- 猫は尿路結石にかかりやすいので、普段から水分をしっかり与えてストレスがかからないよう注意してくださいねぇ。尿路結石に配慮したキャットフードで普段から食事を見直すのも大切。もし尿路結石にかかった場合は獣医さんの指導のもと療法食を与えてくださいねぇ。早めの治療が肝心なので、普段から排尿の様子をチェックしておきましょう~。
猫がかかりやすい尿路結石は、食生活・水分不足・環境・ストレスなどが原因。
トイレに行く回数が増えたり、痛がって鳴く素振りなどが見られたら早めに先生に診てもらいましょう。
尿路結石の種類は大きく分けるとストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類。
治療は食事療法や手術。結石の種類や大きさ、猫の状態によっても変わります。
今回はそんな猫の下部尿路疾患について徹底解説。
尿路結石の種類や症状・治療方法・治療費・予防法について詳しくご紹介します!
猫の下部尿路疾患(FLUTD)とは
FLUTDとは、猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease)の略で、「猫のおしっこに関連する病気全般」を指します。
- 細菌性膀胱炎
- 特発性膀胱炎
- 膀胱腫瘍
- 尿路結石
- 血尿
猫の尿路結石とは
FLUTDのなかでも特に猫がかかりやすいのが尿路結石です。猫の尿路結石とは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に結石ができる病気です。
猫の主な尿路結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウム
尿路結石にはいくつか種類がありますが、特に多くの猫がかかりやすいのは以下の2種類です。
- ストルバイト結石
- シュウ酸カルシウム
以下、それぞれの結石について説明します。
ストルバイト結石
ストルバイト結石とは、尿がアルカリ性に傾く(pHが高い)ことでできる結石です。pHが6.6以上で結晶化しやすく、1歳~6歳の猫に多い結石です。
ストルバイト結石は食事療法や薬を使って溶かすことができ、症状や石の大きさにもよりますが、およそ2ヶ月以内でほぼ消えるようです。そこからは結石予防の維持食に移行します。(必ず獣医の指示に従ってください。)
■尿のpH
尿が酸性かアルカリ性かを示す指数。0~14までの数字で表す。
pH=7が中性。7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性。健康な猫の尿のpHは6.2~6.6(弱酸性)。
●ストルバイト結石ができるメカニズム
ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)ができる原因のひとつに「尿素分解菌の感染」があります。
尿素分解菌とは、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する菌のことです。尿素が分解されてアンモニアができると、尿はアルカリ性に傾きます。尿に溶け出したリンやマグネシウムは、尿が酸性であればそのまま排出されます。しかし、尿がアルカリ性になると、リンやマグネシウムがアルカリ性の液体に溶けにくい性質から結晶化しやすくなります。
一度結晶ができてしまうと短期間で大きく成長し、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)になります。
■結晶と結石
結晶・・・結石になる前の肉眼で見えない粒子。尿検査で発見できる。
結石・・・結晶が集まって肉眼でも見える大きさになった状態。レントゲン検査、エコー検査で発見できる。シュウ酸カルシウム
シュウ酸カルシウムとは、尿が酸性に傾く(pHが低い)ことでできる結石です。
シュウ酸カルシウムは一度できてしまうと食事療法でも溶かすことは難しく手術が必要です。pHが6.0以下で結晶化しやすく、7~11歳の猫に多い結石です。
●シュウ酸カルシウムができるメカニズム
シュウ酸にはカルシウムと結びつきやすい性質があり、通常腸の中でカルシウムと結びつくと便としてそのまま排出されます。
