- 今回は、わたしたち猫の絵を描き続ける日本画家・伊藤清子先生のご紹介ですよぉ。わたしやクロベエくんもぜひ描いていただきたいですねぇ。
猫を描く作家さんといってもそのジャンルはいろいろ。
今回ご紹介するのは猫ばかりを描き続けている日本画家の伊藤清子先生です。
愛猫ハクちゃんへの想いや猫まみれライフについてたっぷりとお話を伺いました。
猫を描き続ける日本画家・伊藤清子先生
柔らかくとっても幸せそうな猫さまの表情。
(写真提供:伊藤清子先生)
このとっても可愛らしい猫たちは、日本画家・伊藤清子(さやこ)先生の作品。
今から7年ほど前に、猫の絵の展覧会の出品依頼を受けたことがきっかけで、猫の絵を描き始めたという。
ご自身も3年ほど前から一匹の猫を迎えて一緒に暮らしている。そんな伊藤先生に猫の絵について、また愛猫ハクちゃんへの想いについて伺った。
祖母の家にいたキジ白猫シャミ
▲猫カフェミーシスにて。猫へ向ける視線がとても優しい伊藤先生。
伊藤先生と猫との最初の出会い。
それはおばあさまの家で飼っていたキジ白猫「シャミ」だった。
「家では犬や鳥を飼っていたということもあって、猫は飼えなかったんです。祖母の家に遊びに行くたびに触ってましたね。」
伊藤先生いわく、シャミはとても”ねこらしい”猫だったそうで…。
「絶対噛むんです。気分良くゴロゴロ言ってても、気分が高まってくるとガブッて^^;」
気分屋さんのシャミ。でも伊藤先生はそんなシャミのことが大好きだった。
猫カフェミーシス
伊藤先生が猫と暮らすきっかけを作ってくれたのが、横浜・関内にある「猫カフェミーシス」だった。
「画商さんから猫の絵を描いてほしいという依頼があって、取材できる猫カフェを探していたんです。いろいろ検索して”保護猫カフェ”というのがあることを知って。」
そんなとき、伊藤先生の目にとまったのが猫カフェミーシスのブログだったという。
「猫それぞれの個性を尊重していて、すごくいいなぁ、行ってみたいなぁって思って。」
そこでさっそくカフェを訪れると・・・そこにはそれぞれ思い思いに過ごす猫たちの姿が。「ミーシスの猫たちを描いてもいいですか?」と尋ねると快く引き受けてもらえたそう。
すっかりミーシスの虜になってしまった伊藤先生は、取材後も足繁く通うように。
「その頃から猫の絵を徐々に描くようになっていたんですが、取材がてらといいつつ、もはやどっちが主か分からないくらい楽しんでました^^」
ハクちゃんとの出会い
(写真提供:伊藤清子先生)
そんなミーシスで、伊藤先生が出会ったのが愛猫のハクちゃん。
「当時家で飼っていた犬が死んでしまったあとということもあって、猫と暮らすという考えは全然ありませんでした。でも、通っているうちに、スタッフの方がよかったら里親さん考えてみませんか?みたいな感じで言っていただいて。」
だんだんと、猫との生活を思い描くようになった伊藤先生。色々な猫雑誌もよく読んでいたとか。
「懸賞がついていたのでそれとなく応募したら、なんと猫トイレと猫砂が当たってしまって。これはもう!(飼うしかない)と^^」
こうしていよいよ現実的になってきた猫との暮らし。いつでも猫を迎えられるように、家の中も整理して準備万全に。
そして、どの猫を迎えようかとミーシスで見ていたときに、伊藤先生の心をぐっと掴んだのがハクちゃんだった。
「窓際にある猫ソファがとてもお気に入りだったらしく、よく座って寝てましたね。ソファに先客がいるとずーっと順番待ちしているような子でした。他の猫に追いかけられるようなことはあっても、決して自分から追いかけるようなことはなく。」
そんな穏やかさが気に入って、家族として迎え入れることを決めたという。
家に来て3日目・・・抑えきれず
(写真提供:伊藤清子先生)
迎えた当時すでに2歳だったハクちゃん。
最初のうちはとても警戒していたそう。
「そこまで親しくしていた猫というわけではなかったので、もう知らないもの同士という感じで。お家に運ぶ時もずっと鳴いていてガタガタ震えていて、おもらしも…。知らない人が知らないところに連れて行く、みたいな感じだったんでしょうね。」
家についてからもずっと家具の裏に入り込んで出てこなかったとか。
「でも、食いしん坊だったのか(笑?)、ちゅ~るを手につけると躊躇せずにペロペロと舐めてきて。夜中もご飯を出しておくと食べてくれました。」
家に来て3日間はそんな感じが続いたそう…。
でも、3日目の朝方のこと。
「カーテンの裏に隠れて外を見ていたので、ハクちゃん~って声をかけたんです。そしたら『にゃーーーーん』って鳴いてきてくれて。本当は甘えたかったのにきっとずっと我慢していたんでしょうね。どうやら限界がきたらしいです^^」
ハクちゃんをベッドへ連れていくと満足気にふみふみをしてくれて、顔をすりつけてきたそう。
突如として崩れ去ったハクちゃんの壁。それからはすっかり家にも慣れて、家族じゅうに甘えるようになったとか。
予想外に犬っぽい
小学生の頃からずっと犬と暮らしてきた伊藤先生にとって、念願の猫ライフは??
