- キャットフードに使われるビートパルプとは砂糖を搾り取ったあとに残る食物繊維のこと。とかく悪く言われがちですけど、腸の負担を抑えつつ整腸機能もあわせもつ優秀な素材なんですよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
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ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
キャットフードに含まれるビートパルプとは砂糖を搾り取ったあとに残る食物繊維のこと。
腸への負担が少なく、かつ整腸機能もある優れた素材です。
しかし、「ビートパルプ=かさ増し材料」などと説明しているサイトも多々あり、不安に感じる人も多いのではないかと思います。
そこで今回は、ビートパルプがキャットフードに使われる理由、食物繊維としての優れた役割、デメリットについて詳しく説明します!
ビートパルプとは
ビートパルプとは、砂糖の主原料である砂糖大根(テンサイ)から砂糖を搾り取った後に残る絞りカス(天然の食物繊維)のことです。主に、繊維質の消化が得意な家畜用飼料として使用されています。
発酵が速い食物繊維と発酵が遅い食物繊維をバランスよく含む食物繊維
食物繊維にはさまざまな種類があり、腸内細菌による発酵が行われるかによって「発酵が速い食物繊維」と「発酵が遅い食物繊維」に分けられます。
- 発酵が速い食物繊維
ペクチン、βグルカン、グアガム、イヌリン、オリゴ糖など - 発酵が遅い食物繊維
セルロース、リグニン
発酵が速い食物繊維は腸内細菌により分解・吸収されるのに対し、発酵が遅い食物繊維は腸内細菌が利用することができず、分解されにくいです。
発酵が速い食物繊維
●メリット
ペクチンなどの発酵が速い食物繊維は、腸内のビフィズス菌や乳酸菌などの栄養となって腸内環境を整え、腸内で分解・発酵されると、大腸粘膜細胞の主要エネルギー源となります。
●デメリット
消化吸収されやすいため、腸内の洗浄能力が低くなります。
発酵が遅い食物繊維
●メリット
セルロースなどの発酵が遅い食物繊維は、発酵性が低く、主に腸の動きを活発にし腸内をきれいにする役割を持っています。
●デメリット
消化吸収されにくく、内臓に負担がかかります。
ビートパルプは、「発酵が速い食物繊維」と「発酵が遅い食物繊維」のどちらもバランスよく含む食物繊維です。つまり、発酵もされ、消化吸収されつつ、腸内の洗浄もしてくれる優れた性質を持ちます。
キャットフードにビートパルプを使う理由
猫は人間同様、消化酵素で食物繊維を消化することができませんが、食物繊維は腸内で重要な役割を果たしています。
毛玉を吐きやすい猫の毛玉対策などに食物繊維は必要不可欠で、毛玉対応のキャットフードには食物繊維が通常より多く(約10%)配合されています。
食物繊維の豊富なサツマイモやじゃがいも、エンドウ豆などで代用することもできますが、これらだけで繊維量を確保するとなると相当量必要となり、肉や魚などとのバランスが崩れてしまいます。
また、安価なビートパルプに比べコストも上がってしまうという問題点もあります。
そういった点からビートパルプが選ばれる理由が以下の2つです。
- キャットフードの成分バランスを保持させながら、毛玉対策として繊維を使用する目的
- 発酵が遅いセルロースに比べ腸への負担が少なく最低限消化吸収される
ビートパルプの役割
食物繊維としての腸内での役割は以下の3つです。
- 腸への負担を抑え、腸内をきれいにする
- 水分を吸収して膨らみ便通を促す
- 一時的な満腹感を与える
腸への負担を抑え、腸内をきれいにする
前述のように、ビートパルプは発酵性食物繊維と非発酵性食物繊維の役割を合わせもつ食物繊維なので、発酵されて消化吸収されつつ腸への負担は抑え、腸内にたまった汚れを削り取って体外に排出することができます。
水分を吸収して膨らみ便通を促す
ビートパルプは水分を吸収すると膨らむ性質があります。膨らんだビートパルプは腸壁を刺激して、腸の活動を活発にします。水分を含んで便のかさが増え、便自体も柔らかくなるため、スムーズな排泄を促します。
一時的な満腹感を与える
