- 犬がキャットフードを食べ続けると、栄養バランスが崩れて体調を崩したり肥満につながるので、犬にはドッグフードをあげましょう~。一度キャットフードの濃い味に慣れてしまうとドッグフードを食べなくなることもあるので注意が必要ですよぉ。
「犬が猫の餌を盗み食いして困る…。」
犬と猫を一緒に飼っている家ではこんな声をよく聞きます。
見た目はドッグフードとほとんど同じですが、犬がキャットフードを食べても健康に問題ないのか心配になりますよね。
結論から言うと、つまみ食いしたくらいでは問題ありませんが、食べ続けると栄養が偏って体調を崩したり肥満になる恐れがあります。
犬の健康を考えれば「犬のごはんはドッグフードが一番!」ということです。
今回は、犬がキャットフードを食べてはいけない理由を徹底解説!
犬がキャットフードを好む理由、犬と猫に必要な栄養の違い、犬と猫を一緒に飼っている場合の食事の与え方についても紹介します。
犬がキャットフードを好む理由
犬がキャットフードを好むのは以下の理由が考えられます。
- 濃い味付け、うまみ成分のコーティング
- 動物性たんぱく(甘いアミノ酸)が豊富
濃い味付け、うまみ成分のコーティング
猫は餌の好き嫌いが多く偏食しがちです。
そんな猫にも好んで食べてもらえるよう、キャットフードの外側にうまみ成分がコーティングされていたり、濃い味付けのものが多く嗜好性を高めています。
こうした嗜好性の高さが、犬に好まれる理由の一つでしょう。
動物性たんぱく(甘いアミノ酸)が豊富
犬は「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」の4つの味覚のなかで、「甘味」を最も感じやすい動物です。なかでも甘いアミノ酸(牛・豚・羊・鶏・馬・サケ・ニシン・マグロ・カツオなど)が大好きです。
キャットフードは動物性たんぱく(甘いアミノ酸)が豊富なので、好んで食べる犬が多いと言われています。
猫と犬に必要な栄養の違い
以下の表は、成猫と成犬のAAFCOの栄養基準の違いを比較したものです。
AAFCOとは「米国飼料検査官協会」のことで、必須栄養素(※)(たんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミンなど)の最低基準を定めている機関です。
※必須栄養素・・・食事から摂取しなければいけない栄養素
栄養素 | 単位 | 猫 | 犬 |
●たんぱく質 | % | 26.0以上 | 18.0以上 |
アルギニン | % | 1.04以上 | 0.51以上 |
ヒスチジン | % | 0.31以上 | 0.19以上 |
イソロイシン | % | 0.52以上 | 0.38以上 |
ロイシン | % | 1.24以上 | 0.68以上 |
リジン | % | 0.83以上 | 0.63以上 |
メチオニン+シスチン | % | 0.40以上 | 0.65以上 |
メチオニン | % | 0.20~1.5 | なし |
フェニルアラシン+チロシン | % | 1.53以上 | 0.74以上 |
フェニルアラニン | % | 0.42以上 | なし |
トレオニン | % | 0.73以上 | 0.48以上 |
トリプトファン | % | 0.16~1.7 | 0.16以上 |
バリン | % | 0.62以上 | 0.49以上 |
●脂肪 | % | 9.0以上 | 5.5以上 |
リノール酸 | % | 0.6以上 | 1.1以上 |
アラキドン酸 | % | 0.02以上 | なし |
●ミネラル | |||
カルシウム | % | 0.6以上 | 0.5~1.8 |
リン | % | 0.5以上 | 0.5~1.6 |
カリウム | % | 0.6以上 | 0.6以上 |
ナトリウム | % | 0.2以上 | 0.08以上 |
塩化物 | % | 0.3以上 | 0.12以上 |
マグネシウム | % | 0.04以上 | 0.06以上 |
鉄 | mg/kg | 80以上 | 40以上 |
銅 | mg/kg | 5以上 | 7.3以上 |
マンガン | mg/kg | 7.6以上 | 5.0以上 |
亜鉛 | mg/kg | 75以上 | 80以上 |
ヨウ素 | mg/kg | 0.6~9.0 | 1.0~1.1 |
セレン | mg/kg | 0.3以上 | 0.35~2 |
●ビタミン・その他 | |||