「祖母の家にいたシャミちゃんとはまったく真逆の猫で。シャミはよくガブガブ噛んでましたけど、ハクちゃんは全然噛まない。呼ぶと返事をしたりとか、コミュニケーションがちょっと犬的な感じ。私が帰宅するとにゃーーーんって階段から降りてきて、熱烈なお出迎えをしてくれます。昔飼っていた犬は私が近くに行くと駆け寄ってきたんですけど、それにちょっと似ている感じです。予想外の反応にすごくびっくりしちゃいました!」
▲ぼく、犬よね?そうよね?ねー教えて^^ (写真提供:伊藤清子先生)
元々は犬派だったという伊藤先生のお父様も、今や犬っぽさ全開のハクちゃんにメロメロだとか。
「名前を呼べば来てくれることにものすごくびっくりしたみたいで。父親は座面が広くて座りやすいからか、よく抱っこされてますね。」
べったり甘えるのは伊藤先生。お父様はどちらかというと遊び相手。どうやらハクちゃんのなかで家族の役割分担があるらしい。ではお母様はというと。。。?
「母親にはわりとそっけない^^甘えるときは甘えるんですけどね。たぶん”ドライささみをくれる人”って思ってますね(笑)ちょっと寂しがってます^^;」
私が飼いならされました^^
「朝方4時頃にお腹空いた~って起こされるんです…。最初はちょっと慣れなかったんですけど、徐々に私が飼いならされて(笑)、今ではもう習慣になってますね。寝ててもいいことはないので^^、すぐに起きてごはんをあげに行きます。」
走り回ったり、音を立てたり、コンコンコンと叩いたり。。。あの手この手でアピールするハクちゃん。
「それでも起きないときは、絵触っちゃうよ~みたいな感じでちょっと手を伸ばしたことが一度だけありました。最終手段ですね。たぶん分かっててやってる。でも結局は触らなかったんですけどね。」
▲ぼくの肉球サインどう?いい?やっていい? (写真提供:伊藤清子先生)
小さな頃から鉱石が好きだった
そんな猫愛溢れる伊藤先生が画家になろうと思われたきっかけについても伺った。
「中学生くらいから絵を描きたいなと思うようになって。文章を書くのも好きで、最初は小説家になりたいとも思っていたんですけど、いざひとつの作品を仕上げるとなると、小説の場合ものすごい量を書かないといけないな…と。それが自分に向いていないかなと思ったんですね。その点、絵は瞬時にイメージがわきますし、そのスピード感が自分には合っているんじゃないかなと思って。」
▲可愛く描けたかな?を大切に。猫カフェや家で実際に触って、観察して。猫の特徴を事細かに表現。(写真提供:伊藤清子先生)
では、いろんなジャンルがあるなかで、なぜ日本画を選んだのだろうか?
