- 猫ちゃんの舐めたり噛んだりがとまらない・・・。そんなときは皮膚病にかかっているかも。今日は猫の皮膚病の原因や症状、治療法、予防策についてたっぷりと解説いたしますよぉ。
「いつものようにブラッシングしていると、猫の毛が一部分だけはげている…!」
「舐めたり噛んだり繰り返してて、よく見たら引っ掻き傷が…」
可愛い猫がそんな状態になってしまったら、飼い主さんも心配ですよね…。猫の毛がはげる、舐めたり噛んだりを繰り返す、などの主な原因は「皮膚病」です。
猫の皮膚病は原因も症状もさまざまですが、なによりも早期発見・早期治療が大切です。
今回は、そんな猫の皮膚病について、獣医師の平松育子先生にお話を伺い、原因や症状、治療法、予防策について詳しくまとめました。愛猫を皮膚病から守るため、是非役立ててくださいね。
猫の皮膚病の症状
猫の皮膚病の症状は、その原因によりさまざまです。強いかゆみや痛みを伴うものであれば、飼い主さんも「皮膚の異常」に気づきやすいですが、なかには複数のアレルギー性皮膚炎を同時に発症することもあります。
- かさぶた
- 毛が抜ける
- 皮膚の赤み
- 発疹
- かゆみ
- べたつき
- 臭い
- フケ
- 皮膚が厚くなる
- 出血
猫の皮膚病の原因と治療法
では、猫の皮膚病とは具体的にどんな病気なのでしょうか。代表的な原因と主な症状、その治療法について紹介します。
- アレルギー
- 細菌・真菌の感染
- 寄生虫
- その他(ストレス、紫外線など)
当然ですが、どの皮膚病にかかっているかによって治療法は違ってきます。皮膚の異常に気づいたら、自己判断はせず早めに獣医師に相談することが大切です。
アレルギー
皮膚病で最も多く見られるのがアレルギー性皮膚炎です。原因となるアレルゲンは、食べ物、ノミ・ダニ、花粉、ハウスダスト、金属などさまざまですが、以下が代表的なものです。なかには、複数のアレルギー性皮膚炎に同時にかかることもあります。
食物アレルギー性皮膚炎
- 主な症状:かゆみ、発疹、脱毛
- 表れやすい部位:耳、目・口の周り、腹部、わき、足の付け根、指の間
- 治療法:獣医師指導のもと食事管理
食事に含まれる特定の成分に対するアレルギー反応です。主なアレルゲンは、肉類、魚類、乳製品、卵、穀類(小麦、大麦、とうもろこし、米など)など。特に顔周りの耳や目の上に発疹やかゆみが出やすく、その他太ももやお腹などに出ることも。皮膚だけに症状が出る場合もあれば、嘔吐や下痢などの症状を伴う場合もあります。
食物アレルギーの治療は、基本的にその原因となっている食べ物を与えないこと。食事管理は、必ず獣医師指導のもと継続して行うことが大切です。アレルゲンを正しく特定するため、アレルゲンの可能性のある食材を取り除いた食事を与える「除去食試験」を最低でも6週間続けたのち、元の食事に戻して再発をチェックする「負荷食試験」を行います。
ほかには、アレルギー検査を行う方法があります。採血し、「IgE抗体検査」「リンパ球反応検査」を行いアレルゲンを探す方法です。除去食試験はアレルゲンを見つけるために長期間かかりますが、血液検査はすぐ結果がわかり対応が早くできることが特徴です。
食物アレルギーを予防することは難しいですが、初期の段階で飼い主さんが猫の異変に気づいてあげることが重要。舐めては噛むなどの行為を繰り返している様子が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
関連記事:【獣医師監修】猫の食物アレルギーについて
ノミアレルギー性皮膚炎
- 主な症状:激しいかゆみ、脱毛、フケ、かさぶた、丘疹、ノミまたはノミの糞の体表への付着
