- 痩せ気味かなと心配になったら、まずはその子の適正体重を知ることから始めましょう~。体重が極端に減っているときは早めの受診が大切!食欲もしっかりチェックですよぉ。好みの味や食感のフードに替えてみるのもひとつの方法。落ち着いて食事できる環境を整えてあげてくださいねぇ。
猫の痩せ気味とは、適正体重の94%以下の状態のこと。85%以下は明らかに痩せすぎなので要注意!
痩せる原因はさまざまですが、まずは食欲があるかどうかをチェックすることが大切。
病気ではなく、ただ単にフードの食いつきが悪くて痩せてしまっている時は、食事の与え方や食事環境をいま一度見直してみてくださいね。
今回は猫が痩せる原因や対処法について徹底解説。
痩せ気味チェック法、フードを食べない時の対処法、体重減少で注意すべき点についても詳しくご紹介します!
猫の体重について
ここでは猫の体重について詳しく説明します。
猫の標準体重
猫の種類は100種類以上と言われており、その標準体重は種類や性別により大きく異なります。
以下は代表的な猫種の標準体重の目安です。個体差がありますので、あくまでも目安として参考にしてください。
オス標準体重(kg) | メス標準体重(kg) | |
シンガプーラ | 2.7~3.5 | 2.2~3.0 |
シャム | 3.0~4.0 | 2.2~3.5 |
マンチカン | 3.0~4.5 | 2.3~3.6 |
スコティッシュフィールド | 3.0~6.0 | 2.5~5.0 |
ペルシャ | 3.5~6.3 | 3.0~5.0 |
ヒマラヤン | 4.0~6.0 | 3.2~5.0 |
雑種 | 4.3~5.5 | 3.0~4.2 |
アメリカンショートヘア | 4.0~7.0 | 3.0~6.0 |
ノルウェージャンフォレストキャット | 4.5~8.0 | 2.8~5.5 |
メインクーン | 6.0~9.0 | 3.5~5.5 |
ラグドール | 5.2~7.3 | 4.3~5.5 |
猫が痩せ気味かを知るには適正体重を知る必要がある
猫の痩せ気味の目安とは適正体重の94%以下の状態を言います。適正体重の85%以下は痩せすぎです。そのため、猫が痩せ気味かを知るには、まずその猫の適正体重を知る必要があります。
猫の適正体重は1歳の頃の体重
メインクーンやラグドールなどの大型猫を除いて、猫は生後約1年でほぼ成猫になります。この頃の体重、つまり1歳の頃の体重がその猫の適正体重に近いと言われています。
もし、その頃の体重の記録があれば、その時の体重と今の体重を比べてみると良いでしょう。
しかし、なかには1歳を過ぎてから飼い始めた場合や、その頃の体重記録が残っていない場合もあるでしょう。その場合は、次項で紹介する「猫が痩せ気味かチェックする方法」を使って痩せ気味かどうか調べることができます。
痩せ気味かチェックする2つの方法
猫が痩せ気味かどうかは以下の2つの方法で調べることができます。
- BCS(Body Condition Score)ボディコンディションスコア
- FBMI™ (Feline Body Mass Index) 猫のBMI
以下、それぞれの方法について詳しく説明します。
BCS(Body Condition Score)ボディコンディションスコア
最もよく使われているチェック方法で、肋骨や骨格のふれ方や腹部のくびれなどから猫の体型を5段階で評価します。BCS3が適正体重、BCS2が痩せ気味、BCS1が痩せすぎとなります。
BCSによる適正体重の求め方
現在の体重とBCSの評価から猫の適正体重を知ることができます。適正体重は以下の式に当てはめて計算して求めましょう。
適正体重(kg)=現在の体重(kg)÷(適正体重%÷100)
例えば、体重5kgの猫でBCS1と判断できた場合、上の表から適正体重の85%の状態と言えます。上の式にあてはめて計算すると5.88kgが適正体重だと分かります。
5÷(85÷100)=5÷0.85=5.88kg
FBMI™ (Feline Body Mass Index) 猫のBMI
人間のBMIのように体脂肪率を出して肥満度をチェックする方法です。体脂肪率7%以下が痩せ気味となります。
体脂肪率の測定方法
- 胴まわり(第9肋骨の周り)の長さを測る
- ひざからかかとまでの長さを測る
- 1と2の数値を下記の表にあてはめ交わった部分が体脂肪率
引用:ロイヤルカナン
- 猫も人間のように体脂肪率を出すことができるんですねぇ。気まぐれな猫の測定はなかなか大変そうですけど、この方法なら飼い主さんも納得しやすいかもしれませんねぇ。
- BCSはけっこう腕が必要な気がしますね。「適度なくびれ」とか「なだらかな隆起」とかぼくなんかにはさっぱり、、、獣医さんでなければ判断は難しそうですね。
痩せる原因
食欲があるのに痩せる場合と食欲がなく痩せる場合では、考えられる原因が異なります。
ここでは、それぞれの場合で考えられる原因について詳しく説明します。
食欲はあるが痩せる場合の原因
