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キャットフードに酸化防止剤が使われる理由と猫に与える危険性

2018-11-29

猫ねこさん

キャットフードに酸化防止剤が使われる理由と猫に与える危険性

猫ねこさん
酸化防止剤には人工的に作られたものと、ビタミンCやローズマリー抽出物など天然由来のものがあるんですよぉ。安全面を考えると天然由来の酸化防止剤を使ったキャットフードのほうが安心ですよぉ。
猫ねこ部編集室 ディレクター 木原優子
【監修】ペットフード販売士
猫ねこ部編集室 ディレクター

木原優子

猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。

キャットフードのパッケージを見ると、「酸化防止としてトコフェロールを使用」「酸化防止剤(BHA、没食子酸プロビル)」などと記載されていることがあります。

「酸化防止剤って何?入ってなきゃダメなもの?」
「猫に悪いものじゃない?」
など、酸化防止剤についてよく分からないという方も多いと思います。

そこで今回は、キャットフードの酸化防止剤の役割や猫に与える危険性について詳しく説明します!

酸化防止剤の役割

酸化防止剤は、キャットフードの酸化を防ぐために使用されています。

キャットフードは酸化すると味や風味が変わり、栄養価が下がる

酸化とは、空気に触れて物質の性質が変わってしまうことです。

キャットフードは酸化すると、味や風味が変わり栄養価が下がります。

なかでも、キャットフードに含まれる油脂が酸化すると、過酸化脂質と呼ばれる悪玉コレステロールに変化します。悪玉コレステロールが徐々に体内に蓄積されていくと、アレルギーや動脈硬化、ガンなどの原因になると言われています。

猫はニオイに敏感なので、酸化したキャットフードには食いつかなくなります。

キャットフードに使われる主な酸化防止剤

キャットフードに使われる主な酸化防止剤は、大きく分けると以下の2つに分けられます。

  • 人工酸化防止剤
  • 自然由来の酸化防止剤

以下、それぞれの酸化防止剤について説明します。

人工酸化防止剤

人工的に作られた酸化防止剤は、天然由来の酸化防止剤に比べると酸化防止力は高いですが、発がん性(※)などの危険性が指摘されています。

ただし、酸化防止剤の基準値は、毎日食べ続けても健康に影響のない量で設定されています。そのため、発がん性などのリスクは摂取量が問題となります。

主な人工酸化防止剤は、以下の通りです。

  • エトキシキン
  • BHA
  • BHT
  • 没食子酸プロビル

エトキシキン

飼料の添加物として多くの国で使われていますが、毒性が強いため、日本では人間用の食品に使うことは認められていません。しかし、家畜や養殖された魚の飼料として使うことは認められています。ただし、その飼料を食べた家畜の体内に残るエトキシキン量は1ppmまでと厳しく定められています。

例えば、人間用食材として販売できる養殖鮭のエトキシキン量は1ppmまでで、基準値を超えた鮭は販売してはいけないことになっています。
(参考:エトキシキンー厚生労働

一方、キャットフードへの添加許容量は150ppm、つまり人間の150倍もの量を使用して良いとされています。
(参考:環境省_ペットフード安全法基準規格等 [動物の愛護と適切な管理]

もちろん、販売されているペットフードは上限を超えないよう厳しく管理されているため安全性に問題はありません。しかし、人の食品に使えないものを使っている点、また飼料への残留基準値とペットフードへの添加許容量にこれほど大きな差があることは、飼い主さんとして知っておくべきでしょう。

BHA

元々エンジンオイルなどの工業用油脂に使われていた酸化防止剤。キャットフードのほか、化粧品や医薬品にも使われています。

以前、BHAを投与したラットに発がん性が認められ、使用を禁止すべきかの話し合いが持たれました。しかし、第三者機関による再検討の結果、発がん性が認められた時のBHA投与量は通常使用量の数万倍だったことが分かり、通常の使用量では影響がないことが確認され今に至っています。
(参考:ブチルヒドロキシアニソール – Wikipedia

ペットフード安全法によるBHAの基準は、発がん性が認められた量をはるかに下回る量(150μg/g)で設定されているため、BHAが使われているからといって猫の健康に影響を及ぼすというわけではありません。事実、BHAには用法・用量さえ守れば、逆に発がんを抑制するという報告もあり、要は使い方次第なのです。

ただし、BHAは下記のように女性ホルモン作用が確認されており、環境ホルモンは胎児に作用すると生殖器の奇形、行動異常、学習障害などを引き起こす危険性があるとも言われています。

1995年、英国のジョブリングらはプラスチック添加剤など20種類の化学物質の環境ホルモン作用を検討した結果を発表したが、BHAに作用は弱いものの女性ホルモン作用があることを報告した。これは日本の学会でも再確認されている。
いわゆる環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)は胎児に作用すると、生殖器の奇形、行動異常、学習障害などを引き起こす危険性が指摘されている。

