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老猫ホームってどんなところ?~東京ペットホーム取材

2019-06-24

猫ねこさん

老猫ホームってどんなところ?~東京ペットホーム取材

猫ねこさん
最近増えてきている老犬老猫ホームとは、飼えなくなったペットのための新しいおうちのこと。飼い主さんに代わって一生お世話してもらえる施設なんですねぇ。今回は東京ペットホームさんにお邪魔して、いろんなお話を聞いてきましたよぉ。

老人ホームへの入居、転勤や転居などやむを得ない事情で飼えなくなってしまった犬や猫を、有料で終生預かる「老犬老猫ホーム」。

とはいえ・・・え?老猫ホーム??って何?
まだまだきっとそんな人がほとんどだと思います!

というわけで、今回は都市型老犬老猫ホームの先駆け、東京・大田区にある「東京ペットホーム」さんを取材してきました。

老猫ホームのことを知っておくだけでも安心感につながります。いったいどんなところなのか、この機会にしっかり学んでおきましょう。

きっかけは東日本大震災

2011年に起きた東日本大震災。飼い主とはぐれて放浪状態になり、野生化してしまったペットが続出した。

老犬老猫ホーム「東京ペットホーム」代表の渡部帝(あきら)さんは、当時この深刻な社会問題に大きな関心を寄せていた。

3児の父でもある愛犬家。「もしこの子を飼えなくなったら…」被災ペットの情報を目にするたび、愛犬への思いが増していったという。

「いくら万全を期していても、ひとたび災害に見舞われると飼えなくなってしまう。もし、この子の生存権を自分が保証できなくなったら、誰がどのように保証してくれるのか…」

いまや”ペットは我が子”などと言われる一方で、日本ではいまだペットはモノ扱いでもある。欧米のようにペットの生存権も認められてはいない。

「ペットにも生存権が必要。そういう意味でもセーフティネットがあった方がいいんではないかと。それがこのホームを作ろうと思ったきっかけですね。」

東京ペットホーム代表

こうして、震災から3年後の2014年6月、奥様のまいこさんと共に老犬老猫ホーム「東京ペットホーム」を立ち上げた。

老犬老猫ホーム以外だと、いわゆる「保護シェルター」と呼ばれる施設もあった。でも、飼えなくなった犬猫をシェルターに預ければ、飼い主さんは親権を放棄したことになり、その後の安否は分からないまま…。

「飼い主さんからすると飼育放棄してそのまま終わってしまったという悲しい結末になってしまうんですね…。」と渡部さん。

「人間の老人ホームのようにいつでも面会に来れて、基本的に飼い主さんこそがずっと家族で。また飼えるようになったらもちろんお返しする。そのような仕組みを作りたいと思ったんです。」

東京ペットホーム内観▲明るい日差しが差し込む施設内のフリースペース

2014年当時、老犬老猫ホーム業界はまだ黎明期。全国の老犬老猫ホームの数はわずか20施設ほど…。

「教科書がないので何もかも手探りでしたね…。」と渡部さん。

当時の老犬老猫ホームのほとんどは、山の中などにある”郊外型”。東京ペットホームは、都市部に住んでいる人が面会に訪れやすい”都市型”老犬老猫ホームの先駆だった。

東京ペットホーム外観▲こちらは本館(キャットホーム)から徒歩5分の場所にあるワンちゃん専用のドッグホーム

元々ペット業の経験はなかった渡部さん。以前は工務店を経営していたのだとか。

「ためになる勉強はたくさんしましたね、犬と猫の行動原理学とか。」いろいろな本を読んだり、専門の先生を紹介してもらいレクチャーを受けたりしたそう。

「私も妻も自分のペットは自分なりに家族としてかわいがっていたんですけど…。ただ、人様の犬や猫をこれからお預かりするとなると、家庭それぞれの癖やしつけ方がありますし。基本人間とは違う種類の生き物なので、人間としては良かれと思ってやっていることでも、実は犬にしてみれば本当は不快なんだとか、猫ちゃんからすると実はこうされた方がいいんだとか。そういったことに関しては動物の野生本来の状態から勉強し直すのが一番大事かなと思ったんですね。」

