- 今回ご紹介するのは横浜・青葉区にある里親募集型カフェ「猫カフェブラン」。ただ猫を一方的に可愛がるだけでなく、猫の持っている癒やしの力をもっと使えたら。。。そんな店主岡本さんの想いを伺ってきましたよぉ。
動物愛護ボランティア団体「ちばわん」の猫を預かり、里親募集を行っている「猫カフェブラン」。
「猫は伴侶動物。ただ可愛がるだけでなくお互いに助け合って生きていけたら。。。高齢者の方にこそ、猫の癒やしの力を利用してほしい」そう語るのは店主の岡本さん。
今回はそんな猫カフェブランを直撃取材。
お店の魅力から猫との共生、猫全体の幸せに至るまで、店主岡本さんの想いをたっぷりご紹介します!
猫を見ながらお茶を楽しめるカフェ
動物愛護ボランティア団体「ちばわん」の保護猫たちと新たな飼い主との出会いを提供する「里親募集型猫カフェ」が横浜市青葉区にある。オープンから約5年。たくさんの猫たちがここから新たな家族の元へと巣立った。
東急田園都市線「江田」駅から徒歩12分。通りから上を見上げると全面ガラス張りの大きな窓と猫カフェの文字が。
ここが今回ご紹介する「猫カフェブラン」。
入り口からは店内で過ごす猫たちの様子がちらり。
さっそくお邪魔してみると・・・
猫部屋の手前にはカフェスペースが。
猫カフェにもいろんなタイプがあるけれど、猫カフェブランはカフェスペースと猫部屋がきっちり分かれているのが特徴。猫たちの愛くるしい姿を眺めながら、美味しい珈琲や紅茶、スイーツなどをゆっくり楽しむことができるのだ。
「にゃぁ~」と登場したのは、全身真っ白の”アナ”姫。ガラス越しなのにすでに悶絶級の可愛さがダダ漏れ♡
こんな至近距離で猫を見ながらお茶を飲めるなんて、至福すぎやしませんか(=^・^=)
ゆっくりお茶も飲みたいけれど、その熱視線が気になりすぎて、ひたすらガラス越しに話しかけてしまいそうな予感大^^
もう待ちきれない!そんな方は何はともあれ猫部屋へ。こちらが猫たちと触れ合える猫部屋。
現在8匹の猫たちがここで暮らしている。日差しがたっぷり注ぎ込むガラス張りの店内はとても明るい。
猫部屋の説明を聞いていると、、、”カブ”が登場。
▲小顔、すらり美脚。そのスタイルキープ術、昭和体型のアラフォーに教えて。
まさに元気そのもの!猫じゃらしを見せると風の速さで飛んでくる^^
そしてこちらは三毛の与(くみ)。
▲ひたすら見つめてくださるーーーー
みんなのびのび、フリーダム。新参者の私にもまったくびびったりすることなくとっても人懐っこい。
▲洗面台横窓がやたら人気。
▲誰かと思えばアナ姫まで^^
みんな思い思いに過ごしていて、なんだかとてもゆったりとした時間が流れている。
里親の見つかりにくい成猫のために
▲カブ。上から撮っても足長ってどういうことー^^
「もともとは”ちばわん”という保護団体の犬の預かりボランティアをしていて、、、」そう話すのは店主の岡本さん。
ちばわんは、主に千葉県動物愛護センターや横浜市動物愛護センターから保護猫を引き取って、新しい家族探しをしているボランティア団体。「不妊・去勢手術こそ動物愛護の第一歩」と考え、地域猫のTNR(繁殖制限)活動にも力を入れている。
岡本さんは、当時利用していたトリミングサロンを通してちばわんのことを知ったという。
「家では犬を1匹飼っていたんですけど、猫はいなかったんです。たまたまボランティア仲間が、目も開いていないへその緒がついた子猫を3匹拾って、うちで預かることに…。結局2匹は亡くなってしまって1匹だけが生き残って。。。その子はそのままうちの子になったんです。
その後、今度は近所の方が野良猫を2匹拾って、またうちで預かることになったんです。里親募集をかけたんですけどなかなか決まらなくて…。」
結局、里親が見つからなかった2匹の猫たちも岡本さんの家の子になったのだそう。
「犬の場合は3歳や4歳くらいでも里親が見つかるんですけど、猫の場合は子猫ばかり。大きくなっちゃった猫はなかなか里親さんが見つからない。」
何か成猫を譲渡できるシステムが必要、そう思って猫カフェを開くことを決めたのだとか。
飼い主放棄で保護された子たち
▲どうなってるのかもはやよく分からない、体の折りたたまれよう
