保護猫のわ通信Vol.1|ねこねっと山中湖の保護活動

猫ねこさん

保護猫のわ通信Vol.1|ねこねっと山中湖の保護活動

猫ねこさん
今月から始まる「猫ねこ部保護猫プロジェクト」。山梨県の富士北麓地域で猫、犬の保護活動を行っている「ねこねっと山中湖」さんにスポットをあて、毎月保護猫の現状をお届けしていきますよぉ。

”外で暮らす不幸な猫をなくすために”

山梨県の富士北麓地域で猫と犬の保護活動に取り組む、個人ボランティアの集まり「ねこねっと山中湖」

猫ねこ部では、ねこねっと山中湖の保護活動を毎月シリーズで追っていきます。
Vol.1では、ねこねっと山中湖の副代表・保科さんに、猫への想いや活動内容、これからの展望についてお話を伺ってきました!

副代表・保科さんとミラクルトニー

7月初旬。まだ梅雨まっただ中の時期。曇天のなか富士のお膝元、山中湖へ向かう。
夏場は避暑地として栄え、秋には美しい紅葉を、冬には幻想的な雪景色を楽しむことができる、四季折々の姿が美しい自然豊かで静かな地域。

そんな山中湖を中心に富士北麓地域で猫、犬の保護活動を行っている「ねこねっと山中湖」さん。

殺処分ゼロを目指し、「自分にできることを」と立ち上がったボランティアたちの集まりだ。

別荘地に建てられた副代表・保科さんの家は、まるで海外のお宅のような広々とした空間。取材時には保護猫たち15匹ほどが暮らしていた。

内観

大きな窓から見える庭には美しい緑の芝生が重なり合っている。

緑▲庭はなんと鹿の通り道!ほかにはアライグマ、タヌキ、ニホンアナグマ、ハクビシンもひょっこりするそう^^

まずご挨拶にきてくれたのはトニー。トニー

抱っこが大好きというトニーは、初めて訪れた私の肩にスススーッと登ってきて喉をグルグル~^^一瞬で私をムツゴロウ気分にさせてくれたトニーの人懐っこさにはもうメロメロ!

そんな愛らしいトニーだけれど、実は3年半前、交通事故に遭って湖畔で倒れてるところを発見された。顎を骨折して手術をし、2ヶ月ほど顎にワイヤーを入れて過ごしていたが、幸い内臓器官への損傷はなく無事退院。けれど、その3ヶ月後に突然の嘔吐。病院に連れていったところ悪性リンパ腫が見つかったという。

当初、獣医の先生からはこう言われていた。「治療しなければ数週間から1ヶ月」。
保科さんはそれでも決して諦めず、日本では認可になっていない抗がん剤を病院で取り寄せた。その薬で奇跡的に悪性リンパ腫が寛解しもう3年たったとか。

「ここまで人を信用してくれる子を見捨てられないですよね…。」

保科さんの強い気持ちが一匹の大切な命を救ったのだ。「ミラクルトニーって呼んでるんです!」保科さんはそんなトニーを愛おしそうに見つめてそう教えてくれた。

ある保護猫団体との出会いがきっかけ

ねこねっと保科さん

保科さんは山中湖に移住して5年。山中湖に来るまでは東京で25年ほど看護師をしていたのだとか。

「夫が定年になったらこっちに移住する予定で10年前にここを建てたんですね。東京にいた時は3匹猫を飼ってたんですけど、3匹とも年齢が年齢だったので、その子たちを見送ったら次は保護猫を迎えようというのは決めていて。山梨に保護団体さんがあれば、そこから迎えようかなというお話をしてたんです。」

7年ほど前、山梨のショッピングセンターで開かれていた保護団体の譲渡会に参加。そこにいたのはたくさんの子猫たち。でも、保科さんご夫婦にはその時19歳になる子がいたので、子猫ではなくおとなの猫を迎えたいと思っていたそうで…。その意志を団体の方に伝えたところ、シェルター兼自宅に案内されたという。