ビタミンA | IU/kg | 3,332~333,300 | 5,000~250,000 |
ビタミンD | IU/kg | 280~30,080 | 500~3,000 |
ビタミンE | IU/kg | 40以上 | 50以上 |
ビタミンK | mg/kg | 0.1以上 | なし |
チアミン(ビタミンB1) | mg/kg | 5.6以上 | 2.25以上 |
リボフラビン(ビタミンB2) | mg/kg | 4.0以上 | 5.2以上 |
パントテン酸(ビタミンB5) | mg/kg | 5.75以上 | 12以上 |
ナイアシン(ビタミンB3) | mg/kg | 60以上 | 13.6以上 |
ビタミンB6 | mg/kg | 4.0以上 | 1.5以上 |
葉酸 | mg/kg | 0.8以上 | 0.216以上 |
ビオチン | mg/kg | 0.07以上 | なし |
ビタミンB12 | mg/kg | 0.02以上 | 0.028以上 |
コリン | mg/kg | 2400以上 | 1360以上 |
タウリン | % | 0.1以上(ドライ) | なし |
% | 0.2以上(ウェット) |
表のように、猫と犬に必要な栄養素には類似点もありますが、以下のような違いもあります。
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 猫は体内で必須栄養素「タウリン」を合成できない
猫には動物性たんぱくが不可欠
犬が肉食に近い「雑食動物」であるのに対し、猫は「完全肉食動物」です。
猫の必須栄養素(アラキドン酸)は動物性食材にしか含まれていないため、肉や魚(動物性たんぱく)を食べなくては生きていくことができません。
また、猫は炭水化物よりもたんぱく質を分解する能力が高く、たんぱく質をエネルギーに変えることができます。たんぱく質は猫の体内で分解されやすく不足しがちなため、健康を保つためにはたんぱく質をしっかりとる必要があります。
関連記事:猫に必要なたんぱく質の種類や量
猫は体内で必須栄養素「タウリン」を合成できない
タウリンはアミノ酸の一種で、猫の必須栄養素です。
犬は体内でタウリンを合成することができますが、猫は合成することができないため、食事からとる必要があります。
- 猫と犬ではとらなきゃいけない栄養が違うんですねぇ。雑食の犬とは違って、猫はお肉なしには生きられない体なんですよぉ。必須栄養素のタウリンも猫は自分で作れないので、キャットフードにはタウリンがたくさん入っているんですねぇ。
- 見た目は一緒に見えても中に入ってるものは違うんですねっ。猫と犬って似てるようで実はまったく違う動物ですもんね。
犬がキャットフードを食べ続けた場合
犬が猫の餌を食べてしまったからといって、すぐに犬の健康状態が悪くなるということはありませんが、日常的に食べるのはオススメできません。
犬がキャットフードを食べ続けると、以下のようなリスクが高まります。
- 栄養過多・栄養不足
- 肥満
- 塩分過多
- ドッグフードを食べなくなる
栄養過多・栄養不足
前述のように、猫と犬では必要な栄養が異なるため、毎日のように食べ続けると栄養過多や栄養不足になります。栄養バランスが崩れた食事を続けると体調を崩す可能性が高まります。
肥満
キャットフードは高たんぱく高脂肪のため、肥満になる可能性もあります。
肥満になると以下のような病気のリスクも高まります。
- 関節炎
- 椎間板ヘルニア
- 呼吸器系の病気
- 皮膚炎
- 便秘
- 糖尿病
塩分過多
キャットフードは塩分が多いため、濃い味を好む犬は食べすぎてしまいがちです。
塩分を多くとると、必要以上の塩分を体から排出させようと腎臓に負担がかかります。腎臓に負担がかかることで、腎臓病を引き起こすリスクが高まります。
ドッグフードを食べなくなる
嗜好性の高いキャットフードは、犬にとってジャンクフードのように癖になるかもしれません。
そのため、一度キャットフードに慣れてしまうとドッグフードを食べなくなることがあります。
- 少し食べたくらいでは問題ありませんが、毎日のように食べさせると健康を損ねてしまうんですよぉ。犬にとっては魅力的な餌かもしれませんが、犬にはドッグフードをあげてくださいねぇ。
- キャットフードは高カロリーだしついつい食べたくなっちゃうのも分かる気がっ。。。(笑)美味しいものを一度食べちゃうとあっさり味には戻れないですもんねっ。
