- 私達は健康でも頻繁に吐くことがありますが、なかにはすぐに病院で診てもらった方が良い嘔吐も…。吐く回数や吐いた時・吐いた後の様子をよく見て、少しでも気になることがあればすぐに獣医さんに相談することが大切ですよぉ。
猫は比較的吐きやすい動物と言われており、吐いた後ケロッとしていることも多いと思います。
でも、あまりにも吐く回数が多かったりいつもと違う様子だと、病気なのではないかと心配になりますよね…。
そこで今回は、すぐに病院を受診した方が良い嘔吐の見分け方を徹底解説!
猫の吐く原因はさまざまで、生理反応で吐き出す場合と病気で吐く場合があります。
吐く回数や吐いた時・吐いた後の様子をよく見て、「よくあること」と見過ごさないように気をつけてくださいね。
すぐに病院を受診すべき嘔吐と考えられる病気
すぐに病院を受診した方が良いのは、このような嘔吐の場合です。
吐く回数、嘔吐物の内容、嘔吐以外の症状をよく見て、1つでも当てはまる場合はすぐに病院を受診しましょう。
- 吐く回数が多い(1日3回以上、連続3日以上)
- 吐く以外の症状が見られる(食欲不振・体重減少、下痢など)
- 透明な液体だけを吐く+嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある
- ピンク色の液体を吐く
- 黄色の液体を吐く+嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある
- 緑色の液体を吐く
- 茶色い液体を吐く
- 泡を吹く
- 嘔吐物から便の臭いがする
- 嘔吐物から薬品の臭いがする
- 嘔吐物に異物が混ざっている
- 嘔吐物に虫が混ざっている
吐く回数が多い(1日3回以上、連続3日以上)
1日に何度も吐く場合や毎日のように吐く場合は、誤飲による中毒や病気の可能性が考えられます。
吐く回数があまりにも多い場合、脱水症状になる可能性がありますので注意が必要です。
考えられる病気
- 食物アレルギー
- 内分泌疾患
- 腸閉塞
特に注意が必要なのは腸閉塞です。
腸閉塞とは腸管が詰まってしまう病気です。
放っておくと腸が壊死してしまい命を落とす危険性もありますので、一刻も早い治療が必要です。
吐く以外の症状が見られる(食欲不振・体重減少、下痢など)
吐く以外に食欲不振・体重減少、下痢などの症状が見られる場合は、何らかの病気の可能性が考えられます。
考えられる病気
食欲不振・体重減少(元気がない)
- 食道炎
- 糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)
- 毛球症(もうきゅうしょう)
- 条虫症(じょうちゅうしょう)
- トキソプラズマ症
- 腎不全
- 肝炎・胆管炎・胆管肝炎・肝硬変
- 伝染性腹膜炎(FIP)
- フィラリア症
- 尿毒症
- 腸閉塞
特に注意が必要なのは、前述の腸閉塞と尿毒症です。
尿毒症とは腎臓の機能が低下し、通常おしっことして体外に排泄される有害物質が体内に溜まってしまう病気です。
すぐに治療をしないと短時間で命を落とす可能性もあるため、一刻も早い治療が必要です。
下痢
- 胃腸炎
- 食物アレルギー
- 消化器官の悪性腫瘍
- 膵炎(すいえん)
嘔吐・下痢を繰り返すと、脱水症状を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。
透明な液体だけを吐く+嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある
通常の胃液は無色透明です。
胃液だけを吐いても元気で食欲もあれば、空腹が原因なので心配はいりません。
しかし、嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある場合は病気の可能性もあります。
考えられる病気
- 胃腸炎
- 糖尿病
- 食道炎
- リンパ腫
- 腎不全
ピンク色の液体を吐く
通常の胃液は無色透明ですが、ピンク色の液体を吐いた場合は、消化器官や口内が傷ついたり炎症を起こして出血している可能性が考えられます。
誤飲による出血の可能性もあるので、嘔吐物をよく確認しましょう。
考えられる病気
- 胃腸炎
- 歯周病・歯肉炎
- 尿毒症
- 腎不全
- 寄生虫による感染
特に注意が必要なのは前述の尿毒症です。