しかし、腸内のカルシウムが少ない場合、行き場を失ったシュウ酸は尿として排出されます。尿が酸性に傾き尿中のカルシウム濃度が上がると、尿中でシュウ酸とカルシウムが結びつきシュウ酸カルシウムになります。
カルシウム、リン、マグネシウムのバランスが重要
カルシウム、リン、マグネシウムは猫の健康にとって必要不可欠なミネラル成分です。これらは互いに結びついて働く成分なので、どれかひとつの量に注意すれば良いというわけではなく、猫にとって良いバランスになっているかが重要です。猫にとって理想的なバランスはカルシウム:リン:マグネシウム=1.2:1:0.08と言われています。
カルシウムはリンよりも少し多め
リンとカルシウムは結びつくと「リン酸カルシウム」となり骨の主成分となります。リンがカルシウムより多いと骨を溶かしてカルシウムを取り出すこともあります。カルシウムがリンより少し多めのバランスは猫の健やかな成長に欠かせません。
カルシウムはマグネシウムより多めだが、マグネシウムが少なすぎてもダメ
またリン同様、マグネシウムもカルシウムと結びつくと骨を作る働きをします。マグネシウムが極端に少ないと心疾患、発育不全、筋肉の痙攣など健康に大きな影響が出ます。猫の健康維持には、カルシウムがマグネシウムより多く、かつマグネシウムが少なすぎないバランスが重要です。
マグネシウムはリンより少なめ
マグネシウムがリンより多いと尿中で結びつきストルバイト結石の原因となります。マグネシウムがリンより少なめのバランスは猫のストルバイト結石予防に繋がります。
尿路結石の原因がマグネシウムの過剰摂取と誤解されることも多いですが、マグネシウムだけを制限すれば尿路結石を防げるわけではありません。たしかに、マグネシウムが多いとストルバイト結石になりやすいですが、逆に少なすぎるとシュウ酸カルシウムの可能性が高まります。マグネシウムを適度に抑え、なおかつカルシウムやリンとのバランスをとって摂取することが大切なのです。
以下は、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの特徴についてまとめた表です。
ストルバイト結石 | シュウ酸カルシウム | |
尿のpH | 高い(アルカリ性) | 低い(酸性) |
結晶化しやすいpH値 | 6.6以上 | 6.0以下 |
かかりやすい年齢 | 1~6歳 | 7~11歳 |
治療法 | 主に食事療法(投薬・手術が必要な場合も) | 手術 |
マグネシウムの量 | 多いとなりやすい | 少ないとなりやすい |
- 尿路結石にも大きく分けると2種類あるんですねぇ。マグネシウムを減らせばいいというものではなく、あくまでカルシウムとリンとのバランスをとることが大切なんですよぉ。
- まったく真逆みたいな結石ですもんねっ。ぼくのような子猫はストルバイト結石ができやすいけれど、逆にマグネシウムを制限しすぎちゃうと、シュウ酸カルシウムができやすいということですね。
尿路結石の原因
猫が尿路結石になる主な原因は以下の通りです。
- 食生活
- 水分不足
- 環境
- ストレス
以下、それぞれの原因について説明します。
食生活
キャットフードには、カルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラル成分が含まれています。これらのバランスが悪かったり、過剰に摂取したりすると、尿に排泄されるミネラルが増え、尿のpHバランスが崩れてしまいます。尿のpHバランスが崩れることで結石ができやすくなります。
また、人間の食べ物も猫にとっては塩分、ミネラルが多すぎるため、結石の原因となります。
イリコやチーズなどのミネラルが多すぎる物、シュウ酸が含まれているホウレンソウなどの野菜類は避けてください。おやつのあげすぎにも注意です。
水分不足
猫は普段からあまり水を飲まないため、尿の濃度が上がり尿に溶けているミネラルが結晶化しやすくなります。
トイレ環境
「トイレが汚い」「多頭飼いでトイレの数が足りない」などトイレ環境に問題がある場合、猫はトイレを我慢するようになります。トイレを我慢すると膀胱炎を引き起こし、尿路結石にもかかりやすくなります。
ストレス
