- 今回は、猫も楽しぃ~飼い主さんもメロメロぉ~、そんなコミュニケーション方法、クリッカートレーニングをご紹介しますよぉ。
最近耳にすることが増えてきた”クリッカートレーニング”。なんとトレーニングをすることで猫と”ハイタッチ”ができたり、”お手”を教えることができるんだとか!
何はともあれ、この動画をご覧あれ。
「え~うちの子にはできないって~」
「猫に芸を仕込むとか無理でしょ~」
なんて声が聞こえてきそうだが、なんとなんと、クリッカートレーニングはそれを叶えてくれちゃう楽しいトレーニングなんだとか。しかもシニア猫でも始められるそう。
そこで今回は、猫のクリッカートレーニングの第一人者、キャットインストラクター坂崎清歌さんのもとへ。
クリッカートレーニングについて、坂崎さんの著書について、猫との暮らし方などについて伺った。
日本初のキャットインストラクター。猫とのコミュニケーションをはじめ、健康管理や生活の質の向上、またストレスの軽減を目的としたトレーニングなどを提唱する教室「Happy Cat」のアドバイザー。
愛玩動物飼養管理士2級、愛玩動物救命士、プレイズタッチ・パートナー、ホリスティックケア・カウンセラーの資格も持つ。
「猫との暮らしが変わる遊びのレシピ」の著者。
クリッカートレーニングとは
▲坂崎清歌さん。愛猫のピコちゃん、可愛いしっぽがカットイン。
クリッカー=「カチッ」という音を出すもののこと。
クリッカートレーニングとは、そのクリッカー音を使って行うトレーニングだ。
もともとはイルカのトレーニングに使われていた方法で、イルカのトレーナーだったカレン・プライア氏が開発した方法なのだとか。
トレーニングと聞くと何やら難しそうなものを想像してしまうけれど…。
「難しく考えなくても大丈夫!動物は何か行動をした後に”いいこと”が起こればその行動を繰り返す。単純にその原理を利用するだけなんですよ。」と坂崎さん。
よくイルカショーなどで、高いジャンプをした直後に、トレーナーがホイッスルを鳴らしご褒美のお魚をあげているのを見たことがある人もいるのでは?イルカたちは「高くジャンプすれば音が鳴ってお魚をもらえるんだ!」と学習して何度もジャンプを繰り返す。
こうした動物の行動の原因を読み解き、行動の原理を明らかにし、行動の問題を解決する「行動分析学」という学問が、クリッカートレーニングの基礎となっているのだそう。
猫のクリッカートレーニングではその原理を利用し、猫にクリッカーの音を”いいこと”の合図としてインプットさせ、行動のパターン(ハイタッチ、お手など)を一緒に作っていく。
言ってみれば、猫にとって”いいこと”ばかりが起こる、楽しいトレーニングである。
”カチッ=いいこと”そうインプットさせる「チャージング」
▲ピコちゃんの腕タッチ。
クリッカートレーニングで始めに行う作業は「チャージング」。
クリッカーの「カチッ」という音が鳴ったら”いいこと”が起こるよ、とインプットさせることだ。
猫にとって分かりやすい”いいこと”といえば、ズバリ、おやつのごほうび。
クリッカーを「カチッ」と鳴らした直後に大好きなおやつをあげる、これを繰り返すことでパブロフの犬のように、「カチッ」はごほうびの音♡♡と覚えてくれるという。古典的条件づけという理論だそう。
チャージングで必ず守りたいこと
チャージングを行っていくにあたって、必ず守りたいルールがこちらの5つ。
- 関係ない時にはクリッカーを鳴らさない
- 猫の顔のすぐ前で鳴らさない
- おやつに気づかせない
- 「カチッ」と鳴らしたら必ずおやつをあげる
- おやつは猫に喜んでもらえるものを
関係ない時にはクリッカーを鳴らさない
クリッカーの音そのものが、クリッカートレーニングの強力なツールとなる。トレーニング以外では鳴らさないことを徹底しよう。
猫の顔のすぐ前で鳴らさない
クリッカーの音にびっくりさせてはトレーニングにならない。クリッカーを持ったら自分の体のすぐ後ろで鳴らすぐらいがちょうどいい。
おやつに気付かせない
「カチッ」と鳴ってからおやつ、この順番が大切。おやつありきではなく、クリッカーの音が鳴ったからおやつが貰えるということを徹底する。そのためにも、おやつを手に持つことは猫に気づかれないように。
「カチッ」と鳴らしたら必ずおやつをあげる
「カチッ」と鳴らしたら必ずおやつをあげること。それにより”ごほうびが貰える”という約束された喜びの状態を作ってあげられる。