でも、そこには驚くような光景が広がっていたのだとか。入った瞬間広がるツンとしたアンモニア臭。保科さんいわく、15分以上滞在するのは難しい、ほどだったそう。

そんな環境でも、猫たちはみんないい子ばかりで。。。少しでもそこで暮らす猫を減らしてあげたいという気持ちで、結局その団体から3匹ほどお迎えしたとか。

丹下▲保護団体から2匹目にお迎えしたタンゲさん8歳。片目がないけれどどんな人にも優しく、彼の辞書に怒りはないw

当時、まだ保科さんご夫婦は東京で暮らしていて週末だけ山梨という生活。山梨に来るたびにシェルターのお掃除に行ったり、フードを毎月寄付として送ったりしていたそう。

けれど、シェルターがきれいになるのは保科さんがお掃除しにいったあとの数日間だけ。もちろん、猫の命を助けるためにと団体の方が頑張っているのは分かるのだけれど、そこは保科さんの考えるスタンダードとあまりにかけ離れすぎていた。

「これは自分でやった方がいいな。」それが保科さんが保護猫活動を行おうと思ったきっかけだったという。

ねこねっととのつながり~最初の現場

バロンとデューク▲筋肉質で凛々しいバロン&デューク兄弟。保護されたときは絶叫系男子だったふたりも今は穏やかに。

そんな保科さんは、ある日スポーツクラブの駐車場で、日向ぼっこをしているたくさんの猫に遭遇する。なかには轢かれて足びっこしている子もいたり…。

これは危険だなと感じた保科さんは、先ほどの団体にまず相談してみたそう。でも返事はあっさりしたものだった。「たくさんいるのは分かってるけどどうにもできないわよ。。。」

ここで諦めるわけにはいかない!そう思った保科さんは自分のポケットマネーで、その駐車場にいる猫たちの不妊手術を受けさせようと決めた。

その時に相談したのが「ねこねっと山中湖」。代表に相談したところ、「もしやってくださるなら、是非自分たちも協力したい。こちらでプールしているお金もあるので、それも使いましょう。」と声をかけてもらったとか。その時に初めて猫の捕獲器の使い方を教わったという。

IKEAバッグ▲持っていったIKEAのバッグ、争奪戦^^

でもひとつ問題があった。そのスポーツクラブがあった場所は、いわゆる商業地区で人がたくさんいるところ。飼い猫に勝手に手術を受けさせるわけにはいかない。そこで、「ここにいる猫ちゃんたちはお宅の猫ですか?」と一軒一軒確認してまわったのだそう。「コンビニとかホテル、レストラン、床屋さんとか全部です。誰この人!って顔で見られながらも(笑)」

実際、確認してまわると、実は地域住民の方も皆困っていたことが分かったという。

「決して猫を捕まえてどこかに持っていくんではなくて、不妊手術を受けさせるためにやってるんです。」そのことを丁寧にお話していったところ、ならば力になりたいと数名の方が声をかけてきてくれたそう。

14.5匹だと思っていたのが、蓋を開けてみるとその場所にいたのはなんと50匹!収束するまでに2年かかったけれど、無事その場所からは猫がいなくなったという。

それが、保科さんにとって初めての「現場」であり、ねこねっととのつながりができたきっかけでもあった。

メンバーそれぞれ自分ができることをやる

ふたり▲ぼくも8年後はこのサイズかー^^

「ねこねっと山中湖」はNPO法人などではなく、個人のボランティアが集まってできた民間のボランティア団体。

当時の「ねこねっと山中湖」は、年間10~20匹保護して里親さんに譲渡する程度の小さな小さなグループだったとか。メンバーそれぞれに生活があり、経済的にも時間的にも余裕はなかったそう。

もっと積極的に活動を広げていけたら、そう思った保科さんはねこねっと山中湖に加入。どうぶつ基金や協力病院などについて調べ、その情報をメンバーに共有。少しでも救える命を増やせるようにと動いたとか。

現在、保科さんはねこねっと山中湖の副代表として広報も務めている。

ヴィンス▲悶絶以外のなにもんでもないかわいさ♡

ボランティアメンバーは5名ほど。ミルクボランティアのほか、保護活動の資金源となるフリーマーケットのボランティアなども5.6人いるそう。

「すごいですよ、うちのレディース。最年長は80歳ですから(笑)犬や猫を飼えないとか、今飼ってるけれどその子を看取ったらもう終わりにするという方々が、でも何かお役に立ちたいって言ってくださって。」

フリマを行っているのは、河口湖Bellショッピングセンターや道の駅富士吉田。年に2回、富士山駅ビルで行われるふらっとマルシェにも出店しているそう。基本土日に行われるので、東京に住んでいる人が週末行くよーと手伝ってくれたりするのだとか。

