- 地震や洪水、、、日本は本当に災害が多い国ですよねぇ。もしも災害が起こったらどうやって猫を守ればいいのか、、、大切な家族といつまでも一緒にいられるように、一緒に考えていきましょう~。
猫の防災と聞くとどんなことを思い浮かべますか?
フードやお水を何日分用意して、キャリーバッグを揃えて…など、どんな防災グッズを揃えよう?って考える人がほとんどなのでは…?
でもいくら家にグッズを用意していても、飼い主さんが外出中に災害が起きたら役立てることができません。
また、猫を連れて避難しようにも、隠れてしまって見つけることさえできないことも。。。
実際に災害に遭ったことがないと、なかなかその状況も想像しづらいものです。
そこで、今回は数々の被災現場を経験してきたペット防災のプロ・アナイス代表の平井潤子さんに、「猫の防災」について詳しくお話を伺ってきました。
今回はその第一弾☆
基本的な防災の考え方について、ご紹介したいと思います。
関連記事:
三宅島噴火災害がきっかけ
2000年6月、三宅島の雄山が噴火。地震、火砕流、噴石、降灰が続き、噴火から3ケ月後には全島民が島を離れることに…。
島の人たちが飼っていた犬や猫は、東京都と東京都獣医師会協力のもと、同行避難を実施。避難当初、東京都動物愛護センターと東京都獣医師会会員病院で保護されていたが、避難は思わぬ長期化へ…。そこで2000年12月に「三宅島噴火災害動物救援本部」が発足、翌2001年3月に、東京都日野市に被災動物保護シェルターとして「三宅島噴火災害動物救援センター」が設置されたのだとか。
その間に救援センターに収容されたのは犬猫あわせて68頭。活動に参加したボランティアは延べ6000人にものぼったそう。
この時ボランティアとして参加していたのが平井潤子さん。現在、NPO法人アナイスの代表として、緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物が調和して避難生活を送れるよう、情報と知識の提供をしている。
動物が大好きで常に犬や猫に囲まれて暮らしていた平井さん。
「ボランティアとしてはパピーウォーカーをしていて。その後、盲導犬協会の繁殖ボランティアを。その時にたまたま預かっていた繁殖犬ラブラドールが、すぐ生き物を拾っちゃう子で…。親からはぐれた子猫をくわえてきちゃうんです。で、どんどん猫が増えていき…(笑)なので、犬も猫もいましたね。」
アナイスを立ち上げるきっかけになったのが、この三宅島噴火災害だったという。
動物の救護活動=人の支援活動になる
もともとは「好きな動物のお世話ができれば」という思いで救援活動に参加した平井さん。被災者の方と接していくなかで「これは動物のためというだけじゃなく、被災者の方の支援になるんだな」と思い始めたのだそう。
避難生活のなかで、被災者の方には思いがけずさまざまな問題が降りかかる。例えば、避難当初暖かく迎え入れてくれた住民でも、避難が長期化してくると、被災者支援として家賃を払わずに住むことを良く思わない人が出てきたり…。避難中、子どもの入学祝いにと自転車を買ったら、家賃も払っていないのに贅沢だと自転車に悪戯をされたり…。
「そんな被災者の方の心の負担を少しでも軽くするお手伝いができて、次のステップにたてるよう…。動物の救護活動をするっていうのは人の支援活動なんだよってことを、もっと社会にも広めていきたいなと思って。こうしたコンセプトに賛同した方たちで始めたのがアナイスなんですね。」と平井さん。
現場を取材して社会に発信することで個々に考えてもらう
▲2016熊本地震益城町避難所|画像提供アナイス
「災害が発生すると動物の救護どうする?って話になると思うんですけど、災害が発生してから救護の話を考えるより、普段から飼い主さんがいろいろ考えとくべきだよねって話になって。平時の飼い主さんの対策についていろいろ伝えていけたらと思ったんですね。
まず被災地に行き現場を徹底的に取材する。そこには良い事例もあれば困った事例も…。それらをまとめて社会に発信することで個々に考えてもらおうというのが、アナイスの方針なのだそう。
「ライフスタイルが違えば備えるものも考えることも変わってきますよね。こうすれば助かりますよというのを提示できないことに、まず私たち自身が気づいたんですね。」
アナイスでは基本的に生体保護はしておらず、情報提供が主な活動。「今はどちらかというと調査・研究団体みたいな感じになってきています。」と平井さんは話す。
一番ハッピーなのは、飼い主さんとこの子がまた一緒に暮らせること
主に活動しているメンバーは10人ほど。獣医師の先生もいればペットシッターさん、トレーナーさんなどさまざま。
「みんな動物が好きなんですけど、この活動のなかでは「何を目的にどういうことをするか」っていうのをちゃんと考えて活動できる人が残っていますね。」
