- 私達にとって塩分は必要な成分ですが、取りすぎは病気のもとなので禁物ですよぉ。人間の食べ物や猫用おやつを与えすぎるのはダメ。キャットフードの塩分にも注意してくださいねぇ。ただし、健康な猫なら少し塩分をとりすぎても、排泄できるので安心してくださいねぇ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
健康な猫であれば、少し塩分を取りすぎても、しっかり水分を与えれば問題ありません。
しかし、塩分過多は病気を引き起こすこともあるので、取りすぎは禁物です。
特に、人間の食べ物や猫用おやつの与えすぎには注意!
普段与えているキャットフードの塩分もチェックしてみてくださいね。
今回は猫が塩分をとりすぎないようにする3つの方法を徹底解説!
塩分の役割、塩分過多が原因で引き起こされる病気、塩分をとりすぎた時の対処法、猫に必要な1日の塩分量についても詳しく説明します。
塩分とは
塩分とは、食塩の量のことです。
食塩は、ナトリウムと塩化イオンが結合した塩化ナトリウム(NaCl)のことを指します。
食塩=ナトリウム(Na)+塩化イオン(Cl)
ナトリウム、塩化イオンともに、猫にとって必要なミネラルのひとつです。
塩分の役割
ここでは、塩分の役割について説明します。
ナトリウムの役割
ナトリウムは、細胞の正常な働きに欠かせないミネラルです。
細胞の外液に多く含まれるナトリウムは、細胞の内液に多く含まれるカリウムと相互にバランスをとって、以下のような役割を果たしています。
- 細胞内外の浸透圧を調節する
- 体液のph値を調節
- 体内の水分量を調節
- 筋肉の収縮と弛緩を調節
- 神経の情報伝達
- 栄養が細胞に行き渡るよう調整
塩化イオンの役割
細胞の外液中に含まれる塩化イオンには、以下のような役割があります。
- 体液のph値を調節
- 胃液の成分としてたんぱく質を消化を助ける
- 細菌に対して次亜塩素酸を出し殺菌
塩分過多が原因で引き起こされる病気
前述のように塩分は猫にとって必要不可欠な成分と言えますが、過剰摂取してしまうと猫の体に影響を及ぼします。
ここでは塩分過多が原因で引き起こされる病気について説明します。
主な病気は以下の通りです。
- 高血圧
- 動脈硬化
- 腎臓病
- 心臓病
- 高血圧性眼底・高血圧性網膜症
- 尿路結石
- 骨粗鬆症
以下、それぞれの病気について説明します。
高血圧
塩分をとりすぎて血液中のナトリウム濃度が高くなった場合、濃度を下げるために水分を多く欲します。「塩辛いものを食べると喉がかわく」のはこのことです。
その結果、体内の血液量が増えると心臓から送り出される血液量も増え、高血圧を引き起こします。
動脈硬化
高血圧の状態が続くと、血管の内側の壁に強い圧力がかかり硬くなる動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化になると血管が狭まり、詰まりやすくなります。
腎臓病
腎臓には過剰に摂取したナトリウムを尿と一緒に排出する働きがあります。塩分をとりすぎると腎臓に負担がかかり腎臓機能が低下します。
腎臓は一度機能が失われると回復することはなく、慢性腎臓病を引き起こします。慢性腎臓病がさらに進行すると、慢性腎不全につながります。
心臓病
塩分をとりすぎて高血圧になると、全身に血液を送り出すポンプの役割をしている心臓に大きな負担がかかり、心臓の壁が厚く(=心肥大)なります。心肥大が進行すると心機能の低下・心不全を引き起こします。
また、高血圧により動脈硬化になると血管が狭まり、狭心症や心筋梗塞にもつながります。
高血圧性眼底・高血圧性網膜症
塩分をとりすぎて高血圧になると、網膜のある眼底の動脈が細くなり、高血圧性眼底という目の病気を引き起こします。
高血圧性眼底の症状が進行すると、網膜に出血や白斑、むくみが見られる高血圧性網膜症になります。
尿路結石
過剰に摂取したナトリウムは尿と一緒に排泄されますが、その際カルシウムも一緒に排泄されます。尿中のナトリウムが多いと尿中のカルシウム量も増えるため、尿路結石になりやすくなります。
骨粗鬆症
塩分のとりすぎで尿中カルシウムが増えると、体内のカルシウムが不足し、骨粗鬆症を引き起こします。
- 塩分は我々に必要ですが、とりすぎは病気のもとになるので注意しなきゃいけないんですねぇ。
- 高血圧に腎臓病、心臓病。。。どれも怖い病気ですね。いくら好きでも毎日のように鰹節はやめときますっ。
塩分をとりすぎないようにする方法
ここでは、猫が塩分をとりすぎないようにする方法について説明します。
塩分をとりすぎないようにする方法は以下の通りです。
- 人間の食べ物(加工品、化学調味料)を与えない
- 猫用おやつを与えすぎない
- 塩分の多いキャットフードを避ける
以下、それぞれの方法について説明します。
人間の食べ物(加工品、化学調味料)を与えない
猫が人間の食べ物を欲しがって、つい与えてしまう飼い主さんもいるかもしれませんが、人間の食べ物は猫には塩分過多になります。
特にかまぼこ、ハム、ソーセージなどの加工品や化学調味料などは塩分が多いので与えないようにしましょう。
猫用おやつを与えすぎない
猫用のおやつにも塩分が多いものがあるため、与えすぎには注意が必要です。
塩分の多いキャットフードを避ける
キャットフードのなかにも塩分が多く含まれているものがあります。
キャットフードのパッケージの成分表にはナトリウムの含有量が記載されていますが、なかには、含有量の表記がないものや原材料にナトリウムや塩の表記があるものがあります。
このようなキャットフードは安全とは言えないのでなるべく避けるようにしましょう。
- 人間の食べてるものは美味しそうに見えますけど塩分が高いので避けましょうねぇ。おやつも食べ過ぎ注意ですよぉ。
- かまぼこ、ハム、ソーセージ、、、ぼくの大好物がぁっっ。でも病気になるのはイヤなので我慢しなくちゃですね!