お腹の中で水分を含んで膨らんだビートパルプは、一時的に満腹感を与え、食べ過ぎ防止に役立ちます。
- ビートパルプは食物繊維のひとつですけど、整腸機能がありつつ腸内細胞のエネルギーにもなるので腸の負担を抑えることができるんですよぉ。
- ビートパルプってあんまり良くないイメージだったんですけど、意外と高機能なんですね!いいとこどりって感じで、バランスがいい食物繊維ですね。
ビートパルプのデメリット
食物繊維として優れた働きがある一方、気になる点もあります。
- 糖分が残っている
- 硫酸系薬剤が残留している恐れがある
- 製造国により消化率・栄養素が違う
糖分が残っている
ビートパルプは砂糖大根から砂糖を搾り取った後に残る絞りカスなので、糖分(上白糖)が残ることがあります。
上白糖には以下のような危険性があります。
- ビタミンB1欠乏
- 肥満・心臓病
- 癌の誘発・進行
- 胃腸の働きが弱まり消化不良が起こる
絞りカスですので少量ではありますが、毎日食べるとなると体内への影響を気にする方も多いでしょう。
硫酸系薬剤が残留している恐れがある
ビートパルプは、本来、家畜飼料法で定められた抽出法(圧力をかけて繊維を取り出す)で製造します。
しかし、なかには硫酸系の薬剤を使って、手間をかけずに抽出しているケースもあるようです。薬剤で溶かして抽出した場合、その時に使用した薬剤が残っている場合があり、健康への影響が懸念されます。
製造国により消化率や栄養素が違う
ビートパルプは製造国によって消化率や栄養素が全く異なります。
以下の表は、各国ビートパルプの消化率と栄養価の違いを比較したものです。
引用:日本甜菜製糖株式会社
国産に比べアメリカ産、中国産のビートパルプは消化率、栄養価ともに低いことが分かります。ビートパルプを使用している場合には、製造国にも注意した方が良いでしょう。
- 優れた素材ではありますが、危険性がまったくないというものでもないようですねぇ。こういったデメリットも理解しつつ、飼い猫にとって食物繊維を多くとった方が良いのか、ビートパルプを使っていないものを選んだ方が良いかを決めると良いと思いますよぉ。
- 毎日食べるものなのでやっぱり健康への影響も気になりますよね。。。メリットもあるだけに難しいですね。。。
よくある質問
ここでは、ビートパルプに関するよくある質問をまとめています。
ビートパルプ、セルロースともに食物繊維ですが、腸内細菌による発酵が早いかどうかが違います。
セルロースは微生物ですら発酵・分解できない「非発酵性食物繊維」ですが、ビートパルプはセルロースよりも発酵性が高い食物繊維です。セルロースに比べて腸の負担が少なく、かつセルロースの役割である整腸作用も兼ね備えています。
セルロースに関して詳しくは以下の記事をご覧ください。
いずれも砂糖大根から抽出した繊維質ですが、ビートファイバーは人間用食品向けに洗浄・乾燥・粉末にしたものです。
ヨーロッパと日本で研究開発された新しい素材で、ビートパルプに比べると価格も高価です。食物繊維としての役割に加え、陽イオン交換能力も合わせもっており、胆汁酸、脂肪酸を吸着し体外に排出し、体中にミネラルを供給する役割もあります。
まとめ
ビートパルプは、腸内をきれいにする役割があり、かつセルロースに比べ腸への負担が少ないという優れたメリットがあります。そのため、セルロースよりはビートパルプの入ったキャットフードの方がオススメです。
しかし、健康への影響が懸念されるいくつかのデメリットもある食物繊維ですので、その点を理解した上で選ぶようにしましょう。
- ビートパルプとは砂糖大根から砂糖を搾り取った後に残る食物繊維
- 発酵性食物繊維と非発酵性食物繊維をバランスよく含む
- 安価で手に入りやすく繊維量を確保できる
- 腸への負担を抑え、腸内をきれいにする
- 水分を吸収して膨らみ便通を促す
- 一時的な満腹感を与える
- 糖分が残っているため、健康への影響が懸念される
- 硫酸系薬剤が残っている可能性あり
- 製造国により消化率、栄養素が異なる
- ビートファイバーは人間用食品向けに洗浄・乾燥・粉末にした素材
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。