- 食物アレルギーになると皮膚トラブルや嘔吐・下痢などいろんな症状が出るんですよぉ。主に肉や魚などのたんぱく質が原因。検査方法や治療法について詳しく解説していきますよぉ。
猫が食物アレルギーになると皮膚トラブルや嘔吐・下痢などさまざまな症状が出ます。
肉や魚などに含まれるたんぱく質が食物アレルギーの主な原因。
今回はそんな猫の食物アレルギーについて徹底解説。
症状や原因、診断・検査方法、治療法についても詳しくご紹介します!
アレルギーとは
アレルギーとは、ある特定のものに対して過敏に反応が出てしまう状態のことを言います。
猫のアレルゲンはノミ、食物、花粉など、その他原因不明
猫のアレルギーの原因=アレルゲンは以下の4つが考えられます。
- ノミ
- 食物
- 花粉など
- 非ノミ非食物アレルギー(原因不明)
アレルゲンがノミでも食物でもなく原因不明でアレルギー症状が出た場合は、非ノミ非食物アレルギーと呼ばれます。
猫の食物アレルギーとは
ここでは、猫の食物アレルギーについて説明します。
発症時期は生後6ヶ月~2歳くらいが多い
人間と同様、比較的若い頃に食物アレルギーを発症する猫が多いようです。特に生後6ヶ月~2歳くらいに発症するケースが多いですが、なかには高齢になって発症することもあります。
皮膚病の猫のうち食物アレルギーが関係していたのは1~6%
実際、食物アレルギーの猫はそれほど多くはなく、皮膚病の猫のうち食物アレルギーが関係していたのは1~6%とも言われています。
どのくらいの猫がアレルギーを持っているかは不明です。ある報告では皮膚病の猫のうち食物アレルギーが関与していたのは1〜6%と報告されています。
反応がすぐ出ることは少ない
猫の食物アレルギーは、人間と違って食べてすぐに蕁麻疹(じんましん)や痒みが出る場合は少なく、数日食べていると症状が出てくることが多いようです。
食物アレルギーの症状
猫が食物アレルギーを発症するとさまざまな症状があらわれます。猫の食物アレルギーの主な症状は以下の通りです。
- 下痢・軟便・血便
- 嘔吐
- お腹の張り
- 痒みを伴う発疹・かぶれ
- 脱毛
- 発熱
- 膿皮症
- 外耳炎
皮膚だけに症状が出る場合もあれば、嘔吐や下痢などの症状を伴う場合もあります。特に顔まわりの耳や目の上に発疹、痒みなどが出やすく、その他太もも、お腹などに出る場合もあります。
皮膚の痒みを放置していると猫が引っ掻いてしまい、その傷が原因で菌に感染し膿皮症になる場合もあるため、早めに対処することが大切です。
食物アレルギーの予防法
食物アレルギーの予防法は厳密にはありません。
食物アレルギーが起こった場合、顔に症状が出ることが多いので、顔周囲を痒がる時には様子を見ないで、症状が軽度の時に受診することをお勧めします。
食物アレルギーの原因(アレルゲン)
猫が食物アレルギー症状を引き起こすアレルギー物質を「アレルゲン」と言います。主なアレルゲンは以下の通りです。
- 肉類(牛肉・魚肉・鶏肉)
- 乳製品
- 卵
- 小麦
- 大麦
- とうもろこし
猫の食物アレルギーの主な原因は食物に含まれるたんぱく質と言われています。特に多いのが牛肉、魚肉、鶏肉などキャットフードの主原料として使われることの多い肉類です。
その他には、乳製品、卵、小麦、とうもろこし、豚肉、羊肉、添加物なども原因として挙げられます。
穀物のなかでも小麦や大麦、とうもろこしはアレルゲンになる可能性がありますが、米はアレルゲンになりにくいと言われており、アレルギーの療法食でもよく使われています。
また、安価なフードなどに含まれている添加物やレンダリングしたミールなども油断はできません。
添加物やレンダリング処理するときに何らかの物質を加えたりする可能性があり、その物質に対して過敏症があれば消化管や皮膚のアレルギーを起こすかもしれません。
