- 私達は穀物を食べなくても生きていけますが「穀物を食べちゃダメ」なのではないんですよぉ。、ほんの少しの穀物入りフードなら全然問題ないのですが、現状そういったフードは少ないんですよぉ。穀物入り、グレインフリーそれぞれの特徴を知って、その子にあったものを選んであげてくださいねぇ。
猫の食事の基本は「肉・魚」:「穀物」:「野菜」=7:2:1
猫に必要なのはあくまで肉や魚などのたんぱく質。
穀物を消化できないわけではないけれど「大量の穀物はNG」なのです。
ただ、穀物が適量入ったキャットフードを作るのは、生産者側のメリットが少なく非常に難しいのが現状。
重要なのは、穀物は決して猫に不必要なものではなく大切な栄養のひとつということ。
穀物入り、グレインフリーのキャットフードそれぞれのメリット・デメリットを知った上で、猫にあわせて選ぶことが大切です。
今回はキャットフードの穀物は猫にとって必要かどうかを徹底解説。
猫の食事の基本と穀物の消化性、適量の穀物入りキャットフード、穀物入りとグレインフリーの使い分け、穀物を使った手作りごはんについても詳しく説明します。
キャットフードの穀物とは
キャットフードに含まれる穀物とは主に以下のようなものです。
- 米
- 小麦
- 大麦
- とうもろこし
穀物の主成分は炭水化物ですが、その他にもたんぱく質、食物繊維などさまざまな成分が含まれています。
猫の食事の基本と穀物の消化性
まずは、猫の食事の基本的なバランスと穀物の消化性について説明します。
食事の基本は肉・魚:穀物:野菜=7:2:1
猫の食事の基本は以下の通りです。
猫は肉や魚に含まれるたんぱく質を糖分に変えエネルギーにすることができるので、あえて穀物を食べなくても生きていくことはできます。
穀物の消化ができないのではなく得意ではない
ただ、「穀物を食べなくても大丈夫」というのは、「穀物を食べてはダメ」「穀物の消化ができない」ということとは違います。
猫は穀物の消化ができないのではなく得意ではないだけで、穀物を食べてはダメというわけではありません。人間ほど上手く消化ができないだけで、少しの量であれば消化することはできるのです。
穀物の主成分である炭水化物は主にデンプンからできています。猫はデンプンをそのままでは消化することができませんが、糊化することで消化することができ、キャットフードの炭水化物は糊化されているので、猫が消化できるように作られています。
また、猫の唾液にはデンプンを分解する酵素が含まれていないため、人間のように口腔内で消化することはできません。つまり、人間のように「噛めば噛むほどお米の甘みを感じる」ということは猫にはないのです。口腔内で消化できないかわりにデンプンは小腸で消化することができます。ただし多すぎると猫の健康に影響が出るため適量であることが条件です。
大腸が短く食物の通過時間が早い
猫の大腸は身長の4倍程度しかありません。草食動物の牛・馬が身長の20倍と言われていますので、それに比べるととても短いつくりです。
猫の大腸内では、微生物が食物繊維(発酵の早いペクチンなど)を分解し、腸の働きを整えています。
ただでさえ、猫の大腸は短く食物の通過時間が早いため、微生物が十分に食物繊維を分解できるだけの時間が足りません。食物繊維が含まれる穀物をとりすぎると、微生物が処理しきれず、腸内環境が崩れ消化不良を引き起こすことがあります。
盲腸がほとんどなくセルロースを消化できない
牛・馬などの草食動物の盲腸は大きく、ここで微生物が食物繊維「セルロース」を分解しています。
一方、肉食動物である猫の盲腸はほとんどないため、穀物に含まれる食物繊維「セルロース」を消化吸収することができません。
- 私達は、穀物を消化することはできるけれど、大量に消化するのは苦手なんですねぇ。生きていくのに大事なのは肉や魚などのたんぱく質ですからねぇ。
- 穀物=猫にいらないものって思ってた自分はまだまだでした。。。ついついいろんな噂をうのみにしちゃうクセが。。。
ぼくたちの体のつくりも穀物をうまく消化できるようにはできてないんですねっ。
穀物のアレルギー性
キャットフードでよく見かけるコメントが、「穀類はアレルギー発症の危険性も高い」ということです。
しかし実際は、猫の食物アレルギーの主な原因は食物に含まれるたんぱく質と言われており、特にキャットフードに使われることの多い牛肉、魚肉、鶏肉、ラム肉などの肉類からの発症です。

穀物のなかでも小麦や大麦、とうもろこしはアレルゲンになる可能性がありますが、肉類よりは発症例が少なく、特に米はアレルゲンになりにくいと言われており、アレルギーの療法食でもよく使われています。
関連記事:食物アレルギーの気になる猫の食事
適量の穀物入りキャットフードはない?