「クリッカーの音はね、小切手を切ったようなもので。不渡りだしちゃダメなんですよ(笑)」と坂崎さん。
おやつは猫に喜んで貰えるものを
猫が喜ぶおやつの量は猫それぞれ違う。猫に喜んで貰うことが大切なので、1回1粒でのおやつでは納得してくれない場合は増やしてもいい。またおやつの質そのものも喜んでくれるものを与えよう。
上のことを守りながら、猫がおやつを食べ終える頃にまた「カチッ」でおやつ。これを5、6回繰り返す。それを1セッションとし、猫がひと眠りするぐらいの時間を空けてからもう1セッション行う。1日2セッションまで。
「何事も基礎が肝心」と坂崎さん。このチャージングをしっかり定着させることが、大切な始めの一歩なんだとか。
「チャージング」ができたらいよいよ行動を作っていく作業へ
▲ダブルですか!マジですか!可愛さ反則級♡♡(写真提供:坂崎さん)
さて、チャージングができたらいよいよ行動を作っていく作業へ。はじめはターゲット棒と呼ばれるものを使う。
ターゲット棒とはこんなもの。「クリックスティック」という名で販売されているが、割り箸やストローでも代用可能。
猫は顔の前に棒状の物が現れると鼻をつけることがよくある。その習性を利用し、まずは「ターゲット棒について猫に歩いてもらう」というトレーニングからはじめる。
具体的なやり方はこちら。
~チャージング棒、始めの一歩~
- まず棒を猫の顔の前に差し出し、猫が棒を見たらすぐ「カチッ」→おやつ。
- 同じく棒を猫の顔の前に差し出し、鼻を付けたらすぐ「カチッ」→おやつ。(鼻をつけようとしないなら、棒をもっと鼻のそばに近づけて、少しでも鼻がついたらすぐ「カチッ」→おやつ。)
- 棒を顔から拳1個分離したところに差し出し、鼻ツンしたら「カチッ」→おやつ。(鼻をつけなくても、首を棒の方へ伸ばしたら「カチッ」→おやつ。しかし鼻をつけられるまでは繰り返し練習。
- 棒を顔の前から少し右に振ってみて、鼻ツンできたら「カチッ」→おやつ。左も同じく。
- 顔の前の棒を鼻ツンしようとしたら少しだけ離し、前足をだした瞬間に「カチッ」→おやつ。
- 同じように鼻ツンしようとしたら棒を前に動かし、それに付いて1歩歩いたら「カチッ」→おやつ。次は2歩と少しずつ練習する。その際、鼻ツンするたび「カチッ」→おやつ。
行動を作っていく作業で大切な3つのポイント
行動を作っていく作業での大切なポイントは3つ。
- クリックは鼻ツンした瞬間に
- 猫のやりたいタイミングで楽しく行う
- スモールステップで進む
クリックは鼻ツンした瞬間に
猫は「カチッ」っとした瞬間の行動を学習している。クリックは鼻ツンした瞬間の厳密なタイミングをとらえよう。クリックができていれば、慌てておやつをあげなくても大丈夫。
猫のやりたいタイミングで楽しく行う
猫が楽しめることが大切なので、猫のやりたいタイミングで行う。飼い主がやりたくても猫側は「今は眠い」「今はそんな気分じゃない」といったこともあるだろう。
クリッカートレーニングは猫にとって”いいこと”が起こるトレーニングでなければならない。そのためには猫のタイミングを尊重しよう。
「でも猫と暮らしている方って、猫のタイミングで遊んであげることに慣れてるから大丈夫ですよ。常に猫次第って生活だから^^。」と坂崎さん。
スモールステップで進む
ひとつひとつの工程を丁寧に、スモールステップで進んでいこう。「基礎をしっかり練習することが大事だから。焦らず、猫ちゃんも飼い主さんも一緒に楽しんで。」と坂崎さん。
…と、ここまでは本当に始めの1歩だ。これを応用し、ここから”ハイタッチ”や”お手を拝借”や”腕タッチ”など、様々な行動パターンを作っていくこととなる。
そもそもどうしてクリッカーを使うの?
▲「は~い!」人、入ってませんよ。(写真提供:坂崎さん)
”いいこと”の合図となる、クリッカーの「カチッ」。「いい子だね」「よし」といった言葉でもよさそうに思ってしまうが、なぜクリッカーの音がよいとされているのか理由を聞いてみた。
「聞きなれた言葉では混乱してしまう。でもクリッカーの音なら『新しいゲームかな?』なんて、頭を切り替えて取り組んでくれるんですよ。」
「また言葉だとその時々でニュアンスが変わってしまったり、つい日常でも使ってしまったりするでしょう。それでは合図としてはなかなか伝わらないし、定着しにくいんです。」
その点クリッカーの音は機械的。それが合図としては最適なんだそう。