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【獣医師監修】猫エイズにかかったら?|感染経路・症状・検査方法・寿命・予防法

2019-06-24

猫ねこさん

猫エイズにかかったら?|感染経路・症状・検査方法・寿命・予防法

猫ねこさん
猫エイズと聞くと恐ろしい病気のイメージがあるかもしれませんが、感染しても発症せずに生き続ける子もいるんですよぉ。他の猫との接触を防げば感染の心配はありませんので、完全室内飼いを徹底することが大切ですよぉ。

かかりつけの獣医さんから突然、愛猫が「猫エイズ」だと言われたら…。
エイズという恐ろしい言葉を聞いただけで、「うちの子はもう死んでしまうの?」と不安で泣きたくなってしまうと思います。

でも、猫エイズに感染したからといって余命がわずかというわけではありません。
感染しても、なるべくストレスをかけないような生活を心がけることで、発症を食い止めることも可能
です。

今回は、そんな猫エイズの感染経路や症状、寿命、検査方法、治療法について徹底解説。
少しでも感染を防ぐための5つの方法についても紹介しますので、是非参考にしてくださいね。

猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)とは

猫エイズとは、猫免疫不全(エイズ)ウイルス(FIV)に感染することで、長期に渡って体の免疫機能を低下させていく感染症です。

感染したからといってすぐに発症するわけではない

猫免疫不全ウイルスに感染した猫はキャリア(保菌状態)猫となりますが、猫自身の免疫でウイルスの活動を抑えられている段階では症状は出ません。
徐々に体の免疫機能が低下し、ウイルスの活動が盛んになってくると発症するのです。

ウイルスを持っている猫すべてが発症するわけではない

キャリア猫(ウイルスを持っている猫)すべてが発症するわけではありません。
ウイルスを持っていても、発症することなく長く生き続ける猫もいます。

人間やその他の動物には移らない

猫免疫不全ウイルスは、猫科の動物(ヒョウ、チーター、トラなど)にしか感染しません。
人間や犬などその他の動物に感染することはありませんので、安心してくださいね。

感染経路

猫免疫不全ウイルス自体は感染力の弱いウイルスなので、空気感染や接触感染などの心配はありません。
多頭飼いで猫エイズに感染した場合でも、猫同士のグルーミングや食器の共有などで移る可能性は低いと言われていますが、数ヶ月以上の長期にわたるグルーミングや共有は感染リスクを上げる可能性がありますので注意が必要といえるでしょう。

ウイルスは血液や唾液に多く含まれているため、ほとんどの場合猫同士の喧嘩による噛み傷によって感染します。

母子感染もありますが、感染している母猫から生まれた子猫が必ずしも感染しているわけではありません。
また、交尾による感染もありますが確率は低いです。

そのため、完全室内飼いで他の猫と接触する機会がなければ、感染する可能性はほぼないと言えます。

症状

猫エイズには5つのステージがあり、徐々に症状が進行していきます。

  • 急性期
  • 無症状キャリア期
  • PGL期(持続性リンパ節腫大)
  • ARC期(エイズ関連症候群)
  • エイズ期

急性期:数週間~数ヶ月

感染して数週間~数ヶ月は、次のような症状が見られます。
ただし、症状は軽く、また猫エイズ特有のものでもないため、この段階で感染に気づくのは難しいでしょう。

  • 発熱
  • 下痢
  • リンパ節の腫れ
  • 口内炎
  • 結膜炎
  • 白血球の減少
  • 食欲低下
  • 元気がなくなる

無症状キャリア期:数ヶ月~数年

その後、急性期の症状が治まり、目立った症状が見られない時期を迎えます。
健康な猫と何ら変わりがないので一見治ったかのように思えますが、ウイルス自体は猫の体内にあるので、他の猫へ移してしまう可能性があります。

無症状キャリア期の期間には個体差があり、短くて数ヶ月、なかには無症状のまま一生を終える猫もいます。
猫エイズに感染しても発症しないかぎりは、他の猫と同じように生活できるということを理解しておきましょう。