ひとくちに保護猫といっても出処はいろいろ。生粋の野良のような子もいれば、飼い主放棄、ブリーダー崩壊、多頭飼育崩壊。。。など状況はさまざま。
ただ、保護猫カフェということもあり、人が近づくとシャーシャー威嚇してしまうような子はここには来れない。
「ここに来る子たちはほとんどが飼い主放棄なんですよ。だから、人との生活には慣れているんです。」と岡本さん。
「ただ、一匹だけで飼われていた子は他の猫と生活したことがないので、こういう多頭の状況にポンっと入れられると、猫との付き合い方が分からずに揉めてしまうことも多いんです。」
相性の悪い子はケージに入れてかわりばんこに出すなど配慮しているそう。
▲チョビ髭が一度見たら忘れられないその名も”チョビ”。
「でも、意外と面倒見がいい猫っていうのもいて。そういう猫が相性の悪い猫同士の仲をとりもつこともあるんです。ここでの生活の中で猫の社会性を学んでいくようなところもありますね。」
人間同士でも相性はある。それは猫も同じ。でも、猫同士のじゃれあいは、猫社会のルールを学ぶ大切な時間。じゃれあうことで、甘噛みの加減や攻撃した時の止め方、降参の仕方などを学んでいる。
大勢での猫カフェでの暮らしは、猫にとってそんな大切な勉強の場でもあるのだ。
成猫を譲渡するメリット
▲取材中はひたすらゴロンゴロン状態だった”ぷっちょ”。
2014年にオープンして以来、これまでにたくさんの猫たちが新しい飼い主の元へと卒業していった。
猫の幸せを第一に考えるがゆえに、譲渡条件を厳しくしている保護猫カフェや保護団体も多いが。。。
「どちらかというとちばわんは決まった規定がないんですよ。団体によっては年齢制限があったり、一人暮らしはNGとか同棲のカップルはダメとか。でも、ちばわんはそういった規定がないぶん、猫と希望者さんとの相性を私はしっかり見ますね。」
”里親希望の方のライフスタイルと猫の性格があうかどうか”これが、岡本さんが一番重視しているポイントだとか。
「例えば一人暮らしでお留守番のあるおうちだったらお留守番の苦手な甘えん坊の猫は難しい。でも逆に、自分一匹で過ごせる時間があった方がいいような性格の子であれば譲渡できます。
小さいお子さんがいるご家庭の場合でも譲渡はできるんですけど、怖がりの猫ならお断りする。子どもに追いかけられても何をされてもへっちゃらな猫であれば譲渡できるんですけどね。」
猫カフェブランでは、年齢制限も設けていないそう。
「80代のご夫婦に譲渡した猫もいます。息子さん夫婦が後見人になってくれて、猫自身がシニアでおとなしい子だったというのもありますけど。特に問題なくお世話もできますし、譲渡してうまくいってます。」
そういった相性をしっかり考慮した上でマッチング。そして1ヶ月ほどのトライアルを行い、先住猫との相性などをチェックしていくそう。
猫カフェブランにいる子たちはみんな1歳を過ぎたおとなの猫たち。大きくなった猫を譲渡するメリットは「猫の性格にあわせたご家庭に譲渡できる」ということ。子猫の場合は、大きくなるにつれて性格が変わってしまうこともあるので、そこが難しいところでもあるそう。
一人暮らしだから、高齢だから、と猫との暮らしを諦める方もいるかもしれないけれど。そんな人こそ、性格がある程度わかっているおとなの猫を選ぶといいのかもしれない。
みんな仲良く幸せに暮らしていてくれたらそれだけで十分
▲猫の大あくびってたまらなくかわいい^^
里親になった方には、譲渡した後3ヶ月、半年、1年の報告をお願いしているという。
その先は里親の方にお任せする形だけれど、なかには何年たってもまめに近況報告してくださったり、遊びに来てくださる方もいらっしゃるのだとか。
「みんな仲良くやってますっていう、それが聞ければ十分かなと思います。みんな幸せに暮らしてることが分かれば。」
少しでも多くの猫たちに幸せな暮らしを、という思い。新たな飼い主との縁をひとつひとつ繋いでいき、少しでも多くの猫たちとその家族に幸せを運ぶことが、岡本さんにとって何よりの喜び。やりがいなのだ。
猫には人間を癒やす力がある
岡本さんにとって、猫とはどんな存在なのだろうか?
