- 今回ご紹介するのは谷中にあるねんねこ家さん。現在平日はゲストハウス、土日祝は古民家カフェとして営業中。店主久芳さんにお店のこだわりや想いを聞いてきましたよぉ。
今年で26年目を迎える谷中の老舗店、ねんねこ家。
突然の閉店宣言から1年。ねんねこ家は今、新たな挑戦に向けて走り出しています。
ねんねこ家のこれまで、そしてこれから向かう未来について店主久芳さんにたっぷりとお話を伺いました!
美大を卒業後、編集者時代を経て鍼灸治療院を開業。1993年、鍼灸治療院の一角にねんねこ家をオープン。メディアにも数多く取り上げられる有名店に。
2018年11月、飼い猫の高齢化に伴い無期限休養宣言。2019年4月より、平日予約制のゲストハウス、土日祝カフェの営業という新体制をスタートさせた。
公式twitter→ねんねこ家
SPACEMARKET→場所貸し「ねんねこ家」
Airbnb→ねんねこ宿
変わりつつあるねんねこ家
東京の下町、谷中。根津駅からほど近い場所にある三浦坂。
この急な坂道の中腹に、圧倒的な存在感を放つ一軒のお店がある。その名も「ねんねこ家」。
軒先にはさまざまな猫の置物、看板、仏像、、、
▲このかわいさは反則級♡個人的ツボはおしるこにinしてる猫さんのけだるい感^^
そして本物の猫さんまで。
まだ中に入っていないのに、怒涛のごとく押し寄せてくる猫さまがた^^お店の外から店内の様子を伺うように思わず足をとめる観光客も多い。いや、逆に素通りする方が難しいはず。。。?(笑)
「ここは猫と遊べる猫カフェなの?猫がいるってことは看板猫のいるお店?・・・」
ついつい見慣れた”猫カフェ”や”看板猫のいるお店”にあてはめたくなってしまう人もいるかもしれないけれど、ねんねこ家はいわゆる猫カフェではない。猫店長が必ず接客に来てくれるお店でもない。
運が良ければねんねこ家に住んでいる猫に会える、あくまで”猫がいるお家に上がらせてもらうカフェ”カフェなのだ。
▲食べるのがもったいないにゃんカレーセット1,600円(税抜)猫の手白玉付(=^・^=)
ねんねこ家では、店主久芳さんの飼い猫5匹が暮らしている。
食事中に猫がやってきて小一時間至福の膝枕タイムを楽しめるときもあれば、待てど暮らせど猫がやってこないときも。。。
でも、それが猫の日常。猫のいるお家、猫のいる生活ってそういうものだ。
▲軒先で遭遇のちょびさん
そんなねんねこ家だが、現在カフェとして営業をしているのは土日祝日のみ。平日は予約制のゲストハウスとして営業を行っている。
変わりつつあるねんねこ家の姿とはいったい。。。??
鍼灸治療院の一角で
今から26年前。まだ世の中に猫カフェというものもなかった頃、ねんねこ家は誕生した。とはいえ最初からカフェだったわけではない。実はここ、昔は鍼灸治療院だったのだとか。
元々は編集者だったという久芳さん。グルメライター時代はかなりの数のカレー屋を巡ったという。ある時占い本の担当になったのを機に、以前から興味のあったスピリチュアル系にますます惹かれるように。
「スピリチュアルというとやっぱり東洋医学にたどり着くんですよね。自分が体を壊したこともあったんですが、、、鍼灸師になるために学校へ2年通い、卒業後は六本木の先生のところで修行して、それから一気に開業しました。」
鍼灸治療院には半畳ほどのサンルームがあった。元々ものづくりが好きだった久芳さんは、そこへ自分で作った作品を飾るように。それがねんねこ家誕生のきっかけとなった。
「最初は根津でネズミということから、ネズミの置物やポーチなんかを作っていたんです。で、次にネズミから連想するものと言えば猫。。。ということで猫のものも作るように。ここ、墓参の方がよく通る道だったので、目にとめてくれた方がかわいいね~って声をかけてくれて。そんなやり取りをしていくうちに、猫の置物を販売するようになったんです。」
これがその当時の写真だそう。
▲ねんねこ家のルーツがまさかの”ネズミ”だったのにはビックリ^^ 参考:ねんねこ家ブログ
こうしてねんねこ家は誕生した。
谷根千ブーム~そして空前の猫ブーム
元々美大卒で手先が器用だった久芳さん。谷根千ブームの盛り上がりとともに、久芳さんの作る置物はたちまち話題に。。。
「当時、猫の写真を持ってきてもらって、その子に似た猫を作るということをしていたんです。ほとんどが、もう亡くなってしまった猫ちゃんの飼い主さんからのオーダーでした。」
今でこそこうした製作を行う作家さんは多いが、当時はまだ久芳さん以外にいなかったという。
もう会えなくなってしまった猫が招き猫になって帰ってくるなんて、愛猫家さんにとっては思ってもみない嬉しいことだっただろう。テレビで紹介されたこともあり、その企画は一気に大ブレイク。2年くらい先までの予約が埋まってしまうほどの人気ぶりだったとか。
▲写真左上の茶色の招き猫が当時の型。
そしてそうこうしているうちに世の中は空前の猫ブームに突入。
犬に比べて猫は鳴き声も小さく、頻繁な散歩の必要もない。その飼いやすさに注目が集まり、徐々に猫の存在感は増していった。さらには世間の少子化もあいまって、”猫も家族の一員”という考え方がメジャーに。
そして猫人気にさらに拍車をかけたのがSNSの普及だ。タイムラインに流れてくる猫たちのなんとも愛らしい写真や動画を見て、猫の魅力にはまり飼い始めたという人も多い。
こうしたブームもあり、お寺や墓地が多く猫が集まりやすい街として知られていた谷中には、猫を求めてたくさんの猫好きの方が訪れるように。。。数多くのメディアでも”谷中猫に出会う旅”などの特集が組まれた。
「子猫が生まれないわけがないくらいの状況でしたね、以前は。避妊・去勢されていない猫たちが次々と出産を繰り返していて。。。」
ねんねこ家は、そんな猫ブームのなか多くのメディアでも取り上げられ、連日観光客で賑わう有名店となっていった。そして猫グッズの店からカフェへとその営業スタイルも変化していった。
ねんねこ家の猫たちの高齢化
今、谷中周辺を歩いていても猫の姿はほとんどない。というのも、猫の数が増え続けたことで糞害や臭いなどの問題が出てきたのだ。こうした野良猫問題を少しでも減らすため、ボランティアの方が避妊・去勢手術、殺処分ゼロ・野良猫ゼロにする活動を行い、その結果として猫の数が減ってきているのだとか。
そんな時代の流れとともに、谷中でかつて賑わいを見せていたお店も次々と姿を消していったという。
久芳さん自身もまた、お店のあり方について思い悩んでいた。
こちらは最高齢のタクヤ。
痴呆が進み朝鳴き・夜鳴きを繰り返していたが、ある時お客さんの膝の上で粗相をしてしまったという。。。そのできごとを機に久芳さんは25年間続けてきたねんねこ家を閉める決意をした。
これが当時久芳さんがお客さんに向けて作ったお知らせだ。
あくまでもねんねこ家は猫のいる生活空間。お客さんに楽しんでもらうために猫がいるわけじゃない。猫にとってはそこが自分のお家だからいるだけなのだ。
店を閉めるまではそれでもいいと理解してもらえるお客さんにだけ来てもらえたら、というのが久芳さんの想いだった。
こうして2018年11月無期限の休養期間に入った。ねんねこ宿として生まれ変わるという言葉を残して・・・