PGL期(持続性リンパ節腫大):2~4ヶ月

無症状キャリア期を終えると、再び感染直後のように全身リンパ節の腫れが見られるようになります。

この期間は2~4ヶ月と短いため、気づきにくいことも多いようです。

ARC期(エイズ関連症候群):1年

短いPGL期を経て、ARC期に入ると体の免疫機能が徐々に低下していき、次のような症状が見られるようになります。

  • 目やに
  • 鼻水
  • くしゃみ
  • 鼻炎
  • 口内炎
  • 歯肉炎
  • 結膜炎
  • 下痢
  • 皮膚炎
  • 外耳炎

なかでもよく見られるのが口内炎です。
短期間で治る口内炎とは違い完治が難しいため、生涯付き合っていかなければならない厄介な病気です。
口の広範囲に及ぶ口内炎は強い痛みを伴うので食事がとれなくなり、最悪の場合命を落とすこともあります。

この段階に入ると余命は少なくなりますが、なかには適切な治療を行うことで長く生き続ける猫もいます。

エイズ期(後発性免疫不全症候群)

免疫機能が完全に機能しなくなるエイズ期に入ると、以下のようなさまざまな症状が見られます。
この段階に入ると、多くの猫は1~2ヶ月で命を落としてしまいます。

  • 急激な体重の減少
  • 貧血
  • 発熱
  • 元気がなくなる
  • リンパ節の腫れ
  • 下痢
  • 慢性口内炎
  • 呼吸器疾患
  • 悪性腫瘍(がん)
  • 日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)※
  • 真菌の感染
  • ブドウ膜炎
  • 猫伝染性腹膜炎

※免疫力が下がることで、健康な猫では問題のない病原体に感染して発症する感染症

猫ねこさん
猫エイズって聞くともう死んじゃうの?と思う人もいるかもしれませんが、感染してもすぐに発症する病気ではないんですねぇ。なかには感染しても症状が出ないまま一生を終える子もいるんですよぉ。
エイズって聞くだけでめちゃくちゃ怖い病気のイメージでした。。。でも発症しなければ他の子とおんなじように生活できるんですね。
クロベエ

寿命

猫エイズは、感染から発症まで長期間かかる感染症です。
個体差はありますが、感染後の余命は最低でも5年はあると言われています。

エイズと聞くと「必ず死んでしまう」というイメージを持ってしまうかもしれませんが、「感染すれば余命わずか」という病気ではないのでその点は安心してください。

前述のように、猫エイズには5つのステージがありますが、無症状キャリア期の期間は通常4~5年、長ければ10年程度症状が出ないことも…。
なかには、無症状のまま発症せずに生き続ける猫もいます。

感染猫の寿命を伸ばすには、無症状キャリア期や発症後に適切な治療を行うことが大切です。

検査方法

猫エイズに感染しているかどうかは、動物病院で検査をしてもらえれば分かります。
ここでは、検査方法や費用、注意点について見ていきましょう。

検査キットを使って血液を採取

主な検査方法は、検査キットを使った血液の採取です。
末梢血液中にウイルスに対する抗体(抗FIV抗体)ができているかを調べ、感染の有無を判断します。

検査結果はわずか10分ほどで分かります。

検査にかかる費用

動物病院によって異なりますが、検査費用は約4,000~5,000円です。
猫エイズ検査以外に血液検査や生化学検査、健康診断などを行うとさらに費用はかかります。

検査の際の注意点

検査を受ける際には、以下の点に注意しましょう。

  • 検査可能なのは感染後60日を過ぎてから
  • 猫エイズワクチンを接種している場合、感染していなくても陽性になる
  • 子猫の検査は生後6ヶ月を過ぎてから

検査可能なのは感染後60日を過ぎてから

猫エイズウイルスに対する抗体ができるまでには約60日かかります。
そのため、猫エイズの検査は感染後60日を過ぎてからでないと、正しい検査結果が分かりません。
感染直後に検査をして陰性だったとしても、1~2ヶ月後に再検査を行うと陽性になることがあります。

