害が起きたときにまず優先すべきなのは飼い主さん自身の命。

「まずは飼い主さんが安全確保をすること。その上でゆとりがあれば猫をつかまえてキャリーバッグに入れて一緒に避難しましょう。」というのが災害時の心得だそう。

猫が見つからず危険が迫っているときは、同行避難を諦めて人だけ避難することも大切。実際、東日本大震災の時、いったんは無事に避難したのに、猫を探しに家に戻って津波被害に遭われた飼い主さんもいたのだそう…。

「まずは人がどうする、その次猫はどうするって考えられたらいいのかなと思いますね。」

  • 人命が最優先

同行避難=ペットと一緒に安全な場所に避難する避難行動

アナイス

平井さんは、2018年に策定された「人とペットの災害対策ガイドライン」の検討会委員としても活躍されたひとり。

そのガイドラインでも定義されているが、同行避難とは”危険な場所から安全な場所にペットを連れて避難する避難行動”のこと。

ここで気をつけておきたいのが「同行避難=室内同居」ではない点。つまり、避難所が同行避難OKとしていても、ペットを室内に入れられるというわけではないことをしっかり理解しておきたい。

「ある災害の時に、室内には入れられないけれど敷地の外、例えば軒先や車はいいですよっていう避難所があったんです。でも、同行避難を室内同居のことだと捉えていらっしゃった方が、「ここの避難所はペット不可」ってツイートしちゃったんですね。Twitterってどんどん拡散されてしまうので、あそこはペット不可なんだってことで広まってしまって。」

「間違ってたねで済めばいいですけど、避難しないことが人の安全に関わるとしたら…それはもう問題なので。。。」と平井さん。

「同行避難」と「同伴避難」という言葉が混在していて使われていたことも問題のひとつ。でも実は「同伴避難」という言葉は、平成28年4月に発表された内閣府「避難所運営ガイドライン」でも使われている。

内閣府に「同伴避難」という言葉の定義を確認したら、避難所内にペットがいることを表しただけで具体的な居場所を示した言葉ではない、とのこと。

たしかにパッと聞いても分かりにくい…。環境省でも誰が聞いても分かるような言葉の定義が必要だとしている。

  • 同行避難とは危険な場所から安全な場所にペットを連れて避難する避難行動
  • 同行避難=室内同居ではない

ペット対策に力を入れる自治体は増えている

2018岡山巡回診療▲2018西日本豪雨岡山真備町避難所巡回診療|画像提供アナイス

地域の各自治体でもペット対策や同行避難に取り組む動きは広まっているのだそう。

東日本大震災の経験を踏まえて策定された「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」は、2018年に「人とペットの災害対策ガイドライン」に改訂された。

「飼い主自身がまず準備すべきだということが改訂のポイントで。自治体が被災動物をとにかく全部保護しなさいと言ってるんじゃなくて、飼い主さんが準備できるように自治体が普及啓発すべきと。また、この対策をしないことで、飼い主さんが避難しなかったり危険なところに戻ったり、人の安全にかかわるんですよと。」

人対策としてもやらなくてはいけないということで、今複数の自治体が災害時のボランティア育成やマニュアルの変更などを積極的に行っているのだとか。

  • ペット対策に積極的に取り組む自治体は増えている

自治体がやってくれるのが当たり前ではない

「ただ、そこで飼い主さんにちゃんと意識してもらいたいのは、自治体がやってくれるのが当たり前じゃなくて自分がやらなきゃいけないんだよってこと。」と平井さんは強調する。

最初のガイドラインが策定されたとき、法律で決まったのだから自治体が用意してくれるんだよねって誤解してしまう飼い主さんも出てきてしまったのだとか…。

「飼い主さんのなかには、普段からしっかり対策をたてて備蓄も心構えもしている人がたくさんいるんですね。だけどなかには、あたし被災してるからタダで当たり前でしょ、と主張する人もいれば。シェルターに預けっぱなしでそろそろ引き取りを検討しては?と打診すると、もう次飼ってるからその子いらないっていう人もいたり…。」

「普段の生活のなかでもよくいる困った飼い主さん…。そういう方が災害が起こったとたんにあれが足りないこれが足りない、あれくれこれくれって被災者になっちゃうんですね。」

「これは人防災でも言えることだけど…。対策も準備も何もしてないけれど要求が大きい人に支援が手厚くなって、自分でちゃんと頑張っている人に支援が届かないというのはおかしいなと思うんですよ。頑張る飼い主さんを応援する支援にしたい。だから自分の飼ってる子に対する責任と社会に対する責任はしっかり考えてほしいですね。」

  • 自治体がやってくれるのを当たり前とは思わない
  • 自分の飼っている子に対する責任と社会に対する責任を考える

避難所では普段以上に周りに配慮しながら生活を

避難所はとてもストレスフルな状況。飼い主さんは普段以上に周りに配慮して生活をしていくことが大事だという。

「あのネコ科の臭いやキャットフードがあったまってたちのぼる臭い、それからウンチやオシッコの臭い。猫を飼っている人にとっては当たり前の臭いが、飼っていない人には不快だということは、そういう場に行かないと分からないですよね。だからきちんと配慮していかないと。」と平井さん。