前述のように、キャットフードに含まれる穀物は適量であれば猫は消化することができます。しかし、実際には「穀物が適量含まれるキャットフード」を作るのは非常に難しいという問題があります。
その理由について説明します。
穀物を減らして肉の量を増やすと生産者のメリットが少ない
キャットフードに穀物を使う理由のひとつに「コストが安い」ということが挙げられます。肉や魚を仕入れて加工するのに比べ、穀物の方が仕入れ値や生産コストが安く済むのです。
穀物を減らした場合、必然的に肉や魚の量が増えコストがあがります。しかし、穀物入りということで価格を上げることもできず、生産者にとっては売りにくい商品になってしまいます。
こうした売りにくい商品を作るくらいであれば、最初から穀物を使わないグレインフリーのものを作った方が市場価値も高く、コストに見合った価格をつけて販売することができるため、穀物が適量入ったキャットフードはほとんど作られないのです。
穀物入りとグレインフリーは猫によって使い分ける
穀物は猫にとって害があるわけではありません。むしろ、穀物をとることで猫の健康に役立つこともあります。
穀物入りのキャットフード、グレインフリーのキャットフードにはそれぞれメリット、デメリットがあるため、猫にあわせて選ぶことが大切です。
グレインフリーのメリット
- 消化吸収が良く少量で効率よくエネルギーに変えられる
- 動物性たんぱくが豊富
- アレルギー対策(穀物アレルギーの疑いがある場合)
肉・魚などの原材料を増やすとその分コストがかかってしまうので、代わりにじゃがいもやサツマイモなどのイモ類を使う場合も多くあります。前述のように、炭水化物は適度であれば問題はありませんが、多すぎると猫の体に負担がかかるため、イモ類の量には注意が必要です。
また、グレインフリーはアレルギー対策になるとよく誤解されていますが、それはあくまで穀物アレルギーの疑いがある場合の話です。
原材料に使われる肉や魚にアレルギーがあった場合、穀物入りのフードより肉・魚の含有量が多いため、ますますアレルギー症状が出てしまうことがあります。
グレインフリーのデメリット
- コストがかかる
穀物を使わないぶん、肉や魚の量が多くなるためコストがかかり、フード代が高くなります。
穀物入りのメリット
- コストが安い
- 食物繊維が豊富で毛玉の排出や腸内洗浄を促せる
穀物に含まれる食物繊維の働きで、毛玉の排出や腸内環境の改善が期待できます。長毛種の場合、被毛を飲み込みやすいため、毛玉の排出がうまくいく穀物入りの方があっていることもあるようです。
穀物入りのデメリット
- 穀物の量が多すぎると消化器官に影響が出る
- 穀物アレルギーがある場合は適さない
穀物は適量であれば猫に害はありませんが、多すぎると体への負担が大きくなります。そのため、穀物が主原料となっている場合は注意が必要です。
また、「米は穀物なのでアレルギーになりやすい」とも言われていますが、これは間違った情報です。米はむしろアレルギーの療法食でも使われるくらい低アレルゲンの食材です。
残念ながら、低アレルゲンのお米でも皮膚症状や消化器症状を起こす猫もいますので、個人差があると言えます。
- 穀物が少しだけ入ったキャットフードって実際ほとんどないんですよぉ。作ってる人からすると割にあわないんですねぇ。。。
穀物入り、グレインフリーそれぞれに良さがありますから、その子にあわせて選ぶのが大事なんですよぉ。
- グレインフリーはアレルギー対策になっていいのかな、なんて思ってたんですけど、そういうわけじゃないんですね。
アレルギーのほとんどは肉や魚のたんぱく質って知ってびっくりしましたっ。
穀物を使った手作りごはん
穀物がちょうどよく入ったキャットフードを探すのは難しいですが、手作りごはんであれば穀物をちょうどよく入れることも可能です。
手作りごはんの良さは、飼い主が厳選したものだけで作れる安心感と、猫の好みにあわせて作れる点です。
手作りごはんを与える際は、「肉・魚」:「穀物」:「野菜」=7:2:1のバランスを基本に、栄養バランスが偏らないよう注意しましょう。
関連記事:手作りごはんの基本
まとめ
猫は穀物の消化ができないのではなく得意ではないだけで、穀物を食べてはいけないわけではありません。人間ほど上手く消化ができないだけで、少しの量であれば消化できます。しかし、穀物が少量だけ入っているキャットフードはコストと価格の折り合いがつかずほとんどないのが現状です。穀物入り、グレインフリーそれぞれのメリット・デメリットを理解し、猫にあわせてフードを選んであげることが大切です。
- 猫の食事の基本は「肉・魚」:「穀物」:「野菜」=7:2:1
- 穀物の消化するのは苦手だが水とともに加熱することで消化することができる
- キャットフードの穀物は加熱され消化しやすくなっている
- 穀物は多くとりすぎなければ猫は消化できる
- 穀物が適量入ったキャットフードを作るのは生産者にメリットが少ないため難しい
- 穀物入り、グレインフリーそれぞれのメリット・デメリットを知り猫にあわせて選ぶことが大切
- グレインフリーのメリットは消化吸収がよく、動物性たんぱくが豊富で、穀物アレルギーの場合に適している
- グレインフリーのデメリットはコストの高さ
- 穀物入りのメリットはコストが安く毛玉の排出や腸内環境の改善が期待できる点
- 穀物入りのデメリットは多すぎると健康を害する点と穀物アレルギーの場合適さない点
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中