すぐに治療をしないと短時間で命を落とす可能性もあるため、一刻も早い治療が必要です。
黄色の液体を吐く+嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある
通常の胃液は無色透明ですが、黄色の液体を吐いた場合は、胆汁(たんじゅう)が逆流している可能性があります。
胆汁は肝臓で作られる消化液で、食べ物に含まれる脂肪を吸収しやすくする働きがあります。
通常、胆汁は胆のうにためられ、食べ物が胃から十二指腸に流れてくると胆のうから流れ出る仕組みになっていますが、何らかの原因で胃に逆流してしまっていることが考えられます。
胆汁が逆流するのは空腹やストレス、服用している薬の影響も考えられますが、嘔吐回数が多い・嘔吐以外の症状がある場合は病気の可能性もあります。
考えられる病気
- 消化器系の病気
- 甲状腺の病気
- 猫パルボウイルス感染症
特に注意が必要なのは猫パルボウイルス感染症です。
猫パルボウイルス感染症は重症化すると数日間で死に至ることも珍しくない病気です。
特に子猫が感染した場合の致死率は非常に高いため、一刻も早い治療が必要です。
緑色の液体を吐く
緑色の液体を吐いた場合、何らかの植物を食べた、もしくは胆汁が逆流している可能性が考えられます。
ユリ科、バラ科、ツツジ科、キンポウゲ科、スズラン科などの植物は、猫にとって毒性の高い植物です。
このような植物を食べた痕跡がある場合は、猫が中毒症状を起こしている可能性もあるので早急に病院で診てもらいましょう。
考えられる病気
- 内臓の機能障害
- 腫瘍
通常の胆汁の色は黄色ですが、何らかの疾患で濃くなり緑に変化したことが考えられます。
重篤な病気の可能性もあるのでなるべく早めに受診してください。
茶色い液体を吐く
茶色い液体を吐いた場合は、消化器官や口内が傷ついたり炎症を起こして出血(血液の色が時間がたって茶色に変化)している可能性が考えられます。
フードをうまく消化できなかった時にも茶色いものを吐くことがありますが、この場合は固体に近いペースト状の茶色い嘔吐物になります。
考えられる病気
- 胃炎
- 腸炎
- 胃潰瘍
- 腫瘍
- 腎不全
- 腸閉塞
特に注意が必要なのは前述の腸閉塞です。
放っておくと腸が壊死してしまい命を落とす危険性もありますので、一刻も早い治療が必要です。
泡を吹く
泡を吹くのは、誤飲や空腹、薬などの苦いものを口にしたことが原因の場合もありますが、病気の可能性も考えられます。
考えられる病気
- てんかん
- 胃炎・胃潰瘍
- 食道炎
- 口内炎
特に注意が必要なのはてんかんです。
てんかんとは脳神経に異常が起き体のコントロールができなくなる病気で、放っておくと脳に障害が残り命を落とす危険性もあります。
嘔吐物から便の臭いがする
嘔吐物から便の臭いがする場合は、 腸閉塞を起こしている可能性がありますので、早急に病院を受診しましょう。
嘔吐物から薬品の臭いがする
嘔吐物から薬品の臭いがする場合は、何らかの毒物を飲んでしまった可能性があります。
特に漂白剤を誤飲してしまった場合、最悪の場合失明することもあります。
薬の種類によっては大量摂取でなければ問題ないものもありますが、中毒症状を起こすこともあるので早急に病院で診てもらいましょう。
嘔吐物に異物が混ざっている
嘔吐物に異物が混ざっている場合は、誤飲誤食の可能性があります。
猫が誤飲しがちなのはこのようなものです。
- ティッシュ
- 紐、糸
- ビニール
- ゴム
- 布
- おもちゃ
- スポンジ
- 針
特に、紐状のものを誤飲すると腹膜炎など命にかかわる病気を引き起こす可能性があります。
また、針など尖ったものは胃腸を傷つけ、胃穿孔(いせんこう)や腸穿孔(ちょうせんこう)を引き起こす可能性があります。
嘔吐物に虫が混ざっている
嘔吐物に虫が混ざっている場合は、寄生虫に感染している可能性が考えられます。
駆虫薬での治療が必要になりますので、必ずかかりつけの獣医さんに相談のうえ、なるべく早く受診しましょう。
- ワタシたち猫はたしかに吐きやすい動物ではあるんですが、なかには命にかかわるような危険な嘔吐も。。。吐く回数や吐いた時、吐いた後の様子をしっかり見ることが大切なんですねぇ。
- しょっちゅう吐く子だと感覚も麻痺してきて「当たり前」みたいに思うかもしれないですけど、すぐに病院に連れてかなきゃいけない嘔吐もあるんですね!