- 表れやすい部位:背中、腹部、鼠径部、しっぽ
- 治療法:駆除薬を塗布して駆虫、コルチコステロイド剤・抗ヒスタミン剤、必須脂肪酸の投与
通常ノミに咬まれるとその部分が赤く腫れてかゆみが出ます。ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に対する全身のアレルギー反応です。激しいかゆみを伴うのが特徴で、場合によってはフケや脱毛、赤く皮膚が盛り上がった丘疹(きゅうしん)、かさぶたなどの症状も。強いかゆみに耐え切れず、猫がかゆいところを噛んだり、かきむしってしまい傷だらけになってしまうこともあります。
治療はノミの駆除薬の塗布が有効。かゆみが強い場合には、コルチコステロイド剤、抗ヒスタミン剤を投与することも。ぬるま湯での入浴や、かゆみを抑える薬用シャンプーなどを使う場合もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミに咬まれなければ症状は出ないので、駆虫後はノミがつかないよう予防をすることが大切。猫に一匹でもノミ成虫が寄生しているのが見つかった場合、部屋中にはすでに大量のノミの卵、幼虫、サナギがいる可能性があります。ノミは梅雨前後から繁殖し始めますが、最近ではエアコンなどにより快適な住環境が整っていることもあり、ほぼ年間を通して生息するように。ノミにとって居心地の良い”温度18~27℃、湿度75~85%”の条件が揃えば、あっという間に大繁殖してしまう危険性も…。ノミ対策のためには、獣医師に相談のもと定期的な駆除薬の投与を行うことが効果的です。
また、完全室内飼いの徹底、室内飼いであっても定期的なノミ予防薬の投与、部屋の掃除や猫の寝具、タオルの洗濯などをこまめに行うことも大切です。
アトピー性皮膚炎
- 主な症状:かゆみ、赤み、脱毛
- 表れやすい部位:顔周り、足、脇の下、内股、下腹部
- 治療法:ステロイド剤の投与、薬用シャンプー、アレルゲンの可能な限りの除去、減感作療法
花粉やカビ、ダニ、動物のフケなどの物質に対するアレルギー反応です。主な症状は、顔周りや足、脇の下、内股、下腹部などのかゆみや赤みで、猫が舐め続けて広範囲にわたって脱毛することも。3歳未満で発症するケースが多いと言われています。
食物・ノミアレルギーをはじめ、その他のかゆみを伴う疾患にかかっていないかを確認したのち、詳しい経過を問診して診断。アレルゲンを特定するため、皮内テストもしくはアレルギー検査を行います。
アレルゲンが特定できたら、生活環境からなるべくそのアレルゲンを取り除く必要があります。例えば、花粉であれば、花粉が飛散する時期は窓を開けない、飼い主さんが自宅へ帰ってきたときには花粉をはらってから家に入るなど。また、ハウスダストやダニ、カビなどが原因であれば、こまめに掃除を行うことが大切です。
同時に、ステロイド剤などの投与でかゆみを抑えていきます。皮膚の乾燥を防ぐため、保湿剤を塗布することも。皮膚に付着したアレルゲンを取り除くため、猫が嫌がらないようであれば、薬用シャンプーなどを使うのも効果的です。
関連記事:猫のシャンプーのやり方や頻度、暴れん坊さんの対処法をご紹介
アレルギー接触性皮膚炎
- 主な症状:かゆみ、赤み
- 表れやすい部位:接触した部位
- 治療法:アレルゲンの可能な限りの除去、ステロイド剤の投与
食器やじゅうたん、毛布、シャンプー、首輪など身のまわりにあるありとあらゆるものがアレルゲンとなります。アレルゲンと接触することで、接触した部位に炎症が起こり強いかゆみが生じます。