ないとは言い切れないので、こうした物質が入っているフードも注意が必要です。
食物アレルギーの診断・検査方法
猫の食物アレルギーの診断は以下の流れで行います。
- 他の病気がないか確認
皮膚炎の場合・・・ノミ・疥癬・真菌などの感染症にかかっていないか皮膚検査、真菌培養検査などを行う
胃腸炎の場合・・・下痢や嘔吐を起こす寄生虫などの原因がないか便検査や超音波検査を行う - 上記の検査で異常がない場合、猫の年齢や症状などから総合的にアレルギーと診断
- アレルギーだと診断されたら、除去食・負荷食試験、アレルギー検査で「食物アレルギー」「非ノミ非食物アレルギー」のいずれか判断
以下、アレルゲンを特定するための除去食・負荷食試験、アレルギー検査について説明します。
除去食試験
アレルゲンの可能性のある食材を取り除いた食事を与え、アレルゲンを特定する検査です。今まで食べていたキャットフードやおやつの原材料に含まれているたんぱく質源を取り除いたフードを与えて猫の反応を見ます。
例えば、以下の原材料を使用したキャットフードを与えていた場合、アヒル肉・ニシン・鶏肉・鶏レバー(動物性たんぱく質)、全粒米・ポテト(植物性たんぱく質)を使っていないフードを与えてアレルゲンを特定します。除去食で使うフードは獣医の指示に従って与えましょう。
アヒル肉、ニシン、全粒米、ポテト、鶏脂、フレッシュサーモンオイル、鶏肉、チコリ、グリーンピース、鶏レバー、植物性繊維質(豆類由来)、ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、ナイアシン、イノシトール、ビタミンA、チアミン、Dパントテン酸カルシウム、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンK、ベータカロチン、ビタミンD3、葉酸、ビオチン、ビタミンB12)、ミネラル(亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素酸カルシウム)、ユッカシジゲラ、マンガンオリゴ糖、ボリジオイル、フラックスシード、Lカルニチン、イヌリン、プロバイオティクス
アレルゲンの特定には最低でも除去食を6週間続ける必要があるため、検査期間中は他のフードを与えないよう注意しましょう。
他のフードやおやつをあげた場合は、最初から試験をやり直さなければならなくなるので、ほんの少しでもあげないようにしてください。
交差反応に注意
たんぱく質の構造がよく似たものに反応してアレルギーを引き起こしてしまうことを「交差反応」と言います。牛乳にアレルギーがあると山羊ミルクでもアレルギーを起こしやすいのは、これらのたんぱく質の形が似ていることが原因です。
除去食を選ぶときは交差反応も考えて選んだ方が良いでしょう。以下は交差反応が出る食材の組み合わせの一例です。
食材 | 交差性がある食材 |
チキン | ダック、ターキー |
ダック | 卵 |
ビーフ | 鹿、羊、牛乳、山羊ミルク、乳製品 |
魚 | 魚全般 |
小麦 | 大麦、ライ麦、オート麦 |
負荷食試験
除去食を与えて症状がおさまっても、偶然食事を切り替えたタイミングで治まっていたり、他に症状が治まった原因がある可能性もあるため、必ず元の食事に戻して再発するかをチェックしなければなりません。この検査を負荷食試験と言います。
もう一度アレルギー症状が出るかもしれない食事を与えるのは辛いかもしれません。しかし、ここでアレルゲンの判断を間違ってしまうと、本来食べても問題のないものをこの先ずっと避けてしまうことになります。
アレルギー検査
猫のアレルギー検査は、血液で行うことができます。
「植物、草木、カビ、ノミ・ダニ、節足動物、食物」などを調べることができます。
