- たんぱく加水分解物とは、たんぱく質をアミノ酸やペプチドなどの分子レベルまで小さく分解したもの。酵素、塩酸、熱水などを使って分解しますが、製造方法によって発がん性のある物質が生成されるので注意すべき原材料と言えますよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
キャットフードの原材料欄に「たんぱく加水分解物」といった表示を見かけることがあります。
聞き慣れない原材料ですが、果たして猫にとって安全な原材料なのか、気になりますよね。
今回は、キャットフードのたんぱく加水分解物について徹底解説!
原料や製造方法、危険性についても詳しく説明します。
たんぱく加水分解物とは
たんぱく質は、数百以上のアミノ酸が鎖状につながったものです。
たんぱく加水分解物とは、たんぱく質を酵素や塩酸、熱水によってアミノ酸やペプチド(※)に分解したものです。
※ペプチド・・・アミノ酸が2~50結合したもの
引用:味の素株式会社
うま味やコクを加えるために使用される
たんぱく加水分解物には、うま味成分のグルタミン酸(※)やコクを加えるペプチドなどが多く含まれています。
そのため、たんぱく加水分解物を使用することで、強いうま味やコクが感じられるようになり、食品の美味しさが引き立つと言われています。
簡単に「うま味やコク」を作り出せることから、人間用の食品では、袋めんやカップめんをはじめ、以下のような食品に使用されています。
カレールー、シチュールー、ミートソース、レトルト食品、冷凍食品、スナック菓子、せんべい、だしの素、麺つゆ、納豆のたれ、焼き肉のたれ、ドレッシング、漬物
※グルタミン酸・・・アミノ酸の一種
- たんぱく加水分解物とは、たんぱく質をアミノ酸やペプチドなどまで小さく分解したもののことですよぉ。主にコクや旨みを加えるために使われているんですねぇ。
- なるほどぉ。美味しくするために加えられてるんですね。
たんぱく加水分解物の原料と製造方法
たんぱく加水分解物の原料と製造方法について説明します。
原料
原料となるたんぱく質には、動物性たんぱくと植物性たんぱくがあります。
- 動物性たんぱく・・・肉や魚など
- 植物性たんぱく・・・小麦や大豆、トウモロコシなど
製造方法
製造方法は以下の3つです。
- 酸分解法
- 酵素分解法
- 熱水分解法
酸分解法
塩酸を使って短時間で分解する方法です。私たちの胃の中で、食べたたんぱく質が胃液に含まれる塩酸で消化されますが、これと似ていますね。
分解後、残った塩酸はアルカリで中和し、食塩として除去します。
酵素分解法
微生物を培養して作ったプロアテーゼなどの酵素を使って、短時間で分解する方法です。
熱水分解法
たんぱく質を熱水で煮る方法で、上記2つの方法に比べると時間がかかります。
たんぱく加水分解物の危険性
たんぱく加水分解物の危険性について説明します。
酸分解法で製造した場合のみ、発がん性が指摘される物質が生成する
前述の3つの製造方法のうち、塩酸を用いた「酸分解法」で製造した場合のみ、少量のクロロプロパノール類を生成する可能性があると言われています。
クロロプロパノール類とは以下の4種類です。
- 3-クロロプロパン-1
- 1-ジクロロ-2-プロパノール(1-DCP)
- 3-ジクロロ-2-プロパノール(3-DCP)
- 2-ジオール(3-MCPD)
国際機関「JECFA(※1)」の評価では「発がん性の疑いのある物質であり、技術的に可能な限り低減すること」とされています。現在、クロロプロパノール類に対する基準は日本にはありませんが、コーデックス食品添加物部会(※2)でも、たんぱく加水分解物中のクロロプロパノール類低減化のためのガイドライン策定が推し進められるなど、たんぱく加水分解物低減化の動きが見られます。
※1 JECFA・・・FAO/WHO合同食品添加物専門家会議
※2 コーデックス食品添加物部会・・・FAO/WHOにより設置された国際的な政府間機関。国際食品規格(コーデックス規格)の策定等を行う。
- たんぱく加水分解物のすべてが危険というわけではないのですが、塩酸を使って製造した場合は発がん性のある物質が少量発生すると言われているんですねぇ。製造法が分かればよいのですが、そうでない場合絶対安全とは言い切れないので、極力使われていないフードの方が安心ですねぇ。
- 普通は「たんぱく加水分解物」とだけ書いてあって、どんな方法で製造されたかまでは書いていないですもんね。少しでも危険性があるのなら、できれば避けたいですっ。
よくある質問
猫の食物アレルギーは、食べ物に含まれるたんぱく質が主な原因と言われています。
すべてのたんぱく質はアレルゲン(アレルギーの原因)になる可能性がありますが、消化の良いたんぱく質は体の中で小さい分子に分解され、アレルゲンとして体に認識されにくくなります。
そのため、アレルギーの療法食として、加水分解たんぱく質が使用されるケースが多くあります。
ただし、アレルゲンのたんぱく質は加水分解していてもアレルギーを引き起こす可能性があります。
まとめ
たんぱく加水分解物は旨みやコクを加えるために使われる成分ですが、発がん性のある物質が発生する製造方法もあるため注意が必要です。メーカーのホームページなどを見ても製造方法の詳細が分からない場合は、できれば避けた方が望ましいでしょう。
- たんぱく加水分解物とは、たんぱく質を酵素や塩酸、熱水などによってアミノ酸やペプチドに分解したもの
- 旨みやコクを加えるために使用される
- 原料には動物性たんぱくと植物性たんぱくが使われる
- 塩酸、酵素、熱水による製造方法がある
- 塩酸を用いた場合のみ、少量の発がん性物質が生成する可能性がある
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。