アレルゲンに触れないことが基本ですので、原因となるものを部屋に置かない、身に着けない、使わないことが大切です。
細菌・真菌の感染
細菌や真菌(カビ)の感染が原因で起こる皮膚病です。
膿皮症(のうひしょう)(細菌性皮膚疾患)
- 主な症状:かゆみ、赤み、発疹、脱毛、かさぶた
- 表れやすい部位:背中、足
- 治療法:抗生剤の投与、抗菌シャンプー
主にブドウ球菌によって起こる化膿性皮膚炎です。ブドウ球菌は正常な皮膚にも存在する常在菌ですが、免疫力や抵抗力が下がったり、皮膚に感染が起こりやすい病気にかかっている場合、菌が異常繁殖します。発症部位によって表在性(表皮などの皮膚の表面に近い部分)、深在性(真皮や皮下組織などの皮膚の深部)に分けられます。とても強いかゆみを伴うので、何度も舐めたり噛んだり引っ掻いたりして毛が抜けてしまうことも。
膿皮症は寄生虫や真菌の感染によって引き起こされるケースもあるので、寄生虫や真菌の検査も同時に行います。また、糖尿病やクッシング症候群などの内分泌系の病気がバックグラウンドにあることが原因になり発症したりこじれてしまう可能性もあるので、治療経過によっては血液検査などを行うこともあります。
膿皮症にかかったら、内用薬や外用薬などの抗生剤の投与、抗菌シャンプーなどを使って治療をします。また、膿皮症を引き起こす疾患がある場合は、その治療も並行して行います。
皮膚真菌症(真菌性皮膚炎)
真菌(カビ)に感染する皮膚病を皮膚真菌症(真菌性皮膚炎)といいます。比較的猫に多いと言われる皮膚真菌症は以下になります。
皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)(猫カビ)
- 主な症状:円形脱毛、赤み、フケ、かさぶた
- 表れやすい部位:顔周り、足、しっぽ
- 治療法:抗真菌薬(飲み薬・塗り薬)の投与、抗菌シャンプー
カビの一種である糸状菌に感染して起こる皮膚病で、通称・猫カビとも言われています。動物から動物へ、動物からヒトにもうつる病気なので注意が必要。特に、免疫力の低い子猫や老猫、病気などで体力の落ちている猫、ペルシャ猫やヒマラヤンなどの長毛種が発症しやすいと言われています。
猫がかゆがる様子はあまり見られないので、感染後顔周り、足、しっぽの毛が円形に脱毛しているのを見て、初めて気づくことが多いでしょう。徐々に周囲に脱毛が広がっていき、同時にフケが出てきます。さらに悪化すると、皮膚に赤みが出たりかさぶたができることも。最終的に全身に広がることもあるので、早めに対処することが肝心です。
治療には飲み薬や塗り薬、シャンプーなどの抗真菌薬が効果的。症状が出ている部位が局所であれば、患部周辺の毛刈りをして塗り薬(外用薬)を患部に塗ります。全身に感染が広がっている場合は飲み薬が有効ですが、長期投与による副作用が見られることもあるので、定期的に検査をしながら慎重に治療を進めていく必要があります。外用薬を塗ったあとは、エリザベスカラーをつけるなどして猫が患部を舐めないように注意しましょう。
対策としては、人が外で猫を触って菌を家に持ち込むことのないよう、手洗いを徹底すること。また、新しい猫を迎える場合は、感染していないかあらかじめ検査を受けておきましょう。万が一、飼い猫からご自身の体に感染し、首などに紅斑(こうはん)や強いかゆみが出た場合は、すみやかに人の皮膚科を受診してください。
マラセチア感染症
- 主な症状:赤み、かゆみ、脱毛、フケ、かさぶた、べたつき、皮膚が厚くなる、耳垢が増える
- 表れやすい部位:耳、わきの下、鼠径部
- 治療法:抗真菌薬(飲み薬・塗り薬)の投与
