「一匹でも不幸な猫・犬が産まれないように」~行政・ボランティア・獣医師の連携
▲おなじみメリッサ。ジャンプ力がただものではない猫じゃらしマスター(動画参照^^)今月中に新しい里親さんのもとへ。
預かりお父さんにはもうひとつ重要な役割がある。それは「行政との折衝」。
外で暮らす不幸な猫を一匹でも多く減らすためには、行政・ボランティア団体・獣医の連携が不可欠だ。
上手く連携をとっていくために重要なこと。それは”自分たちの関わっている現場の状況を嘘偽りなくあるがままに伝えること”だという。
どこに、どんな猫が、どれくらいの数いるのか、お母さん猫はいるのか、新たに子猫が生まれるとどんな問題が出てくるのか、住民からはどんな声があがっているのか。そして現場の猫たちにはどんな処置が必要なのか。
それらの現状を伝えた上で行政として協力いただけることはないかと呼びかける。もしもできることがないという返答があった場合でも、そこで決して諦めたりはしない。まずは現場の状況を書き留めてもらうようお願いすることから始めるという。
こうした現場の説明をしたのち、前年度のTNR(※)の件数や医療費などを正確に伝え、行政としてできることの協力をあおいでいくのだとか。
※TNR:飼い主のいない猫を捕まえ(Trap)、不妊手術を行い(Neuter)、元の場所に戻す(Return)活動。
▲幻の猫サイモンを桃の中で発見^^
行政担当者の方に少しでも周知してもらうために、まずは動物愛護の概念から説明をすることもある。というのも、行政担当者の方全てが犬や猫について詳しいとは限らないからだ。それでも猫の命を救うためには、正しいことをしっかり伝えていかなければならないし、行政としてやるべきことも把握してもらわなくてはならない。伝え方はとても重要なポイントになる。
■動物愛護法第44条
- 愛護動物である犬や猫をみだりに傷つけたり殺してしまう。
→2年以下の懲役または200万円以下の罰金 - 著しく不衛生な環境で飼育したり、餌や水を十分に与えず、愛護動物を不健康な状態にすること。
→100万円以下の罰金 - 愛護動物を捨てること。
→100万円以下の罰金
行政との折衝は、電話では対応してもらえないことも多く、直接出向いて面談をすることがほとんど。
「一度持ち帰って、また出向いて。それが多い時には一日に二度三度と。。。でも、愛護動物である犬猫が適切に扱われるようにするためにしていかなければならないことだと思っています。」
地道な働きかけが実を結び・・・
こうした地道な働きかけは徐々に結果として表れてきている。
今年に入って、山中湖村、富士河口湖町に続き、富士吉田市も公益財団法人どうぶつ基金の「さくらねこ無料不妊手術事業」へ参加。TNR手術の際、行政枠によって交付されたチケットを使うことができるようになった。
行政が一歩前へ踏み出したことで、不幸な猫を一匹でも増やさないようにする動きが確実に広がりつつある。
公益財団法人どうぶつ基金より、全国の協力病院で使用できる無料不妊手術チケットの交付を受け、住民やボランティア団体と連携しTNR活動(※)を行う事業のこと。
また、ここ数年は特に、住民の方へまずは行政に連絡をしていただくよう徹底しているという。市や村ではなく直接ボランティア団体に相談をしてきた場合に、個人とボランティア団体間だけでやり取りしてしまうと、その実態を行政が把握できないからだ。
「行政から依頼があった場合に私たちボランティアが動くほうが統計も取りやすい。そういったものの考え方とやり方を今構築しているところです。」
継続していくことが最も重要で最も難しい
▲里親さん絶賛募集中のニコラ。
数年前とは全く比べものにならないほど行政の協力体制が整ってきつつあるというが、一方でこれをいかに継続していくかが最も重要で最も難しいことだという。
「行政に関しては年度末に異動があります。もし担当者が変わってもロスが出ないようにするというのが今の課題ですね。誰もがスムーズに対処できるように、必ず紙ベースのフォーマットを作っています。」
どんなに信頼関係ができあがっていたとしても書面での取り交わしは絶対、と決めている。
「おおもとさえ作ってしまえば、他のボランティアさんでも活用できます。”正しいことをしようとしている人が正しく行動できるように”というのが一番の目標ですよね。人が変わろうが形が変わろうが、同じことを継続してやっていければと思っています。」
自分たちのことだけを考えるのではなく、全ては猫のため。別に難しいことではないと言うけれど、こうした強い信念を行動に移せることが本当に素晴らしいと思う。
猫が嫌いな人がいて当然~どう共存共栄していくか
「私は好きだから犬猫の保護をやっていますけども、嫌いな方がいても当然なんですね。それはそれで私は一切否定しません。好きでもアレルギーやいろんな事情で飼えない方もいらっしゃいますし。だから嫌いな方は嫌いでいいんです。
ですが、嫌いだからといって個人的に手を下したり排除するのではなくて、まずは行政に相談していただきたいと。そして適切な対処法について話し合う。ただ、それに関しては何時間話しても結論が出ないほどすごく難しい問題なんですが・・・」
▲生で見るとめちゃめちゃかっこいいマーティー。写真だとなかなか上手く伝わらない黒猫あるある…^^
犬猫が好きな方、嫌いな方がいるなかで、どう共存共栄できるかを考えていくことが重要だという。
「お前そんなに好きなら全部(の猫)持ってってくれ。」住民の方からはよくこんな言葉をかけられるそう。
彼はそういった言葉に対してこう返すと言う。
「いや持って行きたいんだけど、もう十分いるからさ。この子らはここで生まれた子だから、地元がここだからさ。なんとかこれ以上増えないようにするから、この子達の餌やってくれとも言わないから、見守ってくれないかな。」
野良猫による被害に悩む人は決して少なくはない。車での爪研ぎ。糞尿による臭い。干した洗濯物を遊んで、落とした毛布で寝ていたり。。。。やられた側にとってはどれも切実な悩みだ…。
でもこれ以上猫の数が増えたらますます被害は大きくなる。そうさせないためにもまずは猫の数が増えないように不妊手術を受けさせることが大事なのだと住民の方に伝えているそう。