- ドライフードは、原材料を混ぜ合わせてエクストルーダーという機械で加熱・加圧して作られているんですねぇ。水分10%以下にするためにオーブンで乾燥しているんですよぉ。同じフードでも種類が違うと製法もまったく変わってきますよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
キャットフードにはドライフードやウェットフードなどさまざまな種類があります。
毎日愛猫に食べさせるごはんが、いったいどのように作られているのか気になりますよね。
今回は、キャットフードの製造方法についてフードの種類別に詳しく解説します!
キャットフードの種類
キャットフードにはさまざまな形状・食感のものがありますが、水分含有量、製法により大きく4種類に分けられます。
分類 | 水分含有量 | 製法 |
ドライ | 10%以下 | 加熱発泡処理(※)された固形状のものがほとんど。 |
ソフトドライ | 25~35% | 加熱発泡処理(※)されている。しっとりさを保つために湿潤調整剤を使用。 |
セミモイスト | 25~35% | 押し出し機などで製造され、発泡していないもの。しっとりさを保つために湿潤調整剤を使用。 ※現在はほとんど生産されていません |
ウェット | 80%以上 | 品質保持のため、殺菌工程を経ている。 |
※加熱発泡処理・・・エクストルーダーという押し出し成形機を使って、混ぜ合わせた原材料を120~160度まで加熱・加圧すること。
ドライフードの特徴と製造方法
特徴
ドライフードには以下のような特徴があります。
- 水分含有量10%以下
- 保存性に優れている
- 総合栄養食で効率よく栄養がとりやすい
水分含有量10%以下
4種類のフードのなかで最も水分含有量が少なく、カリカリとした食感です。水分がほとんど含まれていないため、新鮮な水をいつでも飲めるように用意しておく必要があります。
水分含有量13%以上を超えるとカビが生える恐れがあるため、12%以下に保つ必要がありますが、安全性を考えほとんどのドライフードは水分含有量10%以下となっています。
保存性に優れている
ドライフードは水分が少ないため、開封後も約1ヶ月は保存できます。
ただし、空気にふれるとフードが酸化しやすくなり風味や栄養価が落ちてしまうため、必ず密閉保存することが大切です。
総合栄養食で効率よく栄養がとりやすい
ドライフードは、水と一緒に与えるだけで健康を維持できる「総合栄養食」で、主食として使われます。
重量あたりの栄養価が高いため、効率よく栄養をとることができます。
製造工程
ドライフードの基本的な製造工程は以下の通りです。
①原材料の受け入れ
②粉砕機で原材料を細かくする
③正確に計量して混ぜ合わせ加熱
④エクストルーダーで120~160度まで加熱&加圧(加熱発泡処理)
⑤水分10%以下になるよう乾燥
⑥冷却・コーティング
⑦計量・包装
⑧出荷判定
①原材料の受け入れ
製造工場では、原材料の受け入れ検査が行われ、定められた規格にあった原材料のみ使用されます。
品質劣化を防ぐため、原材料にあわせた適切な保管管理を行っています。
②粉砕機で原材料を細かくする
粉砕機ですべての原材料の大きさが均一になるよう細かくします。(すでに粉状になっている原材料は、計量して直接ミキサーへ)
原材料の粉砕には、以下のようなメリットがあります。
- 加熱処理がしやすくなる
- 水を絡めやすくなる
- 機械の目詰まりを防げる
- 猫が消化しやすくなる
③正確に計量して混ぜ合わせ加熱
猫の健康を考えて設計された栄養バランスが崩れないよう、細かくなったそれぞれの原材料を正確に計量し、大型のミキサー(かくはん機)で、水分を足しながらしっかり混ぜ合わせ、蒸気で100度まで加熱します。
この過程で、炭水化物の主成分であるデンプンは糊化され、猫が消化しやすくなります。「猫は炭水化物を消化できない」と言われることもありますが、キャットフードの炭水化物は消化できるように作られているのです。
原材料を混ぜ合わせたら、異物などが混入していないか検査を行います。
④エクストルーダーで120~160度まで加熱&加圧(加熱発泡処理)
原材料を混ぜ合わせたら、エクストルーダーという押し出し成形機を使って、さらに120~160度まで加熱・加圧します。これを加熱発泡処理と言います。
加熱・加圧された生地は練り上げられながら押し出し口に押し出され、あらかじめ指定した厚みにカットされます。
押し出し口の形状によって、粒の形状(丸、四角、ドーナツ型、テトラポット型など)を変えることができます。
この工程により、加熱殺菌が行われ、微生物汚染を防ぐことができます。
⑤水分10%以下になるよう乾燥
エクストルーダーから出てきて成形された生地は、ドライフードとして常温保存が可能な「水分量10%以下」になるよう、オーブンを使って乾燥させます。
均一な水分のフードになるよう、粒の大きさ、形などをもとに、適切な乾燥温度や乾燥時間を設定します。乾燥不足はカビや酸化などを早め、乾燥過多はコストの健全性に大きく影響します。
⑥冷却・コーティング
乾燥させた生地を冷却します。
冷却前もしくは冷却後に、フードの酸化を防ぐ添加物や、加熱で失われてしまった栄養素をコーティングします。
また、ドライフードを崩れにくくするため油脂を塗ります。油脂は猫の嗜好性も高めてくれます。
⑦計量・包装
冷ましたフードは、異物などの混入がないか検査を行った後、正確に計量し、適正な包装資材を使って袋詰めします。
⑧出荷判定
出荷前に最終製品分析、全製造工程チェックを行い、合格したものが出荷されます。
- 生地を加熱したあとオーブンでしっかり乾燥しているから、あのカリカリの食感になるんですねぇ。
- ぼく、毎日食べてるものだし、実際どんなふうに作られているのか知りたかったんです!
