- 私たち猫はあまり水をあまり飲まないイメージがあるようですが、私たちの健康にとって非常に重要!1日に必要な水分量は体重によって変わってくるんですねぇ。水分は飲み水だけじゃなく、キャットフードからもとることができますよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
───
ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
「うちの猫、あまり水を飲まないけど大丈夫?」
「お水って1日にどれくらい飲ませればいいの?」
など、猫にどれくらい水をあげればよいのか気になる方も多いと思います。
猫は元々水をあまり飲まない生き物ではありますが、健康のためには毎日しっかり水を飲ませることが大切です。
そこで今回は、猫に必要な1日の水分量、水分不足による健康への影響、キャットフードに含まれる水分量について詳しく説明します!
猫はあまり水を飲まない動物
猫はあまり水を飲まない動物です。
猫の祖先は、砂漠で暮らしていた「リビアヤマネコ」だと言われています。砂漠では水分はとても貴重なので、リビアヤマネコは少ない水分でも生きていける体に進化をとげました。
貴重な水分を体外に排出しすぎないよう、腎臓で尿を凝縮しているのは、こうした体の進化のひとつです。猫の尿が濃く、量も少ないのは、水をあまり飲まないことが関係しているんですね。
水分不足による健康への影響
少ない水分でも生きていける体ではありますが、水をあまり飲まないことで、以下のような健康への影響も考えられます。
- 脱水症状
- 泌尿器系の疾患・腎臓病
- 便秘
- 熱中症
脱水症状
水分は生きていくために絶対に必要なものです。
猫の体の大部分は水分で構成されており、脱水症状などで体内の10%以上の水分が失われると命の危険もあります。高齢猫や腎臓の機能が弱まった猫、肥満猫は特に注意が必要です。
- 子猫の場合・・・体の80~90%が水分
- 成猫の場合・・・体の60~70%が水分
泌尿器系の疾患・腎臓病
水分には、体内の老廃物を体外に排出する大事な役割があります。そのため、水をあまり飲まないと泌尿器系の疾患や腎臓病にもかかりやすくなります。猫がかかりやすい病気は以下の通りです。
- 尿石症
- 膀胱炎
- 慢性腎臓病
尿路結石
尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に結石ができる病気です。
水を飲まないことで、尿の中のマグネシウム、リン、カルシウムなどのミネラル成分が増え、結石ができやすくなります。
関連記事:【獣医師監修】猫の下部尿路疾患・尿路結石について
膀胱炎
膀胱内に細菌や真菌が増殖し、炎症が起こる病気です。また、膀胱内に結石ができることで膀胱粘膜が傷つき発症することもあります。
慢性腎臓病
腎臓のネフロンという組織が壊れ、老廃物のろ過や体に必要な成分・水分の再吸収などがうまくできなくなる病気です。一度発症すると残念ながら腎機能が元に戻ることはありません。
関連記事:【獣医師監修】猫の腎臓病について
便秘
体内の水分が減って便の水分量も減ると、固く乾燥したコロコロうんちになり、便秘がちになります。
熱中症
夏は特に気温が高いため、こまめに水分補給をしないと、体内にこもった熱をうまく外に逃がすことができず、熱中症になることがあります。
関連記事:猫も熱中症になる?獣医師が教える6つの対策と対処法
- わたしたち猫の体は、少ない水分でも生きていけるようにできているんですけど、だからといって水分が足りなすぎるのは問題なんですよぉ。
- たしかにめちゃくちゃ喉かわいたーとかないかもですっ。でも、水分をしっかりとらないと結石や腎臓病の原因になるなんて。。。怖いです!
猫に必要な1日の水分量
前述のように、猫の健康を保つためには、毎日しっかり水を飲ませることが大切です。ここでは、猫に必要な1日の水分量について説明します。
1日の水分摂取量を求める方法
猫が摂取すべき1日の水分量は以下の計算式で求めることができます。
① 1日の水分要求量(DER)(※1)=1日のエネルギー要求量=1.2×70×(体重)0.75乗
② 1日の水分摂取量=1日の水分要求量(DER)-代謝水(※2)
※1 猫に必要な1日の水分要求量(DER)は、1日のエネルギー要求量(kcal/日)とほぼ同じとされている
※2 代謝水・・・体内で栄養素がエネルギーになるときに体内で作られる水。1日の水分要求量の10%。
例)体重5kgの猫の場合
1.2×70×(5)0.75乗=280.87092809→約281ml(DER)
281-28.1=252.9→約253ml
以上の計算より、5.5kgの猫に必要な1日の水分要求量は約253mlとなります。
※(5.5)0.75乗の計算方法
関数電卓の場合・・・5.5^0.75と入力
普通の電卓の場合・・・5.5の3乗(5.5×5.5×5.5)=166.375→166.375√√と入力
【体重別】1日の水分摂取量
以下の表は、上記の計算式で求めた1日の水分摂取量(猫の体重別)です。
ただし、ここで求めた量をすべて飲み水で補わなければならないわけではなく、キャットフードに含まれる水分でも摂取できます。キャットフードに含まれる水分量については次項で詳しく説明します。
猫の体重(kg) | 1日の水分摂取量(ml) |
