保護猫のわ通信Vol.4|決してここがゴールじゃない

2019-10-09

猫ねこさん

保護猫のわ通信Vol.4|決してここがゴールじゃない

猫ねこさん
7月より毎月連載中の猫ねこ部保護猫プロジェクト「保護猫のわ」。今回は看取りや他のところで飼うのが難しい犬猫のお世話を担当しているボランティアメンバー「預かりお父さん」にお話を伺ってきましたよぉ。

富士北麓地域で猫・犬の保護活動をしている「ねこねっと山中湖」にスポットをあてた連載企画第4弾。

今回ご紹介するのは、交通事故で下半身不随になってしまったダイナちゃん。
5回もの大手術を乗り越えたダイナちゃんを日々お世話している預かりお父さんにお話を伺ってきました。

「決してねこねっとがゴールじゃない」と語る彼の猫に対する優しく熱い想いを、是非たくさんの方に知っていただけたらと思います!

看取り・他のところで飼うのが難しい猫たちのお世話を担当

10月上旬。日中はまだまるで夏のような陽射しが照りつける山中湖畔。それでも朝晩は10度以下まで冷え込み、秋の気配も次第に色濃くなってきた。

こちらは4回目の訪問にしてやっとお顔をばっちり拝めたランディ。ナラと並ぶもふもふのでか猫さま♡

ランディ

はい、安定のナラさん。今日も落ち着くでかさです^^

ナラ今回は、ねこねっと山中湖で預かりボランティアとして活動している男性(通称:預かりお父さん)にお話を伺ってきた。

もともとは東京在住で、動物病院の経営に携わっていたとか。数年前に東京から山中湖へ移住。マンション暮らしから庭付きの一軒家へと住まいの形が変わり、大好きな犬や猫を保護できる家に、、、と思っていた矢先に出会ったのがねこねっと山中湖だったという。

「ねこねっと山中湖として最初に預かったのは犬なんです。フレンチブルドッグ。家でもフレンチを飼っていたのでフレンチ二匹になって。それが今から2年ほど前のこと。初めて猫を預かったのはその数ヶ月後ですね。生後3ヶ月くらいの全然慣れていない野良6匹をいきなり。代表の『すぐ慣れるから!』って言葉を信じ、、、でもちょっと軽く鬱になるくらい(笑)激しい子たちでしたね。。。」

ひなたぼっこ中▲ぽかぽか日差しが気持ちいいね~

ねこねっと山中湖はNPO法人ではなく、個人ボランティアの集まり。そのため、それぞれのメンバーが自分にできることを、と役割分担をして動いている。

譲渡や広報的な役割を担っているのが、今までに何度も取材でお話を伺ってきた副代表の保科さん。今回お話を伺った預かりお父さんの役割は、主に「看取り」と「他のところで飼うのが難しい猫・犬」のお世話だという。

保護する猫すべてを里子に出せるかというと、実際は難しいケースも多々ある。例えば高齢で里親が決まりにくい子。そして猫白血病ウイルスに感染しているなど完全隔離が必要な子。さらには皮下点滴や投薬、点眼など細かなケアを必要とする子。野良っ気がすごく触ることもできない子など。。。

家で仕事をしている彼は、仕事の傍ら猫の面倒を見れることから、そういった手のかかる猫や訳ありの猫を中心に自宅で預かってお世話をしている。

「基本的には看取りですね。。。白血病の子も2匹看取りましたけど、、、亡くなるたびに涙が流れます。容態が悪化してあと1週間、3日もつかという時になれば、その子のいる部屋に寝泊まりして、常に手を伸ばせば届くところにケージを置き触ってあげるんです。」

元々は野良猫だった子たち。でも縁あってうちへやってきた。家族の一員として飼い猫と変わらない終わり方をさせてあげたい、というのが彼の願いだ。

交通事故で下半身不随になったダイナ

預かりお父さんの腕に抱かれて、とっても愛くるしい表情を見せる彼女の名前はダイナ。

今ではこんなにも元気な姿だが、実は3ヶ月前交通事故に遭い下半身不随になってしまった。

ダイナ

最初の相談があったのは6月下旬のこと。「目の前で車に轢かれた子猫を保護しているが、下半身不随になった。。。保護してほしい。」

場所は山中湖村から車で約1時間ほどの甲府市。

近くで相談できる保護団体さんに相談してもらうように伝えたが、相談はしたけれど断られてしまった、、、知り合いにも声をかけたが引き取り手がなく、自分も飼えない。。。といった内容の返信が送られてきたという。

その当時、ねこねっと山中湖のボランティアメンバーは瀕死の子猫のお世話で手一杯の状況。でも、そんな話を見過ごすことはできず。。。相談者に条件を伝えたそう。

「私たちの信用する病院へ転院させてもらえませんか?そこからは私たちが引き継ぐので。」と。

こうして、ダイナはねこねっと山中湖の提携病院である「ふー動物病院」の亀田先生に託されたのだ。

ダイナ写真提供:ねこねっと山中湖

交通事故の場合、たとえ外傷がなくても体の内部への影響が及ぶため、定期的な超音波検査を行ったり、全身状態を血液検査などでフォローしていく必要があるという。でも、前の病院で入院していた6日間、レントゲンの処置しかされていなかったとか。。。

