- われわれ猫の本だらけの本屋さん「キャッツミャウブックス」。店長と店員4匹の猫たちが看板猫として本屋を手助けしてるお店なんですねぇ。いったいどんなお店なのかご紹介しますよぉ。
猫好きなら一度は行ってみたい猫本だらけの本屋さん。
今回ご紹介するのは、そんな猫本専門店「キャッツミャウブックス」。猫本が置いてあるだけでなく、お店には店長と4匹の猫店員たちが^^
でも、それだけじゃなく、本屋が猫を助け、猫が本屋を助けるという今までに聞いたこともない本屋さんなのです。
いったいどんなお店なのか、さっそくご紹介していきます。
「本屋が猫を助け、猫が本屋を助ける」猫本屋
三軒茶屋から東急世田谷線に乗りわずか1分。
ホームに降り立ったとたん、一気に「実家に帰ってきました感」に駆られる西太子堂駅。まさか世田谷にこんなのどかな駅があるなんて。
駅前にはコンビニもなければマックもスタバもない。でも、田舎育ちの私にはこのローカルさ加減がやけに落ち着いたり。
今回ご紹介する「Cat’s Meow Books(キャッツミャウブックス)」は、そんな西太子堂駅から歩いてすぐの場所にある。
まわりはどこを見渡しても家、家、家…。住宅街にあまりに馴染みすぎていて、危うく通り過ぎてしまうところだった。(正確にはやや通過^^)
▲かわいい猫のイラストが描かれた看板が目印
猫がいる本屋さん、猫本だけが置いてある本屋さん、ともちょっと違う。
キャッツミャウブックスのコンセプトは「本屋が猫を助け、猫が本屋を助ける」お店。
店長の”三郎”をはじめ、接客担当は4匹の猫たち。
いったいどんな本屋なのか期待を膨らませ、ドアを開けた。
猫と本
今回お話を伺ったのはキャッツミャウブックス店主(ニンゲン)の安村さん。
もともと田舎の実家で猫を飼っていたという安村さん。けれど、上京したのちその子は亡くなってしまったそうで…。
「命を預かることは死に目にも遭うこと」それが怖くてその後は自ら猫を飼うことはなかったのだとか。でも、猫のことはずっと好きだったという。
そんな安村さんが本を好きになったのは、本好きのお母さまの影響から。小さな頃から家に本があることが当たり前の空間で育ってきたのだそう。
▲店員猫一番のやんちゃ姫、読太(よんた)※一瞬名前に戸惑うけど女子です
「猫が好き、本が好き」それは安村さんの奥様も同じで、本棚の一角には猫が出てくる本ばかりが自然に並んでいたそう。
「本屋をやらなくても、いつかこの本棚いっぱいに世の中にある猫の本を集められたら。」毎日本棚を眺めながら、安村さんはそんなふうに思っていたとか。
そんな夫婦にある日1匹の猫との出逢いが訪れる…。
三郎くんとの出逢い
当時安村さん夫妻が住んでいた西荻窪のアパートには、共用の中庭があり、そこには毎シーズン猫が子どもを産みにきていたのだとか。
そんなある日、母猫が3匹の子を出産。けれど、産んでそれほどたたない頃、”間男”のようなオス猫がやってきて、お母さん猫にちょっかいを出し、お母さん猫はまさかの育児放棄…。
残された3匹の子猫たちは、まだ目も開いてないような状態だったという。おっぱいが欲しくて鳴き叫ぶ子猫たち…。その鳴き声は安村さんの部屋にも届いていたけれど、どうすることもできなかった。なぜなら、そのアパートが「ペット不可」だったから。
鳴き声は日に日に小さくなり、3匹の声が2匹に、そして1匹に…。「このままでは残りの1匹も死んでしまう…」そう思った安村さんは、思い切ってその子を家に迎え入れることに。
引き取るということは一生飼い続けること、死に目にも遭うということ。それも覚悟の上で迎え入れた。
「最初に亡くなってしまった子たちは一郎と二郎。この子は三郎にしよう。」安村さんがどんなに名前のアイデアを出しても、奥様は”三郎”という名前にこだわったとか。
「もっと助けられる猫がいただろうな。」そんな想いをずっと持ち続けてきた安村さん。いつかは他の猫を助けるお手伝いができたら…それが「本屋が猫を助け、猫が本屋を助ける」というお店のコンセプトにつながっていった。