様子を見ても大丈夫な嘔吐と対策
すぐに病院を受診すべき危険な嘔吐もありますが、冒頭でも説明したように猫は健康な状態でも生理反応で吐き出すことがあります。
様子を見ても大丈夫なのはこのような嘔吐です。
嘔吐の回数が少なく、嘔吐以外の症状が見られない場合は少し様子を見てみましょう。
- 吐く回数が週1回以下
- 体重の減少がない
- 元気・食欲がある
- 下痢をしていない
吐きやすい猫への対策
病気以外で猫がよく吐くのは、このような原因が考えられます。
- 被毛が体内にたまっている
- フードの一気食い・食べ過ぎ、空腹
- フードの粒が大きい
- フードがあっていない
- ストレス
- 異物誤飲
- 急なキャットフードの切り替え
- 便秘対策
なるべく吐き戻しを少なくするよう以下のような工夫をしてみましょう。
毛玉対策
猫は毛づくろいで自分の被毛を飲み込みやすく、体内に被毛がたまると自然に吐き出そうとします。
体内に毛玉がとどまり取り出すことができなくなると毛球症(もうきゅうしょう)という病気になり、最悪の場合は開腹手術が必要になります。
なるべく吐く回数を減らすために、「飲み込む毛を少なくする」「毛玉の排泄を促す」などの毛玉対策をしてあげましょう。
【飲み込む毛を少なくする】
- こまめなブラッシング
- 定期的なシャンプーやトリミング
【毛玉の排泄を促す】
- 猫草を食べさせる
- 毛玉ケア用キャットフードを与える
毛玉ケア用キャットフードを活用するのも効果的。毛玉ケア用のフードについてはこちらの記事(毛玉が気になる猫向けの食事)で紹介しているので参考にしてくださいね。
一度に食べる量を減らす、食事回数を増やす
キャットフードを一気に食べたり食べすぎたりすると、消化不良になり吐きやすくなります。
また、空腹の時間が長い時も、胆汁が逆流し吐いてしまいます。
この場合は一度に食べる量を減らし、食事回数を増やしてなるべく空腹時間を短くしましょう。
空腹で吐いてしまう場合は決まった時間にフードが出てくる自動給餌器を使うのもおすすめです。
関連記事:猫の自動給餌器おすすめ10選【獣医師が教える選び方のポイント解説付】
小粒のフードにする、フードを砕いて与える
キャットフードの粒が大きすぎると、喉に詰まらせ吐くこともあります。
猫の食べ方を見ながら粒の大きさを変えたり、フードを砕いて与えると良いでしょう。
粒タイプや大きさによるフードの選び方やフードの砕き方を知りたい方は関連記事も参考にしてください。
関連記事:粒の大きさで選ぶ食事、キャットフードを砕く方法
キャットフードを見直す
食事の量や回数、粒の形状などを変えても吐いてしまう場合は、キャットフードが猫にあっていないことも考えられます。
以下の点をチェックし、フードを見直してみるのもひとつの方法です。
- 添加物が多く使われていないか
- 粗悪な原材料が使われていないか
- 年齢にあったフードを与えているか
こんなキャットフードは気を付けて!こちらの記事(注意が必要な6つの原材料)も参考にしてくださいね。
ストレスを取り除く
猫はストレスでもよく吐きます。
猫のストレスは以下のようにさまざまですが、なるべく猫の目線になってストレスの原因となっているものを探し取り除くことが大切です。
- 多頭飼い(相性・トイレ不足)
- 引っ越し
- 来客
- 騒音
- 匂い
- 普段使っているものの変化(食器・トイレ)
- 運動不足
- 急激な気温の変化
猫の興味をひきそうなものを手の届く場所に置かない
好奇心旺盛な猫は、異物を誤飲して吐いてしまうこともよくあります。
紐状のようなものを飲み込んでしまった場合、つっかえて吐こうとしても吐き出せません。
異物誤飲を防ぐために、猫の興味をひきそうなものを手のとどく場所に置かないようにしましょう。
また、毒性のある観葉植物を部屋に置かないことも大切です。
関連記事:猫に食べさせてはいけない食品
キャットフードの切り替えは徐々に
キャットフードを切り替える際、いきなり新しいフードにしてしまうと猫の体に負担がかかり吐いてしまうことがあります。
フードを切り替えるときは今までのフードに新しいフードを混ぜ、少しずつ新しいフードに慣らしていくことが大切です。
関連記事:キャットフードを切り替える時の注意点
便秘対策
便秘気味の場合、トイレで力む際に自律神経が刺激されて吐いてしまうことがあります。