ストレスを感じることでも結石ができやすくなります。よくある猫のストレスは以下の通りです。
- 多頭飼い(相性・トイレ不足)
- 引っ越し
- 来客
- 騒音
- 匂い
- 普段使っているものの変化(食器・トイレ)
- 運動不足
尿路結石の症状
猫が尿路結石になると、以下のような症状が見られます。
- トイレに行く回数が増える(一般的な猫の排尿回数は約2回/日)
- 頻繁にトイレに行くが少量の尿しか出ない
- 排尿時に痛みで鳴く
- トイレにいる時間が長い(うずくまる)
- トイレ以外の場所で排尿する
- 尿の色が赤、オレンジ、茶色
- お腹や足を触ると痛がる
- 陰部や腹部を頻繁に舐める
- 尿と一緒に砂状の結晶や結石が出る(猫砂がキラキラ光って見える)
- 【危険】尿が出ない
尿が出ていないことに気づいたら一刻も早く受診
なかでも危険なのは、尿が出ない状態です。結石が尿道を塞いでしまうと排尿できず、尿毒症を引き起こします。最悪の場合わずか3日で死に至ることもあるため、尿が出ていないことに気づいたらすぐに病院に連れていきましょう。
尿路結石の治療方法
尿路結石になったら必ず獣医の診断を受けて治療を行う必要があります。ここでは、尿路結石の治療方法について詳しく説明します。
複数の検査を行って尿路結石の種類を特定
尿路結石が疑われる場合、まずは検査を行います。尿路結石の主な検査は以下の通りです。
- 尿沈査検査:尿を顕微鏡で観察。結晶ができているか分かる。結晶の形から結石の種類を推測できる。
- 尿性状検査:尿の色、尿比重、尿pH、尿糖、尿タンパクなどを調べる。
- 画像検査:レントゲン検査、またはエコー検査。結石ができているか分かる(種類までは分からない)
- 尿培養検査:細菌の種類が分かる。
治療方法は結石の種類や大きさ、猫の状態などによって違う
ストルバイト結石の場合の治療法は主に食事療法ですが、結石の大きさや原因、猫の状態によっては投薬や手術が行われます。食事療法を約4~6週間行うと結石が溶けると言われていますが、症状によって期間は変わります。
シュウ酸カルシウムは、食事療法で溶かすことができないため手術が必要です。
食事療法
獣医の指示のもと、結石を溶かすことを目的として作られた療法食を使って治療を行います。
尿路結石に配慮した総合栄養食は、あくまで健康な猫向けの予防食なので、療法食のような効果は期待できません。
尿石症になった猫は再発することが多いので、治療食は石が確認できなくなるまで続けますが、医師によっては継続するよう指示されることもあります。
投薬
排尿時の痛みを和らげる痛み止め、膀胱の筋肉の痙攣を抑える鎮痙攣剤、細菌感染の場合の抗生物質など。
手術
尿石が尿道に詰まっている場合はカテーテルで除去しますが、それができない場合は手術が必要になります。また、結石が大きく溶かせない、何度も再発を繰り返している場合なども手術となります。
なお、ストルバイト結石、シュウ酸カルシウムともに、まだ結晶の状態であれば食事療法やpH調整サプリなどで対応できるため、早めに治療をすることが大切です。
尿路結石の治療費
猫の尿路結石の治療費の目安は以下の通りです。
- 診察料・・・約500円~3,000円
- 尿検査・・・約1,500円~3,000円
- 血液検査・・・約10,000円~15,000円
- レントゲン検査・・・約3,000円~8,000円
- エコー検査・・・約5,000円
- 処置料・・・約500円~3,000円
- 内服薬・・・約2,000円~5,000円
- 皮下注射・・・約5,000円~10,000円
- 静脈点滴・・・約10,000円
- カテーテル治療・・・約5,000円~10,000円
- 食事療法(療法食)・・・約3,000円~4,000円
- 入院費・・・約3,000円~10,000円/日
- 手術費・・・約30,000円~100,000円
※診療費は地域や病院によって異なりますので、受診する病院で確認してください。
食事療法や投薬だけなら約5,000円~15,000円の治療費で済みますが、手術が必要になった場合は約150,000円~300,000円と非常に高額になるため、日頃から尿路結石にならないようケアを行うことが大切です。もしもの時のためにペット保険に入っておくのもひとつの方法です。