猫の食欲はあるが痩せる場合に考えられる原因は以下の通りです。
- 病気
- 運動量の増加
- 年齢・体質にあっていないフード
以下、それぞれの原因について詳しく説明します。
病気
食欲があってしっかり食べているのに痩せる原因として考えられるのが何らかの病気です。痩せる原因として考えられる主な病気は以下の通りです。
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- 慢性腎不全
- 回虫症(寄生虫)
以下、それぞれの病気について説明します。体重減少以外に以下のような症状が見られる場合は、早めに病院を受診しましょう。
●糖尿病
猫の糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリン不足や、インスリンへの体の反応力の低下などによって血糖値が上がる病気です。
糖尿病の主な初期症状は以下の通りです。
- 多飲多尿
- 食欲があるのに痩せる
- 毛艶が悪い
- 寝る時間が長い
- 脱水
体重減少以外にこのような症状が見られる場合は、早めに病院を受診しましょう。
●甲状腺機能亢進症
猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて起こる病気です。
甲状腺機能亢進症の主な症状は以下の通りです。病気の進行とともに、食欲や元気がなくなります。
- 多飲多尿
- 食欲増進
- 下痢・嘔吐
- 落ち着きがなくなる
- 攻撃的になる
- 脱毛・毛艶の悪化
- 呼吸困難
●慢性腎不全
腎機能が失われ血液中の老廃物を排泄できなくなる病気です。慢性腎不全の主な症状は以下の通りです。
- 多飲多尿
- 口臭
- 嘔吐
- 脱水
慢性腎臓病になると食べた栄養を上手く吸収できなくなるため、体重が減少します。病気が悪化すると食欲も落ちてきますが、初期段階ではほとんど症状が出ない病気なので、食欲があっても痩せてきた場合は注意が必要です。
●回虫症(寄生虫)
寄生虫に感染した場合、寄生虫に栄養をとられ、食べているのに体重が減少します。寄生虫に感染した場合の主な症状は以下の通りです。
- 下痢
- 嘔吐
- 便秘
- 咳
- 腹痛
- 膨満感
- 元気がない
- 毛艶の悪化
健康な猫が感染した場合は症状が出ないことも多いですが、免疫力の低い子猫などが感染した場合重篤化する危険があります。治療には駆虫薬が必要で、自然治癒することはありません。
運動量の増加
環境の変化などで運動量が増えた場合、消費カロリーも増えます。1日の消費カロリーが摂取カロリーよりも多い場合、体重は減少します。
運動量が増えたことで痩せた場合は特に問題はありませんが、適正体重より痩せ気味になってしまった場合は、食事量を増やしてあげましょう。
年齢・体質にあっていないフード
成長期の子猫に成猫用や高齢猫用などのフードを与え続けると、必要な栄養が十分にとれず痩せてしまうことがあります。また、特に肥満体型というわけではない猫に、減量用のフードを与えている場合も、必要なカロリーが足りず痩せてしまいます。
食欲がなく痩せる場合の原因
猫の食欲がなく痩せる場合に考えられる原因は以下の通りです。
- 口腔内の病気(口内炎・歯周病)
- ストレス
- 誤飲
- 老化
以下、それぞれの原因について詳しく説明します。
口腔内の病気(口内炎・歯周病)
口内炎や歯周病など口の中の病気が原因で食欲がなくなって痩せる場合があります。人間と同様、猫の口内炎もひどくなると食べるのが苦痛になるほどの痛みを伴います。
また、口内の食べかすや尖ったものなどを噛んで歯茎が傷ついたことが原因で歯周病になった場合も、痛みが伴い食欲がなくなる場合があります。普段から歯磨きペーストや猫用歯ブラシなどを使ってケアを行うことが大切です。
歯垢、歯石ケアのできるフードについては、こちらでも紹介しています。
ストレス
人間と同じように、猫もストレスで食欲がなくなることがあります。猫のストレスの主な原因は以下の通りです。猫の気持ちに寄り添い、なるべくストレスを取り除いてあげることが大切です。
- 多頭飼い(相性・トイレ不足)
- 引っ越し
- 来客
- 騒音
- 匂い
- 普段使っているものの変化(食器・トイレ)
- 運動不足
誤飲
何らかの異物を誤って飲み込んでしまった場合にも、食欲不振や嘔吐が起こり短期間で痩せる場合があります。レアケースですが、数年前に飲み込んだ異物が胃に残っていて、徐々に体重が減っていったというケースもあるようです。
誤飲を防ぐには、猫が口にしそうなものを手の届く場所に置かないことが大切です。
老化
7歳以上の高齢猫は、成猫期に比べて運動量が減り消化器官の働きも衰えてくるため、食欲が落ちてきて痩せることが多いと言われています。また、高齢になると噛む力も弱くなり食べづらくなるため、食欲不振につながることもあります。
高齢猫には、消化吸収が良く少量でも栄養をしっかりとれる高齢猫用フードを与え、なるべく少量ずつ食事回数を増やして与えると良いでしょう。また、ウェットフードを併用したり、ドライフードをお湯でふやかして与えてあげたりするのも効果的です。