東京ペットホーム_キャットウォーク▲こちらは渡部さんお手製のキャットウォークだそう。

羽田空港から車で約10分。渡部さんの自宅の斜向いが、猫ちゃん専用の東京ペットホーム本館(キャットホーム)になっている。

より多くの猫の受け入れができるようにと、自宅の駐車場を改造して猫ちゃん専用の飼育スペースを増やした。「猫ちゃんの様子の変化に気づきやすい。いつでも一緒にいられる気がして安心なんです。」と微笑む渡部さん。

こちらは自宅の1階飼育スペースにいる子たち▼▼

東京ペットホーム▲ぽかぽかひなたぼっこ中、おじゃましました~^^

東京ペットホーム▲なぜか足を枕にしたがるのです^^

東京ペットホーム▲個室内にはそれぞれ大きな窓が。お外を眺めるのが大好きな猫に嬉しいつくり。

現在、本館に13匹、自宅1階の飼育スペースに8匹、計21匹の猫たちが暮らしている。

ダントツで多いのは老人ホームへの入居

老犬老猫ホームは、飼えなくなったペットのための新しいおうち。人間の老人ホームと同じように、有料で飼い主さんに代わって終生お世話をしてくれる施設だ。

東京ペットホームには、毎年200件以上の「飼育困難」の相談がくるという。

東京ペットホーム_内観

東京ペットホーム_内観▲壁にはたくさんの”家族”との思い出が。

飼えなくなる理由はさまざまだが、ダントツで多いのが高齢者の老人ホームへの入居なのだそう。その他にも高齢になってお世話ができなくなったり、若い世代の飼い主さんの場合は転勤や転居、突然の病など…。

ペットの寿命が伸びているぶん、誰にでも起こりうる想定外の「飼育困難」。そんな状況を救ってくれるのが、老犬老猫ホームなのだ。

 

1日1300円×365日×年数

東京ペットホーム

見学に来られる方が一番気にされているのは、やはり費用。

東京ペットホームでは、「一生預かり」の場合、飼養費として1日約1,300円(猫の場合)必要になる。(※入居時には720,000円必要:入居金240,000円+飼養費1年分480,000円、医療費・介護費は別途)

ペットホテルの相場の半額以下の金額ではあるけれど、これが365日、毎年…となればやはりそれなりの金額に。。。

「猫ちゃんを幸せにするには絶対に1日1,300円必要ですよとは言わないんですよ。うちはこういうスタイルでやっているけれど、すごくフレンドリーで人間よりも猫ちゃんがとにかく好き!ってタイプの猫ちゃんだったら、大部屋で共同生活する方があっているかもしれない。そういうホームならもっと費用は抑えられるんですね。いろんなホームのスタイルがあるので、どの猫ちゃんにも当てはまる万能ホームなんてないとは思います。だからそこは飼い主さんがじっくり見学して決めてほしいなと思ってます。」

飼い主さんの想いを受け止めて

「老犬老猫ホームに預けるのに、無責任な理由なんてほぼない。」と話す渡部さん。誰もがみんな自分がこの子を最後まで看取れると思って飼っているのだけど、突然やむを得ず飼えなくなることもあり得る…。

飼えなくなってしまった時、まず思いつくのが身内に引き取ってもらうこと。自分の親や息子・娘さんたちに預けられたら、またいつでも会えるし口出しだってできる。けれど、実際頼まれる側としては急に言われてもなかなか難しく…。

身内がダメなら里親に…そう思っても、犬猫が10歳過ぎているような場合だと、マッチングするのはこれまたかなり厳しい。

そこでようやく「あ、もしかしてこの子は生きていけないかもしれない…」と気づく人が多いのだそう。

東京ペットホーム

じゃあどうしよう…と、身内総動員で何か救済措置はないのかと必死に調べて、やっと出てくるのが老犬老猫ホームなのだ。

どうしてもやむを得ない事情とはいえ、飼い主さんはだいたい自分のことをまず責めてしまうそう…。「我が子なのに飼えなくなるなんて、無責任」と。

東京ペットホーム

でも「そんな飼い主さんの飼えなくなってしまった理由に精一杯の共感を示して、飼い主さんの想いをそのまま受け止めて、ワンちゃん猫ちゃんたちのお世話に反映させるということが、老犬老猫ホームには絶対に必要。」と渡部さんは話す。