参考:薬害オンブズパースン会議

実際、ペットフードに使用されるBHAの量での発がん性は認められていませんので、飼い主さんとして恐れ過ぎる必要はなく、正しく適切な量を与えることが大切です。しかし、一方でさまざまな危険性も指摘される酸化防止剤であることは、知っておいた方が良いでしょう。

BHT

BHAと同じくキャットフードの油脂の酸化を防ぐために使われる酸化防止剤。

発がん性は認められていませんが、変異原性(※1)が認められており、また催奇性(※2)の疑いもあることから、現在人間の食品にはほぼ使用されなくなっています。
(参考:ジブチルヒドロキシトルエン – Wikipedia

BHTもBHA同様ペットフード安全法で猫の健康に影響を及ぼさない上限(150μg/g)が定められているため、BHTが入っているからといって猫の健康を害するわけではありません。

しかし、人間の食品にも認められていない添加物をわざわざ猫に与えるべきかと考える飼い主は多いようです。

※1 変異原性:遺伝子に異常を起こさせる毒性、発がん性と関係している
※2 催奇性:ある物質が生物の発生段階において奇形を生じさせる性質や作用のこと

没食子酸(もっしょくしさん)プロピル

キャットフードのほか、日本では厚生労働省によって指定添加物として認可されており、バターやマーガリンなどの油脂の酸化を防ぐためにも使われています。

ペットフード安全法では、エトキシキン・BHA・BHTのように含有量の上限は定められていませんが、BHAやBHTよりも酸化防止作用が強力と言われています。

用量によっては急性毒性、変異原性、染色体異常が認められます。

急性毒性としてマウスのLD50は1.35g/kg程度。また変異原性が認められており、染色体異常試験で陽性、DNA修復試験でも陽性である。

引用:没食子酸プロピル – Wikipedia

※LD50:投与した動物の半数が死亡する用量

しかし、人間の1日の許容摂取量は体重1kgあたりに対して1.4mg(参考:日本医薬品添加剤協会)であることから、猫がマウスのLD50を超えるほどの量を摂取することは現実的に考えにくいでしょう。

つまり通常の環境下では、用量を正しく守っていれば毒性が高くないと言えます。

自然由来の酸化防止剤

自然由来の酸化防止剤は、人工的に作られた酸化防止剤に比べると酸化防止力は落ちますが、安全性が高いことから多くのキャットフードに使用されています。

主な自然由来の酸化防止剤は、以下の通りです。

  • ビタミンC(L-アスコルビン酸)
  • ビタミンE(トコフェロール)
  • クエン酸
  • ローズマリー抽出物
  • 緑茶抽出物(カテキン)

ビタミンC(L-アスコルビン酸)

野菜や果実に多く含まれており、水に溶けやすい性質があります。栄養強化の目的で使われることもあります。

ビタミンE(トコフェロール)

植物油などに多く含まれており、油に溶けやすい性質があります。

クエン酸

柑橘類など多く含まれており、水に溶けやすく熱に強い性質があります。疲労回復や美容に良いと言われています。

ローズマリー抽出物

ハーブの一種であるローズマリーの葉から抽出したエキスです。ビタミンEやビタミンCなどと併用すると、相乗効果で酸化防止力が上がります。

緑茶抽出物(カテキン)

ツバキ科チャの茎や葉、マメ科ペギアセンヤクの幹枝などから抽出したエキスです。ビタミンE、クエン酸、ビタミンCなどと併用すると、相乗効果で酸化防止力が上がります。

猫ねこさん
酸化防止剤といっても天然由来のものと人工的に作られたものがあるんですねぇ。安全性を考えたら、天然由来の酸化防止剤の方が安心ですねぇ。
発がん性と聞くと怖いですけど、その量が問題なんですねっ。なんでもかんでも怖がる必要はないこともよく分かりましたっ。
クロベエ

よくある質問

天然由来の酸化防止剤のフードで気をつけることは?

人工酸化防止剤に比べると酸化防止力は劣るため、保存方法や保管場所に注意する必要があります。

なるべく空気に触れないよう必ず密閉し、常温で風通しの良い場所に保管しましょう。

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まとめ

酸化防止剤には、キャットフードの鮮度を保つ重要な役割があります。安全面を考慮すれば、天然由来の酸化防止剤を使用しているキャットフードを選ぶことをオススメします。

  • キャットフードは酸化すると味や風味が変わり、栄養価が下がる
  • 酸化防止剤はキャットフードの酸化を防ぐために使われる
  • 酸化防止剤には人工的に作られたものと天然由来のものがある
  • 人工酸化防止剤は酸化防止力が高いが、発がん性などの危険性が指摘される(ただし摂取量とあわせてみることが重要)
  • 天然由来の酸化防止剤は、人工酸化防止剤に比べると酸化防止力は劣るが、安全性が高い
猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。