高齢期の猫の食事について詳しく知りたい方は、こちらの記事(老猫の食事)も参考にしてくださいね。
- 痩せるとひとくちに言っても、食欲があるときとないときでは原因が違ってくるんですねぇ。
- なるほどー。体重が減ってきたときは、まず食欲がいつもと比べてどうかを見なきゃいけませんねっ。
体重減少で注意すべき点
猫の体重減少で最も注意すべきなのは、「1ヶ月にどれくらい体重が減っているか」という点です。
1ヶ月で5%以上体重が減っていたら病気の可能性があるため注意が必要です。また、10%以上減っている場合は深刻な病気の可能性があるため、なるべく早く病院を受診しましょう。
- 5%以下・・・要観察
- 5~10%・・・病気の可能性
- 10%以上・・・深刻な病気の可能性
例)先月:体重7kg→今月:体重6kg
100-(6÷7)×100=14.29%(深刻な病気の可能性)
このように、わずかな体重の変化であっても、病気が隠れている可能性は十分考えられるので、最低でも月に1回は体重を量ることをおすすめします。
猫がフードを食べない時の対処法
病気が原因ではなく、フードを食べてくれない時の対処法について説明します。フードを食べてくれない時の対処法は以下の通りです。
- フードの香りを高める
- 好みの味・食感のフードに替えてみる
- 食べやすい器に変える
- 安心して食べられる環境を整える
以下、それぞれの対処法について説明します。
フードの香りを高める
猫は「におい」で美味しさを判断しているため、フードの「におい」が少なくなっていると食べてくれないことがあります。フードの香りを高めるには以下のような工夫をすると良いでしょう。
- ウェットフードを加える
- 人肌に温める
- 風味を保つため密閉保存する
好みの味・食感のフードに替えてみる
人間にも味の好みがあるように、猫にも魚味が好き、肉の方がいい、など好みがあります。フードの香りを高めてもあまり食べてくれない場合は、猫の好みの味のフードに替えてみることも一つの方法です。
また、フードを切り替えて食欲がなくなった場合は一度前のフードに戻して様子を見るようにしましょう。前のフードに新しいフードを少しずつ混ぜていくとフードの切り替えがスムーズにいきやすいと言われています。
痩せ気味の猫の食事については、こちらの記事でご紹介しています。是非参考にしてくださいね。
食べやすい器に変える
フードを食べるときに器にヒゲがあたるとストレスを感じて食べてくれないこともあります。
このような猫のヒゲストレスを改善するために、浅く平らな器にフードを入れてあげるようにしましょう。
安心して食べられる環境を整える
食事をする環境に問題がある場合も、猫はフードを食べてくれないことが多いようです。
フードの器が常に清潔であるのはもちろん、食べやすい高さに器が置かれているか、器が滑りやすくないか、落ち着いて食べられる場所か、なども猫にとっては重要です。
関連記事:キャットフードを食べない時の6つの対処法
- どうしても食べてくれないときは、あの手この手で食欲を高めてあげてくださいねぇ。食事する場所も意外と大事なんですよぉ。
- たしかに!ぼく、器も自分専用のものじゃないとダメなんです。おかあさんはブツブツ言ってますけど、こう見えても意外とぼく神経質みたいですっ。
痩せ気味の猫に関するよくある質問
ここでは、痩せ気味の猫に関するよくある質問をまとめています。
猫は体温調節が上手くできないため、夏の暑さでバテてしまって体調を崩すことがあります。食欲不振で痩せないように、室温は25~28℃くらいに保つようにしましょう。脱水にならないよう水飲み場を増やしたり、ウェットフードを併用したりしても良いでしょう。ただし、急激に部屋を冷やすとかえって下痢や風邪になる場合もあるため、弱冷房や除湿などを上手く使うようにしましょう。
体重が減っているだけでなく元気もなくなった場合には、何らかの病気の可能性があります。以下のような症状が見られたら早めに病院を受診しましょう。
- 3日以上まともに食べていない
- 多飲多尿
- 嘔吐・下痢
- 毛艶が悪くなる
まとめ
猫の適正体重、痩せ気味かチェックする方法、痩せる原因、体重減少で注意すべき点、フードを食べない時の対処法については以下のまとめを参考にしてください。
- 適正体重の85%以下になったら痩せすぎ
- 適正体重とは1歳の頃の体重
- 痩せ気味かチェックする方法にはBCSとFBMIが主に使われる
- 食欲がある場合とない場合で痩せる原因は異なる
- 食欲があり痩せる原因は病気、運動量の増加、年齢・体質にあっていないフード
- 食欲がなく痩せる原因は口腔内の病気、ストレス、誤飲、老化
- 1ヶ月の体重減少率が5%を超えたら病気の可能性
- 猫の健康管理のためには最低でも月1回は体重を測ることが大切
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中