- 私たち猫と犬の祖先はもともと同じ動物なのですが、生活環境にあわせて体が進化して猫と犬に分かれていったんですねぇ。単独で狩りをする猫、集団で狩りをする犬、その狩猟スタイルの違いが運動能力や食性にも大きく影響しているんですよぉ。
ペットのなかでも人気を二分する犬と猫。
どちらもそれぞれに違った魅力があり、とても人気がありますよね。
犬と猫では、体のつくりはもちろん、食べ物や運動能力、性格なども全く違いますが、その違いについて詳しく知りたい方も多いと思います。
そこで、今回は犬と猫の違いについて徹底解説!
犬と猫の狩猟スタイルの違いから生まれた「運動能力、食性、体のつくり、性格」の違いについて詳しく説明します。
犬と猫の歴史
犬と猫、今では全く見た目も違いますが、実はもともとの祖先は同じ動物でした。
犬と猫の祖先は、約4,000~6,500万年前に北米やヨーロッパに生息していた「ミアキス」というイタチに似た動物。
ミアキスはもともと森で暮らしていましたが、寒冷化によって森林が減り草原地帯が広がると、暮らす場所が二分化されていきました。
- 森を離れ草原へ出ていったミアキス→犬の祖先
- 森にとどまったミアキス→猫の祖先
ミアキスが暮らす場所を変えていった結果、草原へ出ていったミアキスは犬の祖先へ、森にとどまったミアキスは猫の祖先へと進化し、その生態を別のものへと進化させたのです。
狩猟スタイルの違い
暮らす場所の違いから、犬と猫の狩猟スタイルにも以下のような違いが生まれました。
- 犬・・・集団追跡スタイル
- 猫・・・単独待ち伏せスタイル
以下、それぞれの狩猟スタイルについて説明します。
犬は長時間かけて集団で獲物を仕留める
犬の祖先が暮らしていた草原は、獲物からも丸見えで、身を隠す場所もありませんでした。
気づかれて逃げられるのが当たり前の環境では、「単独で狙うよりも集団で長時間追いかけ回して、相手を弱らせた方が得策」
そう考えた犬が行き着いたのが「集団追跡スタイル」だったのです。
猫は単独で瞬時に獲物を仕留める
一方、猫の祖先が暮らしていた森には、身を隠す物陰がたくさんありました。
そのため、猫は集団ではなく、単独で物陰から獲物に近づき一気に仕留める「単独待ち伏せスタイル」に行き着いたのです。
このような狩猟スタイルの違いは、犬と猫の違いに大きく影響を及ぼしています。
次項では、犬と猫の主な違いについて説明します。
- 暮らす場所が変わってきて狩猟の仕方も変わってきたんですねぇ。犬は群れで獲物を狙いますが、猫は単独で一気に仕留める動物なんですよぉ。
- 犬と猫ってもともとは同じ動物だったなんて、知らなかったですっ!草原に出ていったのが犬、森に残ったのが猫だったんですね。
犬と猫の違い
犬と猫には、主に以下のような違いがあります。
【運動能力】
- 犬は持久力、猫は瞬発力
- 猫はジャンプ能力が高い
- 猫には柔軟性がある
【食性】
- 犬は雑食、猫は肉食
- 猫は犬よりもたんぱく質要求量が多い
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 犬はあるだけ全部食べる、猫は少しずつ何回にも分けて食べる
- 犬は甘味に敏感、猫は酸味に敏感
【皮膚】
- 犬は体臭があるが、猫はほとんど体臭がない
- 犬はパンティングによって体温調節をする
- 猫は皮脂腺から出る特有のにおいをマーキングに使う
【歯】
- 猫は犬歯が発達、犬は後臼歯が残っている
【爪】
- 猫は爪をしまうことができる
【性格】
- 犬は従順、猫はマイペース
以下、それぞれの違いについて説明します。
運動能力
犬は持久力、猫は瞬発力
1回の狩りで長時間走り続けてきた犬には、白筋繊維と赤筋繊維がバランスが良く備わっていおり、抜群の持久力が備わっています。運動に適した筋肉を持っているため、犬を飼う場合は、毎日の散歩や運動が欠かせません。
- 白筋繊維・・・短時間に大きな力を出すのに役立つ
- 赤筋線維・・・有酸素運動に適しており、持久力を保つのに役立つ