膀胱直腸障害にくわえ、ひどい膀胱炎と下痢も発症していたダイナ。亀田先生はそれらの治療とともに、温熱療法で下半身神経へのアプローチも行ってくださったそう。

尻尾と右脚に少し痛覚が戻ってきた、と亀田先生が嬉しそうに話していたその翌日、緊急手術に。。。事故による損傷で、ダイナのお腹のなかは大変なことになってしまっていたという。

約1ヶ月半にわたる入院期間中、計5回の大手術に耐えたダイナ。

ダイナ写真提供:ねこねっと山中湖

8月6日に退院してからはずっと預かりお父さん宅で過ごしているが、腎臓と膀胱の状態を確認するために定期的な通院は欠かせない。

「今は尻尾も脚も毛が生えて猫らしくなったんですけど、退院したときは全然毛がなくて…。私が知ってるなかでも一番手術回数が多かったですね。」

ダイナ

写真提供:ねこねっと山中湖

そんなダイナだが走るのはとっても速い。冒頭の動画でも紹介しているが、大好きなお父さんめがけて前脚だけでダッシュする姿は何度も見たくなるほど愛おしい。

「上半身だけはしっかり動いているので、一日に何度か安全に遊びまわれる時間を作ってあげています。唯一残された移動手段の前脚を強化するためにも。」

「ただ、うちにもフリーの猫がいて、その子たちにとっては遊びのつもりでも大怪我に繋がることがありますので、しっかり時間を区切るようにしてます。家具の角などに足をぶつけてしまってもこの子は痛みを感じないので、その点にも気をつけて。」

他の猫となんら変わりない

ダイナ

▲お父さんのシャンプー気持ちいいの。写真提供:ねこねっと山中湖

事故の影響で体が思うように動かせないダイナのお世話には色々と注意しなければならないことも多い。
口を少ししか開けることができないため、ご飯は小粒のカリカリやペーストが基本。前脚だけでケージを登ってしまって落下することのないよう、大きく高さのあるケージは使えない。そしてケージに乗れないようにする工夫も必要。一般的な猫砂のトイレも使えないので、毎回ペットシートで排尿・排便させて掃除をするという手間も…。

でも、そんなダイナを四六時中お世話している彼はこう言う。「何ら他の猫と変わらないんですよ、私のなかで。」と。

朝起きておはようから始まって夜寝るまで、不思議と違和感を感じることはないのだそう。

「怒ってる時のニャー、ご飯くださいの時のニャー、遊んでほしい時のニャーが微妙に違うことに最近気づいて。おいでって言えば来てくれる、普通の猫と同じように膝に乗ってくる。ちゃんとコミュニケーションが取れるんです。」

ダイナ

高いところを見上げて登りたそうにしているのも普通の猫と一緒。ただ体が伴わないだけ。

「確かに思うように下半身を動かせないし、ご飯を詰まらせてゴホゴホするときもあるんですけど、、、そんなにハンディキャップを負ってるように私は思っていない。それはこの子の個性だと思っているんです。」

人間の後始末は人間がやる

この可愛らしいチェックのレッグカバーは、なんと手作り!夏の間別荘にいらしていた副代表・保科さんのお家のお隣の奥様が、ダイナの体のサイズにあわせて作ってくれたのだとか。

ダイナ

「尻尾と脚の感覚がないのでどうしても擦れちゃう。でも、擦れて毛が抜けて皮膚が削れてしまうと最悪切断しなければいけない、という話を先生から受けたので、少しでも防げるようにと思って。下半身麻痺は一生治らないだろうと言われてはいるんですけども、切断はやるせない。残してあげたいので。」

ダイナ写真提供:ねこねっと山中湖

月に一回行われる出張分院は、ダイナにとってたくさんの人間たちと触れ合える時間でもある。

「この子がこんな体になってしまったのは、確かにどこかの人間が車で轢いてしまったからなんですけども、人間のやったことの後始末は人間がやればいい。いろんなボラさんに触ってもらって、頑張ってるねって言われながら。。。人間は怖くないんだよってことを伝えられれば。」

ダイナの猫生はまだまだ始まったばかり。
「やれることはたくさんある」そう言ってダイナへ向ける彼の眼差しは強く、とても優しかった。

どんなに猫が増えようと一日に一回は必ず全身を触る

預かりお父さんが毎日かかさず行っていること。それは、猫たちの全身をくまなく触ることだ。

「怪我をしていないか、皮膚病になっていないか、痩せていないか。。。一日に最低一回は全身を触ります。また、水の入れ物を見えるところに置いて、飲んだ水の量もチェックする。やけにトイレの長い子やお水を飲む量が異常に多い子は、たいてい腎臓が悪かったりします。早期に気づいてあげられたら治療も変わってきますので。」

ダイナ

写真提供:ねこねっと山中湖

猫の数がどれだけ増えようがすべての猫に対して平等に。もちろん愛情もそこにはあるけれど、それだけじゃない。健康状態に常に気を配ることで救える命があるのだ。