耳カットは”幸せの象徴”
避妊・去勢手術を行う際には、必ず耳先をV字にカットする。耳先が桜の花びらの形に見えることから、耳カットした猫を「さくらねこ」と呼ぶ。
「耳カットがかわいそうって思うかもしれないんですけど、耳カットの目印がないと何度も捕獲されてしまう可能性があります。捕獲や麻酔など怖い思いを何度もさせることに…。慣れていない先生の場合、お腹を開けられてしまうケースもあるんですよ。拷問ですよね…。だからこそ、耳カットすることには意味があるんです。」
耳カットの目印があれば「この子は人の手が関わっているんだな」と分かる。”幸せな象徴”だと亀田先生は言う。
どうぶつ基金さくらねこ無料不妊手術事業事業
飼い主のいない猫の問題を殺処分ではなくTNRで解決していくためには、獣医師、ボランティア、行政の連携・協力が欠かせない。
こうした活動の支援を行っているのが公益財団法人どうぶつ基金だ。
さくらねこ無料不妊手術事業では、行政・団体・ボランティアが申請を行うことで、全国の協力病院で不妊手術を無料で受けられるチケットを発行してもらえる仕組みになっている。
ふー動物病院もその協力病院のひとつ。
こちらがそのさくらねこTNRチケットだ。
左が行政枠(富士吉田市)、右が一般枠。
さくらねこ無料不妊手術事業は全部で3つの枠に分かれており、申請期間や申請資格、申請枚数の上限、支援内容にそれぞれ違いがある。
さくらねこ無料不妊手術事業 | |||
行政枠 | 団体枠 | 一般枠 | |
申請期間 | 年中受付 | 毎月1~5日 | 毎月1~5日 |
申請資格 | 地方公共団体、地方公共団体が運営している施設の管理を委託されている方 | 公益財団法人、公益社団法人、NPO法人、認定NPO法人、一般財団法人、一般社団法人、その他 | 行政枠・団体枠に当てはまらない場合はすべて個人名での登録となる(法人格を持たない任意団体も) |
申請枚数の上限 | 上限なし | 30枚まで | 10枚まで |
支援内容 | 不妊手術・ワクチン・ノミよけ薬 | 不妊手術 | 不妊手術 |
◆チケット利用方法の流れ
②どうぶつ基金がチケットが発行
③TNRを実施
④ボランティア・団体などが必要事項を記入、署名捺印。耳カットの写真を添付して獣医に提出
⑤獣医が必要事項を記入、署名捺印し、どうぶつ基金に提出
⑥どうぶつ基金から一定の金額が病院に支払われる
▲各捕獲器・キャリーには、ボランティアスタッフがチケット枠や診療内容などの情報を記した札がつけられている。
もちろん、このチケットを使って手術ができるのは飼い主のいない猫だけ。金券扱いとなるので、扱いも厳重に行っているという。
行政枠の場合はワクチンと駆虫薬も支援に含まれているが、一般枠の場合はなし。必要がある場合には、ねこねっと山中湖の方で支払いをしているのだそう。
外で暮らす野良猫の末路~餓死と風邪
外で暮らす野良猫の環境はとても過酷だという。
飢え、暑さ寒さ、事故、病気、虐待・・・毎日が戦いの日々。飼い猫の寿命が約15年なのに対し、野良猫の寿命は約3~4年と極めて短い。
「餌やりさんの話を聞くと、うちはたくさんあげてますって言うんです。こんなにあげてるのよ~!って。でも1年で15匹以上増えていくわけなんですよね。そうすると絶対に餌が足りなくなる。。。ほとんどの野良猫は餓死と風邪で亡くなるんです。」
野良猫を診てくれない動物病院も多いという。
「お外の環境は過酷なので、一般の猫と比べて重病、重症の子が多いんですね。でも、病院に連れて行ったらこれはすぐ治るからほっといていいよって言われたり。いろんな事情はわかるんですけども、野良猫は基本的に診ないとか、そういったひどい扱いをされることもすごく多いんですよね。」
なかには、病院で受け入れたにも関わらず、必要最低限の処置もせずにそのまま返し、命の危険にさらされることも。以前、保護猫のわで紹介したダイナちゃんがそうだ。
「人間の場合も救急車でたらい回しにされて亡くなるケースもありますよね。。。それと一緒で、最初の病院での処置はとても大切なんです。」
外で暮らす猫を診てくれる動物病院は少しずつ増えてはいるものの、まだ極めて少ない状況、地域差もあるというのが現状だそう。
餌やり「だけ」を無責任にやるのは罪深いこと
「ねこねっとさんのようなボランティアさんの方が受け入れてくださっているからこそ、救える命が増えていく、命を繋いでいくことができるので、やっぱりすごくありがたいです。こうして手術を手伝ってくださったり、子猫ちゃんを育てて譲渡をしてくださったり。
でも、ねこねっとさんもたくさんの猫ちゃんを抱えているので、全てを受け入れることはもちろんできない。受け皿を大きくするっていうのはなかなか難しいんですね。」
だからこそ、不妊手術がとても大切なのだと亀田先生は言う。
「ご飯をあげると猫ちゃんはスリスリしてくれますし、私に懐いてるって思うとすごく嬉しい気持ちになると思うんですね。もちろん、ご飯をあげることはいいことなんですけど、それだけをやるっていうのはけっこう罪深いことで。表面しか見ないで無責任に餌やり”だけ”をすると悲惨な末路が待っているんです。」
猫たちがある日突然姿を見せなくなっても、「きっと大きくなったから違う場所に行ったのね。たぶんどこかで元気にやってるんじゃないかな。」といいように解釈する。餌やりだけに一生懸命になって、肝心なことには目を背けてしまう餌やりさんも多いという。
でも、こうして放置された猫たちが、悲惨な状態で保護されたり命を落としているのだ。
ただ、その現実を伝え避妊去勢手術をするのがベストだと促しても、なかなか受け入れてもらえないことも多いそう。
猫がお腹を空かせててかわいそう、そんな風に思う気持ちはもちろん大切だけど。。。猫のためを思ってしていることが、結局は猫を不幸にしてしまっているのだ。無責任な餌やりで失われる命がこれ以上増えないように、いま一度立ち止まって考えて見て欲しい。
どんな猫も幸せな猫生を歩んでいってほしい。そのために私たちができること。。。それはもっと多くの人に野良猫の現状を伝えていき、命の大切さを知らせていくことなのだと思う。
ねこねっと山中湖
公式サイト:https://www.nekonetyamanakako.org/
支援物資ご購入のお願い:ねこねっと山中湖 ご支援お願い物資リスト
里親さまのご希望の方:里親さま希望のお問い合わせ
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。