カビの一種であるマラセチアに感染して起こる皮膚病です。マラセチアは正常な皮膚にも存在する常在菌ですが、免疫力や抵抗力が下がったり、皮膚に感染が起こりやすい病気にかかっている場合、菌が異常繁殖します。
マラセチアは寄生虫による感染で引き起こされるケース、猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、糖尿病などの病気により引き起こされるケースなどさまざまな原因が考えられるので、他の病気が隠れている可能性がないか、その都度検査を行います。
マラセチア感染症にかかったら、抗真菌薬を使って治療をします。また、マラセチア感染症を引き起こす疾患がある場合は、その治療も並行して行います。
寄生虫
ダニやシラミなどの寄生虫の感染による皮膚病です。特に1歳未満の子猫でリスクが高いと言われています。
疥癬(かいせん)(ヒゼンダニ症)
- 主な症状:激しいかゆみ、激しく頭を振る、フケ、かさぶた、脱毛、赤み、発疹、出血、皮膚が厚くなる
- 表れやすい部位:頭部、首
- 治療法:抗疥癬虫薬の投与、薬浴
ヒゼンダニというダニが寄生することで、頭部や耳などに激しいかゆみや赤み、フケ、脱毛、かさぶたなどの症状が現れる皮膚病です。動物から動物へ、また一時的にヒトにもうつる感染性の高い病気なので注意が必要。特に、免疫力の低い子猫や老猫、病気などで体力の落ちている猫が発症しやすいです。抵抗力の弱っているヒトが感染した場合、強いかゆみや発疹を引き起こします。
疥癬は、感染猫との接触で感染することが多いので、完全室内飼いを徹底し、感染猫との接触を避けることがなにより大切です。同居猫が感染した場合、感染猫との接触を避け、使ったタオルやブラシなどを共有しないようにしましょう。
治療にはセラメクチン、イベルメクチンなどの駆虫薬の投与が有効です。また、薬剤を含んだシャンプーでの薬浴を併用するケースも。ただし、副作用が出ることもあるので、必ず獣医師指導のもと慎重に行いましょう。不衛生な環境や疥癬に感染している動物との接触で起こりやすい病気なので、こまめに部屋の掃除をする、室外に出さないなどが大切です。
耳疥癬(みみかいせん)(耳ヒゼンダニ症)
- 主な症状:黒く乾燥した耳垢が増える、激しいかゆみ、激しく頭を振る
- 表れやすい部位:耳
- 治療法:駆虫薬の投与、外耳炎の治療
ミミヒゼンダニというダニが寄生することで、黒く乾燥した耳垢が大量にたまり、激しいかゆみのため頭を振るなどの症状が現れる皮膚病です。動物から動物へ、また一時的にヒトにもうつるのは疥癬と同様。ミミヒゼンダニが寄生している動物と接触することで感染します。
セラメクチンの投与が有効な治療法ですが、耳垢が残り外耳炎を併発するケースもあるため、外耳炎の治療も同時に行います。
疥癬同様、感染猫との接触で感染することが多いので、完全室内飼いを徹底し、感染猫との接触を避けることがなにより重要。同居猫が感染した場合、感染猫との接触を避け、使ったタオルやブラシなどを共有しないようにしましょう。
また、室内のこまめな掃除、マットや寝具などの洗濯・消毒などで綺麗な生活環境を整えることも大切です。体質的に耳垢のたまりやすい猫もいるので、定期的に耳の中をチェックして汚れを取り除いてあげましょう。
毛包虫症(ニキビダニ症)
- 主な症状:脱毛、赤み、フケ、かさぶた
- 表れやすい部位:体幹、四肢
- 治療法:駆虫薬の投与、薬浴
毛包虫(もうほうちゅう)と呼ばれる動物の毛穴に寄生する寄生虫が、免疫の低下によって異常増殖し脱毛や赤みなどの症状を引き起こす皮膚病です。ニキビダニ症などとも呼ばれます。毛包虫は、もともと持っていることがほとんどですので、改めて感染するというよりも抵抗力の低下などから異常に増殖し、悪影響を与える場合がほとんどです。