一方、一瞬で獲物を仕留める猫は、この白筋線維を多く備え、優れた瞬発力のある筋肉を持っています。赤筋線維は犬に比べて少ないため、筋肉が疲れやすく長時間の運動には適していません。猫が犬のように毎日の散歩を必要としないのは、こうした筋肉の違いによるものです。狩り以外の時間体力を温存していたことから、1日の大半を寝て過ごす猫も多いのです。
猫はジャンプ能力が高い
高い木に登り獲物を探していた習性から、猫は高いところによじ登るのが大好きです。後ろ足の筋肉が発達しているため、ジャンプ能力も非常に高く、体長の5倍くらいの高さまでジャンプできます。
一方、草原で暮らしていた犬は、普段の生活でジャンプする機会がなく、猫のように高くジャンプする能力はありません。
猫には柔軟性がある
猫は、逃げようとする獲物をしっかり抱え込んで捕らえるため、瞬発力に加え柔軟性を兼ね備えています。体のわりに後ろ足が長くしなやか、また鎖骨があり前足を上手に動かせるのは、こうした狩猟スタイルからきているのです。
一方、犬は長時間追いかけ弱った獲物を口で噛み付いて捕らえるため、狩りに前足を必要としません。そのため、犬には鎖骨がなく、前足も前後にしか動かすことができません。
食性
犬は雑食、猫は肉食
犬は、人間同様、肉も野菜もどちらも食べる雑食です。
猫よりも人間との暮らしの期間が長いこともあり、肉中心の食事をとりつつも、野菜や穀物なども食べていたことで、これらを消化できるよう雑食化が進んだと言われています。
一方、猫は完全肉食動物です。
猫は、穀物を食い荒らすネズミ捕りのために飼われたこともあり、犬のように雑食化が進まなかったようです。
猫は犬よりもたんぱく質要求量が多い
以下の表は、猫と犬が1日に必要なたんぱく質の量です。
たんぱく質必要量(g/日)※体重1kgあたり | |
猫 | 7.0 |
犬 | 4.8 |
完全肉食動物である猫は、たんぱく質を分解する能力が非常に高いため、体内で常にたんぱく質が分解され、エネルギーとして使用されます。そのため犬に比べ、多くのたんぱく質を必要とします。
猫には動物性たんぱくが不可欠
犬は、必須栄養素である「タウリン」や「アラキドン酸」を体内で合成できますが、猫は体内で合成できません。
そのため、それらの栄養素は食事でとる必要がありますが、これらは動物性食材にしか含まれていません。
言い換えると、猫は肉や魚などの動物性たんぱくなしには生きていくことができません。
猫に必要なたんぱく質量や種類については、こちらの記事で詳しく説明しています。
犬はあるだけ全部食べる、猫は少しずつ何回にも分けて食べる
犬の狙う獲物は大型で、一度仕留めたら十分な食料を確保できるため、1日に何度も狩りをすることはありません。狩りが成功しないと食事にありつけないことや、仲間同士の食事の競争に負けると食べ物が残っていないことから、できるだけ早く、多く食べようとします。
こうした習性から、犬はあるだけ全部食べる傾向があります。
一方、猫は単独で小動物を狙いますが、小動物1匹では1日の食事量を補えないため、1日に何度も狩りをします。少しでも多くの獲物を狩るため、たとえ食事の途中であっても獲物を見つけたら狩りを優先します。
こうした習性から、猫は少しずつ何回にも分けて食べる傾向があります。
犬は甘味に敏感、猫は酸味に敏感
犬猫ともに、人間よりも味覚をキャッチする「味蕾(みらい)」の数が少ないため、味覚ではなくニオイで美味しさを判断します。
犬と猫では、感じ取れる味覚の種類が違います。以下の表は、犬と猫の味覚の違いを比較したものです。
甘味 | 苦味 | 酸味 | 塩味 | |
犬 | ◎ | ☓ | ○ | △ |
猫 | ☓ | ○ | ◎ | ☓ |
犬は甘味に最も敏感で、苦味はほとんど感じ取ることができません。砂糖や果物の糖分である「果糖」や牛乳に含まれる「乳糖」、甘いアミノ酸(牛・豚・羊・鶏・馬・サケ・ニシン・マグロ・カツオなど)が大好きです。
一方、猫は酸味に最も敏感です。肉食動物の猫が主食とする肉には、リン酸やカルボン酸など多くの酸が含まれています。猫は食べても健康に害がないかを判断するために、このような肉の酸味や苦味を感じ取っているのです。
つまり、犬は好物に対して味覚が発達し、猫は毒性に対して味覚が発達したのでしょう。