ただし、現在IgE検査しか実施できないため、即時型アレルギーしか確認できませんが、食べない方が良いものや接触しない方が良いものが分かるため、検査を行った方が目安ができて望ましいでしょう。
- 食物アレルギーの原因は肉や魚に含まれるたんぱく質なんですねぇ。アレルゲンを見つけるには時間がかかりますけど、この先の食生活に関わる大事な検査ですから、しっかりチェックしましょうねぇ。
- なるべくならどんなものでも食べたいですもんね!こればっかりはしかたないですねっ。
食物アレルギーの治療
食物アレルギーの治療は、基本的にその原因となっている食べ物を与えないことです。食物アレルギーと非ノミ非食物アレルギーを併発している場合は、食事管理にくわえステロイドや免疫抑制剤、サプリなどを使って治療を行います。
獣医師の指導のもと食事管理を継続して行う
食物アレルギーの食事管理は必ず獣医師の指導のもと継続して行うことが大切です。
食物アレルギーで与える除去食(食事療法食)のポイントは以下の通りです。
- 今までに食べたことのないたんぱく質を与える
- 消化吸収の良いたんぱく質を与える
今までに食べたことのないたんぱく質を与える
基本的に、猫の食物アレルギーは、今までに食べたことのある食べ物で起こります。
そのため、除去食では今までに食べたことのない新しいたんぱく質を与えた方が効果が高いと言われています。通常キャットフードでは使われることの少ないダック、鹿、馬肉、カンガルーなどを使ったフードは除去食に適していると言えます。
加水分解たんぱく質を与える
たんぱく質に反応して食物アレルギーを発症した場合、再度アレルゲンとなったたんぱく質が含まれたフードを食べるとアレルギー反応が起こります。
たんぱく質は分子量が大きいため体が異物としてとらえやすくなってしまいます。
そのため、除去食ではアレルゲンと体に認識されない程度まで小さく分解したたんぱく質が使われています。これを加水分解たんぱく質と言います。
治療中の注意点
食物アレルギーの治療中は、以下の点に注意しましょう。
- おやつや人間の食べ物を与えない
- 除去食(療法食)を勝手にやめない
おやつや人間の食べ物を与えない
除去食でせっかくたんぱく質の種類を限定しても、それ以外におやつや人間の食べ物を与えてしまっては治療の意味がなくなってしまいます。
もし、あなた以外の家族も一緒に猫のお世話をしている場合には、必ず家族全員にその注意点を守ってもらうようにしましょう。
除去食(療法食)を勝手にやめない
獣医に勧められた除去食を与えていても、症状が改善されるまで1ヶ月程度かかることも多いと言われています。「フードを変えたのに全然良くならない」と自己判断で勝手に除去食(療法食)をやめないようにしましょう。
食物アレルギーが気になる猫向けのキャットフードについては、こちらで詳しくご紹介しています。是非参考にしてくださいね。
- アレルギーの治療が始まったら家族全員で協力してあげなきゃいけませんよぉ。こっそりおやつ、、、厳禁です。
- こっそりおやつ、、、ぼくの一番の得意分野がぁ~。でも治療の意味がなくなっちゃいますもんね。ガマンガマン。。。
まとめ
猫の食物アレルギーの症状、原因、検査方法、治療方法については以下のまとめを参考にしてください。
- 猫の食物アレルギーの主な症状は皮膚の痒みや発疹、嘔吐、下痢など
- 食物アレルギーの主な原因は肉類などに含まれるたんぱく質
- 米はアレルゲンになりにくい
- アレルギー検査では除去食・負荷食試験を行う
- 食物アレルギーの食事管理は獣医の指導のもと継続して行う
- 除去食では今までに食べたことのないたんぱく質や消化吸収の良いたんぱく質を与える
- 治療中はおやつや人間の食べ物を与えない
- 自己判断で決して除去食をやめない
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中