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保護猫のわ通信Vol.5|TNR不妊手術を行う獣医師へインタビュー「ふー動物病院 亀田博之先生」

2019-12-24

猫ねこさん

保護猫のわ通信Vol.5|TNR不妊手術を行う獣医師へインタビュー「ふー動物病院 亀田博之先生」

猫ねこさん
7月より毎月連載中の猫ねこ部保護猫プロジェクト「保護猫のわ」。今回はTNR不妊手術の現場を取材。年間3,000件もの手術を行っている獣医師さんにインタビューしてきましたよぉ。

富士北麓地域で猫・犬の保護活動をしている「ねこねっと山中湖」にスポットをあてた連載企画第5弾。

今回はTNR不妊手術を行う会場へ足を運び、その手術風景を間近で取材。
ねこねっと山中湖と提携する「ふー動物病院」の亀田博之先生に直接インタビューをしてきました。

なかなか見聞きすることのない野良猫の現状を、少しでも多くの方に知っていただけたらと思います!

■亀田博之 獣医師■

ふー動物病院院長。

群馬県高崎市動物愛護センターで動物愛護に携わる。
東京都内動物病院に勤務後、神奈川県相模原市に”飼い主のいない猫のための病院”「ふー動物病院」を開設。
現在はふー動物病院での診察・治療のほか、群馬・山梨・伊豆大島・高知でも出張手術を手掛ける。

http://fu-ah.com/

子猫保育園!

11月下旬。初雪が降った山中湖。

5回目の訪問となる今回、ねこねっと山中湖・副代表保科さんのお宅は過去最多?じゃないかと思うほどの子猫保育園に^^


▲生後1~2ヶ月のべびちゃんたち。子猫の社会化には最適な環境だ。

「ベッドでちょっと横になるとガリバー旅行記みたいになる(笑)」と保科さん。


▲最強ワラワラ猫布団^^

さっそく、今回もそんな新入り子猫ちゃんたちをご紹介。まずはこちら。茶白のアーチーくん。

アーチー

富士吉田市内の、とある駐車場の敷地の真ん中で鳴いていたところを保護されたという。保護時はひどい猫風邪で片目がくっついていたそう。今ではミルクもごくごく飲む元気なスリゴロくんに。

アーチー▲久々のサイズ感にもう萌えまくりでございます^^

そしてこちらはスカイラーちゃん。白靴下履いてますか?な、のらくろ柄の可愛い女の子。

スカイラー

カラスの羽と骨の入った空き箱の中にたった一匹でいたとか。猫風邪で目鼻はぐちゃぐちゃ。保護時は300gに満たない小さな体だったそう。

そんなスカイラーちゃんも、保科さんのお家にやってきてからは走って飛んでくる甘えん坊さんに。いつもちょこちょこ後をついてくる愛嬌抜群のカルガモ女子になったそう^^

スカイラーとトニー▲トニーさんにお尻を狙われてもミャーミャー嬉しそう^^

取材後、早くも新しいお家が見つかりスカイラー→レモンちゃんに。幸せになってね!レモンちゃん。

こちらの黒猫さまはレオくん。

レオアーチー

こちらのキジトラ・プリシラちゃん、おでこのグレーがポイントのスノーフレークちゃんと三兄妹。

地元では不法遺棄が多いことで知られる山中でハイカーの方が発見。保護時は背骨ゴリゴリで痩せ細っていたそうだけど、今は触るだけでゴロゴロな甘えん坊さんに変身!

トニーとスカイラー

キジトラのバーニーくん。低体温低血糖で危険な状態だったけれど、愛情たっぷりに育てられすくすく成長中。

バーニー

保護した時はみんなボロボロだった子猫たち。でも、保護した人へのねこねっと山中湖さんの的確な指示で子猫たちの命が救われた。

「子猫の場合まずは保温!そして温かいミルクを顔も綺麗に拭いてあげてください。鼻が効かないと食べられなくて栄養失調になってしまうんです。目もくっついたままにしていたら癒着してしまいます。命を救いたかったから動くしかないんです。一日でも二日でも踏ん張ってもらえれば、その後命のバトンを繋いでいくことができるので。」と保科さん。

そしてこちらの美人さんはシーラちゃん。1歳くらいの女の子。

シーラ

初夏にガリガリのシラミだらけで現れた彼女。スリスリだったのでTNRせず医療にかけ保護したという。典型的なメス猫タイプで子猫にも容赦なくシャーシャー^^抱っこ・お膝大好きっ子なので、一匹で可愛がってくださる里親さんを絶賛募集中だそう。

もちろん猫ねこ部推し猫の”大猫コンビ・ランディー&ナラ”も忘れてませんよ。はい、でかいー。可愛いー。でかいー。

ナラランディ

続々とやってくる子猫たちのことも優しく受け入れるおとなの猫たち。保護されて新たな家族を探す子猫たちはあとをたたない。

年間約3,000件の不妊手術を手がける

さて、第5回目となる今回は、ねこねっと山中湖が最も大切にしている”医療”の現場にスポットを当てる。

”飼い主のいない猫(野良猫・地域猫・保護猫)が一匹でも多く幸せになれるように”
今から4年前。「ふー動物病院」院長・亀田博之獣医師はそんな切なる願いを叶えるため、「飼い主のいない猫のための病院」を立ち上げた。

