- 猫がドッグフードを食べ続けると、栄養不足になり健康を損ねるので、猫にはキャットフードをあげることが大切!タウリン不足になると最悪失明する可能性もあるので、ドッグフードを日常的に与えるのは厳禁ですよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
キャットフードとドッグフード、見た目はほとんど同じです。
「キャットフードよりドッグフードの方が安いし、猫にドッグフードをあげるのもアリ?」なんて思う方もいるかもしれません。
でも、猫がドッグフードを食べても本当に健康に問題ないのか気になりますよね。
結論から言うと、つまみ食いしたくらいでは問題ありませんが、食べ続けると栄養不足に陥り体調を崩す恐れがあります。
猫の健康を考えれば「猫のごはんはキャットフードが一番!」ということです。
今回は、猫がドッグフードを食べてはいけない理由を徹底解説!
犬と猫に必要な栄養の違い、犬と猫を一緒に飼っている場合の食事の与え方についても紹介します。
猫と犬に必要な栄養の違い
以下の表は、成猫と成犬のAAFCOの栄養基準の違いを比較したものです。
AAFCOとは「米国飼料検査官協会」のことで、必須栄養素(※)(たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミンなど)の最低基準を定めている機関です。
※必須栄養素・・・食事から摂取しなければいけない栄養素
栄養素 | 単位 | 猫 | 犬 |
●たんぱく質 | % | 26.0以上 | 18.0以上 |
アルギニン | % | 1.04以上 | 0.51以上 |
ヒスチジン | % | 0.31以上 | 0.19以上 |
イソロイシン | % | 0.52以上 | 0.38以上 |
ロイシン | % | 1.24以上 | 0.68以上 |
リジン | % | 0.83以上 | 0.63以上 |
メチオニン+シスチン | % | 0.40以上 | 0.65以上 |
メチオニン | % | 0.20~1.5 | なし |
フェニルアラシン+チロシン | % | 1.53以上 | 0.74以上 |
フェニルアラニン | % | 0.42以上 | なし |
トレオニン | % | 0.73以上 | 0.48以上 |
トリプトファン | % | 0.16~1.7 | 0.16以上 |
バリン | % | 0.62以上 | 0.49以上 |
●脂肪 | % | 9.0以上 | 5.5以上 |
リノール酸 | % | 0.6以上 | 1.1以上 |
アラキドン酸 | % | 0.02以上 | なし |
●ミネラル | |||
カルシウム | % | 0.6以上 | 0.5~1.8 |
リン | % | 0.5以上 | 0.5~1.6 |
カリウム | % | 0.6以上 | 0.6以上 |
ナトリウム | % | 0.2以上 | 0.08以上 |
塩化物 | % | 0.3以上 | 0.12以上 |
マグネシウム | % | 0.04以上 | 0.06以上 |
鉄 | mg/kg | 80以上 | 40以上 |
銅 | mg/kg | 5以上 | 7.3以上 |
マンガン | mg/kg | 7.6以上 | 5.0以上 |
亜鉛 | mg/kg | 75以上 | 80以上 |
ヨウ素 | mg/kg | 0.6~9.0 | 1.0~1.1 |
セレン | mg/kg | 0.3以上 | 0.35~2 |
●ビタミン・その他 | |||
ビタミンA | IU/kg | 3,332~333,300 | 5,000~250,000 |
ビタミンD | IU/kg | 280~30,080 | 500~3,000 |
ビタミンE | IU/kg | 40以上 | 50以上 |
ビタミンK | mg/kg | 0.1以上 | なし |
チアミン(ビタミンB1) | mg/kg | 5.6以上 | 2.25以上 |
リボフラビン(ビタミンB2) | mg/kg | 4.0以上 | 5.2以上 |
パントテン酸(ビタミンB5) | mg/kg | 5.75以上 | 12以上 |
ナイアシン(ビタミンB3) | mg/kg | 60以上 | 13.6以上 |
ビタミンB6 | mg/kg | 4.0以上 | 1.5以上 |
葉酸 | mg/kg | 0.8以上 | 0.216以上 |
ビオチン | mg/kg | 0.07以上 | なし |
ビタミンB12 | mg/kg | 0.02以上 | 0.028以上 |
コリン | mg/kg | 2400以上 | 1360以上 |
タウリン | % | 0.1以上(ドライ) | なし |
% | 0.2以上(ウェット) |
表のように、猫と犬に必要な栄養素には類似点もありますが、以下のような違いもあります。
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 猫は体内で必須栄養素「タウリン」を合成できない
猫には動物性たんぱくが不可欠
犬が肉食に近い「雑食動物」であるのに対し、猫は「完全肉食動物」です。
猫の必須栄養素(アラキドン酸)は動物性食材にしか含まれていないため、肉や魚(動物性たんぱく)を食べなくては生きていくことができません。
また、猫は炭水化物よりもたんぱく質を分解する能力が高く、たんぱく質をエネルギーに変えることができます。たんぱく質は猫の体内で分解されやすく不足しがちなため、健康を保つためにはたんぱく質をしっかりとる必要があります。