毛包虫症の治療には、イベルメクチンなどの駆虫薬投与が有効です。また、薬剤を含んだシャンプーでの薬浴を併用するケースも。ただし、副作用が出ることもあるので、必ず獣医師指導のもと慎重に行いましょう。
毛包虫への感染を繰り返したり、治療効果があまり見られない場合には、他の疾患が隠れていないか血液検査などを行うこともあります。明確な予防法はありませんが、免疫の低下がこの病気を引き起こすので、なるべくストレスのかからない生活環境を整えることが大切です。
ツメダニ症
- 主な症状:軽度のかゆみ、大量のフケ
- 表れやすい部位:体幹、四肢
- 治療法:駆除剤の投与
ネコツメダニというダニが寄生することで、大量のフケが生じる皮膚病です。猫の症状は軽度であまりかゆみはありませんが、人がネコツメダニに刺されると発疹や強いかゆみ・痛みを伴います。
治療は駆除剤の投与が効果的。感染猫との接触で感染することが多いので、完全室内飼いを徹底し、感染猫との接触を避けることがなにより重要。同居猫が感染した場合、感染猫との接触を避け、使ったタオルやブラシなどを共有しないようにしましょう。
シラミ症
- 主な症状:フケ、かゆみ
- 表れやすい部位:体幹、四肢
- 治療法:ノミ駆除剤の投与、薬浴
シラミが寄生することで、フケやかゆみなどを引き起こす皮膚病です。野良猫を保護した場合に見つかることが多いので、被毛に白い粒がついていないかよく観察しましょう。
シラミが寄生している動物への接触で感染するため、室内飼いの猫の場合は稀ですが、不衛生な環境で飼育されている場合や体調不良でグルーミングできない場合、免疫不全がある場合などは注意が必要。
猫の首筋に垂らして投与するスポットタイプのノミ駆除剤はシラミにも効果的です。ただし、このような駆除剤は成虫には効果がありますが、すでに産み付けられた卵には効果がありません。シラミの卵は被毛1本1本の根元近くに産み付けられるので、たくさんの卵が確認できる場合には毛刈りが有効です。
飼育環境を清潔に保ち、ノミ駆除剤を定期的に投与することが予防になります。猫から猫へ感染する病気なので、多頭飼いの場合は特に注意しましょう。
その他
舐性皮膚炎
- 主な症状:同じ場所を舐め続ける、脱毛、皮のめくれ、筋組織の露出
- 表れやすい部位:前足、内股
- 治療法:ストレスを取り除く
運動不足や多頭飼育、引っ越しなどによるストレスが原因で、前足や内股など体の一部を舐め続ける病気です。猫の舌はザラザラで硬いので、舐めすぎると皮膚が傷つき、筋組織が露出してしまうことも。
一番の治療法は、ストレスの原因を突き止め対処してあげること。新しい猫との対面は徐々に行う、引っ越しのときには愛用していたグッズを新居でも使うなど、猫にストレスを感じさせないような工夫をしてあげましょう。
ただし、他の病気にかかっている可能性もあるので、このような症状が見られたら早めに獣医師に相談してください。
日光皮膚炎(日光過敏症)
- 主な症状:赤み、脱毛、ただれ、腫れ、かさぶた、腫瘍、出血
- 表れやすい部位:耳、口の周り
- 治療法:紫外線を避ける、抗炎症剤や抗生剤の投与、薬浴、病変部の外科的手術(がん化疑いの場合)
強い紫外線を長時間浴びることで、耳や口の周りの皮膚に赤みや脱毛などの症状が現れる皮膚病です。悪化すると皮膚の腫れやただれ、かさぶた、腫瘍、出血などの症状も。また、稀に扁平上皮癌を発症することもあります。毛の白い猫や色素の薄い猫が発症しやすいと言われているので、特に注意しましょう。