- 結石の種類、大きさ、体の状態によって治療法は変わってくるんですねぇ。食事で治せればいいんですけど、手術になればかなりの高額になりますよぉ。
- さんじゅうまんっ!!おかあさん泣いちゃいます。。とにかく早め早めに尿路結石に気づいて、治療をすることが大事なんですねっ。
普段からできる尿路結石予防法
猫が尿路結石になって辛い思いをしないよう、普段から尿路結石を予防することが大切です。主な尿路結石予防法は以下の通りです。
- 水をしっかり与える
- トイレを清潔に保つ・個数を確保する
- ストレスを取り除く
- 定期健診を受ける
- 尿路結石に配慮したキャットフードを与える
水をしっかり与える
水はいつも新鮮なものを用意し、できればフードと離れた場所にも水飲み場を用意すると良いでしょう。また容器は小さすぎず、猫が飲みやすい平らなものが良いでしょう。猫によっては流れる水を好む場合もあるため、ウォーターファウンテンという循環装置を用意するのもひとつの方法です。また、水分量の多いウェットフードを取り入れるのもおすすめです。
関連記事:水を飲まない猫への上手な飲ませ方
トイレを清潔に保つ・個数を確保する
トイレを我慢させないためにも、トイレはいつも清潔にしておきましょう。また、多頭飼いの場合は、猫が我慢せずに済むよう、できれば猫の数+1個のトイレを用意するのがベストです。
関連記事:トイレ掃除のコツ
ストレスを取り除く
猫によってストレスは違いますが、考えられる原因を探して猫が心地よく過ごせるようにしましょう。例えば、運動不足の場合、飼い主さんが積極的に遊びに付き合ってあげると良いでしょう。
定期健診を受ける
年に一度は必ず健診を受けに行きましょう。いつでも相談できるかかりつけの動物病院を決めておくと、万が一のときも安心です。
尿路結石に配慮したキャットフードを与える
市販のキャットフードのなかには、普段から猫の尿路結石を予防したい方のために、尿路結石に配慮した総合栄養食があります。これは療法食と違って、健康体の猫向けに作られています。低マグネシウム、低リン、尿pH調整など利尿を促すような工夫がされているのが特徴です。
下部尿路疾患が気になる猫向けキャットフードについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。是非参考にしてくださいね。
下部尿路疾患・尿路結石が気になる猫におすすめのキャットフード
猫の下部尿路疾患(FLUTD)・尿路結石に関するよくある質問
尿路結石になりやすいのは以下のような猫です。
- 遺伝・体質
- オス猫
- 3~5歳
- 長毛種
- 純血種
- 肥満気味
親猫が尿路結石にかかったことがある場合、子猫も発症する可能性が高いので、普段から尿路結石に配慮したキャットフードを与えるようにしましょう。
また、オス猫はメス猫と比べて尿管が狭くカーブしているため、尿路結石になりやすいと言われています。
まとめ
猫が尿路結石になる原因・治療法や予防法については以下のまとめを参考にしてください。
- FLUTDとは猫の下部尿路疾患の略
- 猫がかかりやすい尿路結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウム
- ストルバイト結石は尿がアルカリ性に傾くことでできる
- シュウ酸カルシウムは尿が酸性に傾くことでできる
- 猫に必要なミネラルは極端に制限すると健康に害を及ぼす
- マグネシウムを抑えるとストルバイト結石には効果的だがシュウ酸カルシウムを引き起こす可能性がある
- 猫の尿路結石の原因は食生活、水分不足、環境、ストレスなど
- 尿が出ず尿毒症になったら命の危険もあるのですぐに受診が必要
- ストルバイト結石の治療法は主に食事療法、場合により投薬や手術を行う
- シュウ酸カルシウムの治療は手術のみ
- 結晶の状態ならば食事療法やサプリなどでも対応可能
- 手術になると治療費が高額になるため日頃から尿路結石を予防することが大切
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中