猫は体内で必須栄養素「タウリン」を合成できない
タウリンはアミノ酸の一種で、猫の必須栄養素です。
犬は体内でタウリンを合成することができますが、猫は合成することができないため、食事からとる必要があります。
- 猫と犬ではとらなきゃいけない栄養が違うんですねぇ。雑食の犬とは違って、猫はお肉なしには生きられない体なんですよぉ。必須栄養素のタウリンも猫は自分で作れないので、キャットフードにはタウリンがたくさん入っているんですねぇ。
- 見た目は一緒に見えても中に入ってるものは違うんですねっ。猫と犬って似てるようで実はまったく違う動物ですもんね。
猫がドッグフードを食べ続けた場合
猫が犬の餌を食べてしまったからといって、すぐに猫の健康状態が悪くなるということはありませんが、日常的に食べるのはオススメできません。
猫がドッグフードを食べ続けると、以下のようなリスクが高まります。
- たんぱく質不足
- タウリン不足
たんぱく質不足
前述のように、猫と犬では必要な栄養が異なるため、毎日のように食べ続けると栄養過多や栄養不足になります。
特に、猫が健康を維持するにはたんぱく質が不可欠であり、たんぱく質の少ないドッグフードを食べ続けると、たんぱく質不足に陥ります。
たんぱく質不足は、猫の体に以下のような影響を与えます。
- 筋力の衰え・骨が弱くなる
- 被毛・皮膚のトラブル
- 体調を崩しやすい
筋力の衰え・骨が弱くなる
たんぱく質は筋肉や骨、臓器などあらゆる体づくりに使われる栄養素です。不足すると、筋力が衰え、骨がもろくなるなどのリスクが高まります。
被毛・皮膚のトラブル
たんぱく質は被毛や皮膚などの健康にも欠かせません。不足すると、被毛や皮膚のトラブルも起きやすくなります。
体調を崩しやすい
体外からウイルスや細菌が侵入した際に、異物と認識して排除する機能=免疫機能を高めるのもたんぱく質の重要な役割です。不足すると、体調を崩しやすくなります。
タウリン不足
前述のように、猫は体内でタウリンを合成できないため、食事からとる必要があります。そのため、キャットフードにはタウリンが豊富に含まれています。
しかし、犬は体内でタウリンを合成できるため、ドッグフードにはタウリンがほとんど含まれていません。
ドッグフードを食べ続けるとタウリン不足に陥り、以下のようなリスクが高まります。
- 網膜萎縮
- 拡張型心筋症
- 生殖機能への影響
網膜萎縮
網膜とは、眼の奥にある光を感じる細胞が集まっている場所です。
網膜が変性して薄くなった状態を網膜萎縮と言います。初期には視力障害が起こらないため気づきにくいですが、症状が進行すると視力障害をともない、末期には失明する可能性もあります。
拡張型心筋症
心臓の筋肉が薄く伸び収縮力が弱まることから、血液の循環不全を引き起こす病気です。
完治する治療法はなく、一生薬を飲ませ症状にあわせた治療を行う必要があります。
また、心筋症にかかると心臓内に血栓ができやすくなり、血栓が詰まるとショック症状を起こし、死に至る場合もあります。
生殖機能への影響
タウリンが不足すると、繁殖異常や流産・死産、発育不全などを起こす可能性があります。
- 少し食べたくらいでは問題ありませんが、毎日のように食べさせると健康を損ねてしまうんですねぇ。特にタウリン不足になってしまうと最悪失明する可能性もあるので注意が必要ですよぉ。
- キャットフードより淡白なのでそんなに好んで食べる子はいないですけど、毎日となるとやっぱり問題ですよね。失明だなんて怖いですっ!
犬と猫を一緒に飼っている場合の食事の与え方
犬はあればあるだけ食べてしまうため、犬と猫を一緒に飼っていても、猫が犬の餌を食べることはあまりありません。また、キャットフードの方が高カロリーで嗜好性が高いため、淡白な犬の餌を好む猫は少ないようです。
しかし、なかには犬の餌を好んで食べる猫もいます。その場合は、以下のように食事の与え方を工夫してみましょう。
- 食事時間をずらす
- 食事の場所を別々にする
食事時間をずらす
食事時間が一緒の場合、犬の餌を猫が横取りすることもあるため、時間をずらしてあげると良いでしょう。
食事の場所を別々にする
犬と猫で食事の場所を分ければ、餌の横取りを防ぐことができます。
よくある質問
ここでは、犬と猫の食事に関するよくある質問をまとめています。
日常的に食べ続けているわけではなくても、胃腸の弱い猫の場合、下痢や嘔吐の症状が出ることもあります。
犬にキャットフードを与え続けると以下のようなリスクが高まります。そのため、犬にはドッグフードを与えましょう。
- 栄養過多・栄養不足
- 肥満
- 塩分過多
- ドッグフードを食べなくなる
関連記事:【獣医師監修】犬にキャットフードを食べさせてはいけない4つの理由
まとめ
- 犬と猫では必要な栄養素が違う
- 猫の必須栄養素(アラキドン酸)は動物性食材にしか含まれていない
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 猫はタウリンを合成できないため食事からとる必要がある
- 猫がドッグフードを食べ続けるとたんぱく質不足になり、健康な体を維持できなくなる恐れがある
- 猫がドッグフードを食べ続けるとタウリン不足になり、網膜や心臓、生殖機能に異常をきたす恐れがある
- 犬がキャットフードを食べると栄養過多・栄養不足、肥満、塩分過多、ドッグフードを食べなくなる恐れがある
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。