犬と猫を一緒に飼っている場合の食事の与え方
犬と猫を一緒に飼っている場合、その食事の習性の違いを考慮して、食事の与え方を工夫する必要があります。
犬と猫の食事の習性の違い
猫が少し食べては遊びに行きまた食べる「ダラダラ食い」を繰り返すのに対し、犬はどれだけ食べても満足せず、あげれば与えるだけ食べてしまいます。
これは犬と猫の食事の習性の違いが関係しています。
- 猫・・・単独で狩りをする動物
- 犬・・・群れで狩りをする動物、腐食動物(大型肉食動物の残した動物の死体を主に食べる)
猫は単独で小動物の狩りをする動物です。
小動物1匹では1日の食事量を補えないため、1日に何度も狩りをします。少しでも多くの獲物を狩るため、例え食事の途中であっても獲物を見つけたら狩りを優先します。
こうした習性が「ダラダラ食い」につながっているのです。
一方、犬は基本的に群れで狩りをします。
狙う獲物は大型で、一度仕留めたら十分な食料を確保できるため、猫のように1日に何度も狩りをすることはありません。狩りが成功しないと食事にありつけないことや、仲間同士の食事の競争に負けると食べ物が残っていないことから、できるだけ早く多く食べようとします。
こうした習性が「あるだけ全部食べる」といった食べ方につながっていると思われます。
関連記事:猫と犬の食性の違い
食事の与え方を工夫する必要がある
こうした習性の違いをふまえると、犬と猫の食事は分けて与える必要があります。一緒に飼っている場合、以下のような工夫をしてみましょう。
- 食事時間をずらす
- 食事の場所を別々にする
- 猫の餌は犬の届かない場所置く
食事時間をずらす
食事時間が一緒の場合、猫が残した餌を犬が食べてしまうことがあるため、時間をずらしてあげると良いでしょう。
食事の場所を別々にする
犬と猫で食事の場所を分けるのもひとつの方法です。特に猫はデリケートで、周りに他の動物がいることでストレスを感じる場合もあります。
犬が届かない高い場所に猫の餌を用意する
キャットタワーなどの高い場所に猫の餌を用意するのも良いでしょう。犬の届かない場所に置くことで横取りを防ぐことができます。
よくある質問
ここでは、犬と猫の食事に関するよくある質問をまとめています。
日常的に食べ続けているわけではなくても、胃腸の弱い犬の場合、下痢や嘔吐の症状が出ることもあります。
「代謝が落ちてドライフードを受け付けなくなった老犬に、猫缶を与えたら元気が出た」という話もあるようです。たしかに、猫用フードは犬用フードよりたんぱく質が豊富ですので、食欲が落ちた老犬にも魅力的で食いつきは良くなるでしょう。
しかし、毎日のように与えれば犬と猫の必要な栄養素は異なりますので、さまざまな病気の原因になってしまう恐れがあります。たまにあげるのは弾みがつきよいかもしれませんが、食べるからといって犬に猫用フードをあげ続けるのはやめましょう。
犬と同様、猫にドッグフードを与え続けると健康を損ねる可能性があります。
キャットフードには、猫が体内で合成できないタウリンが豊富に含まれていますが、ドッグフードにはほとんど含まれていません。タウリンが体内で不足すると、網膜に障害が起き視力が低下する可能性があります。最悪の場合、失明するリスクもありますので、猫にドッグフードを日常的に与えてはいけません。
猫には、猫に必要な栄養がつまったキャットフードを与えましょう。キャットフードの選び方について詳しく知りたい方はこちらの記事(キャットフード選び方ガイド)も参考にしてくださいね。
関連記事:猫にドッグフードを与えてはいけない理由
まとめ
- キャットフードは味が濃く嗜好性が高いため犬が好む
- 犬は動物性たんぱく(甘いアミノ酸)が大好き
- 犬と猫では必要な栄養素が違う
- 猫の必須栄養素(アラキドン酸)は動物性食材にしか含まれていない
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 猫はタウリンを合成できないため食事からとる必要がある
- 犬がキャットフードを食べ続けると栄養バランスの崩れ・肥満・塩分過多・ドッグフードを食べなくなる恐れがある
- 犬と猫を一緒に飼っている場合は、横取りをしないよう食事の与え方に工夫が必要
- 猫がドッグフードを食べると最悪の場合失明の可能性もある
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中