「美大受験のための予備校を探しているときに色々と情報収集をしていて…。日本画の絵具はアズライト(群青)やマラカイト(松葉緑青)等の石からできているんですね。絵具屋さんでずらっと瓶に入って並んでいるのを見て、『わ~!なんて綺麗なんだろう!』って思って。子どもの頃から鉱石を集めたりするのが好きだったのも、日本画に惹かれた理由のひとつかもしれません。」
こちらは、4年ほど前に伊藤先生が描いた猫「エディル」。もう亡くなってしまったそうだが、ミーシスで人気のスタッフ猫だったという。
「絵自体を1枚だけ描いていることはなくて、いつも4.5枚を並行して描いています。一回塗ったら自然乾燥が基本。乾き待ちの時間が結構あるんですが、これくらいのサイズなら1~2週間で仕上げることができます。」
今にもにゃーーーって声が聞こえてきそうな伊藤先生の優しい絵。もう会うことはできなくても、すぐそばで感じられる。
気軽に立ち寄って「猫だ~♡」と楽しんでもらえたら
そんな伊藤先生の猫の絵まみれな個展が今月23日より開かれる。
開催日時 | 2019年9月23日(月)~28日(土)11:00~19:00 ※最終日17:00まで ※金曜日のみ21:00まで |
開催場所 | アートスペース羅針盤・東京/京橋 |
出品内容 | 猫の絵:25点くらい(日本画17点と色鉛筆・鉛筆のドローイング)(日本画30号S~0号以下) |
「今回は猫の絵オンリーで、猫の顔をアップで描いた大きな絵や全身の姿を描いたもの等、さまざまな猫の絵を描きました。猫との日々の暮らしやミーシスに通って感じたことをぎゅっと詰め込んだ展覧会になっています。日本画特有の写真では伝わらない、キラキラとした絵具の感じや凸凹した画面の表情をぜひ体感してください。」
▲販売予定のポストカードセット(税込み500円、3枚入り)
以前は海の生物など他のモチーフを描いていたという伊藤先生。今とはまったく違う作風だったという。
「当時色々と自分の作品で悩むところもあって…。ガラッと作風を変えたんです。今の作風に変えてからは、もちろん以前来ていただいていた方も引き続きいらっしゃってくれていますが、その方々に加えて、普段絵を見ない、買ったことないという方がいらっしゃるようになりました。見てくださる層が変わりましたね。」
個展開催中、伊藤先生は毎日会場にいらっしゃるそう。個展に来られるお客様は猫好きの割合がかなり高く、猫の話で盛り上がることも多々あるとか。
「以前はもしかしたら何か難しいことを言わなきゃいけないみたいなプレッシャーがどこかにあって、それが絵から滲み出ていたのかもしれません、若かったのもありますし…。でも今は、私のことは気にせず『わ~猫だぁ!』って絵を見てくださるので清々しい。猫の絵を描いててよかったなと思います。気軽に立ち寄って「猫だぁ!」と楽しんでいただければ嬉しいです。」
大好きでなくてはならない存在
こちらはミーシス10周年記念で伊藤先生が描いた作品。人気者しーちゃんが大好きな店長・能勢さんの肩に。能勢さんにとって大切な宝物だ。
「店長の能勢さんとはたまに食事に行かせていただいたりしてます。何かあったらすぐ相談できるので心強いですね。ここに来ると、ミーシスから猫を引き取った方に会うことが多いので、いろいろ聞いたりできるのもよかったなと。お互いのトイレの状況を見せ合ったりして、うちのはちょっと量がすごいなとか(笑)」
伊藤先生にとって、ミーシスは”親戚のお家”のような、どこかほっとできる場所なんだそう。
▲最近の流行りは伊藤先生の膝の上に座って手を伸ばしてのふみふみ。抱っこ&ふみふみの同時技がお気に入り♡
最後に、、、伊藤先生にとっての猫とは??
「ハクちゃんはパートナーで、猫は大好きでなくてはならない存在です。猫の世界が人間の世界と同じかそれ以上に私の生活の大半を占めているので。仕事でも猫を描いて、疲れたら猫の動画を見て、snsもほぼ猫…!家でも難しい顔してスマホ見てて何見てるの?って言われるんですけど、だいたい猫見てるっていう(笑)食い入るように見てます^^」
伊藤先生は、アートスクール横浜で講師としても活躍されている。
「生徒さんの中でも結構猫を描いている方がいらっしゃるんですね。生徒さんとは”うちの猫ばなし”で盛り上がることも。猫をどう描いたらいいのかという相談もよく受けますね。」
仕事も余暇もまさに猫づくし。
猫を描いて、猫を触って、猫仲間と話して…猫と関わる時間の全てが伊藤先生に幸せを運んでいる。
日々発見する猫の新たな魅力。その喜びが猫を描き続ける原動力となっているのだろう。
場所提供:猫カフェミーシス
伊藤清子
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- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。