乾燥時間や温度もポイントなんですねっ。乾燥が足りないと水分が多くなってカビが生えやすくなりますもんね。。。
ウェットフードの特徴と製造方法
特徴
ウェットフードには以下のような特徴があります。
- 水分含有量80%以上
- 開封後の保存がきかない
- 種類が豊富
水分含有量80%以上
4種類のフードのなかで最も水分含有量が多く、やわらかな食感で食べやすいフードです。水分がたっぷり含まれているため、栄養と一緒に水分補給もできます。
開封後の保存がきかない
水分が多く、空気にふれると腐りやすくなるため、開封後は少なくとも翌日までに食べきる必要があります。
種類が豊富
缶詰やパウチタイプ、アルミトレイ、プラスチックカップなど種類が豊富です。
総合栄養食もあるが基本的には間食
総合栄養食のウェットフードもありますが、ほとんどはおやつやごほうびとして与えられる「間食」です。
製造工程
ウェットフードの基本的な製造工程は以下の通りです。
①原材料の受け入れ
②原材料の前処理
③原材料を混ぜ合わせる
④脱気して密封
⑤殺菌して冷却
⑥洗浄・包装・検品・箱詰
⑦出荷
①原材料の受け入れ
製造工場では、原材料の受け入れ検査が行われ、定められた基準にあった原材料のみ使用されます。
品質劣化を防ぐため、原材料にあわせた適切な保管管理を行っています。
②原材料の前処理
ウェットフードの原材料は肉や魚がほとんどです。
原材料をきれいに洗浄し、頭や内臓などを取り除きます。魚は100度で蒸し煮した後に皮、中骨を取り除きます。
目視確認や除去装置などで取り切れなかったものは、金属検出器などを使って検出します。
③原材料を混ぜ合わせる
原材料をカットして混ぜ合わせ、缶やパウチなどに詰めていきます。その際、足りない栄養素や添加物が加えられます。
④脱気して密封
密封する前に缶詰やパウチの空気を抜きます(脱気)。
空気をしっかり抜くことで、風味や栄養素の変化を防ぎ、水やバクテリアの侵入からもフードを守ります。
⑤殺菌して冷却
微生物増殖を防ぐため、原材料の処理から一定時間内に加熱殺菌します。
品質低下を防ぐため、殺菌後はすぐに40度以下に冷却します。
⑥洗浄・包装・検品・箱詰
容器の汚れの原因となる油等の付着物を除去し、開缶・開封チェックを行い、品質維持に適した環境で保管されます。
⑦出荷
強い衝撃によって容器が破損しないよう取扱に注意して、出荷されます。
関連記事:ウェットフードを猫に与える前に知っておきたいメリット・デメリット
- ウェットフードは密封する前に、しっかり中の空気を抜いて加熱殺菌してあるので、開封するまで風味が保たれているんですねぇ。
- 柔らかい食感でいろんな種類があるから好きな子も多いですよねっ。
水分が多いぶん、腐らないように工夫がされてるんですね!
ソフトドライフードの特徴
特徴
ソフトドライフードには以下のような特徴があります。
- 水分含有量25~35%
- 加熱発泡した後、乾燥せず冷却
- 防腐剤や添加物を使用
水分含有量25~35%
ドライフードとウェットフードの中間に位置する、やわらかな食感のフードです。
ウェットフードよりも水分は少ないですが、開封後は腐りやすいため、早めに食べきった方が良いでしょう。
加熱発泡した後、乾燥せず冷却
半生タイプには、セミモイストフードもあります。どちらも水分含有量25~35%ですが、セミモイストフードとは製造方法が異なります。ソフトドライフードは、ドライフードと同じように加熱発泡し、乾燥させずにそのまま冷却します。
保存料を使用
開封後の品質保持のため、保存料を使用していることが多く注意が必要です。
セミモイストフードについて
かつて、セミモイストフードの湿潤調整剤として使用されていたプロピレングリコールは、猫にとって毒性が強いことが分かり、現在キャットフードへの使用が禁止されています。
そのため、現在セミモイストのキャットフードはほとんど生産されていません。
まとめ
- キャットフードは水分含有量・製法によって4種類に分けられるが、現在セミモイストはほとんど生産されていない
- ドライフードは水分含有量10%以下で保存性が高い
- 細かくした原材料を混ぜ合わせ蒸気で100度まで加熱することで、デンプンが糊化され猫が消化しやすくなる
- エクストルーダーという押し出し成形機で加熱・加圧して作られる
- 加熱・加圧後はオーブンで乾燥し冷却
- ウェットフードは水分含有量80%以上で水分補給にもなる
- 開封後は腐りやすいため翌日までに消費
- 密封する前に空気を抜くことで、風味や栄養素の変化を防ぎ、水やバクテリアの侵入から守る
- 原材料の処理から一定時間内に加熱殺菌されている
- ソフトドライ・セミモイストはどちらも水分含有量25~35%だが、製法が異なる
- ソフトドライフードは加熱発泡し、乾燥させずに冷却
- セミモイストは加熱発泡を行わない
- 保存料を使用していることが多い
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。