「飼えなくなったときのしようがない手段じゃなくて、もっと今より幸せになるための手段になるべきじゃないかと思っています。」

東京ペットホーム

「いつもスタッフに言ってるのは、犬や猫と仲良くなる以上に、まずは面会などを通じて飼い主さんと仲良くなってくださいと。そうすると、飼い主さんご自身の不満ややるせなさなどの気持ちがだんだんと消化されていくんですね。」

東京ペットホーム

「サービス業の精神も絶対忘れないように言ってます。スタッフは犬猫が大好きな人ばかり。だから、スタッフにとっては可愛い子が入居してくれて幸せかもしれないけれど、飼い主さんにとってはもう本当に断腸の想いなんですよね。私はこういう想いで育ててきたっていうのがみなさんありますし、それをしっかり受け止めて飼い主さんに成り代わることができるか。そこにマイペースや自己流は許されないと思っています。」ここがボランティアとの大きな違いなのだと渡部さんは話す。

東京ペットホーム

▲5分でも10分でもいいから毎日ふれあってあげたいと話す、奥様のまいこさん。

「ここに来ること自体が楽しいと。この子にももちろん会いにきてるんだけど、例えばうちの奥さんに会いに来て、犬や猫のいろんな話をしたり、もう全然犬猫関係ない話をしたり。そういうのが楽しい。ホームでワンちゃんや猫ちゃんが亡くなったときに、これからはうちの奥さんに会えなくなることもかなり寂しいとか、そういうふうに言っていただけるだけで嬉しいですね。」

渡部さんが考える老犬老猫ホームのあるべき姿とは「犬や猫と同じくらい飼い主さんとも家族になるような感覚」なのだ。

個別管理を徹底

オープン当初、他にも老猫ホームがあるにはあったが、渡部さんの思い描くイメージとはかけ離れた施設が多かったという。

「大部屋に何十匹もの猫が順番に入ってくる。そこにはケージも一応並べてはあるんですが、先住猫ちゃんの順番でいい場所がとられていく。そこにあとから気の弱い子なんかが入ってきたら当然居場所はなくて…。ごはんを食べようにも先に誰かにとられちゃうんですね。」

「飼い主さんにとってはオンリーワンの子。飼い主さんから対価をいただいて老猫ホームと名乗るからには、今までの生活とか飼い主さんの想いをちゃんと尊重し続けてくれる場所でないといけないと思うんです。その他大勢扱いじゃなく。」そう話す渡部さんが徹底したのが「個別管理」。

東京ペットホーム_内観

「まず、うちに来た子には『大丈夫だよ、このホームは怖い場所じゃないよ。この中だけは君の安心できるエリアだからね。』ってカーテンなどかけて、しっかり落ち着ける場所を作ってあげます。」

東京ペットホーム_内観

「ここが慣れてきたら、ちょっと出てみようかなって。で、出てみたら他の猫ちゃんがいて、案外悪いやつじゃないなってだんだんなじんでくれればいいので(笑)。自分だけのテリトリーとプラス人が管理している上での広場での生活っていうのが両立してないとダメなんじゃないかなっていうのが僕の考えです。」

東京ペットホーム

「あとは当たり前ですけど、健康管理の面でその子にだけ食べさせたい療法食がある時に、誰が食べちゃってるのか分からないというのはダメですよね…。フードに混ぜて投薬していることもありますし。」

東京ペットホーム

「命をつなぐという意味では、シェルターのような施設ももちろんたくさん必要だとは思うんですけど、、、特定の飼い主さんに家族として飼われていた子は、飼い主さんにとってかけがえのない子。ですから、できるかぎり飼い主さんに普段のおうちでの様子を聞いて、なるべく”再現する”というのが老犬老猫ホームの役目だと思ってます。」

犬や猫がふとした時に見せる仕草があれば、必ず飼い主さんに「この子がこういうことをするのは何のサイン?」と聞くようにしているのだそう。何十年も一緒に暮らしてきた飼い主さんはその子の一番の理解者。一般的な犬や猫の話で勝手に決めつけないで、とスタッフにも徹底しているのだとか。離れて暮らしていても、家族の絆はつながったまま。飼い主さんにとって何よりも嬉しいことなんじゃないかと思う。