キャッツミャウブックスの「店長」である三郎。普段は2階の自宅にいて、店内には顔を見せないけれど、三郎の存在があったからこそキャッツミャウブックスは生まれたのだ。
▲店内の一角にある三郎スペース。永遠の店長だからと、先に形見を作ってしまったとか。羊毛フェルトの先生にオーダーメイドで作ってもらったそう。
これからの本屋講座
▲この思い思いな距離感が心地いい。
「老後は何か自営業をやりたい、やるなら本屋だなぁ。どうせやるなら猫の本屋にしたい。」安村さんのなかには漠然とした思いがあった。
そんな思いが一気に現実のものとなったのが、2016年3月に安村さんが受講した「これからの本屋講座」。
この講座の講師をしていたのは、下北沢の「本屋B&B」の共同運営者・内沼晋太郎さん。業界では名の通った方だそう。普段なかなか知ることができない本の流通の仕組みを一から解説してもらい、その後自分のやってみたい本屋のプランを考え、それを実現するために必要なものを課題として出され…と講座が進むたびにどんどん課題が進化していったそう。
「猫がいてビールが飲める本屋」をやりたいとは考えていたけれど、当初はまだコンセプトも固まっていなかったとか。ただ、本の売上の何パーセントかを保護猫活動に寄付することだけは決めていたそう。
▲ときどき猫だか分からなくなるときこのフォルム(笑)
「そのプランを内沼さんに話したら、『それはまだ世の中にないからいけると思う』と言ってくださって。自分のアイデアが業界のある意味大物にどう見てもらえるのか試す感じで行ったんですけど、思いの外いい評価を頂いて背中を押されたんです。」と安村さん。
さらに、猫と本屋が助け合って売上から保護猫活動に寄付するというコンセプトは絶対に共感を得られるから、クラウドファンディングを使って開業資金の一部を集めてみたら?というアドバイスももらったそう。
講座を終えたときにはすでに本気で考え始めていた安村さん。それからわずか1年半後にお店をオープンにしてしまったというから、人との出逢いは本当に大事だと思う。
”売上の一部を保護猫活動に寄付”発想のきっかけは?
”売上の一部を保護猫活動に寄付する”その斬新なアイデアはいったいどこからやってきたのだろう?
そのきっかけは、等々力に保護犬・保護猫のシェルターを構える一般社団法人「LOVE&Co.(ラブコ)」さんとの出会いだったのだとか。
▲店内に貼ってあるLOVE&Co.さんのパネル。
”シェルターで里親を探している犬や猫たちにドリップコーヒーのモデルになってもらう。そしてそのコーヒーの売上でその子たちのご飯代を稼ぐ”
LOVE&Co.が掲げていたこのコンセプトこそ、安村さんの理想とするものだった。
「本屋の売上で猫を助けるだけではなく、看板猫になることで猫は本屋を助ける。そんな相互の助け合いの関係ができたらいいなと思ったんです。」と安村さん。
「実際にLOVE&Co.の方の話を聞きに行く時には、そのパクった(笑)アイデアの企画書を持参しました。」
LOVE&Co.のコーヒーを仕入れ、売上の一部をLOVE&Co.に寄付する、そんな関係が今ではできあがっているのだとか。
▲思わずパケ買いしたくなるオシャレなデザインのドリップコーヒー
初代番頭Dr.ごましおくんとの出会いと叶えられなかった夢
安村さんがお店のコンセプトについて熱く語っていたとき、その傍らにいたのがDr.ごましお。LOVE&Co.で初めて保護した猫だった。
見知らぬ人が来ても全く物怖じせず接客してくれるごましおを見て、安村さんは「こんな子が店員だったら…」と思ったそう。
「でも、この子はきっとLOVE&Co.の看板猫になるんだろうなと思っていたので、看板猫として迎えたいなんて言い出せなかったですね。」と安村さん。
それから約1年が経過。ごましおは里親に出ることなく、シェルターの後輩猫のお世話係になっていた。開業する本屋の看板猫にごましおを、と提案してもらったのがちょうどその頃だったとか。