「目の前にいる被災した犬猫を保護していく活動も大切ですが、災害が起こったのちに飼い主さんと動物たちがどんな状況で避難生活を送ることになったのか、どんな課題が生じたか、どんな解決策があったか。事前にどんな対策をしておくことが必要だったか、全体を見据えて調査していくことも大切。」と平井さんは話す。
「平常時に『人と動物の関係ってどうあるべきなの?』『何が動物と飼い主への支援になるの?』って冷静に考えられる人が集まっているかなとは思います。」
災害時の動物救護活動は、動物のためだけでなく、飼育動物を預かることで飼い主を支援するのが目的。
「一番ハッピーなのは、飼い主さんとこの子がまた元の生活に戻れることなんですよね…」
そのサポートを20年近く続けているのがアナイスなのだ。
飼育環境の改善は作業をしている人のためにもなる
平井さんは、三宅島噴火災害動物救援センターで施設のリフォームも行っていたのだそう。
「アナイスには建築士もいたりして、例えばシェルターのここはこうした方がいいよねっていうのをみんなで話し合って工夫したり、逃げ出し防止のための工事をしたり。飼育環境を改善していくと動物だけでなく、作業する人にとっても効率や安全性が上がるんですね。私もメンテナンス班のチーフとして主に大工仕事してました(笑)」
そんな平井さんは、その後も新潟県中越大震災、東日本大震災など数々の現場で活動をしていく。
ロジカルに説明できれば動物の保護活動の社会的評価もあがっていく
平井さんは47歳の時、日本獣医生命科学大学・応用生物科学科に入学し博士過程を修了したのだそう。
「動物が好きで多少の知識はありましたけど、動物の生理機能とかそういうことを科学的に理解していないと、何がいいかとか分からないじゃないですか。基礎生理に関してきちんと勉強すれば、なぜこれがいいかっていう理由をしっかり説明できますよね。そこに科学的な根拠があれば、だからこうしなきゃいけないんだねってことが伝えやすくなりますし。」
博士課程に入ったのは、ちょうど東日本大震災の起こった年だったとか。
「すごい大変でした。福島に行きながら、日野のシェルターに行きつつ、大学で実験し…。まぁよくもったなって(笑)ほんとに無我夢中の1年間でしたね。」
「ただの動物好きのひとりのおばちゃん」でしかなかったと平井さんは笑う。でも、大学に入り直して、動物のことをしっかり学び説明できるようになってからは、広く理解してもらえるようになったと実感することが多いのだとか。
「好きとかかわいいとかそういう思いで動物愛護の活動をするのももちろん大事。でも、なぜこうしなきゃいけないのかロジカルに説明できるようになれば、活動自体の社会的評価もあがっていくと思うんですね。」
もともとは障害児保育の勉強をしていた平井さん。言葉がうまく表現できずコミュニケーションが苦手な子どもをどう理解して受け止めるか…それは動物にも通じるところがあったという。
動物の立場に立った決断も必要
動物は飼い主を選ぶことができない。被災して住む家がなくなったら、動物を保護シェルターに預け、しばらく離れて暮らすことを余儀なくされることもあると思う。
元の生活に戻れるまでには相当な時間がかかる。数か月、1年、2年…。動物たちは飼い主の迎えを待ち続けるけれど、なかには保護シェルターで生涯を終える子もいるとか。
「長く預かっているのが動物にとっていいの?っていうジレンマも持ちつつやってきました。シェルターで天寿を全うするようなことがほんとはいいのかどうか…。」
「どれだけ手厚くケアをしたとしても、その動物にとっては、やっぱりここがおうち、ここが私の家族っていうとこで暮らすのが幸せじゃないかと。」
「災害で家も家族も失ったうえで、愛犬や愛猫までも手放さなくてはならないのは、本当に心が張り裂けそうな悲しみや悔しさであって。けれど、避難生活が長期化したら、どこかで動物たちに新しい生活をスタートさせる決断をするのも”飼い主の愛情と責任”なのではないかと。」一日も早く引き取りたい、けれど引き取れない…分かってはいてもなかなか難しい選択だと思う。
NPO法人アナイス
【活動目的】
1.緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物が共に調和して避難生活を送るためのサポートをしていく特定非営利活動法人
2.災害発生時、緊急時に備えての情報と知識の提供活動
【活動内容】
1.ウェブサイトによる情報提供
2.動物と防災に関するパンフレット、マニュアル(印刷物)の作成
3.地域、団体への協力要請と働きかけ
4.獣医療との連携
5.既設のボランティアグループとの連携
6.緊急医療処置・ボランティアリーダーなど、人材育成の為のセミナーや講習会などの実施
7.災害時ボランティアデータバンク
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。