1 | 約76 |
2 | 約127 |
3 | 約172 |
4 | 約214 |
5 | 約253 |
6 | 約290 |
7 | 約325 |
8 | 約360 |
9 | 約392 |
10 | 約425 |
- 水分量の計算が難しい方は、一日に必要な水分量(ml)=1日に必要なエネルギー量(kcal)と覚えておいてくださいねぇ。ウェットフードなどだと水分量が多いので、飲み水の量が多少、少なくてもこちらも水分量と考えて良いですよぉ。
- ぼくは4kgだから約214ml。。。1カップくらいですね。
なるほどぉ。。。キャットフードの水分もあるから、毎日1カップの水をごくごく飲まなきゃってことじゃないんですね。
キャットフードに含まれる水分量
キャットフードに含まれる水分量は、フードの種類によって異なります。
- ドライフード・・・約10%
- ウェットフード・・・約80%
例1)ドライフードを1日に60g食べる猫の場合
60×0.1=6ml
例2)ウェットフードを1日に150g食べる猫の場合
150×0.80=120ml
上の例のように、ドライフードの場合たった6mlしかフードから水分を得ることができません。そのため、ドライフードを与える際には、必ず清潔な水と一緒に与えることが大切なのです。
また、ウェットフードを食べている場合は、フードから得られる水分量が多いため、あまり水を欲しがらない傾向があります。
- 普段の主食はドライフードの子も多いと思いますけど、水分量は本当に少ないのでしっかりお水を飲まないと水分不足になっちゃうんですよぉ。
- だから、食事のときにはいつもお水が一緒に用意してあるんですねっ。ぼく、気が向いたときにしか飲まないんですけど、しっかり飲まなきゃ。。。
猫の飲水量の測り方
実際、水飲み皿からどれくらい水を飲んだかを知るには、朝決まった量の水を器に入れ、1日の終わりに残りの水の量を測ると良いでしょう。
ただし、微量ですが自然に蒸発する水分もありますので、その点も考慮に入れるとより正確です。
① 朝、容器を2つ用意し、同じ量の水を入れる
② 一方の容器は猫が飲めない場所に置く
③ 1日の終わりに残っている量を測定
④ 飲んだ量=最初に入れた量ー残っている量-蒸発分
例)朝350mlを用意。夜、猫が飲んだ容器の水を測定したら250mlになっていた。猫が飲めない容器の方は330mlになっていた。
350-250-20(蒸発分)=80ml(猫の飲水量)
前項で説明したキャットフードの水分量も加え、飲水量が少ない場合は水を飲ませる工夫をしてみましょう。
よくある質問
ここでは、猫に必要な水分に関するよくある質問をまとめています。
離乳食が始まる前まではミルクを与えるので、水分を与える必要はありません。離乳食を始めたら、ミルクと併用して、徐々にお水を与えていくようにしましょう。
離乳期が終わったらミルクも卒業して、キャットフードと一緒に水分も与えましょう。
子猫の体重に応じた1日の水分摂取量は以下の通りです。
猫の体重(g) | 1日の水分摂取量(ml) |
200 | 約14 |
300 | 約23 |
400 | 約38 |
500 | 約45 |
600 | 約51 |
700 | 約58 |
800 | 約64 |
900 | 約70 |
高齢猫が水を飲まないのは以下の原因が考えられます。
- 病気
- 口内のトラブル
- 加齢による代謝の衰え
- 加齢によって足腰の衰え
病気や口内トラブルの場合は治療が必要となりますが、病気以外の原因の場合、以下のような対処法を試してみると良いでしょう。
- フードをふやかす
- ウェットフードを与える
- 食事回数を増やす
- 寝床に近い場所に水飲み場を用意する
- 器を台の上にのせるなど飲みやすい体勢になるよう工夫する
水道水を与えてかまいません。ただ、カルキ臭や塩素臭が苦手なため、水道水を好まない猫もいます。その場合は、一度沸騰させ湯冷ましして与えると飲むこともあります。
硬度の高いミネラルウォーターはマグネシウムやカルシウムが多いため、シュウ酸カルシウム結石のリスクを高めてしまいます。ミネラルウォーターを与える場合は事前にかかりつけの獣医師に相談した方が安心でしょう。
また、水に味がついていると飲む猫もいます。魚や鶏肉の茹で汁などを少し足したり、水に溶かすタイプのまたたびを利用しても良いでしょう。
自力で水を飲めない場合、以下の方法が効果的です。ただし、誤嚥などの危険性もあるため、まずはかかりつけの獣医に相談し、猫にあった方法で飲ませてあげましょう。
- 口元へ水の入った容器を持っていく
- ストローを使う
- スポイトを使う
- シリンジを使う
- 子猫用哺乳瓶を使う
まとめ
- 猫はあまり水を飲まない動物
- 少ない水分で生きていける体になっている
- 水分不足になると脱水症状や泌尿器系疾患・腎臓病、便秘、熱中症などのリスク
- 猫に必要な1日の水分量は体重に応じて異なる
- 1日の水分摂取量=飲み水+キャットフードの水分
- キャットフードの水分量は種類によって異なる
- ドライフードは水分が少ないため必ず水と一緒に与える
- ウェットフードメインの場合、水を欲しがらない傾向がある
- 水分をあまり取っていない場合は水を飲ませる工夫をする
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。