こんなに嬉しい話はないと思っていた矢先、ごましおは不治の病と言われるFIPを発症し、結局看板猫としてお店に立つことなく逝ってしまったそう…。
「ずっと、この子が本棚を行き来してるところを妄想してたんです。」と安村さん。
そんなごましおは、レジ横に飾られたフレームから、番頭として今もしっかり”接客”してくれている。
猫店員4匹は全員りんご猫
ごましおを看板猫として迎えることができなくなり、急遽店員猫探しをスタート。
相談先が見つからず途方に暮れていた安村さんが声をかけたのが、保護猫カフェ「ネコリパブリック」だった。
「荻窪のブックカフェ「6次元」で、神保町のにゃんこ堂さんと私で猫本を紹介しまくるイベントを企画した時に、ネコリパブリックの都知事さんがお客さんとして来てくださっていたんです。」
ネコリパブリック=猫共和国。ニンゲンで一番偉い代表は首相と呼ばれ、ほかにも防衛大臣、官房長官などもいるとか^^都知事とはつまり、東京の各店をとりまとめている偉い方のこと。
安村さんはこのチャンスを逃すまいと、そのネコリパ都知事の方に直談判したそう。
こうしてやってきたのが4匹の店員猫たち。
まずは一番の若手、平成生まれの仲良しキジトラ女子ズ。
▲鈴(すず)♀ キジトラ(3歳くらい)カメラを向けるとじっと見つめ返すモデル女子。
▲読太(よんた)♀ キジトラ(3歳くらい)男前な名前だけど女子。けれど、最近は名前に自ら寄せてきているアクティブガール^^
▲安村さんをめがけてワラワラ集合。
そして、こちらはちょっぴりオトナなお二方。
▲さつき♀ 黒猫(4歳くらい)当初一番やんちゃだと言われていたけれど、最近はおもちゃにも目もくれず…。でも食欲だけはあってどんどんぽっちゃり化しているそう^^
▲チョボ六♀ キジシロ(4歳くらい)ちぐらからひょっこり。さつきともともと仲良し。
実は、この子達は全員りんご猫(※のちに読太は陰性と判明した)と呼ばれる猫エイズキャリア。猫エイズというだけで譲渡率はとても低いのだとか。
「むしろ譲渡されにくい子の里親になりたかった。」そう話す安村さんは、喜んで4匹のりんご猫たちを受け入れたそう。
「猫エイズは怖い病気だと思い込んでしまっている人もいるけれど、発症しなければ普通の子と何ら変わらないんですよ。」りんご猫を看板猫にすることで、こうした思いも世の中に伝えられたら…と安村さんは話す。
4匹ともとても仲良し。ネコリパ中野店での初対面の時にはもう”鼻ツン”をしていたほど。
その相性の良さや店員猫としての適性はネコリパさんのお墨付きだという。
「みんな本当に店員向きで、見ず知らずの人が来ても全然逃げたりしない。こんなに人がいてもグースカ寝てたり(笑)プロの方の見る目はやはりすごいなって思いました。」
ニンゲン女子が4人も揃えばいろいろややこしくなりがちだけど、ここの女子たちにはそんな心配は全くいらなそう^^
▲女子店員たちの平和なランチ会^^
猫に呼ばれて…物件との出逢い
キャッツミャウブックスは中古物件をフルリノベーションした自宅兼店舗。1階が店舗、2階が安村さん夫婦の自宅になっている。
「物件探しを始めた頃は、お店のことしか頭になくて…。でも、物件探しをサポートしてくださった方から、暮らしやすいかどうかも考えた方が良いと言われたんです。」と安村さん。
住環境の良さを考えたときに、今の物件が一番バランスが良かったというのが、この物件の決め手のひとつ。
また、三面から光が入るところも気に入ったポイント。外を眺めるのが大好きな猫に、そんな場所を与えてあげたかったのだとか。
そしてもうひとつ。最初に夫婦で内見に来たとき、家の外で猫がニャーニャー鳴いていたのだそう。
「こじつけかもしれないけれど、猫に呼ばれてるのかもって思いました。」と安村さん。
こうしてついに物件が決まり、一気に開業へと進んでいく。
▲寝ている猫たちを外から眺める人もいるそう。