塩分をとりすぎた時の対処法
健康な猫であれば、一時的に塩分をとりすぎてしまっても、しっかり水分を与えれば問題はありません。
そもそも健康な猫であれば、過剰な塩分は尿と一緒に排泄することができます。
猫に必要な1日の塩分量
前述のように、猫に塩分を与えすぎるのは良くありませんが、塩分が全く必要ないというわけではありません。
事実、AAFCOでは、キャットフードのナトリウム最低基準を100gあたり0.2%以上と定めています。
※AAFCO・・・米国飼料検査官協会の略称。ペットフードの栄養基準ラベル表示などに関するガイドラインを設定。フードの検査や認定、承認は行っていない。
神経質になりすぎる必要はありませんが、猫に必要な1日の塩分量を正確に知りたい場合は以下の計算式を使って求めると良いでしょう。
①ナトリウム量(mg)=3.1mg×1日に必要なカロリー(kcal)
②塩分量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1,000
まずは1日に必要なカロリーからナトリウム量を求め、ナトリウム量を塩分量に換算します。
■計算例
1日に450kcal必要な猫の場合
3.1mg×450=1,395mg(ナトリウム量)
1,395×2.54÷1000=3.54g(塩分量)
1日に必要なカロリーの計算方法については以下の記事をご覧ください。
【年齢・ライフステージ別】1日のキャットフードの量と回数の目安
- ただ、塩分をとりすぎたからといってすぐに体調が悪くなるわけじゃないんですよぉ。健康な子なら、とりすぎてしまったぶんはおしっことして体から出すことができるので安心してくださいねぇ。
- 水をしっかり飲めばいいんですね!でも、体のためにも普段から食べ物には気をつけますっ。
よくある質問
ここでは、猫の塩分に関するよくある質問をまとめています。
鰹節にはマグネシウムやリン、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれているため、与えすぎると尿路結石を引き起こす可能性があります。
また、人間用の鰹節は猫には塩分が高いため避けた方が良いでしょう。
鰹節を与える場合は、猫用の鰹節を少量与えるようにしましょう。心配な時にはかかりつけの獣医に相談することをおすすめします。
安い猫缶の中には塩分が多く含まれているものもあります。成分表示を確認したり、塩分測定器で塩分量を測ったりして、塩分過多にならないよう注意しましょう。
また、スープタイプのレトルトパウチは、手軽に猫の水分を補うことができる便利なフードですが、塩分やカロリーが高いものが多いため、与えすぎには注意しましょう。
人間用の釜揚げしらすは大量の塩を使っていますので、与えないようにしましょう。
しらすはあえて猫に与えなくてもよい食品ですが、しらす好きの猫にどうしても与えたい場合は、熱湯をかけて塩抜きをしてから与えることをおすすめします。また、塩抜きしらすであっても大量に与えると健康に影響を及ぼすため、ひとつまみ程度与えるようにしましょう。
また、与える頻度は週に1回程度にしておきましょう。
まとめ
塩分とその役割、塩分過多が原因で引き起こされる病気、塩分をとりすぎないようにする方法、塩分をとりすぎた時の対処法、猫に必要な1日の塩分量については以下のまとめを参考にしてください。
- 塩分とは食塩量のこと、食塩=ナトリウム+塩化イオン
- ナトリウム、塩化イオンともに猫にとって必要不可欠な成分
- 塩分過多は高血圧・動脈硬化、腎臓病、心臓病、高血圧性眼底・網膜症、尿路結石、骨粗鬆症を引き起こす
- 塩分の多い人間用の食べ物は猫に与えない
- 猫用おやつも塩分が多いものがあるため与えすぎに注意
- 含有量表記がない、原材料にナトリウムや塩の表記があるフードは避ける
- 塩分をとりすぎたときは水分をしっかり与える
- 健康な猫であれば過剰な塩分は尿と一緒に排泄することができる
- AAFCOが定めるナトリウム最低基準は100gあたり0.2%以上
- 猫に必要な1日の塩分量は1日に必要なカロリーをもとに計算したナトリウム量から求められる
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。