日光皮膚炎の治療では、紫外線対策が最も重要。外に出る猫の場合は、特に紫外線の強い時間帯(10:00~15:00)は外出を避ける、外出前には必ず低刺激性の日焼け止めを塗るなどの対策が必要です。室内飼いであっても、窓ガラスから紫外線が入り込んでしまうので、窓ガラスをUVカット化する、日光浴の時間を制限するなど工夫してあげましょう。
また、炎症がひどい場合には抗炎症剤の投与を、引っ掻いて出血などが見られる場合には細菌感染を防ぐため抗生物質が処方されることも。扁平上皮癌を発症している場合は、できるだけ早い外科手術が必要となります。
扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)
- 主な症状:脱毛、ただれ、かさぶた、潰瘍、出血、悪臭
- 表れやすい部位:耳、目・口の周り
- 治療法:腫瘍の切除、放射線の照射
猫に多い皮膚がんで、特に白い猫や色素の薄い猫が発症しやすいと言われています。長時間紫外線を浴び続けることが原因のひとつと考えられています。
特に耳や目・口の周りなどに発症しやすく、初期にはほとんど自覚症状はありませんが、進行すると脱毛やただれ、かさぶた、潰瘍などが見られます。さらに悪化すると出血や膿、悪臭などが生じます。
治療は、なるべく早いタイミングで腫瘍部分とその周辺を手術で切除する方法がメイン。ただし、手術が難しい場合には、放射線照射などの方法がとられることもあります。
紫外線の影響が原因のひとつと言われていますので、予防策としては室内飼いを徹底すること。また、早期発見のためにも、日頃からスキンシップを兼ねて、被毛や皮膚の状態をこまめにチェックしてあげることが大切です。
あごニキビ(ざ瘡)
- 主な症状:黒い砂粒のような点々(かゆみなし)、脱毛、赤い斑点、かゆみ、出血、膿
- 表れやすい部位:あご、唇、口角
- 治療法:原因に応じて対処、適切なスキンケア、抗炎症剤や抗生剤の投与
皮脂腺からの分泌物が詰まってあごや口周りに炎症を起こす皮膚病です。
軽度であれば、かゆみはなく黒い砂粒のような点々ができる程度です。ただし、症状が進行すると脱毛や赤い斑点、かゆみなどが生じます。家具などにあごをこすりつけるような仕草が見られたら要注意。重症化すると細菌感染を起こし、出血や膿などの炎症が生じるので、症状にあわせて抗炎症剤や抗生剤の投与で治療します。
あごニキビの原因には、以下のようにストレスやホルモンバランスの崩れなどさまざまな原因が考えられるので、原因にあわせた対処をしていくことが大切です。
- ストレス:生活環境を見直す
- ホルモンバランスの乱れ:動物病院へ相談
- 食器に繁殖した雑菌:食器の材質を変える、こまめに食器を洗う
- 食器アレルギー:食器の材質を変える
- グルーミング不足:定期的なお手入れ
- フードがあわない:フードの見直し
- ニキビダニ症:動物病院を受診
軽度の場合、飼い主さんが気にしすぎて触ってしまうとかえって症状が悪化してしまうことも。自己判断で人間用のニキビ薬などを塗ったりするのはNG。汚れているときは清潔な布で拭き取るなど、日常的なお手入れ以外は、あまり触らず様子を見るようにしましょう。
ただし、再発を繰り返す場合は何らかの疾患が隠れていることも考えられるので、獣医師に相談しましょう。
- 皮膚のトラブルってアレルギーだけじゃなくって本当にいろんな原因があるんですよぉ。症状だけで勝手に判断はできませんねぇ。
- ほんとですねっ。ノミ、カビ、ダニ、、、あぁ、、、怖いですっ。ストレスで皮膚病になることもあるなんてっ。
皮膚病から猫を守るための予防法