猫エイズワクチンを接種している場合、感染していなくても陽性になる

猫エイズワクチンを接種している場合、ウイルスに対する抗体が体の中にできています。
そのため、感染していなくても検査結果が陽性になってしまいます。

検査キットではワクチンによる抗体か感染による抗体かの判別ができないので、この場合は検査センターに検体を送って詳しい検査をする必要があります。

子猫の検査は生後6ヶ月を過ぎてから

生後6ヶ月以内の子猫は、母親から譲り受けた抗体が体に残っています。
そのため、母猫が感染していたり猫エイズワクチンを接種済みで体内に抗体ができている場合、子猫にもその抗体が引き継がれています。

生後6ヶ月以内に検査を行うと、感染していなくても検査結果が陽性になってしまいます。
正しい検査結果を知るためにも、子猫の場合は生後6ヶ月を過ぎてから検査を受けるようにしましょう。

治療法

今のところ、残念ながら猫エイズを完治させる薬や治療法はありません。

対症療法が中心(発症後)

発症後は免疫力の低下に伴ってさまざまな症状が出てきますので、それを和らげる「対症療法」が主な治療法となります。
また、症状によっては免疫抑制剤を使って免疫を上げる治療が行われることもあります。

清潔な環境・栄養バランスの良い食事(無症状キャリア期)

ただし発症前の無症状キャリア期であれば、ストレスのない生活を心がけて免疫力の低下を食い止めることも可能です。
もちろん必ず発症を防げるというわけではありませんが、飼い主さんにできるのは、猫が快適に生活できる環境を整えてあげる(清潔な環境・栄養バランスの良い食事)ことです。
飼い主さん自身が悲観的な気持ちにならないよう、愛情を持って接してあげることが何より大切です。

予防法

猫エイズへの感染を防ぐためにも、以下のような方法で予防しましょう。

  • 完全室内飼い
  • ワクチン接種
  • 去勢手術(オス猫の感染予防)
  • 健康診断(多頭飼いの感染予防)

完全室内飼い

猫エイズへの感染を防ぐには、完全室内飼いを徹底することが一番の予防法です。
猫エイズの感染は猫同士の喧嘩によるものがほとんどですので、野良猫や外飼いの猫と接触させなければ感染の心配はありません。

ワクチン接種

猫エイズワクチンの接種も予防法のひとつです。

ただし、ワクチンを接種したからといって100%感染を防げるものではありません。
また、接種による副作用や、線維肉腫という悪性腫瘍が接種部位にできる可能性もあります。

基本的に猫エイズは感染猫に接触しなければ感染することはありませんので、完全室内飼いで他の猫との接触がなければ必ずしも接種する必要はないでしょう。
ワクチン接種をした方が良いかどうかは、かかりつけの獣医さんに相談の上、慎重に判断してください。

接種時期

  • 初年度・・・2~3週間の間隔で3回接種
  • 初年度以後・・・年1回接種

※接種前に猫エイズウイルス検査を受けた方が良い

他の生ワクチンとの接種間隔に注意

他の生ワクチンと同時接種はできませんので注意してください。

  • 生ワクチン接種後:1ヶ月あけて猫エイズワクチンを接種
  • 猫エイズワクチン接種後:1週間あけて他の生ワクチンを接種

費用

動物病院によって費用は異なりますが、1回の接種費用の相場は約3,000~6,000円になります。

ワクチン接種した方が良い猫

  • 多頭飼いしている猫の中にキャリア猫がいる
  • 外飼いしている
  • 他の猫に接触する機会がある

関連記事:猫のワクチン接種について

去勢手術(オス猫の感染予防)