「よく猫や犬は愛玩動物って言われるんですけど、私は伴侶動物だと思っています。私たちが可愛がるだけではなく、一緒に家族として暮らすべき生き物。
ペットというと、人間が一方的に可愛がる、お世話する、守ってあげる、という風になるけれど、実際は人間が動物によって助けられる部分っていうのがすごくあって。
動物から得られる癒しは他では得られないものだから、そこは人間と動物お互いに利用する。ただ一方的に助けるのではなくて、利用している動物からも助けてもらうというのが本来の共生だと思うので。」
岡本さん曰く「誤解されてしまう言い方かもしれないけれど、人間はもっと利用するべき」と。
「ただ可愛い可愛いだけじゃなく、もうちょっとお互いに助け合って生きていけるような形になっていけたらいいんじゃないかなと思うんですけどね。」
なんだかハッとした。
一方的に可愛がるのではなく、あくまで猫は猫として。猫は人間に溺愛されるおもちゃでもなんでもなく、私たち人間と対等な関係の家族の一員、社会の一員。
猫の幸せ、人間の幸せ両方を考えるなら、猫を伴侶動物として捉えて、もっと人間社会に参加させていくべきなのかもしれない。岡本さんの言うように、人間はもっと利用すべき、猫への愛情をかけ違えてはいけないと感じた。
猫全体の幸せにも目を向けてもらえたら
猫の幸せ、人間の幸せ両方を考える。
人間は思いのままに猫を家族に引き入れ、その幸せを享受するが、猫全体が幸せになるにはどういったことが必要なのか。
私たちが出会う猫とはどこからやってくるのか。
多くの人が「ペットショップ」を思い浮かべることだろう。
この、「ペットショップ」の猫たちはブリーダーが繁殖をさせた猫たちだが、ブリーダーにより幸せに暮らせている猫もいる反面、ブリーダーの中には心無い人たちも存在する。
繁殖のみを目的とし、母猫たちは”商品”を生み出す”マシン”となり、子猫を産み続けることだけを強要されるが「ブリーダー崩壊」が起こると平気で飼育放棄される。
ペットショップで売れ残った猫はまた繁殖するために引き取られていくいわゆる「飼い殺しループ」の中に猫たちは晒されている。
もちろん、すべてのブリーダーがそうではない。
こうしたペットショップの猫たちを取り巻く環境も存在することを少しでも多くの方に知ってもらいたい。
このような理由から保護猫を引き取ることも猫たちを幸せにする一歩となりうるかもしれない。ただ、保護猫を飼うという選択肢は少しずつ広まってきてはいるけれど、まだまだ世間に浸透していないというのも現実。
「猫飼おう」となった時にペットショップじゃなくて譲渡会を視野に入れてほしい。
岡本さんが語ってくれる「猫全体の幸せ」とは、ペット業界の抱える闇を保護猫を通して少しづつだが自分たちのできることで猫たちを救うことだ。
高齢者の方にこそ利用してほしい
▲レンタルスペースに並んでいる水沢透さんの水彩画。愛情に溢れた温もりある作品。
伴侶動物としての猫。
その猫が人間を癒す力は想像以上に大きい。
「ときどき認知症の方が職員さんに付き添われて来られるんですが、無表情でほとんど喋れない、声をかけても反応がないような方もいらっしゃる。でも、そういう方が猫部屋に入って、膝に猫を乗っけると、急にニコニコして、『私、前にこういう猫飼ってたのよ。』とか話し始めたりするんですよ。そうすると職員さんがびっくりされて、『普段こんなに話なんかできないんですよ。』と。」
「ご家族の方が高齢のお母様を連れて来られることも。ここに来た時もそれなりに楽しんで帰られるんですけど、帰った後も何日間か調子がよくて元気なんですって。」
”動物の癒しを必要としているのは若い人よりも高齢者の方”
こうした想いから、岡本さんは高齢者の方にこそできるだけ利用してもらいたいと、施設などにも働きかけをしているという。
「高齢者の方は家にいる時間も長いし、外にあまり行かないことも・・・。そうしたときに猫が1匹いれば気持ちの持ちようもだいぶ違うのかなって思うんです。」
もちろん、だからといって高齢者にペットショップの子猫を勧めるということではない。実際、ペットショップで子猫を買ったものの、飼い主さんが亡くなってしまい動物愛護センターに保護される猫も非常に多いという。
「もし自分が死んでしまったらこの子のことが心配、、、だから飼えないって諦めてる方もたくさんいらっしゃる。そういう方は、猫カフェで触れ合って、必要な時だけ、気が向いた時だけ気軽に利用してもらえればいいかなと思っています。」
都心にある猫カフェだとちょっと敷居が高くて・・・という高齢者の方にも落ち着いて楽しんでもらえるような猫カフェでありたい。岡本さんはそう力強く語ってくれた。
猫カフェブラン
住所 | 神奈川県横浜市青葉区荏田町1150-40 白亜館2F |
営業時間 | 11:00~20:00(L.O.19:00) |
定休日 | 月・木(祝日に伴い変更になる場合もあり) |
最寄り駅 | 東急田園都市線「江田」駅より徒歩12分 横浜市営地下鉄「センター南」からバス「富士塚」または「荏田高校前」バス停より徒歩3分 |
料金(税抜) | 猫部屋:30分600円~追加料金は15分毎に300円 1時間コース:1,000円 2時間コース:2,000円(猫おやつ付) 3時間コース:3,000円(1ドリンク・猫おやつ付) 1日フリーパス:4,500円 ※混雑状況により受けられない場合もあり 猫用おやつ1個:150円(1日10個限定) |
公式サイト | https://www.neko-cafe.info/ |
公式SNS・ブログ | Twitter:チョビ@カフェブラン Facebook:猫カフェ ブラン ブログ:from Dog Den. |
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。