神奈川県・相模原市にある本院で、週2回飼い主のいない猫の不妊手術(TNR)および診察・治療を行うほか、全国各地で出張手術も行う。山中湖をはじめ、群馬、神奈川、東京・伊豆大島、そして高知・・・その数なんと年間約3,000件にものぼるとか。

数年前からねこねっと山中湖の提携病院となり、月に一度山中湖で分院を開いている。

「TNRは外で暮らす不幸な猫をなくすために欠かせない大切な活動」と、これまでの連載でもお伝えしてきた。ここでTNRについてもう一度おさらいを。

◆TNRとは

  • T(Trap)=捕獲
  • N(Neuter)=避妊・去勢手術
  • R(Return)=元の場所に戻す

外で暮らす野良猫を捕獲器などで捕まえ、避妊・去勢を行い、元の場所に戻す。この一連の流れをTNRと呼んでいる。


ふー動物病院で行っているのは、このTNRのN(Neuter)=避妊・去勢手術。ねこねっと山中湖などの個人ボランティア団体や動物愛護団体などが、それ以外のT(Trap)・R(Return)を行っている。

TNRは個人の力だけでは決してできない。亀田先生のような獣医師の協力が必ず必要となるのだ。

獣医師2人で次々に手術をこなしていく

午前10時。ふー動物病院山中湖分院の会場には猫の入った捕獲器やキャリーが続々と運ばれてくる。

捕獲器

この日のために、捕獲器やキャリーの貸し出し、餌やりさんへの説明、搬送などボランティアメンバーそれぞれが念入りに準備を整えてきた。

TNR現場では今まさに捕獲の真っ最中。無事に捕まえることのできた猫たちが順に運ばれ、次々に避妊・去勢手術を行っていく。

もちろん、無事に捕獲できるかどうかは猫次第。なので連れて来れない場合も。

手術会場でサポートを行う保科さんの元へは現場から逐一状況報告の電話が入る。「ちょっと入りたそうにしてたらもう少し粘ってみて。中に入れるご飯を少し温めたり、においの強いものにしてみたり。」少しでも多くの猫を救うため、丁寧なフォローを欠かさない。

この日行われた手術は14件。ボランティアメンバーのサポートのもと、獣医師の奥様とふたりで手際よく手術をこなしていく。

手術

「外の子は基本的に触れないっていうのもあって触らないんですね。逃げてしまったりだとかいろんなことがあるので。体を見て状態がよければそのまま麻酔をかけます。」

イワオ▲白黒長毛ビッグボディのイワオくん。

麻酔が効いてきて眠りについたら、猫の体をしっかりと見て耳カットを行う。その後、男の子であれば精巣を、女の子であれば卵巣をとる手術を行う流れだ。場合によっては子宮と卵巣両方とることも。

冬場は特に体温が下がってくるため、すぐに麻酔をさます注射をうつという。

1匹のメス猫が3年後には2,000匹に

猫は人間に比べてとてつもなく繁殖力の高い動物だ。

人間は排卵前後の数日に運よく交尾すれば妊娠するのに対し、猫は交尾した刺激で排卵するので、交尾すればほぼ確実に妊娠すると言われている。

メス猫は生後半年もすれば妊娠できる体になり、一度の出産で4~8匹の子猫を出産。タイミングが合えば年に2~4回出産する

環境省の統計によると、1匹のメス猫が出産すると3年後には2,000匹以上に増えるとも言われているのだ。

猫繁殖イメージ

引用:環境省パンフレット「もっと飼いたい?」

先日、亀田先生が関わった群馬の多頭飼育崩壊の現場では150匹もの猫が発見・救出されたそう。

「こういった現場では、近親交配が繰り返されているので、生まれてくる子供が先天的な病気を持っていることが多いんですよね。例えば腎臓がなかったり、横隔膜がなかったり…。」

十分な食事も与えられず十分な生活空間も与えられず、劣悪な環境のなかで猫たちは極度のストレス状態に置かれているのだ。

猫が可愛い、大好き…愛情はもちろんとても大切なこと。けれど、不妊手術をせず飼育不可能なほど猫を増やすことは、猫にとっても人間にとっても幸せとは言えない。

殺処分される約6割が子猫

捕獲器

日本では毎年数万頭もの犬や猫たちが、行政施設で殺処分されている。環境省の統計によると、平成29年度に全国の自治体で殺処分された猫の数は34,854頭。

過去30年間の推移を見てみると、殺処分数は9分の1以下に減少しているものの、現在も多くの尊い命が奪われているのが現状だ。

殺処分推移そして、平成29年度に殺処分された猫34,854頭のうち子猫は21,611頭と、実に6割を超える

参照:統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」|環境省

亀田先生は、以前業務に携わっていた群馬県高崎市動物愛護センターでこうした殺処分の現状を初めて目の当たりにしたという。

捕獲器

「特に生まれたての子猫は、授乳や排泄のサポートなどお世話するのに手間がかかります。高崎市では殺処分ゼロを掲げてできる限り乳飲み子も引き受けていたんですけど、やはり育てて譲渡して…となると限界があるのも事実なんです。」

お家で家族みんなに可愛がられ愛される子猫。一方で生まれてきてたった数ヶ月で殺処分されてしまう子猫。どちらも尊い命なのに、、、なんともやりきれない。