「物資が不足する中、支給された水を堂々とペットに分け与えるのか、それとも人目につかないようにそっとあげるのか。ひとりひとりがよく考えて努力していかないと、ペットにも命があるんだから理解してよ、というわけにはいかないですよね。」

  • 避難所では普段以上に周りに配慮する

普段から責任を持って飼うという姿勢が理解につながる

2018岡山真備町避難所▲2018西日本豪雨岡山真備町避難所猫|画像提供アナイス

避難所のなかには動物が苦手な人、アレルギーなどで動物と一緒にいられない人もいる。動物が好きであっても、家族全員亡くなってしまったとか、家も何もかもなくなってしまったとかで打ちひしがれる思いをしている人もたくさん…。

そんななかでペットのことを理解してもらうのはとてもハードルが高い。普段から地域でどんなふうに受け入れられているのかが大きいのだとか。

「新潟でダンボールのトイレを作った方のいた避難所は、最初ペット不可のところで。でも飼い主さんが頑張っているんだから、ここはペット可にしようと理解につながったんですね。

逆に、小型犬を我が物顔で放し飼いにしてた飼い主さんのいた避難所はペット不可になってしまい。飼い主さんのひとりひとりの姿勢で変わってくるんですね。」と平井さん。

”平時から責任を持ってこの子を飼う”、そういう気持ちが周りへの理解につながるのだそう。

  • 普段から責任を持って飼うという姿勢が周りへの理解につながる

飼い主力と防災力を高めるために~ファーストミッションボックス

アナイスでは、まずは自分がどういう気持ちで動物と関わるかというところに戻ってほしいという願いから「飼い主力と防災力」に焦点をあてているという。そのひとつとして、行っているのが「ファーストミッションボックス」

これは、避難所で最初(ファースト)に集まった飼い主さんたちが、優先的にやるべきことが分かるよう、やるべき任務(ミッション)を記したカードをひとつの箱(ボックス)にまとめたもの。

▲ファーストミッションボックスのミニチュア見本。実際は衣装ケース大で作成する。避難所に到着した人は箱を開けて、上から順番にミッションを遂行していく。

来た人は箱を開けて上から順番にミッションを遂行していく。

①連れてきた犬や猫をどこかに置く
②犬猫の場所にはポスター(あらかじめ作成してラミネートしてある)を貼る
③避難所の正門にペット飼育受付の場所を記したポスター(あらかじめ作成してラミネートしてある)を貼る
④南門には中を通らず外をまわってペット飼育受付の場所にきてねっていうポスターを貼る

などなど。

これがあれば普段防災訓練に参加していなくても、誰でも行動できる。行政職員やボランティアの指示がなくても自主運営できるように、と人防災でも活用され始めているのだとか。

「避難所って初対面どころか、こんな人いたのかみたいなことになると思うんですよね。その人たちが一緒になにかやりましょっていっても、何もないと何から始めたらいいの?になっちゃいますから…。こんなコンテンツがあれば、とまどいながらもやらなきゃいけないんだって思うのかなと。マニュアルは必要ですがその場で読めないし、読み始めると一人しか読めないですしね(笑)」

「例えば世田谷だけとっても200ヶ所近い避難所があるのに、世田谷区の担当職員は5.6人です。その5.6人が発災直後に行って指示できるのかって考えたらできるわけがないんですよ。」と平井さん。

避難所運営の方の高齢化と人手不足も深刻な問題だそう。そんな状況でペットの受け入れまで対応してもらうのは難しいのが現状。でもファーストミッションボックスがあれば、運営の方の手を煩わせずに自分たちで何とかできる。

実際に、ファーストミッションボックスを使ってワークショップをやると、参加者からいろんなアイデアが出るのだとか。自分たちで何とかしようという連帯感も生まれるそう。

「ワークショップやってみるとみんな楽しんで取り組まれていますよ。あ、そっか私これ貼ってくる!とか次の人がじゃあ私こっち行くね!とか、いやいや受付が絡んでるから一人残さなきゃダメでしょ、とかやっていくなかで分かってくることがあるんで。」

自分たちの力で復興していくためのコンテンツの開発、社会システムづくり、これが今アナイスで目指しているところだという。

猫の防災の根底にあるのは人の防災。自分や家族を守れなければ猫を守ることもできない。
災害が起きてからじゃなく、普段からどうしたらこの子を守れるのか真剣に考えることが大切なんじゃないかと思う。

NPO法人アナイス

【活動目的】
1.緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物が共に調和して避難生活を送るためのサポートをしていく特定非営利活動法人
2.災害発生時、緊急時に備えての情報と知識の提供活動

【活動内容】
1.ウェブサイトによる情報提供
2.動物と防災に関するパンフレット、マニュアル(印刷物)の作成
3.地域、団体への協力要請と働きかけ
4.獣医療との連携
5.既設のボランティアグループとの連携
6.緊急医療処置・ボランティアリーダーなど、人材育成の為のセミナーや講習会などの実施
7.災害時ボランティアデータバンク

公式サイト:http://www.animal-navi.com/

猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。