皮膚
犬は体臭があるが、猫は体臭がほとんどない
犬には全身にアポクリン汗腺があり、肉球にエクリン汗腺があるため、体臭があります。一方、猫は体表にアポクリン汗腺がなく、肉球にエクリン汗腺のみがあります。
- アポクリン汗腺・・・たんぱく性の汗を出す。この汗腺から出る汗は、表皮の微生物に分解され、その時に出る分泌物が体臭の原因となる。
- エクリン汗腺・・・水分が多く体温調節に役立つ汗を出す。四肢の肉球に見られる。
発汗量も少ないため、体にこもった熱をうまく逃がすことができません。そのため、暑い夏場は特に、温度調節や水分補給をしっかり行う必要があります。
犬はパンティングによって体温調節をする
犬は体内に熱がこもった場合、パンティングによって体温調節を行います。
パンティングとは、舌を垂らしてハアハアと呼吸を早めることで、舌の表面から水分を蒸発をさせることで体温を下げています。
猫は皮脂腺から出る特有のにおいをマーキングに使う
猫は額、耳、肛門周辺に皮脂腺が発達しており、皮脂腺から出る特殊なにおいをマーキングに使います。
マーキングとは自分のなわばりをアピールするために、体を家具やじゅうたん、壁などにこすりつける行為です。
歯
猫は犬歯(けんし)が発達、犬は後臼歯(こうきゅうし)が残っている
以下は、犬と猫の歯式図です。
引用:ネコペディア
犬猫の歯には、切歯・犬歯・臼歯がありますが、それぞれ以下のような役割があります。
- 切歯(せっし)・・・食物をかみ切る役目
- 犬歯(けんし)・・・噛んだ時に獲物に刺さり、捕らえる際に致命傷となる傷を負わせたり、しっかり固定する役割
- 臼歯(きゅうし)・・・飲み込める大きさに食べ物を噛み砕く
猫は特に犬歯が発達しており、肉を食べるのに適しています。
また、雑食の犬も猫同様に犬歯が発達していますが、肉以外の食べ物を噛み砕けるように、後臼歯がしっかり残っています。
爪
猫は爪をしまうことができる
獲物に静かに忍び寄り仕留めていた猫は、爪をしまうことができます。爪をしまうことで、気配を感じ取られずに木によじ登り、獲物に近づくことができたのです。
犬は木登りをする習性がなかったため、爪は走るときに地面をしっかり蹴るための役割を果たしており、爪をしまうことはできません。
性格
犬は従順、猫はマイペース
犬はもともと集団で生活していたため、群れのなかのリーダーに従う習性があります。そのため、自分よりも上と認識しているものには、歯向かうことなく従順です。
犬は人間をリーダーと認識しているため、飼い主を信頼し、命令や指示に従うのです。
一方、猫は群れを作らず単独で暮らしていたため、犬のような上下関係がありません。あくまで人間は自分と対等だと認識しているため、飼い主が呼んでもそばに来なかったり、そっけない態度をとったりマイペースに過ごすのです。
- 狩猟スタイルや暮らしの違いが、体や身体能力、食べ物、性格などに大きな影響を与えてるんですねぇ。
- ぼくたち猫ってよくマイペースって言われますけど、もともと群れない暮らしをしていたから、誰かに従うって習性がないんですよね。わざとそっけなくしてるわけじゃなくて、そんな動物ってことなんですっ。
まとめ
- 犬と猫の祖先は同じ動物「ミアキス」
- 暮らす場所にあわせて体が進化し、犬と猫に分かれた
- 犬は長時間かけて集団で獲物を仕留める、猫は単独で瞬時に獲物を仕留める
- 犬は持久力、猫は瞬発力
- 猫はジャンプ能力が高い
- 猫には柔軟性がある
- 犬は雑食、猫は肉食
- 猫は犬よりもたんぱく質要求量が高い
- 猫には動物性たんぱくが不可欠
- 犬はあるだけ全部食べる、猫は少しずつ何回にも分けて食べる
- 犬は甘味に敏感、猫は酸味に敏感
- 犬は体臭があるが、猫は体臭がほとんどない
- 犬はパンティングによって体温調節する
- 猫は皮脂腺から出る特有のにおいをマーキングに使う
- 猫は犬歯が発達、犬は後臼歯が残っている
- 猫は爪をしまうことができる
- 犬は従順、猫はマイペース
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中