少しでも吐く回数を減らすためには、便秘にならないようにすることも大切です。
- 水分をしっかり与える
- ストレスを取り除く
- 乳酸菌サプリを与える
- お腹のマッサージをする
- キャットフードを見直す
- 様子を見ても大丈夫な嘔吐とはいっても、少しでも吐く回数を減らしてあげたいですよねぇ。キャットフードのあげ方なんかはすぐに見直しできそうですねぇ。
- ごはんの一気食い、食べ過ぎで吐く、、、まさにボクのこと、、、( *´艸`)
猫の嘔吐に関するよくある質問
なかには、毎日1回必ず吐くけれど健康な猫もいます。
「すぐに病院を受診した方が良い嘔吐と考えられる病気」を参考に、当てはまる症状がひとつでもある場合は病院を受診した方が良いでしょう。
これは、もともと肉食動物である猫がネズミなどの獲物を丸呑みで食べる際、消化できない被毛や骨などを吐く習性からきています。
腐った肉、毒性のある植物などを食べた時にもすぐに吐き戻します。
また、食道の筋肉の構造が嘔吐しやすいつくりになっているからとも言われています。
猫も人間と同じく車酔いで吐くことがあります。
乗り物酔いする猫を車に乗せる場合は、なるべく通気性の良いキャリーを使い適切な温度設定をするなど車内環境を良くしてあげましょう。
また、かかりつけの病院に相談して酔い止めの薬をもらっておくのもひとつの方法です。
なるべく吐かないように飲ませ方を工夫してみましょう。
- 錠剤・カプセル・・・猫の舌の付け根部分にコインを落とすような感じで。飲み込むまでしばらく上向きの姿勢。水大さじ1杯を飲ませる。
- 粉薬・液体シロップ・・・ゆっくりと投与器で流し入れ飲み込むまでしばらく上向きの姿勢。オブラートを使うのも◎。
また、薬の副作用で吐く場合は獣医に相談して対処してもらいましょう。
老猫が吐く原因のひとつに「食事量が多すぎる」ことがあります。
特に食後数時間たって茶色のドロッとしたペースト状のものを吐く場合は、消化しきれていないことが考えられます。
こうした場合は、以下のような対策をとると良いでしょう。
- 食事量を減らす
- 回数を減らす
- ウェットフードにする
また、高齢になると肝臓疾患、腫瘍、腎臓疾患などの病気にかかりやすくなります。
「すぐに病院を受診した方が良い嘔吐と考えられる病気」を参考に、当てはまる症状がひとつでもある場合は早めに病院を受診しましょう。
まとめ
猫は比較的吐きやすい動物で、健康でも生理反応で吐き出すことがあります。
しかし、なかには重篤な病気が隠れていて早急な治療が必要な場合もあります。
しょっちゅう吐く猫であっても、決して当たり前のことと思わないことが大切!
吐く回数や吐いた時・吐いた後の様子をしっかり見て、少しでも気になることがあれば動物病院で診てもらいましょう。
- 猫は生理反応で吐き出す場合と病気で吐く場合がある
- 吐く回数、嘔吐物の内容、嘔吐以外の症状を必ず確認
- 吐く回数が多い、嘔吐以外に症状が見られる場合は病院へ
- 嘔吐物の色がピンク、黄、緑、茶の場合も要注意
- 嘔吐物から便臭がする場合は即病院へ
- 吐く回数が少なく、嘔吐以外の症状がなければ様子を見ても大丈夫
- 食事の見直し、ストレスの軽減、毛玉対策、便秘対策などで吐く回数を減らすことができる
- この記事を書いた人
守重美和
猫ねこ部編集室 編集&ライター保護猫団体の活動を仔細にお届けする「保護猫のわ」・飼い主さんと猫との幸せエピソードをお届けする「なないろ猫物語」の編集担当。
猫を通して「人」の姿にフォーカスした記事をお届けする猫メンタリーライターとして 猫好きシンガーソングライター・嘉門タツオさんへのインタビューをはじめ、街の看板猫、猫カフェ、猫が住める住宅からキャットフードメーカー、ペット防災の専門家、猫雑貨店、猫をモチーフにした漫画家さん、年間3000件ものTNRの不妊手術を行っている獣医に至るまで、半年間で約40名以上の猫と関わる方々に幅広く取材を重ねる。
- 【監修】獣医師・YICビジネスアート専門学校ペット科講師
平松育子京都市生まれ
山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業/2006年3月-2023年3月ふくふく動物病院院長を務める/現在は勤務獣医師として自分の可能性にチャレンジ中