会としての規約もなければ上下関係もなく、「各自が自分にできることをやる」のが基本のスタンスだという。

車で5分ほどの場所にある代表の家には、足が1本ない子や、猫エイズの子、どうしてもマーキングが治らず里親探しが難しい子などもいるとか。

メンバーのなかには、以前動物病院を経営していた男性もいるそうで。

猫

「基本的には、うちがわりと里親さんとのお見合いや譲渡を行うというポジションになるんですね。だから、猫エイズや白血病などでどうしても隔離しなければならない子を保護した時には、自宅で仕事をしている彼に見てもらっているんです。預かりお父さんですね。見た目はやからですけどw、動物には本当に優しい男で(笑)」と保科さん。

それぞれが適材適所で動く。それもきっとメンバー同士の信頼関係があるからこそ。

こうした地道な活動が徐々に周知され、今では次のシーズンのためにフードの備蓄ができるほどまでに。

「3年くらい前は夜子猫を保護して、粉ミルクどこに売ってるーって走ってたんですよねw 今期は皆さんのおかげで粉ミルクはもう買わずに済みました。本当にありがたいです。会としての底力がついてきたのかなって。」

猫に罪はない

ピピ▲ちぐらの上でくつろいでいるのは13歳のおばあちゃんピッピさん。ちぐら内では子猫レスリング真っ最中^^

ねこねっと山中湖の活動は、保護猫のお世話や里親探しだけではない。TNR(野良猫の繁殖防止活動)も主な活動のひとつ。

年間およそ35,000匹もの猫が殺処分されている日本(2017年時点)。望まれない命がこれ以上増えないようにして、殺処分をゼロに近づけていくには、野良猫のTNRを徹底することが肝心。

とはいっても、TNRとはなんぞや?という人がほとんどなのでは。

TNRとは・・・

  • Trap(トラップ):捕獲する
  • Neuter(ニューター):不妊手術をする
  • Return(リターン):猫を元の場所に戻す

TNRをした猫は、その目印として耳先をV字にカットされ「さくらねこ」と呼ばれる。
さくらねこたちには、リリース前に必ず獣医師による診察を行う。そして、その後お外で生き抜いていけるようにしっかり餌やりをしていく。これもTNRで非常に重要なことだそう。

ただ、かわいそうだからと野良猫に餌をあげるのとはわけが違う。リリース後もきちんとフォローすることで、野良猫の一代限りの命を見守っていくのだ。

ナラ

ねこねっと山中湖にも毎月のようにTNRの相談が入るとか。毎月のTNR数は、公式サイトでも各地域ごとに集計しお知らせしている。特に5~6月は子猫がチョロチョロし始める時期なので、相談件数がとても増えるそう。

「子猫が保護されて連絡がくるとき、必ずこうお話するんです。子猫がいるってことは近くにお母さんがいますよねって。で、子猫を引き取りに行ったときに、周辺の住民の方にお聞きするんです。このへんって猫ちゃん多いんですかって。そうすると、実はあそこで餌をあげてる人がいるとか、あそこに猫屋敷があるとか、情報がくるわけです。」

このような場合、まずは役場と保健所に連絡してください、と必ず伝えているそう。

猫

けれど、大ごとにされるのを嫌がる方も実際多いのらしく…。都会よりもずっと住民同士の繋がりが強いぶん、「誰が(役場や保健所に)言った(バラした)?」とか犯人探しのような事態になることも多いそう。

「犠牲者は猫ですよねって説明はするんですけど、どうしても嫌だと頑なな方も結構いらっしゃって。そういう時は、『じゃあいいですよ、私たち悪者になりますから』って言って、原因になっているお家に踏み込むこともありますね。」

これ以上猫が増えないように、餌やりをしている人に不妊手術を受けさせることを勧めると、じゃあ持ってってくれと言われてしまうことも。
コミュニケーションの取り方ひとつで、うまく進むケースもあれば、破談に近くなるようなケースも。だからこそ対人間のスキルも問われるそう。

アリス▲アリス=枕(笑)

できる範囲で助けられる子を助けたいというのが、メンバー全員の共通の想い。

「猫に罪はないので。」と保科さん。

それぞれの地域に独自の地域性がある。なんとかしたいという思いがあっても一歩を踏み出すのは大変なことなのかもしれない。でも、それでも。猫の大切な命を奪うようなことがあってはいけないと思う。