- 私たち猫は肉食なので、肉や魚なしには生きられないんですけど、それだけ食べていればいいというわけではなくて、穀物や野菜も大事な栄養になるんですねぇ。肉・魚:穀物:野菜のバランスが大切なんですよぉ。
猫ねこ部ディレクターとして猫に関する様々な情報をご提供するなか、特に猫の健康に直結する食事に関する知識を深めるため、ペットフード販売士資格を取得。様々な種類の猫や状況などに合うフードの提案、情報発信を行います。
───
ペットフード販売士:一般社団法人ペットフード協会が認定している認定資格で、ペットフードに関する様々な知識及び情報を習得したペットフードの専門家です。ペットの適正な発育と健康維持・増進に寄与します。
猫は、穀物や野菜も食べるため雑食だと思われがちですが、実は「完全肉食動物」です。
しかし、肉食と言われても、
「肉だけ食べさせればいいの?」
「穀物や野菜はあげちゃダメ?」
など、結局どんな食事が良いのかよく分からないという人も多いと思います。
そこで今回は、猫の食性や体のつくりについて徹底解説!
肉食動物である猫にとって理想的な食事について詳しく説明します。
肉食・草食・雑食の違い
食性とは、食べ物の種類や食べ方についての習性のことです。
食性の違いによって、動物は肉食動物・草食動物・雑食動物に分けることができます。
以下の表はそれぞれの特徴をまとめたものです。
肉食動物 | 草食動物 | 雑食動物 | |
主な食べ物 | 肉 | 草 | 肉・草(野菜) |
目の位置 | 前向き(前面) 広範囲を立体的に見ることができ、正確な距離を測れるため、獲物をとらえやすい | 横向き(側面) 広範囲を見渡せるため、敵をいち早く気づき逃げられる | 前向き 立体的に見える |
歯のつくり | 犬歯が発達 | 門歯・臼歯が発達 | 犬歯・門歯・臼歯 |
消化管のつくり | 消化管が短く、肉を消化しやすい | 消化管が長く、草を消化しやすい | 草食動物より消化管が短く、野菜は十分に消化しきれない |
主な動物 | トラ、ライオン、ネコ | シマウマ、ウシ、ウサギ | ヒト、イヌ |
猫の体のつくり
猫は完全肉食動物ですが、それは体のつくりからもうかがえます。肉食動物である猫の体の特徴は以下の通りです。
- 前向きに並んだ目で広範囲を見渡せ、獲物との距離を測ることができる
- 30本の歯すべてが肉を食べるために使われる
- 腸が非常に短い
- 盲腸が小さくほとんど機能していない
以下、それぞれの特徴について説明します。
前向きに並んだ目で広範囲を見渡せ、獲物との距離を測ることができる
以下の図は、猫の視野を表したものです。
猫の目は顔の前に位置しているため、両目で見ることのできる範囲が広く、獲物との距離を正確に測ることができ、獲物をとらえやすくなっています。
これに対し、草食動物の目は、敵にいち早く気づいて身を守れるよう顔の左右に位置しており、自分の周囲360度をぐるりと見渡すことができます。
30本の歯すべてが肉を食べるために使われる
猫の歯は全部で30本ありますが、そのすべてが肉を食べるために使われます。
以下は、猫の歯式図です。
猫の歯には、切歯・犬歯・臼歯がありますが、それぞれ以下のような役割があります。猫は、特に犬歯が発達しており肉を食べるのに適しています。
- 切歯(せっし)・・・動物の皮をはいだり毛をむしる
- 犬歯(けんし)・・・食べ物をしっかりくわえ、獲物の脊椎を脱臼させる、獲物の大きさや固さなどの情報を正確に感知する
- 臼歯(きゅうし)・・・飲み込める大きさに肉を切り裂く
腸が非常に短い
以下の表は、腸の長さと体長の比率を動物別に比較したものです。
腸:体長 | |
猫(肉食) | 3~4:1 |
ライオン(肉食) | 3.9:1 |
ヒト(雑食) | 4.5:1 |
ウマ(草食) | 12:1 |
ウシ(草食) | 22~29:1 |
ヒツジ(草食) | 27:1 |
猫の腸は草食動物や雑食動物に比べて非常に短いことが分かります。
これは、肉に比べ植物が消化吸収しにくいことが関係しています。草食動物は、長い時間をかけて植物を分解、吸収するため、腸が長くなっています。
盲腸が小さくほとんど機能していない
草食動物に比べると、猫の盲腸は非常に小さくほとんど機能していません。
草食動物の盲腸は大きくて長いため、植物が盲腸を通過するのに時間がかかります。その際に、盲腸内に生息する微生物が、植物に含まれるセルロースを分解、吸収してくれるのです。
盲腸がほとんどない猫は、植物を分解、吸収することができません。
- 猫は獲物を狙いやすく、肉を食べるのに適した体のつくりをしているんですねぇ。
- ぼくたちにも人間と同じように盲腸がありますけど、人間と同じでとっても小さいんですね。だからウマやヒツジのように草を消化することができないんですね!