オス猫の猫エイズ感染率はメス猫の2倍です。
オス猫は縄張り意識が強く、特に発情期には激しい喧嘩をして怪我をすることが多いため、猫エイズに感染しやすいのです。

こうしたオス猫の感染を防ぐためには、去勢手術が効果的です。
去勢手術をすることで他の猫に対する攻撃的な面が和らぐことがあるため、感染予防になります。

また、去勢手術をすることで発情期のストレスからも解放されるので、感染した際免疫力が低下するのを防ぐことができます。

去勢手術にについて詳しくはこちらの記事(猫の避妊・去勢手術)を参考にしてくださいね。

健康診断(多頭飼いの感染予防)

先住猫がいる家に新しい猫を迎える場合は、対面させる前に必ず動物病院で健康診断を受けましょう。
特に新しく迎える猫が野良猫や外飼いの猫だった場合は、猫エイズに感染している可能性がありますので注意が必要です。
感染後正しい検査結果が出るまでには約2ヶ月かかりますので、少なくともそれまでは別室、ケージなどを使って極力接触を避けましょう。

猫ねこさん
猫エイズの感染は猫同士の喧嘩がほとんどなので、室内飼いで他の猫に接触しないようにするのが一番大事ですよぉ。ワクチン接種も効果的ですが、受けた方がよいかは獣医さんによく相談してみてくださいねぇ。
うちみたいにたくさん家族がいてしょっちゅう喧嘩してる、なんて時も注意しなきゃいけませんねっ・・・。
クロベエ

猫エイズにかかってしまったら

猫エイズにかかってしまったら、残念ながら病気自体を治すことはできません。
しかし、まだ発症していない段階であれば、なるべくストレスを与えないようにすることで発症を防げる場合もあります。
猫エイズであっても長生きする猫はいますので、少しでも楽しく過ごせるように愛情をたっぷり注いであげてください。

多頭飼いしている猫が感染した場合

猫エイズウイルスは感染力が弱いので、猫同士のグルーミングや食器の共有などで感染する可能性は低いです。
ただし、相性の悪い猫と喧嘩をしてしまうと感染する可能性がありますので、別室、ケージなどを使って感染を防ぐようにしましょう。

まとめ

猫エイズは感染から発症までに時間のかかる感染症です。
なかには感染しても生涯発症せずに過ごす子もいるので、決して悲観せず、少しでも免疫力が落ちないような快適な環境づくりを心がけてください。
我が子の生命力を信じて、愛情をもって接してあげてくださいね。

  • 猫エイズは猫免疫不全ウイルスに感染することで長期に渡って免疫機能を破壊する感染症
  • 感染してもすぐに発症するわけではない
  • ウイルスを持っている猫すべてが発症するわけではない
  • 人間や他の動物には移らない
  • 空気感染や接触感染はなく、猫同士の喧嘩による噛み傷が主な感染経路
  • 室内飼いで他の猫との接触機会がなければ、感染する可能性はない
  • 猫エイズのステージは5段階
  • 数ヶ月~数年の無症状キャリア期がある
  • 発症すると余命は少なくなるが適切な治療で寿命を伸ばすことはできる
  • 口の広範囲に及ぶ難治性口内炎が見られるのが特徴的
  • 感染すれば余命わずか、という病気ではない
  • 検査キットで血液を採取し、抗体ができているかを調べることで感染の有無が分かる
  • 検査可能なのは感染後60日以降
  • ワクチン接種している場合は、感染していなくても陽性になる
  • 子猫の検査は生後6ヶ月を過ぎてから
  • 対症療法が中心
  • 無症状キャリア期にストレスのない環境を整えることで免疫力の低下を防ぐことは可能
  • 完全室内飼いの徹底が一番の予防法
  • ワクチン接種は獣医さんに相談して慎重に判断
  • オス猫の感染を防ぐには去勢手術が効果的
  • 先住猫がいる家に新しく猫を迎え入れる時は必ず健康診断を受ける
  • 多頭飼いで相性の悪い猫がいる場合は生活空間を分ける
猫ねこ部編集室 エディター 守重美和
この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター

保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。

猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。

獣医師 平松育子
【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子

京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中