このように、皮膚病にはさまざまな種類がありますが、普段から飼い主さんが「予防対策」をとることで、猫を皮膚病から守ることができます。
定期的なブラッシングによる皮膚・被毛チェック
皮膚トラブルに早めに気づくためにも、日頃からスキンシップを兼ねて、定期的なブラッシングをしながら皮膚・被毛チェックをしましょう。
関連記事:猫のブラッシングのやり方や効果とは?ブラシの種類もご紹介
温度・湿度管理
室内の温度・湿度が高い状態だと、細菌や真菌などが発生しやすくなります。特に湿度の高い梅雨時は、エアコンの除湿モードや除湿器を使うなどして、湿度管理をしてあげましょう。
関連記事:猫の適温ってどれくらい?エアコンの設定温度と注意点
食事管理
キャットフードが体にあわず皮膚病を引き起こすこともあります。食物アレルギーと診断されたら、獣医師指導のもと、体にあった食事管理を継続して行うことが大切です。
関連記事:食物アレルギーが気になる猫の食事
予防薬の定期的な投与・室内飼いの徹底
ノミやダニなどの寄生虫による皮膚病の場合、予防薬を定期的に投与することで、感染から猫を守ることができます。また、感染した動物との接触で感染することを防ぐためにも、室内飼いを徹底することも大切です。
ストレスのかからない環境づくり
ストレスから皮膚病を引き起こすこともあるため、普段からストレスのかからない環境づくりを心がけることが大切です。猫にとってストレスを感じる原因はさまざまですので、少しでもそのストレスサインに気づいて解消してあげましょう。
■猫がストレスを感じる原因
- 引っ越し
- 多頭飼い
- 小さな子供
- 長期の留守番・ペットホテル
- 病院
- 部屋の模様替え
- 来客
- 運動不足
- 騒音
- 部屋の寒さ・暑さ
- かまいすぎ
- わたしたちってモフモフな毛で覆われてるから、飼い主さんも皮膚トラブルに気づきにくかったりしますよねぇ。こまめにスキンシップすることで、早い段階でちょっとした異常にも気づいてあげられますよぉ。
- 特に舐めたり噛んだり繰り返してるときは、皮膚トラブルがないかしっかりチェックしてあげないとですね!
よくある質問
サプリメントは皮膚病を治すことが目的ではなく、あくまで健康をサポートしてくれるもの。猫の状態によってとるべき栄養は違ってきますので、まずは獣医師に相談することをおすすめします。
- 真菌|皮膚糸状菌症
- 寄生虫|疥癬、ツメダニ症
ズーノーシス(人獣共通感染症)を防ぐためには、以下のような点に注意することが大切です。
- 定期的な駆虫
- 過度なスキンシップを避ける
- 手洗いの徹底
- こまめな掃除
- 室内飼いの徹底
- 噛まれた場合は動物病院で適切な処置を受ける
人間用の薬はあくまで、人間の病気を治すために作られたもの。猫に使用した場合の安全性や効果については明確にされていません。自己判断で薬を使用してしまうと、かえって皮膚病を悪化させてしまう可能性もあります。
皮膚トラブルを見つけた場合には、必ず獣医師に診断してもらい、処方された薬を使うようにしましょう。
まとめ
お伝えしてきたように、猫の皮膚病は原因によって症状も治療法も変わってきます。軽度のときには自覚症状がなくても、そのままにしておくと、重症化したり重い病気に進行してしまうものも。
強いかゆみや痛みで苦しんでいる猫の姿を見るのは、飼い主さんにとっても辛いものですよね…。皮膚病を防ぐためには、早期発見・早期治療がなにより大切です。そのためにも、日頃からしっかり予防策をとり、少しでも気になる様子が見られたら早めに獣医師に相談してくださいね。
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中