猫の理想的な食事
前項で説明したように、猫は肉を食べるのに適した体のつくりをしています。
では、実際、どのような食事を与えれば良いのか詳しく説明していきます。猫の理想的な食事のポイントは以下の通りです。
- 動物性食材(肉や魚)が不可欠
- さまざまな栄養素をとる
- 高たんぱく、低炭水化物
- 水分をしっかりとる
以下、それぞれのポイントについて説明します。
動物性食材(肉や魚)が不可欠
以下は、猫の必須栄養素です。
※必須栄養素・・・体内で作ることができない、もしくは十分な量を作ることができない栄養素。必ず食事からとる必要がある。
- たんぱく質・・・アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプロファン、バリン、タウリン
- 脂肪・・・リノール酸、α-リノレン酸(アラキドン酸)
- 多量ミネラル・・・カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素
- 微量ミネラル・・・鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素
- 脂溶性ビタミン・・・ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK
- 水溶性ビタミン・・・チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ナイアシン、パントテン酸、コバラミン、葉酸、ビオチン、コリン
※ビタミンCは体内で合成できるので必須ではないが、失われがちなので摂っても良い
必須栄養素のひとつであるタウリン、アラキドン酸は植物性食材に含まれておらず、動物性食材にしか含まれていません。
そのため、猫の食事には肉や魚などの動物性食材が不可欠と言えます。
さまざまな栄養素をとる
猫が生きていくためには肉や魚が必ず必要ですが、だからといって「穀物や野菜が一切不要」ということではありません。
猫は肉の一部を食べるのではなく、ネズミや小鳥などを「丸ごと食べる」動物です。
つまり、動物を丸ごと食べる場合、たんぱく質だけでなく、ビタミンやカルシウム、ミネラル、繊維など様々なものが摂取できるのです。
キャットフードの場合、肉類が中心で良いのですが、キャットフードに含まれる肉類はあくまで動物の一部です。「丸ごと動物」の栄養バランスを補うため、炭水化物や繊維など様々な栄養素を摂ることが理想的です。ただし、あくまでも肉類から得られない必要な栄養素を補うということですので、基本的には肉類を中心とした食事バランスが良いです。
高たんぱく、低炭水化物
猫は炭水化物を分解する酵素の活性が低く、炭水化物を消化吸収するのが苦手です。
そのかわり、たんぱく質を分解する酵素の活性が非常に高く、たんぱく質をエネルギーに変えることができます。
体内でたんぱく質はすぐに分解されてしまうため不足しがちです。たんぱく質が不足すると成長不良、貧血、被毛のパサつき、筋肉の衰えなどの恐れがあります。(タウリン不足の場合、失明する可能性もある)
そのため、高たんぱく、低炭水化物の食事をとることが大切です。
水分をしっかりとる
体内の水分の15%を失うと命の危険もあるため、水分をしっかりとることも重要です。
1日に必要な水分量は猫の1日に必要なエネルギー要求量とほぼ同じで、体重に応じて必要な水分量は異なります。
フードの種類によっても必要な水分量は変わりますが、特にドライフードの場合は水分が少ないため、必ずフードと一緒に十分な水を用意してあげましょう。
関連記事:猫に必要な1日の水分量は?水分不足による健康への影響
- 私たちにとってなにより大切なのは肉や魚などの動物性食材をとることですよぉ。肉や魚なしには生きていけないですからねぇ。ただ、穀物や野菜も大切な栄養なのでバランスよくとることが大事ですよぉ。
- 穀物は猫にはいらない、なんてたまに聞くこともありますけど、猫にとっては大事な栄養なんですね!その量が問題なんですね。
よくある質問
ここでは、猫の食性に関するよくある質問をまとめています。
これは猫の食事の習性が関係しています。
猫はもともと単独で小動物の狩りをする動物です。
小動物1匹では1日の食事量を補えないため、1日に何度も狩りをします。少しでも多くの獲物を狩るため、例え食事の途中であっても獲物を見つけたら狩りを優先します。
こうした習性が食事回数の多さにつながっているのです。
猫の食べ方にあわせて食事回数・食事量を調整してあげると良いでしょう。
関連記事:【年齢・ライフステージ別】1日のキャットフードの量と回数の目安
食べ物に対する好奇心と警戒心があるためです。
猫は、いろいろな食物を食べた方が生きていくために有利と考える習性があります。そのため、餌の食感や形状などが好みにあわない場合、新しい餌を食べたがる傾向があります。
また、初めて食べるものに対する警戒心も強く、一度食べて嘔吐するなどの経験をすると、その経験から一切口にしなくなることもあります。
食いつきが悪いときは、食事環境や与え方などを工夫することで改善される場合もあります。
まとめ
- 猫は完全肉食動物
- 前向きに並んだ目は獲物をとらえやすい
- 肉を食べやすい歯のつくり
- 腸が非常に短い
- 盲腸が小さくほとんど機能していないため、植物を消化・吸収できない
- 猫の食事には動物性食材(肉や魚)が不可欠
- 炭水化物や繊維などさまざまな栄養をとる
- 炭水化物の消化が苦手・体内でたんぱく質が不足しがちのため、高たんぱく・低炭水化物の食事をとる
- 水分もしっかりとることが重要
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。